JP3682290B2 - 防災用引戸自動閉鎖装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に火災を発生した緊急時、開放状態にある引戸を火災検知器と連動して強制的に摺動させて、開口部を自動的に閉鎖する防災用引戸自動閉鎖装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
オフィスビルや病院や学校など建物の中には、火災の発生時に、煙に含まれる有毒ガスが廊下から部屋へ、また部屋から部屋へと侵入するのを未然に防止するため、開放状態にある引戸は、強制的に閉方向へ摺動させて開口部を閉鎖する防災システムが採られているものがある。このため、従来、そのような建物では、引戸を、開口部の上側で戸先側を若干下向きに傾斜させて敷設したガイドレールに、戸車を介して開閉自在に吊持する一方、火災発生時に引戸が開放状態にあると、その引戸を、火災検知器と連動して強制的に閉方向へ摺動させて、自動的に開口部を閉鎖する防災用の引戸自動閉鎖装置を設置している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この従来の引戸自動閉鎖装置は、図12および図13に示すように、引戸1上の戸先側に立設した戸車ブラケット1aに、貫通穴2aを有するストッパ2を搭載している。一方、開口部s上方のレールベース板3には、その正面戸先側に、うず巻ばね4aを内蔵した付勢ユニット4を付設している。付勢ユニット4は、うず巻ばね4aに接続したワイヤー4bをストッパ2の貫通穴2aに挿通させて、そのワイヤー4bの先端にスライダ5を連結している。
【0004】
スライダ5は、円板状本体5aの開閉方向前後面に、それぞれワイヤー4bの先端を固着した嵌合筒部5bと、円形鍔状の掛止突部5cを突設している。そして、円板状本体5aの外周に吊下金具6aを立設し、その吊下金具6aの上端をワイヤーロープのガイド6に引っ掛けてスライダ5を開閉方向に移動自在に吊り下げている。そのため、ガイド6は、戸先側端部をレールベース板3にアングル6bを介して固着する一方、戸尻側端部をロック機構8の箱型ケース8aに固着してガイドレール9およびワイヤー4bと平行に架設している。
【0005】
ロック機構8は、引戸1の開閉ストロークに対応さて、付勢ユニット4に対し戸尻側に離隔させた位置でレールベース板3の同じ正面に設置し、箱型ケース8a内に掛止フック8b、引張ばね8c、ソレノイド8d等を組み込んで構成されている。掛止フック8bは、凹部を下向きに形成してフック部8b1を設け、回転軸8e上に固定している。そして、同軸上に有するベルクランク8fの一端部に引張ばね8cを掛け止め、他端部にソレノイド8dのプランジャ8d1を連結している。ソレノイド8dは、図示省略した火災検知器と電気的に接続し、その火災検知器が火災発生時に煙や温度を検知すると、出力する検出信号に基づいて通電制御される構造になっている。
【0006】
そして、正常時は、図14に示すように、ロック機構8のソレノイド8dに通電してプランジャ8d1を吸引し、掛止フック8bを、引張ばね8cに抗して一方向に回動させて掛止突部5cに掛け止め、うず巻ばね4aで常時引っ張っているスライダ5をロック状態で保持している。
【0007】
そこで、例えば引戸1が全開しているときに、火災が発生した場合は、火災検知器が煙や温度を検知すると同時に、図示省略したセンサで引戸1が開放状態にあることを検知すると、ソレノイド8への通電が遮断され、すると、引張ばね8cにより掛止フック8bを他方向に回動し、スライダ5のロック状態が解除される。すると同時に、うず巻ばね4aの巻き取り力によって、スライダ5をワイヤー4bを介し引き寄せて、嵌合筒部5bが嵌合状態のストッパ2を介して引戸1を押圧しながら、閉方向へガイドレール9に沿って摺動させて開口部sを自動的に閉鎖する。
【0008】
