JP3683039B2 - 光ファイバ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信用の光ファイバに関し、特にマルチモード形の光ファイバにおける伝送情報量の改善に関する。
【0002】
【従来の技術】
通信に用いられる光ファイバには、モードに関してシングルモード形とマルチモード形があり、また屈折率分布の形態に関してステップインデックス形とグラディエントインデックス形があるなど種々のタイプがあり、その各々に特徴がある。中でもマルチモード・ステップインデックス形ファイバ(以下SIファイバと言う)は、例えば数百μm〜1mm程度のコア径とすることが可能で、光源や受光器との接続やファイバ−ファイバ間の接続などにおける取扱いが容易であり、また同じく大きなコア径が可能なグラディエントインデックス形に比べ低コストであることなどから、比較的短距離の通信や器機内でのデータ伝送手段として多用されている。
【0003】
しかしSIファイバには、伝搬する光線のモードによる伝搬速度が異なる効果、いわゆるモード分散が大きく、これによって入射光パルスの時間幅が伝搬距離の増大に応じて広がり、パルス形状が崩れ易いという現象がある。このためSIファイバは、シングルモード・ステップインデックス形ファイバやグラディエントインデックス形ファイバに比べ、同じ伝送距離における伝送帯域が数百分の1程度と狭く、単位時間に伝送可能な情報量が格段に少ない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のようなSIファイバにおける伝送帯域の改善を目的としており、特にSIファイバにおけるモード分散の原因の一つを明らかにし、これを除ける構造を与えることで伝送帯域の改善を図ることを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
先ずSIファイバにおけるモード分散の原因について、図8及び図9を参照して説明する。図8は、従来のSIファイバを繊維軸に直角に断面した横断面図であり、図9は、繊維軸に平行に断面した縦断面図である。一般にSIファイバに入射した光線は、そのほとんどが繊維軸を通過しない光線であるスキューレイとなってファイバ中を伝搬する。このスキューレイには、図8に見られるように、ファイバの中心から大きく外れてコアCrとクラッドCdの界面付近に沿って伝搬する光線Raや光線Rbなどが含まれ、これらは、光線の進行ベクトルが繊維軸となす角度θ(図9)が極めて大きい成分も含んでいる。そしてこれらの光線の内、θ≦cos -1( nc /n1)を満たす光線は、コアCrとクラッドCdの界面で全反射してファイバ中を伝わる伝搬光Rcとなる。ここでnc はクラッドの屈折率で、n1 はコアの屈折率である。一方、θ>cos -1( nc /n1)である光線には、コアの外に漏れて失われる漏洩光Rdとなる場合と、漏れずに伝搬光Reとなる場合とがある。
【0006】
ところで光ファイバを伝搬する光の伝搬速度は cosθに比例する。したがってθ>cos -1( nc /n1)なる光線は、θ≦cos -1( nc /n1)なる光線に比較して伝搬速度が遅い。そしてこのように伝搬速度の異なる成分が混在することが分散を大きくし、伝送帯域を狭くさせている。とりわけθ>cos -1( nc /n1)なる光線は分散が大きく、伝送帯域にとって有害であり、これを取り除くことで伝送帯域を改善することが可能となる。
【0007】
したがって本発明では、θ>cos -1( nc /n1)なる光線を効果的に除くことで伝送帯域を改善することを意図しており、そのために従来では円形とされていたコアの外周形状に変形を与えることとしている。具体的には、本発明による光ファイバは、そのコアが、伝搬途中の光線に反射角の変化を生じさせるように曲率を変化させる部分を外周面に有している。
【0008】
このようなコアの外周形状の具体的態様としては様々な形状が可能である。その代表的な一つは、内側に凸である曲面部、つまり曲面的な凹部を外周面に少なくとも一つ有する形状である。他の代表的な一つは、コアの横断面における外周形状を、例えば楕円形、あるいはなめらか曲面による角部を複数有する多角形的な形状などのように、外側に凸である曲面のみからなる非円形形状とする形状である。
