JP3684641B2 - インクジェット記録シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インクを用いて記録を行うインクジェット記録シートに関するものであり、優れたインク吸収性と高い光沢性を両立しながら高品位画像を形成できるインクジェット記録シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録シートに付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有している。この方式で従来から問題となっていたノズルの目詰まりとメンテナンスについては、インク及び装置の両面から改良が進み、現在では各種プリンター、ファクシミリ、コンピューター端末等、さまざまな分野に急速に普及している。
【0003】
このインクジェット記録方式で使用される記録シートとしては、印字ドットの濃度が高く、色調が明るく鮮やかであること、インクの吸収が早く印字ドットが重なった場合に於いてもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、印字ドットの横方向への拡散が必要以上に大きくなく、かつ周辺が滑らかでぼやけないこと等が要求される。
【0004】
これらの要求を達成するために、例えば特開昭52−53012号には、低サイズの原紙に表面加工用の塗料を湿潤させてなるインクジェット記録シートが開示されている。又、特開昭55−5830号には、支持体表面にインク吸収性の塗層を設けたインクジェット記録シートが、又特開昭55−51583号及び特開昭56−157号には、被覆層中の顔料として非膠質シリカ粉末を使った例等が開示されている。
【0005】
しかし、一般にインク吸収性のあるインク受容層が、インクを吸収し保持するための空隙を多く有する場合には、空隙の多いインク受容層が空気との界面や塗膜表面のミクロな凹凸を多く有することになり、インク受容層への入射光が散乱されたり、透過が妨げられるために、光沢が出にくくなったり不透明になりやすい。更に、空隙に浸透したインクに光が到達しにくくなるため画像が白っぽくなり、色再現性及び色濃度が低下する等の欠点を有しており、空隙の多いインク受容層で高い光沢性や透明性を維持しつつ、色再現性や色濃度の高い画像を得るのは困難であった。
【0006】
特開平4−41289号にはセルロースビーズ、特開平4−235086号にはポリスチレンビーズを添加した例が開示されているが、これらは一般に粒径が大きく光沢性、透明性という観点から多量には添加できず、インク受容性に対する効果も不十分であった。
【0007】
特開昭59−222381号には、光沢性、透明性に優れ、耐水・耐光性が改良された記録シートとして、複数の異なる顔料層、そして最表層が熱可塑性有機高分子微粒子を含有する層からなる記録シートの例が開示されている。しかし、このインク受容層は元々不透明であるため印字後に有機溶媒や熱を用いて最表層を溶解、皮膜化する処理が不可欠である。又、特開昭63−178074号にはスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスとコロイダルシリカ、特開平6−93122号にはブチルアクリレート−2−エチルヘキシルアクリレート共重合体ラテックスとコロイダルシリカよりなる記録シートの例が開示されている。しかしながら、上記特許のいずれもフルカラー用インクジェット記録シートとしてはインク吸収性が不十分であり、更にブロッキング等の問題もあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水性インクによる印字において、高いインク吸収性を有し、ブロッキングや環境湿度下のカールが改善され、かつ光沢度が高く、高品位の画像形成を可能にしたインクジェット記録シートを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、
親水性バインダーの重量に対して、2〜8倍の重量のポリマーラテックス粒子を有する親水性バインダー層を下層にして、少なくとも1層の親水性バインダー層とともに同時重層塗布により支持体上に設けてなり、且つ該下層の親水性バインダー層の塗布固形分量が10〜40g/m2であることを特徴とするインクジェット記録シート、該少なくとも1層の親水性バインダー層が微粒子を含有しない親水性バインダー層であること、上記ポリマーラテックス粒子を有する親水性バインダー層が、最表層の親水性バインダー層に隣接して設けられていること、上記親水性バインダーが、可逆的にゾルゲル変換可能なバインダーであること、及び支持体上の全親水性バインダー層に含まれる総バインダー量の40重量%以上が、ポリビニルアルコールであること、
により達成された。
【0010】
