JP3683622B2 - 給気式呼吸用保護具の面体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、給気式呼吸用保護具の面体に関する。
【0002】
【従来の技術】
有毒ガスが充満した環境や、酸素欠乏の環境での救急活動などに従事する作業者に清浄空気や酸素を供給するための給気式呼吸用保護具は、JIS T 8150、T 8153、T 8155等によって周知である。JIS T 8150は「呼吸用保護具の選択、使用及び保守管理方法」について、JIS T 8153は「送気マスク」について、JIS T 8155は「空気呼吸器」について規定している。給気式呼吸用保護であるこれら送気マスクや空気呼吸器には、顔面を被覆する面体と、面体に取り付けられて面口部内へ清浄空気を供給する供給弁とを備えているものがある。供給弁からは中圧空気導管が延びて、作業者が背負った高圧ボンベ等の給気源に接続している。この供給弁にはデマンド形とプレッシャデマンド形とがあり、デマンド形の弁は吸気時に開いて面口部内に間欠的に給気し、プレッシャデマンド形の弁は面体が着用状態にあるときに吸気、呼気に関係なく給気して面体内を常に陽圧に保つことができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
プレッシャデマンド形の弁には陽圧と常圧との切り替え弁を備えているものがあり、陽圧に設定すると、面体内は常に陽圧となり外部の有毒ガスが面体内に侵入することがない。この弁は常圧に設定するとデマンド形になるから、面体を外すときには常圧に設定し、給気を無駄にすることがないようにその流出を止めておくことができる。ところが、面体の着用を必要とするときの多くは緊急事態のもとであって、面体を外すときに弁の切り替えを忘れ、ボンベの空気を徒らに消費してしまうことがある。
【0004】
この種切り替え弁を備えていないプレッシャデマンド形供給弁を使用した面体や、給気ホースに直結した面体では、給気が常に流出する状態にある。したがって、面体を顔面から外したならば、マニュアル操作で速やかに元栓を閉めなければならない。しかしながら、緊急事態のもとでは、この操作も忘れがちである。
【0005】
そこでこの発明は、給気式呼吸用保護具において、面体を顔面から外すと面体内への給気を自動的に遮断できるようにすることによって、給気の無駄な消費を防ぐことを課題にしている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記課題を解決するために給気式呼吸保護具の面体を前提にしている。
【0007】
かかる前提において、前記面体には、接顔用リップ部が形成されるとともに、前記面体の内部に通じる給気路に開閉可能な給気遮断手段が形成されている。前記面体にはまた、前記面体を着用すると着用者身体の一部に圧接可能であって前記遮断手段と連繋して前記身体との圧接力を介して前記遮断手段を開放状態に保つことが可能な前記遮断手段に対する開放手段が形成されている。前記遮断手段は、前記給気路に形成された弁座に付勢ばねの作用下に当接している開閉弁を含んでいる。前記開放手段は、前記面体内部に形成されているものであって、上端部と下端部とを有しこれら両端部の間において水平方向へ延びる軸に旋回可能に支えられて上下方向へ延びるレバーを含んでいる。前記レバーは、前記上端部において水平方向へ延びる部材に対して前記開閉弁が取り付けられており、前記下端部において水平方向へ延びる部材が前記リップ部の顎当て部に前記面体の内側において下側から当接可能な状態にある。前記面体が着用されて前記顎当て部に前記面体着用者の顎が当接すると、前記レバーは、前記顎当て部を介して前記顎の当接した前記下端部が前記軸を中心に前記面体の下方に向かって旋回する一方、前記上端部が前記面体の上方に向かって旋回して前記付勢ばねを圧縮しながら前記開閉弁を前記弁座から離脱させて前記面体内部への清浄空気の流入を可能にする。
【0008】
【作用】
かかる給気式呼吸用保護具の面体は、非着用状態にあるときに、遮断手段が面体内への給気を止めるように作動する。
【0009】
面体が着用されると、開放手段が着用者の身体、例えば顎に圧接し、その圧接力を介して遮断手段が開放状態となり、面体内への給気が始まる。
【0010】
【実施例】
この発明に係る給気式呼吸用保護具の面体の詳細を添付の図面を参照して説明すると、以下のとおりである。
【0011】