【0009】
上記のような本発明による光ファイバでは、伝搬途中で光線がコアとクラッドの界面で反射する際に、凹部などの曲率が変化している部分において主に不規則的に反射角を変化させる。そしてこの不規則的な反射角変化により、θ>cos -1( nc /n1)なる光線を効果的にコア外に排除させることができ、この排除程度に応じて伝送帯域を改善することができる。また本発明による光ファイバは、このような伝送帯域の改善を実現するについて、従来のステップインデックス形光ファイバと実質的に同様な条件で製造することが可能で、コストアップ要因を伴わないという大きな利点もある。
【0010】
本発明による光ファイバは、そのコアが上記のように外周面に凹部を有する外周形状や外側に凸である曲面のみからなる非円形の外周形状を有する。このため、実用上で好ましい円形の形状を光ファイバの外周に与えると、クラッドに厚みの異なる部分を生じることになり、またクラッドの平均的な厚さも厚くなる。このことは、温度変化や湿度変化によるコアとクラッドの界面への影響を増大させる原因となる。したがって上記のような本発明による光ファイバについては、クラッドの厚みを均一にし、且つこのクラッドに外接する保護層を設けるようにするのがより好ましく、この保護層の外周形状を円形とすることで、上記のような実用上の要求を満足させることができる。またこの場合の保護層は、屈折率や透明性についての特別な要件は必要でなく、したがって保護層については自由に材料を選択することができる。特に耐熱性や撥水性あるいは難燃性などに優れた材料で保護層を形成することで、ファイバに新たな機能を付加することも可能となる。さらにこの場合にはクラッドを全体として薄くすることができ、クラッド用の材料の使用量を少なくすることが可能となる。しかもファイバとしての物理的強度や耐久性をコアと保護層に負担させることができる、つまりクラッドに対する物理的強度や耐久性などの要件を緩和できる。このためクラッド材の選択幅を広くすることができる。
【0011】
【実施の形態】
以下本発明の好ましい実施形態について説明する。図1〜図3に第1〜第3の各実施形態による光ファイバの横断面を示す。これら各実施形態は何れも外周面に複数の凹部を有するタイプに関する。図1の第1の実施形態による光ファイバは、そのコア10が外周面に、内側に凸である曲面部となる凹部11を5個有する。5個の凹部11は、何れも同じ大きさで同じ形状とし、コア10の横断面形状が回転や反射について対称性を持つようにする。このようにすることで温度変化や湿度変化に対する耐久性を高めることができる。コア10に外接するクラッド12は、その内周形状をコア10の外周形状に対応する形状とし、その外周形状は円形とする。
【0012】
このような光ファイバにあっては、伝搬途中の光線がコアとクラッドの界面で反射する際に、複数の凹部11による凸凹面で主に不規則的に反射角を変化させる。そしてこれにより界面への入射角が小さくなった際にコア外に漏出して伝搬しなくなる光線R1 やR2 を生じる。このような現象は、θ>cos -1( nc /n1)なる光線について生じ、θ≦cos -1( nc /n1)なる光線に対しては影響を及ぼさない。したがって伝搬速度の遅い光線だけを効果的に除去でき、伝送帯域を改善できる。伝送帯域の改善程度は、ファイバに光を入射させる際の開口角などの条件によって異なるが、特に入射開口角が大きい場合にその効果が大きい。モデル計算によると、従来の一般的なSIファイバに比べ、2倍弱程度まで伝送帯域を広げることが可能である。
【0013】
図2の第2の実施形態による光ファイバは、そのコア20が外周面に凹部21を12個有しており、第1の実施形態におけるコア10に比べ凹凸の変化周期が小さい。このためコア20の外周形状及びこれに対応するクラッド22の内周形状は比較的円に近い形状となる。この光ファイバの場合の伝送帯域改善効果は第1の実施形態による光ファイバの場合とほぼ同じである。
【0014】
