JP3684797B2 - 気相成長方法および気相成長装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレクトロルミネッセンス素子を構成する薄膜やLSI用の高誘電薄膜などの薄膜を形成する気相成長方法、および気相成長装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、気相成長方法を用いて、例えばエレクトロルミネッセンス素子の発光母材であるSrS(硫化ストロンチウム)やSrGa2 S4 (ストロンチウムチオガレート)、誘電体材料としてSrTiO3 (チタン酸ストロンチウム)等の薄膜を成膜する際には、Sr等のアルカリ土類金属の原料として、有機錯体が用いられる。これは、ハロゲン化物に比べてガス化温度が低く、200℃程度でガス化が可能だからである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者等は、アルカリ土類金属の有機錯体を原料として気相成長を行うために、図10に示す構成の原料ガス化室300を反応炉外に設け、この原料ガス化室300から原料ガスを反応炉内に供給し、反応炉内に配置された基板上に成膜を行うことを検討した。
【0004】
この図10に示す原料ガス化室300は、原料ユニット加熱ボックス301を有し、その内部において、有機錯体の固体原料が充填された原料容器302を配管303、304に脱着可能に固定(接続)し、原料容器302内でガス化した原料をキャリアガスにより反応炉内に供給するようにしたものであって、305、306は手動遮断弁、307、308は遠隔操作が可能な遮断弁、309は原料容器302をバイパスしてキャリアガスを通過させるためのバイパスラインに設けられた遮断弁である。なお、上記した有機錯体は、水分に対して敏感で、空気に触れると直ちに分解するため、有機錯体の固体原料を原料容器内に充填する場合、原料容器を装置から取り外して、不活性ガス雰囲気下で行わねばならず、原料容器は取り扱いが可能な大きさにしている。
【0005】
本発明者等が、図10に示す原料ガス化室300を用いて成膜を行ったところ、以下に示す問題があることが判明した。すなわち、成膜回数が多くなると原料容器302内の原料が少なくなるため、原料容器302を原料ユニット加熱ボックス301から取り外して原料容器302内に固体原料を充填し、再度、原料ユニット加熱ボックス301内に設置する必要があるが、この原料容器302の設置直後においては、原料の加熱温度が安定しないため、反応炉に原料ガスを安定して供給することができず、成膜速度が安定しないという問題がある。
【0006】
また、アルカリ土類金属の有機錯体のような原料は、分解温度が低いため、原料の加熱温度を上げてガス供給量を増加させるには限界があり、このため成膜速度を速くすることができないという問題もある。
本発明は上記問題に鑑みたもので、成膜速度を安定化させることを第1の目的とする。
【0007】
また、反応炉へのガス供給量を増加させて成膜速度を向上させることを第2の目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、原料ガス化容器(102)内の液体原料をガス化して反応炉(10)内に供給し、この反応炉(10)内に配置された基板上に成膜を行う気相成長方法であって、固体原料が充填された原料充填容器(111)を原料ガス化容器(102)の上方に脱着可能に固定し、原料充填容器(111)内で充填された固体原料を液体原料にし、この液体原料を原料充填容器(111)から原料ガス化容器(102)内に重力を用いて随時充填し得るようにしたことを特徴としている。
【0009】
このように原料ガス化容器(102)内に液体原料を随時充填し得るようにすることによって、原料ガス化容器(102)内の原料充填量をほぼ一定に保つようにすることができ、反応炉(10)に原料ガスを安定して供給できるため、成膜速度を安定化させることができる。