即ち本発明者らは、優れたインク吸収性を有しながら光沢性に不十分な粒子含有親水性バインダー層上に、少なくとも1層の親水性バインダー層を積層することで不十分な光沢性の問題を解消できると考え、特に粒子として親水性バインダーと屈折率の大差ないポリマーラテックス粒子を前記バインダーに対し特定量添加して乱反射を抑え、しかも親水性バインダー層表面に存在する上記粒子により発生するブロッキング等を、上層に積層した少なくとも1層の親水性バインダー層で防止することにより、良好な光沢性を有するインクジェット記録シートが得られることを見いだし本発明に至ったものである。
【0011】
以下本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明のインクジェット記録シートは、親水性バインダーの重量に対して、2〜8倍の重量のポリマーラテックス粒子を有する親水性バインダー層を下層にして、少なくとも1層の親水性バインダー層とともに支持体上に設けてなることを特徴とするものである。以下、支持体上に設けた親水性バインダー層を総称してインク受容層ということもある。
【0013】
上記ポリマーラテックス粒子は、各種ポリマーの水分散体の形態で用いることができる。具体的には、アクリル系ポリマー、エステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、オレフィン系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、アミド系ポリマー及びこれらの変性物、共重合体等の水分散体を用いることができる。これらの中でアクリル系ポリマー、オレフィン系ポリマー、ウレタン系ポリマーの使用が好ましく、インク吸収性、層(塗膜)の塗膜強度の点からアクリル系ポリマー、オレフィン系ポリマーが特に好ましい。
【0014】
オレフィン系ポリマーとしてはビニルモノマー−ジオレフィンからなり、ビニルモノマーとしては、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等が好ましく用いられ、ジオレフィンとしては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が好ましく用いられる。これら成分に加え、不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸もしくはこれらのアルキルエステル、アクロレイン、メタクロレイン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート等の架橋可能な成分を加えるのが良い。ジオレフィンの含有量として好ましくは、10〜60重量%程度である。
【0015】
アクリル系ポリマーとしては、例えばC1〜C18の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシル基、グリシジル基、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有基等のアクリル酸あるいはメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、C1〜C18の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基のN−又はN,N−アクリルアミド、アクリル酸あるいはメタクリル酸及びそれらの塩、スチレンスルホン酸やビニルスルホン酸及びそれらの塩、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸及びそれらの塩、無水イタコン酸、無水マレイン酸等の酸無水物、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、ビニルメチルエーテル、酢酸ビニル、スチレン等との共重合体からなる。
【0016】
通常これらのポリマーラテックス粒子は乳化重合法によって得られる。そこで用いられる界面活性剤、重合開始剤等については、常法で用いられるものを用いれば良い。ポリマーラテックス粒子の合成法に関しては、米国特許第2,852,368号、同2,853,457号、同3,411,911号、同3,411,912号、同4,197,127号、ベルギー特許第688,882号、同691,360号、同712,823号、特公昭45−5331号、特開昭60−18540号、同51−130217号、同58−137831号、同55−50240号等に詳しく記載されている。
【0017】
ポリマーラテックス粒子の平均粒径は、0.005〜2.0μm程度、好ましくは0.01〜0.8μmである。又、ポリマーラテックス粒子のガラス転移温度(Tg)には、特に限定は無い。折り曲げ強度等の点から、ガラス転移温度が低く柔軟なものが好ましいが、使用するバインダーの種類やバインダーとの量比、インク吸収性等の関係を考慮して適宜選ぶことができる。
【0018】