他方、引戸1が半開き状態のときに火災が発生した場合、同様にスライダ5のロック状態が解除されると、スライダ5は、その嵌合筒部5bが閉方向途中にあるストッパ2の貫通穴2aと軸心が一致するように、ガイド6によって直線的に案内されながら、うず巻ばね4aにて引き寄せられる。そして、スライダ5が、図12中鎖線で示すようにストッパ2に当接し、嵌合筒部5bがストッパ2の貫通穴2aに嵌合すると、引戸1を同様に押圧しながら摺動させて、開口部sを閉鎖するようにしている。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−262913号公報(第3〜5頁、図1〜図5)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述のように従来の防災用引戸自動閉鎖装置は、正常時に、ロック機構8でスライダ5をロック状態で保持する一方、火災発生時は、スライダ5のロック保持を解除し、該スライダをうず巻ばね4aの巻き取り力を利用して閉方向に引き寄せるために、スライダ5のロック機構8を、引戸1の開閉ストロークに対応させて、うず巻ばね4aを内蔵の付勢ユニット4に対し戸尻側へ遠く離した位置でレールベース板3に設置している。
【0011】
したがって、従来の引戸自動閉鎖装置では、うず巻ばね4aに接続のワイヤー4bと、ワイヤー4bが貫挿する引戸1に搭載のストッパ2と、ストッパ2に嵌合するスライダ5と、スライダ5をフック部8b1で掛け止めるロック機構8の掛止フック8bなど、相互に分離した各構成部品を、個々の軸心を合致させて所定の各離隔位置に正確に取り付けることは、相当の熟練者でない限り困難である。そのため、取り付けに著しく時間と手間を要し、たとえ取り付けが可能であっても取付位置精度が悪く、それが原因で、引戸自動閉鎖装置の動作精度に悪影響を及ぼし、その結果、肝心の火災時に引戸1をスムーズに摺動させることができないことがあるという課題があった。
【0012】
また、うず巻ばね4aを内蔵の付勢ユニット4とスライダ5のロック機構8とを遠く分離させた構成であるため、火災発生時、引戸1が半開き状態のときに、スライダ5を、ストッパ2の貫通穴2aと軸心が一致するように案内する専用のガイド6を、別途レールベース板3上に組み付ける必要があることから、それだけ構造が複雑になり部品点数が増加するという問題がある。しかも、ガイド6は、ガイドレール9およびワイヤー4bと、精度よく平行に架設しなければならず、その点でも、やはり取り付けに手間がかかって面倒であると共に、架設状態によっては、引戸自動閉鎖装置の動作精度に悪影響を及ぼすという課題があった。
【0013】
さらに、従来の引戸自動閉鎖装置では、上述のようにレールベース板3の正面に、付勢ユニット4とロック機構8とを遠く離して設置し、加えてガイド6を架設するために、それだけ上下方向に幅広い設置面が必要になり、通常、そこを正面側から覆い隠すのに用いられる幕板も、幅広で大型なものが必要になってしまう。しかも、開口部sの上方において、その正面に大型な幕板を組み付けた状態では、引戸周りの見栄えが悪く、美的外観上好ましくないという課題もあった。
【0014】
そこで、本発明の目的は、引戸周りの美的外観を損なうことなく、しかも、開口部の上方に取付位置精度よく簡単に組み付けて、引戸を自動的に閉鎖する動作精度を良好に保つ防災用引戸自動閉鎖装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
したがって、請求項1に記載の発明は、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、開口部S上方の磁性体からなるレールベース板11に固定したガイドレール16に、戸車14・15を介して吊設した引戸Dが開放状態にあるとき、火災検知器Cからの火災検知信号を受信すると、引戸Dを強制的に閉方向へ摺動させて開口部Sを自動的に閉鎖する防災用引戸自動閉鎖装置Aにおいて、前記ガイドレール16上にスライド自在に設け、火災を発生した異常時、前記戸車14の支持ブラケット12を押圧して前記引戸Dを可動させるスライドピース20と、該スライドピース20の駆動をコントロールする駆動制御ユニットYとを備え、前記スライドピース20は、前記レールベース板11の正面11aと対向する吸着面23にマグネット25