図3の第3の実施形態による光ファイバは、そのコア30が外周面に凹部31を4個有し、これに応じてクラッド32が4個の凸部を有しており、凹凸変化の周期は第1の実施形態の中それよりも大きくなるタイプである。この形態の場合も第1の実施形態による光ファイバの場合とほぼ同じな伝送帯域改善効果を得られる。
【0015】
以上の各実施形態のように外周面に凹部を有するタイプについては、コアの外周形状が比較的複雑になることから、ファイバ同士を接続する場合にコアの重ね合わせにズレを生じて若干の伝送損失を招く可能性がある。このことは凹部の個数を選択する上で一つの要件となる。したがって凹部の個数は、この要件と例えば製造性などの他の要件とを総合的に考慮して適宜に選択するのが好ましい。
【0016】
図4と図5に第4と第5の各実施形態による光ファイバの横断面を示す。これら各実施形態は何れも外側に凸である曲面のみからなる外周形状を有するタイプに関する。図4の第4の実施形態による光ファイバは、そのコア40の外周形状が楕円形をしており、これに対応してクラッド41の内周形状も楕円形である。この形態の光ファイバでも第1の実施形態による光ファイバの場合と同様なメカニズムでθ>cos -1( nc /n1)なる光線を光線R3 やR4 のようにしてコア外に漏出させることができる。この場合の伝送帯域改善効果は、コアにおける楕円の偏平程度を応じて異なる。図6にその関係を示す。これは所定の条件でのモデル計算により求めたもので、楕円における短径r1 と長径r2 の比r1 /r2 と伝送帯域改善程度の関係を示している。縦軸は、従来の一般的なSIファイバの伝送帯域に対する改善倍率を表し、横軸は、r1 /r2 を表している。
【0017】
図5の第5の実施形態による光ファイバのコア50は、なめらか曲面による角部を3個有する三角形的な形状の外周形状を有し、これに対応してクラッド51も同様な内周形状を有している。この形態の場合も第4の実施形態による光ファイバの場合とほぼ同じな伝送帯域改善効果を得られ、コア50についての内接円の半径r1 と外接円の半径r2 の比r1 /r2 により伝送帯域改善程度が異なる。
【0018】
第6の実施形態では、図7に示すように、第1の実施形態と同様な外周形状のコア60に、均一な厚みとしたクラッド61を外接させ、さらにこのクラッド61に外周形状が円形である保護層62を外接させる。この場合のクラッド61は、伝搬光の全反射のための機能を損なわない範囲で全体として薄くする。
【0019】
【発明の効果】
以上説明してきた如く、本発明によると、実質的なコストアップ要因を伴うことなくマルチモード・ステップインデックス形ファイバの伝送帯域を改善することができ、マルチモード・ステップインデックス形ファイバの有用性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態による光ファイバの横断面図。
【図2】第2の実施形態による光ファイバの横断面図。
【図3】第3の実施形態による光ファイバの横断面図。
【図4】第4の実施形態による光ファイバの横断面図。
【図5】第5の実施形態による光ファイバの横断面図。
【図6】第6の実施形態による光ファイバにおける伝送帯域改善程度についてのグラフ図。
【図7】第6の実施形態による光ファイバの横断面図。
【図8】従来のSIファイバの横断面図。
【図9】従来のSIファイバの縦断面図。
【符号の説明】
10,20,30,40,50,60, コア
11,21,31 凹部( 曲面部)
12,22,32,41,51,61, クラッド
62 保護層

Claims (3)

  1. コアとこれに外接するクラッドとを有する光ファイバにおいて、
    前記コアは、伝搬途中の光線に反射角の変化を生じさせるように曲率を変化させる部分を外周面に有し、前記クラッドは、その厚みが均一とされて前記コアに外接し、そして、このクラッドに外接する保護層を設けたことを特徴とする光ファイバ。
  2. コアの外周面に内側に凸である曲面部を有している請求項1に記載の光ファイバ。
  3. コアの外周面が外側に凸である曲面のみからなっている請求項1に記載の光ファイバ。
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