JP3683107B2 - 油圧式ラッシュアジャスタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラッシュアジャスタに係り、特に、例えば内燃機関の動弁機構等における隙間調整機構として好適な油圧式ラッシュアジャスタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば特開昭56−132413号公報に開示される如く、ラッシュアジャスタが知られている。ラッシュアジャスタは、変位する一対の部材間に介装され、両部材間の間隔が変化するのに追従して全長を変化させることにより、両部材間に隙間が生ずるのを防止する機構である。上記公報に開示されるラッシュアジャスタは、軸方向に相対変位可能に連結された第1及び第2のプランジャ要素を備えている。第1及び第2のプランジャ要素は、一対の部材のそれぞれに当接している。第1及び第2のプランジャ要素の間には油圧室が画成されている。油圧室の周囲には、この油圧室に供給すべき油を貯留する油貯留室が設けられている。
【0003】
上記従来のラッシュアジャスタにおいて、第1及び第2のプランジャ要素が互いに離間する方向に相対変位すると、油貯留室から油圧室に油が供給されることにより、第1及び第2のプランジャ要素を離間させながら油圧室が拡張する。その結果、ラッシュアジャスタの全長が伸びることで、一対の部材間に隙間が生ずることが防止される。また、油貯留室には、その外周壁に設けられた油供給穴から油が補給される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如く、上記従来のラッシュアジャスタでは、油圧室に油を供給する油貯留室が油圧室の周囲に設けられている。このため、油貯留室によりラッシュアジャスタが大型化し、特に、径方向の寸法が大きくなるという問題があった。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、小型化を図ることが可能な油圧式ラッシュアジャスタを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、請求項1に記載する如く、一対の部材の間に介装される油圧式ラッシュアジャスタであって、
一端が閉じ他端が前記一対の部材の一方に向けて開口した略円筒状の形状を有し、前記一対の部材の一方に当接するようにシリンダ壁面上を摺動可能に配設された第1の当接部材と、
円筒状の外周面を有し、前記一対の部材の他方に当接し且つ前記第1の当接部材と間隔をおいて前記シリンダ壁面上を摺動可能に配設されると共に、前記第1の当接部材に向けて開口する円筒状の凹部を有する第2の当接部材と、
前記第1の当接部材に当接するように前記第2の当接部材の前記凹部該凹部の内壁面上と摺動可能に収容され、前記第2の当接部材との間に油圧室を画成するプランジャと、
前記プランジャを前記第1の当接部材に向けて付勢するスプリングと、
前記シリンダに設けられ、前記油圧室に油を供給する油供給路と、を備え
前記プランジャは、前記第1の当接部材に向けて開口すると共に前記油圧室に連通可能なリザーバ室を備え、
前記油供給路は、前記一対の部材が所定位置にある場合に前記リザーバ室に連通し且つ所定位置以外の位置にある場合には前記リザーバ室と連通しないように設けられた油圧式ラッシュアジャスタにより達成される。
【0006】
請求項1記載の発明において、一対の部材の一方は第1の当接部材に当接し、他方は第2の当接部材に当接する。また、第2の当接部材の凹部に摺動可能に収容されたプランジャは第1の当接部材に当接する。すなわち、一対の部材の間には、第1の当接部材、プランジャ、及び第2の当接部材が介在する。一対の部材間の間隔が増加すると、プランジャがスプリングに付勢されることにより第1の当接部材に向けて変位すると共に、油供給路から油圧室に油が供給される。このため、第1の当接部材とプランジャとが当接する状態が維持され、両者間に隙間が生ずることが防止される。上記の如く、本発明では、油圧室への油の供給は、シリンダに設けられた油圧通路から行われる。すなわち、油圧室へ供給する油を貯留するための貯留室を油圧室の外周に設けることが不要であるため、ラッシュアジャスタの小径化が図られる。また、第1及び第2の当接部材が設けられていることで、ラッシュアジャスタからの油の漏出が抑制される。