を付設し、該吸着面23をレールベース板正面11aに磁気的に吸着した状態で前記ガイドレール16に係合してなり、前記駆動制御ユニットYは、前記スライドピース20を、ワイヤーwのような屈撓媒介部材を介して連結して前記引戸Dを引き寄せる閉方向に付勢する付勢手段aと、前記火災検知器Cから火災検知信号を受信しない正常時は、該付勢手段aの前記スライドピース20に対する閉方向付勢力をロックする一方、火災検知信号を受信した異常時は、付勢手段aのスライドピース20に対する閉方向付勢力のロックを解除し、その閉方向付勢力を働かせてスライドピース20を引き寄せるロック制御機構bとを、一体的に組み付けてユニット化してなることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
図1に、本発明による防災用引戸自動閉鎖装置Aを組み付けた引戸構造体を示す。引戸構造体Bは、床面F上に、図中左右の縦枠10a・10bと上側の横枠10cとで矩形な支持枠体10を構築し、その支持枠体10の上側に横長なレールベース板11を横設すると共に、引戸Dで開閉する開口部Sの戸尻側に戸袋用壁体を立設している。引戸Dは、上端面の戸先側と戸尻側にそれぞれ立設した支持ブラケット12・13に、戸車14・15を回転自在に取り付けた上吊り引戸である。
【0018】
レールベース板11は、磁性体からなる横長な金属板で、正面11aにガイドレール16を敷設している。ガイドレール16は、図2に示すように、長さ方向にガイド溝16aを形成する断面略L形状ををなし、係合用凸条部16bと反対の背面板部16cをレールベース板11に固定し、図1に示すように、戸先側を若干下向きに傾斜させて設置されている。そして、ガイド溝16aに戸車14・15を係合させて引戸Dを図中左右の開閉方向に摺動自在に吊持している。
【0019】
なお、戸先側の支持ブラケット12には、戸車14の回転を減速して制動トルクを発生させる制動機構17を組み付け、傾斜したガイドレール16に沿って引戸Dを開閉操作するときに、任意の開位置で停止させて開き度合を調節できる構造になっている。
【0020】
さて、防災用引戸自動閉鎖装置Aは、引戸構造体Bに対しレールベース板11の正面11aに組み付け、ガイドレール16上をスライドするスライドピース20と、スライドピース20の駆動をコントロールする駆動制御ユニットYとを備えて構成してなる。
【0021】
スライドピース20は、たとえば樹脂材料で一体成形し、図2および図3に示す如く、長さ方向にワイヤー挿通穴21を穿設した本体ピース部20aの図中下部側に、ガイドレール16のガイド溝16aに合わせて係合突部20bを突設すると共に、断面L状の係合片20cを係合突部20bと平行に延設している。係合片20cは、係合突部20bより若干下向きに長く延び、該係合突部20b間に、ガイドレール16の凸条部16bに合わせて係合凹溝22を形成している。また、係合片20cは、その片側が本体ピース部20aから横向きに突出し、そこに戸車14の支持ブラケット12に対する押し当て部20dを形成している。
【0022】
さらに、スライドピース20には、本体ピース部20aから係合突部20bと直交する向きに吸着部20eを突設している。吸着部20eは、その突出側の吸着面23を、レールベース板正面11aに整合させてフラットに形成し、その吸着面23にマグネット25を、その端面を外部に臨ませて付設してなる。
【0023】
斯かる構成のスライドピース20は、屈撓媒介部材、たとえばワイヤーwをワイヤー挿通穴21に通してワイヤー先端を抜け止めし、該ワイヤーwを介して駆動制御ユニットYと連結するようになっている。
【0024】
駆動制御ユニットYは、図1に示すように、ベースプレート24に対し、スライドピース20の付勢手段aを構成する部品と、付勢手段aの作動をコントロールするロック制御機構bの構成部品を、以下の如く一体的に組み付けてユニット化してなる。
【0025】