また、原料充填容器(111)から原料ガス化容器(102)に液体原料を移し変えるようにしているため、原料ガス化容器(102)としては液体原料の表面積が大きくなるものを用いることが可能になり、この場合には、原料ガス化容器(102)内でガス化する量を多くすることができるため、成膜速度を向上させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明においては、原料充填容器(111)から原料ガス化容器(102)内に液体原料を充填するときに、原料充填容器(111)内の圧力と原料ガス化容器(102)内の圧力の差を解消することを特徴としている。従って、液体原料は重力方向に落下しやすくなり、原料充填容器(111)から原料ガス化容器(102)への充填を容易にすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明においては、原料ガス化容器(102)に遮断弁(113、114)付きの原料供給配管(112)が設けられており、有機錯体の固体原料が充填された原料充填容器(111)を原料供給配管(112)に脱着可能に固定し、原料充填容器(111)内で充填された固体原料を液体原料にし、遮断弁(113、114)を開状態にして液体原料を原料充填容器(111)から原料ガス化容器(102)内に随時充填し得るようにしたことを特徴としている。
【0012】
この発明においても請求項1に記載の発明と同様の効果を奏し得る。
請求項4に記載の発明においては、原料充填容器(111)から原料ガス化容器(102)内に液体原料を充填する前に、原料供給配管(112)内を真空引きすることを特徴としている。従って、原料充填容器(111)から原料ガス化容器(102)内に液体原料を充填する際に、有機錯体の液体原料が空気などに触れて分解するなどの不具合をなくすことができる。
【0013】
請求項5に記載の発明においては、原料充填容器(111)を原料供給配管(112)から取り外す前に、原料充填容器(111)から原料供給配管(112)を介して前記原料ガス化容器(102)にパージ用のガスを供給することを特徴としている。従って、原料供給配管(112)および遮断弁(113、114)内部に付着した原料が空気などに触れて分解し、その分解物が次回の充填に原料ガス化容器(102)内に充填されるのを防止することができる。
【0014】
請求項6に記載の発明においては、原料ガス化容器(102)として偏平な容器を用い、この容器内で液体原料の表面を平坦化した状態でガス化を行うようにしたことを特徴としている。このような偏平な容器を用いることにより、その重力方向での熱分布を偏りを少なくすることができ、原料ガス化容器(102)内でガス化する量を一定にすることができるため、成膜速度を安定化させることができる。
【0015】
請求項7乃至15に記載の発明においては、上記した請求項1乃至6の気相成長方法を適切に実施できる気相成長装置を提供することができる。
なお、請求項14に記載のように、原料ガス化容器(102)を複数の容器(1021〜1023)に分割したり、請求項15に記載のように、原料ガス化容器(102)内を複数の部屋に分割するようにすれば、原料ガス化容器(102)内をキャリアガスが全体的に通過することになるため、反応炉(10)に供給する原料ガスの供給量を増加させ、成膜速度を向上させることができる。
【0016】
なお、上記した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。
この実施形態では、気相成長法を用いてセリウム添加の硫化ストロンチウム(SrS:Ce )薄膜を形成するものを示している。
図2に気相成長装置の概略構成図を示す。気相成長装置は、反応炉10と、この反応炉10に対し排気を行う排気系、原料供給を行う原料供給系からなっている。
【0018】
気相成長を行う場合、基板11を、下向きに膜が形成できるように基板ホルダー12にセットし、回転数を可変にできる基板回転機構13により基板11の中心を軸にして基板11を回転させる。例えば、15回転/分で基板11を回転させる。また、基板加熱ヒータ14によって基板ホルダー12の背面から基板11を加熱し、基板10を例えば500℃で加熱する。
【0019】
排気系においては、膜形成前に反応炉10内を高真空にするために、ターボ分子ポンプ15およびロータリーポンプ16を使用して、例えば5×10-7Torrになるまで、真空引きを行う。また、薄膜形成中は、メカニカルブースターポンプ17、ロータリーポンプ18にてガスを排気し、反応炉10内の圧力を例えば5Torrになるように自動圧力制御器19にて制御する。