【0008】
また、請求項記載の発明においては、油供給路が常時油圧室に連通することなく、油圧室に油を供給することができる。また、リザーバ室は、第1の当接部材に向けて開口するように設けられるので、リザーバ室により径方向の寸法が増大することが防止される。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例であるラッシュアジャスタ10の軸方向断面図である。本実施例において、ラッシュアジャスタ10は、例えば内燃機関のカムとバルブとの間に介装され、両者間に隙間が生ずるのを防止する機構として構成されている。
【0010】
図1に示す如く、ラッシュアジャスタ10は、シリンダ12を備えている。シリンダ12には、プランジャボディ14が摺動可能に配設されている。プランジャボディ14は一端(図1においては下端)が閉じた略円筒状の部材である。プランジャボディ14は、その内部に、図1における下端部に設けられたスプリング収容部14aと、スプリング収容部14aに比して大径に形成されたプランジャ収容部14bとを備えている。
【0011】
プランジャボディ14のプランジャ収容部14bには、プランジャ16が摺動可能に配設されている。プランジャ16の図1における下底面と、スプリング収容部14aの下底面との間には、油圧室18が画成されている。
プランジャ16は、その外周面に、プランジャ収容部14bの内周面に対して摺動する大径部16aと、図1における上端部に設けられた小径部16bとを備えている。一方、プランジャ収容部14bの内周面の上端には、ストッパリング20が圧入されている。ストッパリング20は、大径部16aの外径に比して小さな内径を有している。従って、プランジャ16のプランジャ収容部14b内部における上向きの変位は、大径部16aと小径部16bとの間の段差と、ストッパリング20とが当接することにより規制される。プランジャ16は、また、上方に向けて開口するリザーバ室22、及び、リザーバ室22と油圧室18とを連通する連通路24を備えている。
【0012】
油圧室18には、リテーナ26及びプランジャスプリング28が配設されている。プランジャスプリング28は、リテーナ26を介してプランジャ16を上向きに付勢している。リテーナ26の内側にはチェックボール30及びチェックボールスプリング32が配設されている。チェックボールスプリング32は、チェックボール30を連通路24の開口部に向けて付勢している。チェックボール30及びチェックボールスプリング32は、油圧室18側がリザーバ室22側に比して低圧になった場合にのみ開弁するチェックバルブとして機能する。
【0013】
ラッシュアジャスタ10は、また、リザーバキャップ34を備えている。リザーバキャップは一端(図1における下端)が閉じた円筒状の部材である。リザーバキャップ34は、その底面がプランジャ16の上端面に当接するように、シリンダ12内に摺動可能に配設されている。リザーバキャップ34の下底面には、その一部が切り欠かれてなるオーバフローリセス36が設けられている。オーバーフローリセス36は、リザーバ室22と常時連通している。
【0014】
シリンダ12には、油供給路38が設けられている。油供給路38は、プランジャボディ14、プランジャ16、及びリザーバキャップ34(以下、可動部40と総称する)が図1に示す位置にある状態、すなわち、図示しないバルブが全閉位置にある状態で、オーバフローリセス36と連通するように、シリンダ12の内周面に開口している。油供給路38には図示しない油圧ポンプにより所定圧の油が供給される。なお、ラッシュアジャスタ10の組み立て時に、上記したリザーバ室22、及び高圧室18に油が充填される。
【0015】
次に、ラッシュアジャスタ10の動作について説明する。
本実施例において、リザーバキャップ34はカム(図示せず)の回転に応じて、図1中下向きの駆動力が付与される。また、プランジャボディ14の下端面には、内燃機関のバルブ(図示せず)が当接しており、このバルブはバルブスプリング(図示せず)により閉弁方向に、すなわち、プランジャボデイ14に向けて付勢されている。なお、図1は、可動部40が図中最上点にある状態、すなわち、バルブが全閉位置にある状態を示している。
【0016】