図1は、空気呼吸器1の面体2が着用状態にあるときの斜視図である。空気呼吸器1は、面体2と、面体2の前面に取り付けられたプレッシャデマンド形空気供給弁4と、供給弁4から外へ延びて清浄空気を蓄えたボンベ(図示せず)に接続する中圧空気導管3とを備えている。
【0012】
面体2は軟質ゴム製の本体7と、透明プラスチック製のアイピース8と、前面部分が硬質プラスチックでできた面口部材9とからなり、本体7の周縁には接顔用リップ部7Aと、しめひも10を取り付けるための部材11とがある。面口部材9は、本体7の前面開口部に嵌合し、金属ベルト12で気密かつ抜脱不能に保持されている。図においてアイピース8から透視されるノーズカップ13は、本体7の内側から面口部材9に取り付けられているもので、その自由縁部13Aが着用者の顔面に当接して口と鼻とを覆うことができる。ノーズカップ13には吸気動作で開く第1逆止弁13Bがあり、アイピース8内側の清浄空気をノーズカップ13内へ導入することができる。供給弁4は、連結部材5を介して面口部材9に着脱可能に取り付けられている。供給弁4は、陽圧・常圧の切り替えが可能なもので、Y,Y’方向へ回動可能なノブの指標4Bを標識4Cに合わせるとプレッシャデマンド形となり、標識4Dに合わせるとデマンド形となる。図示の状態にある面体2では供給弁4が自動的に開いており、清浄空気が常時流出してその内部を陽圧に保つことができる。
【0013】
図2は、供給弁4を外し、要部を破断して示す面体2の側面図である。面口部材9は、通気性のグリッド構造からなる前面部16と前面部16から後方へ延びて本体7に嵌合する周壁17とを備え、前面部16のほぼ中央からは供給弁4を着脱可能に取り付けるための筒状部18が本体7内へ延び、その内端上部と周壁17の上方部分との間には本体7の内外の隔壁を兼ねる慣用の伝声器20を備えている。前面部16の左右方向中央部の下方には本体7内方への凹部24があり、その内端にはノーズカップ13の下端部が気密状態でつながっている。ノーズカップ13は、上方部分が伝声器20の周縁部に気密状態で取り付けられ、着用者の鼻の左右両側部分に第1逆止弁13Bを有する。筒状部18の左右の径方向外側には一対のレバー28があって、それらが水平方向の軸26で旋回可能に支持されている。左右のレバー28の上端部どうし、および下端部どうしは水平方向部材29,30を介してつながっている(後記図4参照)。図においてレバー28は反時計方向にばね付勢されており、下端部水平方向部材30が本体7のリップ部7A下部に形成された顎当て部7Bにその下側から当接可能な状態にある。レバー28が時計方向へ旋回すると、上端部水平方向部材29が筒状部18の側面部透孔32内において矢印Yの如く時計方向へ動く。
【0014】
図3は、図1のIII−III線矢視図であって、面口部材9の内部構造の詳細を示している。筒状部18は、外端部内側に供給弁4が螺合するねじ部40を有し、内端部に開閉弁41の収納室42を有する。開閉弁41は、その後面のプレート4lBにおいてレバー28と一体の水平方向部材29に取り付けられており、プレート4lBと収納室42の端壁42Aとの間に介在する第1付勢ばね43の作用によって、筒状部18の内部を前後に仕切る環状のストップ開閉弁座45に当接している。レバー28が時計方向へ旋回すると、開閉弁41は、第1付勢ばね43を圧縮して弁座45から離れ、供給弁4からの清浄空気が矢印Pの如く本体7内へ流入する。筒状部18の周壁には前記透孔32の他に、下向きの空気孔33があり、本体7内への空気の速やかな流入が可能である。図3では、呼吸器1が着用状態にあり、リップ部7Aを介して顎(図示せず)に圧接するレバー28が時計方向へ旋回した状態にある。また、この図において、筒状部18の上方外側にある面口部周壁17と伝声器20とに囲まれた空間46は、伝声器20の振動を空気呼吸器1の外へ伝える部分であって、呼吸器1の外に向かって開放している。
【0015】
面口部材9の下方にある凹部24の内端面80にはノーズカップ13内につながる排気用の透孔81と第2逆止弁82とがあり、透孔81周縁のリブ83には、ノーズカップ13下端部の排気口周縁部13Bが外側から圧嵌している。第2逆止弁82の背後には弁82の強さを調整するための第2付勢ばね82Aがある。
【0016】