【0020】
反応炉10内へのSr原料ガスの供給は、流量調節器(MFC)20にて130ccm の流量に調節したキャリアガスにより、原料ガス化室100内に発生したSr(C11H19O2 )2 (ジピバロイルメタン化ストロンチウム)の蒸気ガスを供給配管21に輸送して行う。また、添加剤として用いるためのCe 原料ガスは、流量調節器22にて65ccm の流量に調節したキャリアガスにより、原料ガス化室200内に発生したCe (C11H19O2 )3 (ジピバロイルメタン化セリウム)の蒸気ガスを供給配管21に輸送して行う。また、ガス化原料である硫化水素(H2 S)の供給は、H2 Sボンベ23から流量調整器24を通して行う。上記したキャリアガスとしては、Ar(アルゴン)等の不活性ガスあるいはN2 (窒素)などを用いることができる。
【0021】
なお、原料ガス化室100としては、後述する図1に示す構成のものを用い、Sr(C11H19O2 )2 の原料を原料ガス化室100にて240±1℃に保温して、ガス化したSr(C11H19O2 )2 を反応炉10内に供給する。また、原料ガス化室200としては、図10に示すものを用いる。これは、Ceは添加剤として用いるため、成膜回数が多くても原料容器を取り替える頻度が非常に少ないからである。この場合、固定原料であるCe (C11H19O2 )3 を原料容器に充填し、原料ガス化室200にて130℃±1℃に保温し、ガス化したCe (C11H19O2 )3 を反応炉10内に供給する。
【0022】
このようにして基板11上にSrS:Ce 薄膜を形成することができる。
次に、Sr原料ガスを供給するための原料ガス化室100について説明する。図1に、その模式的構成を示す。
原料ガス化室100は、原料ユニット加熱ボックス101を有し、この原料ユニット加熱ボックス101内に、原料ガス化容器102が固定して設置されている。この原料ガス化容器102は、水平方向の断面積が一定(1.2×106 mm2 )で、深さが50mmの偏平の容器となっており、その中にSr(C11H19O2 )2 の液体原料が充填される。
【0023】
この原料ガス化容器102の上部には、原料ガスを輸送するためのキャリアガスを導入および排出するための配管103、104が設置され、配管103、104には、手動遮断弁105、106および遠隔操作が可能な空気作動遮断弁107、108がそれぞれ設けられている。また、原料ガス化容器102をバイパスしてキャリアガスを通過させるためのバイパスライン109には、遮断弁110が設けられている。なお、原料ガス化容器102から配管104を通って原料ガスが反応炉10内に供給される。
【0024】
原料ガス化容器102の上方には、原料充填容器111が脱着可能に固定される。この原料充填容器111は、円柱と円錐をつなぎ合わせた形状となっており、円錐の頂点には原料供給配管112が接続される。なお、原料充填容器111は、内容積2.5×105 mm3 で、その中に常温で固体の有機錯体であるSr(C11H19O2 )2 が充填される。そして、この原料充填容器111内でその固体原料は液体原料にされ、この液体原料は原料供給配管112を通って原料ガス化容器102内に充填される。
【0025】
また、原料充填容器111と原料ガス化容器102を接続する原料供給配管112には、原料供給遮断弁113と原料導入遮断弁114が取り付けられており、原料ガス化容器102と原料充填容器111の圧力調整ライン115には、圧力抜き遮断弁116、117が取り付けられている。また、遮断弁113と114の間の配管、および遮断弁116と117の間の配管を真空に引くための配管118には、遮断弁119、120が取り付けられている。
【0026】
さらに、原料充填容器111から原料ガス化容器102に、不活性ガスまたはN2 ガスを導入するためのパージガスライン121が設けられており、このパージガスライン121にはパージガス遮断弁122が取り付けられている。
なお、原料ユニット加熱ボックス101は、260℃までの温度で±1℃の精度で加熱し、温度を保持できるようになっており、この原料ユニット加熱ボックス101の上下左右前後の面のうち1ヶ所または2ヶ所に、複数個の空気強制循環器123が設置され、原料ユニット加熱ボックス101内の温度を均一化させるようにしている。
【0027】