ベースプレート24は、図4〜図7に示すように、立板部24aと底板部24bとに直角に曲げ成形してなる。図示例の付勢手段aは、ゼンマイ駆動式付勢手段で、不図示のうず巻ばねを内蔵する一方、外周にワイヤーリールを一体に有する樹脂製のゼンマイケースを、図中左の側面を開放した箱状外ケース27内に回転軸26を中心として回転自在に収納している。ワイヤーリールには、同軸的に略同径な駆動伝達ギヤ30が一体に設けられ、外周の環状溝に、基端を固定したワイヤーwが巻装されている。そして、該ワイヤーリールを、駆動伝達ギヤ30と共に、基端が固定のうず巻ばねのバネ力によってワイヤーwを巻き取る方向(図中時計方向)に常時回転付勢している。
【0026】
斯かる付勢手段aは、ベースプレート24の底板部24b上にあって、図中左の後端寄りに、外ケース27を立ててねじ止めする。そして、外ケース27の前側の側面下側にあけた引き出し穴27aからワイヤーwを引き出すと共に、立板部24a上の前端にねじ止めしたワイヤーガイド28の貫通穴28aに挿通させて、ベースプレート24の下方に沿わせて前方へと引き出している。引き出したワイヤーwの先端に、前述の如くスライドピース20を連結している。
【0027】
駆動制御ユニットYのロック制御機構bは、駆動規制ギヤ35と、作動制御手段40とを備えて構成されている。駆動規制ギヤ35は、ベースプレート24の底板部24b上にあって、その後端に立設したアングル板31で回転自在に軸支している。そして、駆動規制ギヤ35は、図示省略するが、ワンウエイクラッチを軸心周りに内蔵し、該ワンウエイクラッチの働きで図中反時計方向の一方向(図7中矢印X方向)にのみ回転するように回動規制されている。
【0028】
一方、ロック制御機構bの作動制御手段40は、ベースプレート24に組み付けるロックレバー33、ロータリーダンパ34、リンクアーム36、カムレバー37、ソレノイド38、マイクロスイッチ39を主要部品として備える。
【0029】
ロックレバー33は、長手な金属プレートを曲げ加工し、中心軸穴33aを有する平板部33bの後側片33c(図中左側)を、L板状に折り曲げる一方、前側片33dをクランク状に折り曲げて成形してなる。そして、後側片33c先端の曲げ板部に取付部33eを形成する一方、前側片33d先端の曲げ片部に係止突部33fを形成している。なお、後側片33cには、取付部33eと直交する板部下縁に、矩形にあけたリセット用の切欠き穴33gを設けている。そして、本体の平板部33bには、中心軸穴33aの近傍にばね掛けピン41を固着し、後側片33cの取付部33eには、ロータリーダンパ34をねじ止めする一方、前側片33dには、係止突部33fと平行に長ねじからなる作用ピン42を横設している。
【0030】
ロータリーダンパ34は、円筒状のケース部34a内にロータを回転自在に収納し、該ロータ外周とケース部34a内周との間隙にオイル等の粘性流体を充填してケース部34aに密封し、ロータが回転すると粘性流体の粘性抵抗により制動トルクを発生する回転系ダンパである。このロータリーダンパ34は、ケース部34aから突出するロータ軸先端に制動ギヤ45を連結する一方、それらロータ軸と制動ギヤ45間に一方向クラッチ(図示省略)を配設し、制動ギヤ45が図中反時計方向の一方向に回転したときに制動トルクが発生する構造になっている。
【0031】
斯かるロータリーダンパ34等を組み付けたロックレバー33は、平板部33bを、ベースプレート24の立板部24aと付勢手段aの外ケース27間に配設し、中心軸穴に33aに取付ピン43を通して立板部24aに回動自在に取り付ける。取付ピン43は、駆動伝達ギヤ30と軸線を一致させて立板部24aに固着し、これにより、制動ギヤ45を、駆動伝達ギヤ30とその外周に沿って回動できるように噛み合わせて、ロックレバー33をベースプレート24に取り付けている。さらに取付ピン43には、その軸部にねじりコイルばねの復帰用ばね44を巻装し、そのばね一端をばね掛けピン41に掛け止める一方、ばね他端を、立板部24a上に固着したばね掛けピン46に掛け止めて、ロックレバー33に図中反時計方向の回動付勢力を付与している。
【0032】