上記親水性バインダーとしては、公知のものが使用できる。しかし、親水性バインダーを相当量支持体に塗布する場合にはその生産量や光沢性などから、可逆的にゾルゲル変換可能なバインダー、すなわちバインダーの水溶液が低温ではゲル化(固化)するが、より高温状態で溶解する性質を有するものが有利であり、その様なバインダーとしては、ゼラチン、アミノ基不活性化ゼラチン、寒天等が挙げられ、特にゼラチン又はアミノ基不活性化ゼラチンが好ましい。ゼラチンとしては酸処理ゼラチン及びアルカリ処理ゼラチンが用いられる。
【0019】
又、アミノ基不活性化ゼラチンとは上記ゼラチンのアミノ基を化学的に不活性化したゼラチンであり、例えば米国特許2,691,582号、同2,614,928号及び同2,525,753号等に記載されており、例えばアシル化ゼラチン、脱アミノ化ゼラチン、及びイソシアネート類の付加したゼラチン等が挙げられる。好ましいアミノ基不活性化ゼラチンはアシル化ゼラチン及びイソシアネート類の付加したゼラチンである。
【0020】
アシル化ゼラチンはアシル化剤により通常のゼラチンを処理したゼラチンであり、例えばアセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ベンゾイル化ゼラチン等が挙げられる。
【0021】
又、イソシアネート類の付加したゼラチンとしては、フェニルイソシアネート付加ゼラチンが代表的である。
【0022】
上記アミノ基不活性化ゼラチンにおいて、アミノ基の封鎖されている割合は10〜100%が好ましい。上記ゼラチン及びアミノ基不活性化ゼラチンはそれぞれ単独であるいは併用しても良い。
【0023】
親水性バインダーに、可逆的なゾルゲル変換可能なバインダーとしてゼラチン、アミノ基不活性化ゼラチン等を使用した場合は、インク吸収性、環境湿度下でのカール低減の観点から、ポリビニルアルコールを併用することが好ましく、その場合、インク受容層のバインダー総重量に対して、40重量%以上がポリビニルアルコールであることが好ましい。
【0024】
ポリビニルアルコールとしては、鹸化度、重合度には特に限定はないが、塗布液粘度への影響等が少ないことから、重合度1000以下であることが好ましい。又、鹸化度は、インク受容層の印字後の耐水性等の点で高い方が好ましい。
【0025】
上記ポリビニルアルコールは必要に応じてカチオン、カルボン酸、珪素変性等を施したものでも構わない。
【0026】
更に親水性バインダーとして、例えば、でんぷん又はその誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、デキストリン、デキストラン、アルギン酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール(分子量5000以上)、プルラン、水溶性ガム等公知の天然又は合成親水性ポリマーを併用することができる。
【0027】
本発明においては、最表層(以下、保護層)以外の親水性バインダー層、即ちより下層の親水性バインダー層における親水性バインダーに対するポリマーラテックス粒子の量が重量で2〜8倍含まれることが好ましく、2〜5倍であることがより好ましい。ポリマーラテックスの比率が2倍より小さいとインク吸収性が不十分であり、8倍より大きいとブロッキングや光沢に悪影響をもたらし、又層の皮膜強度の低下等の点で問題を生じることがある。
【0028】
本発明のインクジェット記録シートは、支持体上に、親水性バインダーに対して上記した特定量のポリマーラテックス粒子を有する親水性バインダー層とともに少なくとも1層の親水性バインダー層が積層されている。保護層の親水性バインダー層は表面光沢を維持すること、適度の滑り性やくっつき防止機能を与えること、インクの濡れの制御等が主な目的であり本発明のインクジェット記録シートにおいてはその特性や構成は特に重要である。
【0029】
特に保護層より支持体に近い層にインク吸収性を高めるために無機粒子などの微粒子を添加した場合には光沢が劣化しやすく、保護層の条件は重要である。そのため、適度の滑り性やくっつき防止機能を与えるに必要なマット剤、即ち光沢を劣化させる無機顔料や油滴、あるいは吸湿性の高い素材を多量に添加することは好ましくない。従って、上記ポリマーラテックス粒子を添加する親水性バインダー層は最表層以外の層であることが必要である。
【0030】
支持体上に複数層、特に3層以上の親水性バインダー層を設ける場合、より支持体に近い側に、ポリマーラテックス粒子を有する親水性バインダー層を設けることも可能だが、主にインク吸収性の点から保護層に隣接する層であることが好ましい。保護層の親水性バインダー層の膜厚に特に限定はないが、インク吸収性、光沢性、ブロッキング性を考慮して適宜設定される。
【0031】