図4の(A),(B)は、断面円形の金属線材からなる左右一対のレバー28と開閉弁41の動作を模式的に示すそれら要部の破断斜視図である。(A)では面体2が非着用状態にあって第1付勢ばね43が伸長し、開閉弁41が弁座45に圧接している。レバー28の下端部水平方向部材30には回動自在なカラー部材30Aがあって、部材30にゴム製のリップ部7Aを介して顎が当接すると、レバー28がスムーズに旋回する。開閉弁41の比較的硬いベースプレート41Aの前面にはクッションパッド4lCがあり、後面には上端部水平方向部材29に対し回動自在に取り付けられたプレート4lBがある。
【0017】
図4の(B)では、面体2が着用状態にあり、レバー28が時計方向へ旋回して第1付勢ばね43が圧縮され、開閉弁41が弁座45から離脱して両者の間に隙間が生じ、その隙間から清浄空気が流入する。
【0018】
このように構成した面体2を着用すると、本体7のリップ部7Aの顎当て部7Bに顎が当接して図2に示すようにレバー28が時計方向へ旋回し、それに伴い開閉弁41が開いて供給弁4からの清浄空気が矢印P,Q,Rの如く本体7に流入し、その後、清浄空気は吸気用第1逆止弁13Bを経てノーズカップ13内に入り、着用者に吸い込まれる。着用者の呼気は、矢印S,Tの如く流れ、第2逆止弁52を経て面体2から排出される。この面体2を顔面から外すと、第1付勢ばね43の作用で開閉弁41が閉じるから、供給弁4がたとえ開いていても清浄空気の無駄な流出を未然に防ぐことができる。
【0019】
図5は、この発明の実施態様の他の一例を示す面体402の斜視図である。この面体402の構成は図1のそれとほぼ同じであるが、異なるのは面口部材409がプレッシャデマンド形空気供給弁404を内蔵し、本体407の左側頬部には中圧ホース(図示せず)の接続口491がのぞいている点である。かかる面体402は、その供給弁404が大きく張り出さず、狭隘な作業場所で着用するのに適している。
【0020】
図6,7は、図5の面体402の部分破断側面図と、面口部材409の部分分解斜視図である。本体407の左頬部内側には、接続口491からの空気配管492が延びて供給弁404の空気導管463に連結している。面口部材409は、前面中央部に位置するプレッシャデマンド形空気供給弁404と、枠部材475とで構成されている。枠部材475は、供給弁404を囲み、前面部分416には通気性グリッドを有し、周縁部417が本体407の前面開口部に嵌合している。これら本体407と枠部材475とは、抜脱することがないように金属ベルト412で留めてある。供給弁404は、枠部材475の前面部分416から突出する外筒部42lAと、前面部分416から本体407内方へ延びる内筒部42lBとを備え、これら両筒部42lA,42lBがダイヤフラム422で仕切られている。ダイヤフラム422と外筒部42lAの端壁との間にはコイルばね423があり、このばね423でダイヤフラム422を介して後記カンチレバー465を本体407内方へ押圧することにより供給弁404を常時僅かに開放している。内筒部421Bは、その内端部の外側に開閉弁441を有する密閉可能な部分であって、内部には空気導管463と、空気導管463の給気口463A(後記図7参照)を開閉するためのカンチレバー465とがあり、レバー465の自由端465Aがダイヤフラム422のほぼ中央部に貼着した剛性な補強板422Aに当接している。
【0021】
開閉弁441は、面体402が非着用状態にあると、第1付勢ばね443に押圧されて内筒部42lBを密閉している。面体402が着用状態にあると、本体407内側のレバー428が支軸426を中心に、図6において反時計方向へ旋回し、第1付勢ばね443に抗して弁441を開く。かかるレバー428は、図2,3のレバー28と同様に作用するものであって、着用者の顎が本体407のリップ部407A下部に当接すると、下端部の水平方向連結部材430が反時計方向へ押圧されてレバー428が旋回する。供給弁404は、その内端部上方で伝声器420を支え、その内端部下方には本体407の内外を仕切る板433を有する。板433は面口部材409の周縁部417にまで延びている。仕切り用の板433には排気孔481があり、その外側には呼気排出用の第2逆止弁482がある。弁482は、外方から作用する第2付勢ばね482Aを有し、所要の内圧になるとそのばね482Aに抗して開く。なお、図5〜7において、伝声器420も本体407の内外を仕切るものであり、また伝声器420と仕切り用の板433とにノーズカップを取り付けることは図2,3の面体2と同様であるが、面口部材409の構造の理解を容易にするために、それらの図示が省略してある。