また、原料ユニット加熱ボックス101は、その前面が開閉できるようになっており、これによって原料充填容器111を原料ユニット加熱ボックス101内に脱着可能に設置することができる。
次に、上記構成を用いて、原料を充填する方法について説明する。
まず、常温で固体のSr(C11H19O2 )2 を予めアルゴン雰囲気下において原料充填容器111内に原料充填口111aから充填する。そして、Sr(C11H19O2 )2 が充填された原料充填容器111を、原料ユニット加熱ボックス101内の所定の位置に設置し、配管112、115、121と接続する。このとき、原料ユニット加熱ボックス101内の各遮断弁を閉状態にしておく。
【0028】
この後、原料充填容器111と原料ガス化容器102を連結する配管112、113における遮断弁113と114の間、および遮断弁116と117の間の空気を抜くため、ガス抜き遮断弁119、120を開放し、1Torr以下になるまで真空引きを行う。真空度の確認は、図示しない圧力計にて確認する。この真空引き後、ガス抜き遮断弁119、120を閉じて、上記した真空状態を維持する。
【0029】
次に、原料ユニット加熱ボックス101内を205±1℃に加熱保持する。固体のSr(C11H19O2 )2 の融点は、おおよそ200℃であるため、原料ユニット加熱ボックス101内を上記した加熱温度にすることによって、原料充填容器111内に充填したSr(C11H19O2 )2 を液化することができる。
この後、原料ガス化容器102の圧力抜き遮断弁116と117を開放する。このことにより原料ガス化容器102内の圧力と原料充填容器111内の圧力が等しくなり、原料は重力方向に落下しやすくなる。そして、原料ガス化容器102の原料導入遮断弁114、および原料充填容器111の原料供給遮断弁113を開放し、原料充填容器111から原料ガス化容器102内に液体原料を重力により移動させる。その際、図3に示すように、原料ガス化容器102内の原料注入管112aの先端を尖らせることによって、効率よく液体原料を原料ガス化容器102内に充填することができる。
【0030】
このようにしてSr(C11H19O2 )2 の液体原料を原料充填容器111から原料ガス化容器102内に充填することができる。
なお、成膜を行う前までに、原料充填容器111に固体原料を数回(例えば3回)充填し、それを液化して原料ガス化容器102内に移し変え、原料ガス化容器102内の液体原料の充填量を所定量にしておく。そして、充填した液体原料を、再度220℃に加熱して、液体原料の表面を平坦化する。
【0031】
この後、原料ユニット加熱ボックス101内を240±1℃に保温して、ガス化したSr(C11H19O2 )2 を反応炉10内に供給し、図2に示す気相成長装置を用いて基板11上にSrS:Ce薄膜を形成する。
なお、Sr(C11H19O2 )2 を反応炉10内に供給することによって、原料ガス化容器102内の液体原料は消費されていくが、遮断弁113、114の開閉操作によって原料充填容器111から原料ガス化容器102内に随時充填することができ、原料ガス化容器102内の原料充填量をほぼ一定に保つようにすることができる。なお、遮断弁113、114は、手動操作で開閉するものの他、遠隔操作によって開閉するようにすることもできる。
【0032】
ここで、Sr原料を反応炉10に供給する原料ガス化室100として、図1に示す構成のものを用いた場合(以下、実施形態の場合という)と、図10に示すものを用いた場合(以下、比較例の場合という)の成膜速度の比較検討を行った結果を図4に示す。なお、原料ガス化室100以外の構成は、図1に示すものと同じである。
【0033】
図4において、縦軸はSrS:Ce薄膜の成膜速度、横軸はSrS:Ce薄膜の成膜回数を示している。また、図中の黒丸は実施形態の場合を示し、図中の白丸は比較例の場合を示し、図中の充填回数(1回、2回、3回)は、原料を充填した回数を示している。なお、この充填において、実施形態の場合には、原料充填容器111から原料ガス化容器102内に充填を行ったことを意味し、比較例の場合には、一旦、原料ユニット加熱ボックスから取り外し、内部を洗浄してから再度原料を充填し、原料ユニット加熱ボックス内に設置したことを意味している。この比較例の場合、原料容器内に原料が残っていても原料が少なくなるとガス供給量が変化するため、図4に示すタイミングで原料の充填を行うようにしている。