本発明のインクジェット記録シートにおけるインク受容層側の親水性バインダー層の塗布固形分量、即ち乾燥塗布量は特に制限はないが、概ね5〜60g/m2が好ましく、10〜40g/m2がより好ましい。なお、記録画像形成後のカールの防止という面からは、なるべく薄く形成するのが良い。
【0032】
又、支持体上に親水性バインダー層を塗設するために必要に応じて設けられる下引き層は、それらが実質的に支持体製造時に塗設される場合は、本発明の親水性バインダーには含まれない。
【0033】
本発明において親水性バインダー層の光沢性、透明性を損なわない範囲の程度に以下の顔料を添加することができる。その顔料としては、公知の白色顔料を1種以上用いることができ、例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、マイカ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サテンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、水酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、スメクタイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0034】
親水性バインダー層には、画像の耐水化剤として特開昭56−84992号のポリカチオン高分子電解質、特開昭57−36692号の塩基性ラテックスポリマー、特公平4−15744号、特開昭61−58788号、同62−174184号等記載のポリアリルアミン、特開昭61−47290号記載のアルカリ金属弱酸塩等を一種以上用いることができる。前記耐水化剤としては、本発明のラテックスポリマー粒子添加層と同一層に添加しても良いし、別層に分けても良い。
【0035】
親水性バインダー層には、更に必要に応じて更にUV吸収剤、酸化防止剤、分散剤、蛍光染料、pH調整剤、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、界面活性剤、増粘剤、架橋剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は2つ以上の機能の添加剤を単一の層に添加しても良く、又同じ機能を果たす添加剤を2層以上に分けても添加しても良い。
【0036】
インク受容層の形成は、得られた塗布液を上記支持体上に塗布、加熱乾燥することにより実施することができる。塗布は、例えばディップコート法、ロールコーティング法、カーテンコート法、ロッドバーコーティング法、エアーナイフコーティング法、スプレーコーティング法あるいは米国特許第2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法等の公知の塗布方法で行うことができる。必要に応じ、米国特許第2,761,791号、同3,508,947号、同2,941,898号及び同3,526,528号、原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)等に記載された方法により2層以上の層も塗布することができる。
【0037】
本発明のインクジェット記録シートを製造するに当たっては、インク受容層側を構成する全ての塗布液を支持体上に同時塗布し、好ましくは冷却固化(いわゆるセット)させた後、水分を蒸発させて乾燥することにより実施することが好ましい。塗布は、好ましくはカーテンコート法あるいは上記米国特許第2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。この際、乾燥時にはセットした塗布液が再溶解しない状態までの条件で加熱することが生産性の観点から好ましい。通常はセット後室温〜30℃の範囲内である程度水分を蒸発させた後で40℃〜50℃に加熱して完全に乾燥させられる。
【0038】
支持体としては、従来公知のものなど特に制限なく利用できる。透明支持体として好適なものとしては、例えばポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料からなるフィルムや板、及びガラス板などを挙げることができ、この中でもOHPとして使用された際輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、約10〜200μmが好ましい。又、透明である必要のない場合に用いる支持体として好ましいものは、例えば一般の紙、合成紙、樹脂被覆紙、布、木材、金属等からなるシートや板、更に上記の透光性支持体を公知の手段により不透明化処理したもの等を挙げることができる。不透明の支持体としては、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。支持体とインク受容層の接着強度を大きくする等の目的で、インク受容層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。更に、本発明の記録シートは必ずしも無色である必要はなく、着色された記録シートであってもよい。