【0022】
このように構成した面体402を着用すると、レバー428の旋回によって開閉弁441が開き、コイルばね423の作用で常時僅かに開放している供給弁404からの空気が流入し、面体402内を常に外気より高い圧力に保つ。次に、吸気によって面体402の内圧が低下すると、ダイヤフラム422がカンチレバー465を押圧して給気口463Aがさらに大きく開放し、着用者の呼吸に合わせ、必要なだけの清浄空気が流入する。続いて、その空気が矢印P,Qのように流れて面体402内へ達し、呼気は、図示しないノーズカップの内側から第2逆止弁482を経て排出される。
【0023】
この発明においては、開閉弁41,441が清浄空気の圧力だけで開くことがないように、換言すると面体2,402を着用したときにのみレバー28,428の旋回に伴い開放状態となるように、第1付勢ばね43,443の強さが調整してある。このレバー28,428は、面体2,402の内側から着用者の顎に間接的に当接するものとして例示してあるが、それ以外の身体部位に当接するものであってもよい。また、プレッシャデマンド形空気供給弁4,404は、陽圧・常圧切り替え方式のものに限らず、公知ないし周知の方式のものを使用することができる。また、通常その必要性はないのであるが、プレッシャデマンド形空気供給弁4,404をデマンド形空気供給弁に代えることも可能である。
【0024】
この発明に係る面体2,402は、空気呼吸器1の面体として使用する他に、給気ホースに連結し、送気マスクとして使用することもできる。そのときに供給弁を使用することなく面体とエアホースとを直結してもよい。
【0025】
図8,9は、プレッシャデマンド形供給弁504を使用した面体の一例である面体502の要部を図2と同様に破断して示す側面図であって、図8は着用状態の面体502を示し、図9は非着用状態の面体502を示している。
【0026】
図8において、面体502の面口部材509は、本体507に抜脱不能に取り付けられており、プレシャデマンド形の供給弁504と、弁504を給気状態と非給気状態とに切り替えるための給気機構550とによって構成され、機構550には、着用者の顎に圧接して図の反時計方向へ施回可能なレバー528の一端が中継部材552Aを介して係合している。面体502を着用すると、反時計方向へ旋回するレバー528が後記第1ピストンシリンダ552を第3ばね557へ付勢に抗して引き下げ、図示の状態となる。
【0027】
供給弁504は、図6のそれと共通の構造を有し、中圧ホース503に接続する空気導管563、空気導管563の面体内への給気口563A(図示せず)を開閉するためのカンチレバー565、レバー565を押圧することが可能なダイヤフラム522と押圧用コイルばね523等の部材を備え、それら部材が外筒部521Aと内筒部521Bとによって覆われている。両筒部521A,521Bはダイヤフラム522で仕切られ、内筒部521Bは、その後方が本体507に向かって通気可能に開放している。なお、供給口563Aは、図7の供給口463Aに相当する。
【0028】
給気機構550は、面口部材509の内方に位置する第1ピストンシリンダ551と第1ピストン552、部材509の外方に位置する第2ピストンシリンダ553と第2ピストン554、第1ピストンシリンダ551と空気導管563とをつなぐ第1パイプ555、第1ピストンシリンダ551と第2ピストンシリンダ553とをつなぐ第2パイプ556、および第2ピストン554に固定されたカム板554A等を有する。第1,2ピストンシリンダ551,553各々の内部には、第1,2ピストン552,554を各々上方へ付勢する第3ばね557と第4ばね558とがある。第1パイプ555の一端は、空気導管563に対して給気口563Aよりも中圧ホース503に近い位置で接続し、その給気口563Aの開閉とは関係なく中空ホースからの中圧空気が第1パイプ555に常時流入する。第1パイプ555の他端は第1ピストンシリンダ551の上端に接続しているから、前記空気が第1ピストンシリンダ551に流入して第1ピストン552を下方へ押圧する。ただし、第1ピストン552は、その押圧によって下降することがないように第3ばね557の強さが調整してある。第2パイプ556は、一端が第1ピストンシリンダ551の中間部分に接続し、他端が第2ピストンシリンダ553の上端に接続している。第1ピストン552が第2パイプ556の接続部位より下に位置していると(図8参照)、第1ピストンシリンダ551の空気は第2ピストンシリンダ553に流入し、第2ピストン554を第4ばね558に抗して押し下げる。