リンクアーム36は、図中下端部側に、L板状に曲げ加工したばね装着部36aを有し、ばね装着部36aを有する下端部側に対し上端部側を、く字状に屈曲させて形成してなる。そして、上下端部間には、ばね装着部36aと反対側の板面にストッパピン49を固着し、上端部の尖端には、ばね装着部36aと同じ板面にゴムローラ50を取り付けている。ストッパピン49は、短小円柱を略半分切り欠いた断面半円状に形成されている。斯かるリンクアーム36は、ねじりコイルばね51をばね装着部36aに内設し、そのばね装着部36aを、立板部24aに固着する取付ピン52で軸支して回動可能にベースプレート24に取り付ける。取付ピン52には、その軸部にねじりコイルばね51を巻装し、そのばね一端をばね装着部36aに掛け止める一方、ばね他端を、ベースプレート24の立板部24aに固着したばね掛けピン53に掛け止めて、リンクアーム36を図中時計方向に回動付勢し、ゴムローラ50をカムプレート37の後述する押当板部37bに常時押し当てている。
【0033】
カムレバー37は、板材をチャネル状に曲げ成形したソレノイド連結部37aを設け、ソレノイド連結部37aの片側から延びる板片の上縁を直角に屈曲させて押当板部37bを形成してなる。そして、ソレノイド38に有するプランジャ38aの先端をソレノイド連結部37a内に入り込ませた状態で連結ピン55を嵌挿し、その連結ピン55でカムレバー37を、プランジャ38aと連結すると共にベースプレート24の立板部24aに回動自在に取り付けている。
【0034】
ソレノイド38は、プランジャ38aを上向きにしてベースプレート24の立板部24aに固定し、マイクロスイッチ39と電気的に接続されている。マイクロスイッチ39は、ロックレバー33の作用ピン42に対応させた所定高さ位置で同じ立板部24aに固定し、立板部24aの前端に固着した端子台56と電気的に接続している。
【0035】
端子台56は、図8に示すように、AC電源59に繋いだ通電制御盤60を介して火災検知器Cと電気的に接続している。火災検知器Cは、火災発生時に、例えば煙や温度を検知すると、火災検知信号を引戸閉鎖指令として出力し通電制御盤60へ送信する。通電制御盤60は、火災検知器Cからの火災検知信号の有無とマイクロスイッチ39のオンオフに応じて判断し、ソレノイド38を通電制御する。
【0036】
従って、通電制御盤60が火災検知信号を受信しない正常時は、ソレノイド38は、通電制御盤60から通電されず、図5〜図7に示すようにプランジャ38aが一段突出した固定状態にあるため、プランジャ38aでカムレバー37を水平な回動位置に保持すると共に、カムレバー37の押当板部37bでゴムローラ50を介しリンクアーム36を押し下げて垂直な回動位置に立てて保持している。そのようにリンクアーム36が垂直な起立状態にあるとき、ロックレバー33は、前端側の係止突部33fが、付勢手段aの回動付勢力によってストッパピン49に押し当る一方、後端側の制動ギヤ45が、駆動規制ギヤ35と噛み合った水平な回動位置に保持される。従って、制動ギヤ45が駆動規制ギヤ35と噛み合った状態では、駆動規制ギヤ35の図中時計方向への回転が規制されるため、制動ギヤ45と噛み合った駆動伝達ギヤ30は、付勢手段aによる回動付勢力が作用する図中時計方向の回転が規制された回転ロック状態にある。よって、先端にスライドピース20を連結したワイヤーwは、巻き取り方向とは反対の繰り出し方向には引き出し可能な状態にある。なお、このようにロックレバー33が制動ギヤ45と駆動規制ギヤ35とが噛み合う水平な回動位置にあるとき、マイクロスイッチ39は、作用ピン42の下側で接点バネ39aを起したオフの状態にある。
【0037】
さらに、上述した駆動制御ユニットYには、図4〜図7に示すように、ベースプレート24の底板部24bにおける後端側にリセット機構65を備える。リセット機構65は、L板状のばね当接板66と、リセットピース67と、圧縮コイルばね68を有する。リセットピース67は、ロックレバー33の切欠き穴33gと対応する立方体形状をなし、長穴状のガイド穴67aを高さ方向に貫通させて設けると共に、ガイド穴67aの貫通方向と直交する向きに有底のばね収納穴67bを穿設している。そして、ばね収納穴67bを設けた側面67cに、引張操作用の紐69を連結している。ばね当接板66は、一側の取付板部66aを底板部24bの下面にねじ止めする。リセットピース67は、ばね収納穴67bに圧縮コイルばね68の一部を入れ、長ねじ70をガイド穴67aに貫挿して底板部24b上でロックレバー33の長さ方向にスライド可能に設置している。