図1に示す状態で、カムが回転し、リザーバキャップ34に下向きの駆動力が付与されると、この駆動力はプランジャ16に伝達される。プランジャ16に伝達される駆動力がプランジャスプリング28の付勢力を越えると、プランジャ16が下向きに押圧されることで、油圧室18内の油が加圧される。このため、油圧室18の油圧がリザーバ室22の油圧に比して高圧となり、連通路24はチェックボール30により閉塞される。連通路24が閉塞されると、油圧室18とリザーバ室22との間の油の授受は禁止される。このため、プランジャ16に伝達された駆動力は油圧室18を介してプランジャボディ14に伝達され、可動部40は一体となって、バルブスプリングの反力を受けながら下向きに変位すると共に、バルブが開弁する。バルブが開弁する過程では、油圧室18の油が加圧されることで、プランジャ16とプランジャボディ14との摺動面を介して油圧室18から油が徐々に漏出し、可動部40は次第に収縮する。
【0017】
可動部40の変位が最下点に達し、カムが更に回転を続けると、可動部40は今度は上向きに変位する。そして、バルブが全閉位置に達すると、プランジャボディ14にバルブスプリングからの反力は作用しなくなる。バルブが全閉位置に達した後も、リザーバキャップ34はカムのランプ部と摺動しながら比較的緩やかに上向きに変位を続ける。この場合、プランジャ16はプランジャスプリング28の付勢力によりリザーバキャップ34に追従して、プランジャボディ14に対して上向きに摺動しようとし、油圧室18内の油圧は低下する。そして、油圧室18がリザーバ室22よりも低圧になると、チェックボール30が連通路24の開口部から離座することで、油圧室18とリザーバ室22とが連通する。上述の如く、バルブが全閉位置にある状態では、油供給路38とオーバーフローリセス36とが連通する。このため、油圧室18とリザーバ室22とが連通すると、油供給路38からリザーバ室22を経て油圧室18に油が供給されることで、プランジャ16はリザーバキャップ34に当接した状態を維持しながら上向きに摺動する。そして、リザーバキャップ34の変位が最上点に達した後、更にカムが回転を続けると、再び上記の動作が繰り返される。
【0018】
このように、バルブが開弁した状態では、プランジャボディ14がバルブスプリングの反力を受けることにより油圧室18から油が徐々に漏出し、可動部40は収縮する。そして、バルブが全閉位置に達すると、油供給路38から油圧室18に油が供給されながら、プランジャ16が上向きに摺動することで、可動部40は上記の収縮分だけ伸長し、プランジャ16とリザーバキャップ34とが当接した状態が維持される。
【0019】
また、熱膨張や摩耗等に起因して、バルブが全閉位置にある状態での、リザーバキャップ34とプランジャボディ14との間隔に変化が生じた場合にも、油圧室18とリザーバ室22との間で油を授受させながらプランジャ16がプランジャボディ14に対して摺動し、可動部40の長さが変化することで、プランジャ16とリザーバキャップ34とが当接した状態が維持される。
【0020】
このように、本実施例によれば、リザーバキャップ34とプランジャボディ14との間隔に変化が生じた場合にも、バルブが全閉位置に達した際に、プランジャ16がプランジャボディ14に対して摺動することで、プランジャ14とリザーバキャップ34とが当接した状態が維持される。従って、本実施例のラッシュアジャスタ10によれば、バルブに熱膨張や摩耗等が生じた場合にも、カムとバルブとの間に隙間が生ずるのを防止することができる。
【0021】
また、上述の如く、本実施例のラッシュアジャスタ10は、シリンダ12に設けられた油供給路38から、リザーバ室22を介して油圧室18へ油を供給する構成である。このため、油圧室18に供給すべき油を貯留するための貯留室をその外周側に設けることが不要となり、ラッシュアジャスタ10の小型化、特に、径方向寸法の低減を図ることができる。また、ラッシュアジャスタ10の小型化に伴ってその軽量化が図られるため、内燃機関の高回転化を図ることが可能となっている。
【0022】
更に、本実施例では、リザーバキャップ34が設けられていることにより、油供給路38から供給された油が上方へ漏出することが抑制される。この場合、リザーバキャップ34が小径化されていることで、上方へ流出する油の量をより効果的に抑制することが可能となっている。同様に、プランジャボディ14が小径化されることにより、プランジャボディ14とシリンダ12との摺動面を介して下方へ漏出する油の量も小さく抑制されている。