第2ピストン554に取り付けられたカム板554Aは、該ピストン554と共に上下して供給弁504の押圧用コイルばね523を後記するように伸縮させることができるもので、第2ピストン554が下がるとコイルばね523が伸長し、ダイヤフラム522を介してカンチレバー565を押圧することにより、空気導管563の給気口563Aを僅かに開くことができる。それにより中圧空気が矢印P,Qの如く流れて本体7内に入り、図2と同様に逆止弁513Bを経てノーズカバー513内に流入する。ダイヤフラム522は、着用者の吸気動作によってカンチレバー565をさらに押圧し、給気口563Aを大きく開くことができる。呼気の排出機構は、図2,3に示したそれと同じであるから説明を省略する。
【0029】
顔面から外したときの面体502の状態は、図9のとおりである。レバー528の水平方向部材530が顎から外れると、第1ピストンシリンダ551の第3ばね557が伸長し、第1ピストン552を押し上げて第1ピストン552上端のパッド552Aを第1ピストンシリンダ551の内部上端にある弁座570に圧接し、中圧空気の第1ピストンシリンダ551への流入を止める。第1ピストンシリンダ551がこの状態にあると、第2パイプ556内の中圧空気が第1ピストンシリンダ551の下端部排気孔(図示せず)から流出し、それに伴い第2ピストン554とカム板554Aとが第4ばね558の作用で上昇する。カム板554Aが上昇すると、コイルばね523が収縮してカンチレバー565に対する押圧が解け、空気導管563の給気口563Aが閉じる。それにより中圧空気の面体502への流入が停止する。
【0030】
図10,11は、カム板554Aとカンチレバー565の動きを示す面口部材509の要部破断側面図であって、図10では面体502が着用状態にあり、図11ではそれが非着用状態にある。図10において、供給弁504の外筒部521Aは前方のコイルばね収納部521Cと、後方のダイアフラム収納部521Dとで構成されている。コイルばね収納部521Cは円筒状であって、収納されたコイルばね523は、その外端部523Aが収納部521Cの端壁521Eに圧接し、その内端部523Bが筒状のスライド部材560の底部561内面に圧接して部材560を右方向へ付勢している。そのスライド部材560は、図の左右方向にコイルばね収納部521Cの周壁内面を摺動可能であり、左方へ摺動したときにコイルばね523が収縮し、右方へ摺動したときにばね523が伸長する。スライド部材560の周壁562には径方向外方へ延びるカムフォアロ用突起562Aがあり、この突起562Aは、コイルばね収納部521Cの周壁に形成されている左右方向に長い切り欠き521Fから外に出て、カム板554Aのカム面566に圧接している。かかる圧接は、スライド部材560がコイルばね523によって右方向へ付勢されていることによる。カム面566は、ダイアフラム522に近く、上下方向に延びる第1カム面566Aと、ダイアフラム522よりも遠く、第1カム面566Aと平行な第2カム面566Bと、第1,2カム面566A,566B間にあって、図示のように右上りの斜面をなす第3カム面566Cとで構成されている。
【0031】
面体502を着用してカム板554Aが図10のように下降すると、コイルばね523で付勢されているスライド部材560の突起563が第2カム面566Bから第3カム面566Cを経て第1カム面566Aにまで移動して停止する。スライド部材560もまたその停止位置に対応するところまで右方向へ移動し、そこでは部材560の底部561がダイヤフラム522を介してカンチレバー565を押圧する。次に、面体502を顔面から外すと、カム板554Aが図11に示す位置まで上昇し、そのときに突起562Aは第1カム面566Aから第2カム面566Bにまで移動する。この移動に伴い、スライド部材560は、その底部561の内面でコイルばね523を圧縮しながらカンチレバー565から離間し、該レバー565に対する押圧を解く。
【0032】
図12は、面口部材509の部分正面図である。給気機構550を構成する第2ピストンシリンダ553は、供給弁504のコイルばね収納部521Cの左右両側にあって一対をなし、これらに接続する第2パイプ556は、その先端が部分556Aと556Bとに分かれている。一対の第2ピストンシリンダ553間には、逆U字型に形成されたカム板554Aがあり、板554Aの下端部分が第2ピストン554の下端部に固定されている。図においてカム板554Aは左右対称であり、その側面形状は図10,11のとおりである。図に現われていないが、スライド部材560のカムフォロア用突起562Aも左右一対で構成され、それらは逆U字型のカム板554Aの左右各々に圧接している。