【0039】
【実施例】
以下に本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中で「%」は特に断りのない限り絶乾重量%を示し、添加量は各々インクジェット記録シート1m2当たりの量を示す。
【0040】
実施例1
《インクジェット記録シートの作製》
80g/m2の原紙両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(厚さ130μm、記録面側のポリエチレン層中に7重量%の酸化チタン含有)の記録面側にアルカリ処理ゼラチンを下引層として0.1g/m2塗布乾燥、裏面側にアルカリ処理ゼラチンをバック層として3.9g/m2塗布乾燥して得られた支持体上に以下の構成を有する層を塗設した。塗布は各層の塗布液をスライドホッパー方法により同時塗布した。各塗布液は支持体上に重畳させられた後、約0〜5℃で約20秒間冷却セットさせた後、20〜50℃の範囲の風で急速乾燥し、インクジェット記録シート1を得た。
【0041】
第1層(塗布湿潤膜厚=20μm)
酸処理ゼラチン 1.2g
界面活性剤−1 0.004g
第2層(塗布湿潤膜厚=100μm)
フェニルカルバモイル化ゼラチン*1
/ポリビニルアルコール*2 6/4(重量比) Xg
ポリマーラテックス粒子(A) Yg
界面活性剤−2 0.002g
X+Y=20g
第3層(塗布湿潤膜厚=18μm)
フェニルカルバモイル化ゼラチン*1 1.0g
ポリビニルアルコール*2 1.5g
界面活性剤−3 0.03g
*1:アミノ基封鎖率80%
*2:重合度300、鹸化度88モル%(PVA203:(株)クラレ製)
ポリマーラテックス粒子(A):スチレン−ブタジエンラテックス
(固形分50%:ブタジエン/スチレン/アクリル酸=58/40/2 モノマー量比は重量%)
【0042】
【化1】
【0043】
尚、上記インクジェット記録シート1における第2層のフェニルカルバモイル化ゼラチン/ポリビニルアルコールの添加量Xg、ポリマーラテックス粒子(A)の添加量Ygを表1のように変更してインクジェット記録シート2〜6を作製した。
【0044】
《インクジェット記録シートの評価》
得られたインクジェット記録シートを使用し、以下の項目について、キヤノン株式会社製インクジェットプリンター BJC−600Sを用い、評価パターンを印字し評価した。
【0045】
(1)インク吸収性
イエロー、マゼンタ、シアンの3色を記録した記録用紙を、室温下(20℃、50%RH)に20秒間放置した後、記録画像面に各々のインクジェット記録シートの裏面を重ね合わせ、10cm2当たり5gの荷重をかけ30秒間保持した時に、インクが反対側の記録面に付着するか否かで判断した。
【0046】
○ 全く付着しない
× 明らかに付着する
△ 痕跡状態で付着する
(2)光沢
印字後、1昼夜保存して完全に乾燥させた後、表面光沢を日本電色工業株式会社製変角光沢度計(VGS−1001DP)にて測定した。
【0047】
(3)ブロッキング
10cm角の大きさに断裁したインクジェット記録シートを23℃、80%RH雰囲気下で一昼夜調湿後、インク受容面と裏面が向かい合うように5枚重ね合わせて2kgの荷重をのせ、40℃、80%RH雰囲気下で一週間保存した後の記録シート同士のブロッキングの平均レベルを以下の基準で判定した。
【0048】
◎ かるく剥がれる
○ 少し力を加えると剥がれる
△ 音をたてて剥がれるが、膜剥がれあるいは膜破壊は起こらない
× 完全にくっつき、剥がすとき膜剥がれあるいは膜破壊が起こる
(4)カール
23℃、20%RH及び23℃、80%RHの環境下で48時間放置した後、10cm×10cmのサイズの四隅のカール高さを測定した。
【0049】
上記評価項目の結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1の結果から明らかなように、本発明のインクジェット記録シート1〜4は、良好なインク吸収性、光沢性を維持しながらブロッキングが改良されており、総合的にみて良好であることがわかる。しかしながら、比較例のインクジェット記録シート5はポリマーラテックス粒子の添加量が過多であり、光沢とブロッキングが、又インクジェット記録シート6はインク吸収性が劣化していることがわかる。なお、カールはいずれも実用の範囲であった。
【0052】
実施例2
第2層の親水性バインダー層に含まれるポリマーラテックス粒子を下記に変更した以外は実施例1のインクジェット記録シート2と同様にしてインクジェット記録シート7〜13を作製した。尚、ポリマーラテックス粒子のモノマー量比は重量%を表す。
【0053】
−記録シート7−
ポリマーラテックス(B) スチレン−ブタジエンラテックス(固形分50%:ブタジエン/スチレン/アクリル酸=40/58/2)