【0034】
図4に示すように、両者の成膜速度を比較すると、実施形態の場合には、最初から最後(原料が無くなる直前)まで、原料の充填回数によらず成膜速度に変化がほとんどなかった。これに対し比較例の場合では、成膜速度が安定するまでに10バッチ程度の成膜回数が必要であり、さらに充填毎に成膜が変化し、最大で2.5倍の違いが確認された。
【0035】
従って、本実施形態の場合の方が、成膜を行う場合に、再現性および長期安定性に優れている。
また、本実施形態においては、原料ガス化容器102内を偏平容器としているため、その重力方向(容器の上部と下部)での熱分布を偏りを少なくすることができ、原料ガス化容器102内でのガス化量を一定にすることができる。
【0036】
図5に、原料ガス化容器102の容器深さとSrS:Ce 薄膜の成膜速度の関係を示す。この場合、水平方向の断面積を一定とし深さを20mmから10mm刻みで100mmまで変化させた容器を準備し、それぞれの容器を用いて同じ条件で10バッチずつSrS:Ce 薄膜の成膜を行った結果を示している。
図中の黒丸は10バッチ行った成膜における平均膜厚を示しており、黒丸の上の線は10バッチ中の最大値、下の線は10バッチ中の最小値を表している。原料ガス化容器102の深さが深くなると、容器内の温度分布が悪化し、Sr原料ガス供給量が変化し易くなる。その結果、SrS:Ce 薄膜成膜速度が不安定になる。図5の結果から、容器深さが50mm以下であれば、安定して成膜できることが分かる。
【0037】
なお、上記した実施形態において、Sr(C11H19O2 )2 を原料充填容器111から原料ガス化容器102に移し変える際、原料充填容器111と原料ガス化容器102の間の原料供給配管112、および遮断弁113、114を原料が通過するため、原料供給配管112および遮断弁113、114の内部にSr(C11H19O2 )2 が付着する。原料を付着させたまま大気に開放すると、Sr(C11H19O2 )2 の分解物が形成され、次回の充填時に分解物が原料と同時に、原料ガス化容器102内に充填されることになる。
【0038】
このため、本実施形態では、原料充填容器111を原料ユニット加熱ボックス101から取り外す前に、Sr(C11H19O2 )2 が分解されないパージガス、例えばN2 や不活性ガスにて、原料充填容器111と原料ガス化容器102の間の原料供給配管112、および遮断弁113、114をパージし、内面に付着した原料を除去するようにしている。
【0039】
具体的には、開放状態にあった原料充填容器111の圧力抜き遮断弁117を閉じ、同時にガス抜き遮断弁120を開放する。次に、パージガス遮断弁125を開放し、パージガスライン121から、パージガスを原料充填容器111に500cc/min 供給し、それを1時間継続した。
以上の操作により、原料充填容器111と原料ガス化容器102間の原料供給配管112および遮断弁113、114に残留したSr(C11H19O2 )2 を、完全に原料ガス化容器102内に移し変えることができる。
【0040】
この後、パージガス遮断弁125を閉じて、パージガスの供給を停止し、次に遮断弁113、114、116、117を順に閉じ、最後に原料充填容器111を、配管112、115、121との間で接続を外し、原料ユニット加熱ボックス101から取り外す。
なお、上記した実施形態では、液体原料を原料充填容器111から原料ガス化容器102に重力だけで移動させるものを示したが、重力に加え他の力を作用させて原料を移動させるようにしてもよい。例えば、原料充填容器111を原料ガス化容器102に対して陽圧になるように圧力差をつけて原料を移動させる、あるいは原料充填容器111から原料ガス化容器102に不活性ガスまたはN2 ガスを流し、原料を押し出すようにして移動させるようにしてもよい。
【0041】
また、SrS:Ce 薄膜成膜速度を向上させるためには、原料ガス化容器102から反応炉10内への原料の供給量を増加させる必要がある。この場合、図6に示すように、原料ガス化容器102を複数に分割(図では1021、1022、1023の3つに分割)し、配管103から原料ガス化容器1021→1022→1023の方向にキャリアガスを導入して原料ガスを配管104から排出するようにすれば、効率よく原料ガスの排出ができるため、Sr原料の供給量を増加させることができる。