【0038】
斯かるリセット機構65は、付勢手段aによる回動付勢がロック状態になる水平な回動位置にロックレバー33が保持されているときは、リセットピース67が切欠き穴33gから外れた位置にあり、リセットピース67とばね当接板66間で圧縮された圧縮コイルばね68によってロックレバー33の後側片33cに押し当っている。
【0039】
さて、上述した構成の引戸自動閉鎖装置Aを組み付けるとき、駆動制御ユニットYは、後方のリセット機構65を戸先側に向けて、べースプレート24の立板部24aを、図1に示すようにレールベース板正面11aの戸先側の角縁にねじ止めするだけでよい。
【0040】
一方、スライドピース20は、付勢手段aからワイヤーwを引き出して、戸車の支持ブラケット12・13間のガイドレール16上にセットする。その場合、ガイドレール16には、図2に示すように、係合凹溝22に凸条部16bを嵌め込んだ状態で、係合突部20bをガイド溝16aに係合してスライド自在に装着する。そして、レールベース板11に対し、その正面11aに吸着面23を磁気的に吸着させた状態でセットするだけでよい。このように引戸自動閉鎖装置Aは、組み付け時に構成部品相互の位置合せなどの取付精度に苦慮することなく、例え熟練者でなくとも簡単に且つ迅速に取り付けられる。
【0041】
そこで、この引戸自動閉鎖装置Aを組み付けた引戸構造体Bにおいて、正常時、引戸Dを開くときは、開方向に引戸Dをスライドさせると、戸先側戸車の支持ブラケット12が、レールベース板正面11aに吸着したスライドピース20の押し当て部20dに押し当たる。そのまま引戸Dを開方向へスライドさせると、付勢手段a内で駆動伝達ギヤ30と共にワイヤーリールが図中反時計方向に回転してワイヤーwが繰り出される一方、そのワイヤーwを戸車ブラケット12で引っ張りながら、スライドピース20を押してガイドレール16のガイド溝16aに沿って摺動する。そして、図示のように引戸Dを全開することができる。
【0042】
また、一度に全開せずに、途中の開位置で引戸Dのスライドを止めると、戸車14の支持ブラケット12に付設の制動機構17が働き、その所望開位置で引戸Dを停止させて、半開き状態など適宜に開き度合を調節することができる。
【0043】
さらに、以上のように引戸Dを開くとき、付勢手段a内のワイヤーリールからワイヤーwが繰り出される一方、スライドピース20は、吸着面23でレールベース板正面11aに磁気的に吸着した状態にあるため、戸車ブラケット12に押されると、吸着状態のまま、離れず追随してガイドレール16上を開方向へスライドする。従って、駆動制御ユニットYとスライドピース20を結ぶワイヤーwは、スライドピース20と駆動制御ユニットY間で、弛むことなく緊張状態を保持して引き出される。その結果、ワイヤーwが弛んで引戸Dの開き動作に干渉することがなく、ワイヤーwを介してスライドピース20を駆動制御ユニットYに連結したまま、スムーズに引戸Dを開けることができる。
【0044】
さて反対に、全開位置や半開き位置など適宜の開位置から、引戸Dを閉じるときは、付勢手段a内のワイヤーリールがワイヤー巻取方向には回転ロック状態にある一方、図9に示すように、スライドピース20は、吸着面23でそのまま元の開位置に停止し、特にレールベース板正面11aに磁気的に吸着した状態にあるため、引戸Dの開動作時と同様に、ワイヤーwは、スライドピース20と駆動制御ユニットY間で、弛むことなく緊張状態を保持される。従って、ワイヤーwやスライドピース20が引戸Dの閉動作に干渉することがなく、ワイヤーwを介してスライドピース20を駆動制御ユニットYに連結したまま、スムーズに引戸Dを閉めることができる。
【0045】