【0033】
このように構成した面体502は、プレッシャデマンド形供給弁504が面体502に対する給気の遮断手段として作用し、レバー528と給気機構550とがその遮断手段を開放するための手段として作用する。供給弁504は、第1ピストン552が第2パイプ556の接続部位より下にあれば開き、上にあれば閉じる。このことは、レバー528が大きな角度で旋回しなくてもよいこと、換言すると、レバー528が着用者の顎に軽く当接すれば供給弁504が確実に開き得ることを意味している。
【0034】
【発明の効果】
この発明に係る面体は、例えばプレッシャデマンド形供給弁から面体内へ流入する清浄空気を開閉弁で遮り、面体を着用したときにのみその開閉弁が開くようにしてあるから、面体を着用していないときに清浄空気を無駄に流出させることがない。また、プレッシャデマンド形供給弁を面口部に内蔵するこの発明の実施態様では、面体着用時にその供給弁が従来技術のように張り出して作業や視界の妨げになるということがないから、狭隘な場所での作業が容易になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 着用状態にある面体の斜視図。
【図2】 図1の面体の部分破断側面図。
【図3】 図lのIII―III線矢視図。
【図4】 開閉弁の動作を示す模式図であって、Aは閉じた状態、Bは開いた状態を示す。
【図5】 実施態様の一例を示す面体の斜視図。
【図6】 図5の面体の部分破断側面図。
【図7】 図5の面体の面口部材部分分解斜視図。
【図8】 プレッシャデマンド形供給弁を使用した面体の一例を示す図2と同様な図面であって、面体は着用状態にある。
【図9】 図8と同様な図面であって、面体は非着用状態にある。
【図10】 図8の面体の要部を破断して示す側面図。
【図11】 図9の面体の要部を破断して示す側面図。
【図12】 図8の面体の要部を破断して示す正面図。
【符号の説明】
1 空気呼吸器(給気式呼吸保護具)
2 面体
4 供給弁
9 面口部材(面口部)
28 レバー(開放手段)
402 面体
404 供給弁
409 面口部材(面口部)
428 レバー(開放手段)
Claims (5)
- 給気式呼吸保護具の面体において、
前記面体には、接顔用リップ部が形成されるとともに、前記面体の内部に通じる給気路に開閉可能な給気遮断手段が形成され、かつ、前記面体を着用すると着用者身体の一部に圧接可能であって前記遮断手段と連繋して前記身体との圧接力を介して前記遮断手段を開放状態に保つことが可能な前記遮断手段に対する開放手段が形成されており、
前記遮断手段が前記給気路に形成された弁座に付勢ばねの作用下に当接している開閉弁を含み、
前記開放手段が、前記面体内側に形成されているものであって、上端部と下端部とを有しこれら両端部の間において水平方向へ延びる軸に旋回可能に支えられて上下方向へ延びるレバーを含み、前記レバーは、前記上端部において水平方向へ延びる部材に対して前記開閉弁が取り付けられており、前記下端部において水平方向へ延びる部材が前記リップ部の顎当て部に前記面体の内側において下側から当接可能な状態にあり、
前記面体が着用されて前記顎当て部に前記着用者の身体の一部である前記面体着用者の顎が当接すると、前記レバーは、前記顎当て部を介して前記顎の当接した前記下端部が前記軸を中心に前記面体の下方に向かって旋回する一方、前記上端部が前記面体の上方に向かって旋回して前記付勢ばねを圧縮しながら前記開閉弁を前記弁座から離脱させて前記面体内部への清浄空気の流入を可能にすることを特徴とする前記面体。 - 前記面体が空気呼吸器に使用するものである請求項1記載の面体。
- 前記面体が給気ホースに直結して使用する送気マスクである請求項1記載の面体。
- 前記面体が供給弁を介して給気ホースに連結して使用する送気マスクである請求項1記載の面体。
- 前記面体がその面口部に着脱不能に固定されたプレッシャデマンド形供給弁を有する請求項1〜4のいずれかに記載の面体。
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