【0042】
また、図7に示すように、分割した原料ガス化容器1021、1022、1023のそれぞの一端に配管103からキャリアガスを導入し、それぞれの他端から配管104に原料ガスを排出するようにしても、Sr原料の供給量が増加させることができる。なお、図6、図7に示す場合において、分割した原料ガス化容器1021、1022、1023のそれぞれの間は、図示しない配管で連通されており、原料充填容器111から原料ガス化容器1021、1022、1023のいずれか1つに液体原料が充填されるようになっている。
【0043】
また、図8に示す原料ガス化容器102の平面図のように、原料ガス化容器102内をしきり102aによって複数の部屋に分割し、原料ガス化容器102内の一端からキャリアガスを導入し、しきり102aで区分けされた各部屋を通って原料ガス化容器102内の他端からキャリアガスを排出するようにしてもSr原料の供給量が増加させることができる。この場合、原料ガス化容器102を円柱状にし、図9に示すようにしきり102aを設けることもできる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に示すようなSrS薄膜等の2元素から形成される物質以外に、SrTiO3 、CaGa2 S4 等の3元素からなる薄膜についても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる原料ガス化室の模式的構成図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる気相成長装置の概略構成図である。
【図3】図1中の原料ガス化容器の内部構成を示す図である。
【図4】図2に示す気相成長装置を用いて成膜を行った際の、成膜回数および原料充填回数に対する薄膜成膜速度の関係を示す図である。
【図5】図2に示す気相成長装置を用いて成膜を行った際の、原料ガス化容器102の深さに対する薄膜成膜速度の関係を示す図である。
【図6】図1に示す原料ガス化室100の他の実施形態を示す図である。
【図7】図1に示す原料ガス化室100のさらに他の実施形態を示す図である。
【図8】図1に示す原料ガス化容器102の他の実施形態を示す図である。
【図9】図1に示す原料ガス化容器102のさらに他の実施形態を示す図である。
【図10】本発明者等が先に検討を行った原料ガス化室の構成を示す図である。
【符号の説明】
10…反応炉、11…基板、12…基板ホルダー、100…原料ガス化室、
101…原料ユニット加熱ボックス、102…原料ガス化容器、
111…原料充填容器。
Claims (15)
- 原料ガス化容器(102)内の液体原料をガス化して反応炉(10)内に供給し、この反応炉(10)内に配置された基板上に成膜を行う気相成長方法であって、
固体原料が充填された原料充填容器(111)を前記原料ガス化容器(102)の上方に脱着可能に固定し、
前記原料充填容器(111)内で前記充填された固体原料を液体原料にし、
この液体原料を前記原料充填容器(111)から前記原料ガス化容器(102)内に重力を用いて随時充填し得るようにしたことを特徴とする気相成長方法。 - 前記原料充填容器(111)から前記原料ガス化容器(102)内に前記液体原料を充填するときに、前記原料充填容器(111)内の圧力と前記原料ガス化容器(102)内の圧力の差を解消することを特徴とする請求項1に記載の気相成長方法。
- 原料ガス化容器(102)内の液体原料をガス化して反応炉(10)内に供給し、この反応炉(10)内に配置された基板上に成膜を行う気相成長方法であって、
前記原料ガス化容器(102)には遮断弁(113、114)付きの原料供給配管(112)が設けられており、
有機錯体の固体原料が充填された原料充填容器(111)を前記原料供給配管(112)に脱着可能に固定し、
前記原料充填容器(111)内で前記充填された固体原料を液体原料にし、
前記遮断弁(113、114)を開状態にして前記原料充填容器(111)から前記原料ガス化容器(102)内に前記液体原料を随時充填し得るようにしたことを特徴とする気相成長方法。 - 前記原料充填容器(111)から前記原料ガス化容器(102)内に前記液体原料を充填する前に、前記原料供給配管(112)内を真空引きすることを特徴とする請求項3に記載の気相成長方法。