−記録シート8−
ポリマーラテックス(C) ポリアクリレートラテックス(固形分30%:スチレン/メタクリル酸グリシジル/アクリル酸ブチル=20/40/40)
−記録シート9−
ポリマーラテックス(D) ポリウレタンラテックス(ポリエチレンテレフタレート系ポリオール:固形分30%)
−記録シート10−
ポリマーラテックス(E) 水分散ポリエステル(イーストマンコダック社製:WDサイズ、固形分30%)
−記録シート11−
第1層、第2層を下記に変更した以外は記録シート7と同様の構成。
【0054】
第1層(塗布湿潤膜厚=20μm)
酸処理ゼラチン 1.2g
ポリマーラテックス(B) 2.4g
界面活性剤−1 0.004g
第2層(塗布湿潤膜厚=100μm)
フェニルカルバモイル化ゼラチン*1 6.0g
ポリビニルアルコール*2 4.0g
界面活性剤−2 0.002g
−記録シート12−
第2層、第3層を下記に変更した以外は記録シート7と同様の構成。
【0055】
第2層(塗布湿潤膜厚=100μm)
フェニルカルバモイル化ゼラチン*1 6.0g
ポリビニルアルコール*2 4.0g
界面活性剤−2 0.002g
第3層(塗布湿潤膜厚=18μm)
フェニルカルバモイル化ゼラチン*1 1.0g
ポリビニルアルコール*2 1.5g
ポリマーラテックス(B) 4.0g
界面活性剤−3 0.03g
−記録シート13−
フェニルカルバモイル化ゼラチン/ポリビニルアルコールの重量比を7/3に変更した以外は記録シート8と同様の構成。
【0056】
*1:アミノ基封鎖率80%
*2:重合度300、鹸化度88モル%(PVA203:(株)クラレ製)
得られたインクジェット記録シート7〜13を実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2の結果から明らかなように、本発明のインクジェット記録シート7〜11及び13は総合的にみて良好なことがわかる。但し、インクジェット記録シート11がややインク吸収性で劣り、ポリマーラテックス粒子は最表層に隣接する層に含有することが好ましいことがわかる。又、インクジェット記録シート13はインク吸収性、光沢性及びブロッキング特性とも良好であったが、23℃、20%RH下でのカールが他ものと比べやや大きかった(インクジェット記録シート13はポリビニルアルコールの重量が全親水性バインダー量の40%未満)。
【0059】
【発明の効果】
以上本発明によれば、従来のインクジェット記録シートでは達成しにくかった鮮やかな表面光沢、良好なインク吸収性を有し、しかもカールが少なく、ブロッキングの起こりにくいインクジェット記録シートを提供することができる。特にフルカラー画像の形成に好適である。
【0060】
本実施例では不透明で光沢のある紙支持体を用いた場合について説明したが、透光性のある支持体を用いることで、スライドやOHPなどの光学機器により記録画像をスクリーン等への投影により観察するもの、カラー印刷のポジ版を作製する際の色分解版、あるいは液晶等のカラーディスプレイに用いるCMF等の透過を利用する用途に好適なインクジェット記録シートを提供することができる。
【0061】
又、本発明の記録シートについて主にインクジェト方式に用いる場合を説明してきたが、インクジェット方式以外にも、水性インクを利用する各種筆記用具やペンプロッタ等の記録機器による記録に好適に利用できる。
Claims (5)
- 親水性バインダーの重量に対して、2〜8倍の重量のポリマーラテックス粒子を有する親水性バインダー層を下層にして、少なくとも1層の親水性バインダー層とともに同時重層塗布により支持体上に設けてなり、且つ該下層の親水性バインダー層の塗布固形分量が10〜40g/m2であることを特徴とするインクジェット記録シート。
- 上記少なくとも1層の親水性バインダー層が微粒子を含有しない親水性バインダー層であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録シート。
- 上記ポリマーラテックス粒子を有する親水性バインダー層が、最表層の親水性バインダー層に隣接して設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録シート。
- 上記親水性バインダーが、可逆的にゾルゲル変換可能なバインダーであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載のインクジェット記録シート。
- 支持体上の全親水性バインダー層に含まれる総バインダー量の40重量%以上が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載のインクジェット記録シート。
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