【0023】
このように、本実施例では、ラッシュアジャスタ10の小径化が図られることにより、油の漏出量は小さく抑制されている。このため、油供給路38から供給すべき油量を少量とすることができるので、油供給路38へ油を供給するオイルポンプの小型化を図ることが可能となっている。また、ブローバイバスに混入する油の量も減少し、これにより、ブローバイガス還元装置の構成を簡単化することができる。
【0024】
ところで、油圧室18内の油にエアが混入すると、油圧室18の加圧時に混入エアが圧縮されることで、ラッシュアジャスタ10の剛性が低下する。かかる不都合を防止するため、リザーバ室22及び油圧室18の油にエアが混入するのを極力防止すると共に、混入した場合にはそのエアを速やかに排出させることが必要である。
【0025】
これに対して、本実施例のラッシュアジャスタ10は、油供給路38から供給された油が、少量ながら、リザーバキャップ34とシリンダ12との間の摺動面を介して上方へ漏出する構成である。従って、油に混入したエアは浮力により上方に滞留しようとするので、混入エアは油と共に上方に排出され易い。このように、本実施例のラッシュアジャスタ10は、油にエアが混入した場合にも、そのエアを速やかに排出させ得るという利点を有している。
【0026】
また、ラッシュアジャスタ10の組み立て時には、プランジャ16がプランジャボデイ14のプランジャ収容部14bに挿入された後、ストッパリング20がプランジャ収容部14bに圧入される。このため、プランジャ16の大径部16aと小径部16bとの間の段差をストッパリング20に当接させた状態、すなわち、油圧室18を最も拡大させた状態で、プランジャ16がプランジャ収容部14bから脱落するのを確実に防止しながら、油を充填することができる。従って、本実施例によれば、ラッシュアジャスタ10の組み立て時に油にエアが混入するのを最小限に抑制することができる。
【0027】
なお、上記実施例においては、リザーバキャップ34が特許請求の範囲に記載した第1の当接部材に、プランジャボディ14が特許請求の範囲に記載した第2の当接部材に、プランジャ収容部14bが特許請求の範囲に記載した凹部に、プランジャスプリング28が特許請求の範囲に記載したスプリングに、それぞれ相当している。
【0028】
【発明の効果】
上述の如く、請求項記載の発明によれば、油圧式ラッシュアジャスタの小型化、特に、径方向の寸法の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるラッシュアジャスタの軸方向断面図である。
【符号の説明】
10 ラッシュアジャスタ
12 シリンダ
14 プランジャボディ
16 プランジャ
18 油圧室
22 リザーバ室
28 プランジャスプリング
34 リザーバキャップ
38 油供給路

Claims (1)

  1. 一対の部材の間に介装される油圧式ラッシュアジャスタであって、
    一端が閉じ他端が前記一対の部材の一方に向けて開口した略円筒状の形状を有し、前記一対の部材の一方に当接するようにシリンダ壁面上を摺動可能に配設された第1の当接部材と、
    円筒状の外周面を有し、前記一対の部材の他方に当接し且つ前記第1の当接部材と間隔をおいて前記シリンダ壁面上を摺動可能に配設されると共に、前記第1の当接部材に向けて開口する円筒状の凹部を有する第2の当接部材と、
    前記第1の当接部材に当接するように前記第2の当接部材の前記凹部該凹部の内壁面上と摺動可能に収容され、前記第2の当接部材との間に油圧室を画成するプランジャと、
    前記プランジャを前記第1の当接部材に向けて付勢するスプリングと、
    前記シリンダに設けられ、前記油圧室に油を供給する油供給路と、を備え
    前記プランジャは、前記第1の当接部材に向けて開口すると共に前記油圧室に連通可能なリザーバ室を備え、
    前記油供給路は、前記一対の部材が所定位置にある場合に前記リザーバ室に連通し且つ所定位置以外の位置にある場合には前記リザーバ室と連通しないように設けられたことを特徴とする油圧式ラッシュアジャスタ。
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