- 前記液体原料の充填後において前記原料充填容器(111)を前記原料供給配管(112)から取り外す前に、前記原料充填容器(111)から前記原料供給配管(112)を介して前記原料ガス化容器(102)にパージ用のガスを供給することを特徴とする請求項3又は4に記載の気相成長方法。
- 前記原料ガス化容器(102)は偏平な容器であって、この容器内で前記液体原料の表面を平坦化した状態で前記ガス化を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の気相成長方法。
- 原料ガス化室(100)から液体原料の蒸気ガスを反応炉(10)内に供給し、この反応炉(10)内に配置された基板上に成膜を行う気相成長装置であって、
前記原料ガス化室(100)は、
前記液体原料が充填される原料ガス化容器(102)と、
この原料ガス化容器(102)にキャリアガスを導入して前記液体原料の蒸気ガスを前記反応炉(10)内に供給する手段(103〜108)と、
前記原料ガス化容器(102)に設けられた遮断弁(113、114)付きの原料供給配管(112)とを備え、
固体原料が充填された原料充填容器(111)が前記原料ガス化容器(102)の上方において前記原料供給配管(112)に脱着可能に固定されるようになっており、
前記原料充填容器(111)内で前記充填された固体原料を液体原料にし、前記遮断弁(113、114)を開いて前記原料充填容器(111)から前記原料ガス化容器(102)内に前記原料供給配管(112)を介し前記液体原料を重力を用いて随時充填し得るようにしたことを特徴とする気相成長装置。 - 前記原料充填容器(111)内の圧力と前記原料ガス化容器(102)内の圧力の差を解消する手段(115〜117)を備えたことを特徴とする請求項7に記載の気相成長装置。
- 前記圧力の差を解消する手段(115〜117)は、前記原料充填容器(111)と前記原料ガス化容器(102)の間に設けられた遮断弁(116、117)付きの配管(115)であることを特徴とする請求項8に記載の気相成長装置。
- 原料ガス化室(100)から液体原料の蒸気ガスを反応炉(10)内に供給し、この反応炉(10)内に配置された基板上に成膜を行う気相成長装置であって、
前記原料ガス化室(100)は、
前記液体原料が充填される原料ガス化容器(102)と、
この原料ガス化容器(102)にキャリアガスを導入して前記液体原料の蒸気ガスを前記反応炉(10)内に供給する手段(103〜108)と、
前記原料ガス化容器(102)に設けられた遮断弁(113、114)付きの原料供給配管(112)とを備え、
有機錯体の固体原料が充填された原料充填容器(111)が前記原料供給配管(112)に脱着可能に固定されるようになっており、
前記原料充填容器(111)内で前記充填された固体原料を液体原料にし、前記遮断弁(113、114)を開いて前記原料充填容器(111)から前記原料ガス化容器(102)内に前記原料供給配管(112)を介して前記液体原料を随時充填し得るようにしたことを特徴とする気相成長装置。 - 前記原料供給配管(112)内を真空引きする手段(118〜120)を有することを特徴とする請求項10に記載の気相成長装置。
- 前記原料充填容器(111)にパージガスを供給する手段(121、122)が設けられていることを特徴とする請求項10又は11に記載の気相成長装置。
- 前記原料ガス化容器(102)は、偏平な容器であることを特徴とする請求項7乃至12のいずれか1つに記載の気相成長装置。
- 前記原料ガス化容器(102)は、前記液体原料が連通するように複数の容器(1021〜1023)に分割されており、前記キャリアガスが、分割された複数の容器(1021〜1023)を通過するようになっていることを特徴とする請求項7乃至13のいずれか1つに記載の気相成長装置。
- 前記原料ガス化容器(102)内が、複数の部屋に分割され、前記キャリアガスが、分割された複数の部屋を通過するようになっていることを特徴とする請求項7乃至13のいずれか1つに記載の気相成長装置。
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