さて、たとえば引戸Dが図1に示す全開位置にあるときに、火災が発生し、図8で示した火災検知器Cが煙や温度を検知すると、火災検知信号を引戸閉鎖指令として出力し通電制御盤60へ送信する。すると、通電制御盤60は、引戸閉鎖指令に従ってソレノイド38を通電する。
【0046】
ソレノイド38は、通電されると、図10および図11に示すように(図2も参照)、プランジャ38aを吸引して引き込む。すると、カムレバー37が図中時計方向に回動し、その押当板部37bでねじりコイルばね51に抗してリンクアーム36を図中反時計方向に回動して傾ける。従って、リンクアーム36が垂直な起立状態から、このように傾斜状態なると、ストッパピン49と係止突部33fの掛け合いが外れるため、ロックレバー33が図中時計方向に若干回動する。すると、制動ギヤ45の駆動規制ギヤ35に対する噛み合いが外れ、制動ギヤ45と噛み合った駆動伝達ギヤ30は、付勢手段aによる回動付勢力が作用する図中時計方向への回転ロック状態が解除される。
【0047】
回転ロック状態が解除されると、付勢手段aは、うず巻ばねのばね付勢力によりワイヤーリールを図中時計方向へ回転してワイヤーwを巻き取り、スライドピース20をガイドレール16に沿って閉方向へスライドさせて引き寄せる。すると、スライドピース20で戸車14の支持ブラケット12を押圧し、引戸Dをガイドレール16の下向き傾斜に従って閉方向へ強制的に摺動させ、自動的に閉止する。
【0048】
このときは同時に、図11に示すように、ロックレバー33が回動して後側片33cが若干尻上がり状態のロック解除姿勢になると、リセット機構65において、圧縮コイルばね68のばね力でリセットピース67を図中右の前方へスライドし、リセット用切欠き穴33gに係合する。そして、ロックレバー33のロック解除姿勢をそのまま保持する。
【0049】
また、このとき同時に、ロックレバー33は、作用ピン42で接点バネ39aを押し下げてマイクロスイッチ39をオンする。マイクロスイッチ39がオンすると、それに基づいて通電制御盤60では、引戸自動閉鎖装置Aが引戸Dを閉鎖すべく作動したことを確認し、これ以上のソレノイド38への通電を遮断する。
【0050】
さらに、引戸自動閉鎖装置Aでは、この火災発生時に、付勢手段aによる回動付勢力が働く図中時計方向に駆動伝達ギヤ30が回転すると、それと噛み合う制動ギヤ45が図中反時計方向に回転するため、制動ギヤ45に内蔵の上記一方向クラッチが働き、同軸のロータリーダンパ34が作動して制動トルクを発生し、これによって駆動伝達ギヤ30を重く回転させる。従って、ワイヤーリールの回転にもブレーキが掛かり、付勢手段aのうず巻ばねによるワイヤーwの巻取速度を制限し、引戸Dが過度に強く引き寄せられて縦枠10aの戸当たりに激突するのを防止する。
【0051】
なお、火災発生の異常時に、引戸Dが全開位置になく、制動機構17により途中の開位置に停止し、図9に示す如く半開き位置にある一方、スライドピース20が戸車14の支持ブラケット12から戸尻側に離れた吸着位置にあるときでも、スライドピース20は、付勢手段aによってガイドレール16に沿って閉方向へ案内されて引き寄せられ、図9中鎖線で示すように押し当て部20dを支持ブラケット12に突き当て押圧し、そのまま引戸Dを閉方向へ摺動させて閉止することができる。
【0052】
このように火災発生の異常時に、付勢手段aでスライドピース20を引き寄せて引戸Dを強制的に閉鎖するときも、上述のように常にワイヤーwは弛みなく緊張状態に保持されているため、この強制的な引戸閉鎖動作にワイヤーwが干渉して障害になるようなことが全くなく、引戸Dはスムーズに自動閉鎖することができる。
【0053】
さて、以上の引戸Dに対する自動閉鎖動作を終えて後、引戸自動閉鎖装置Aを、改めて、火災発生の異常時に備えるべく、元の非作動状態に復帰させる場合は、いま図11に示す如くロック解除姿勢にあるロックレバー33に対し、リセット機構65の引張操作用紐69を圧縮コイルばね68に抗し引っ張ってリセットピース67を引き出し、リセット用切欠き穴33gから取り外す。すると、いまソレノイド38は非通電状態にあるが、ロックレバー33は、復帰用ばね44のばね付勢力によって図中時計方向に回動し、図6および図7に示すように、制動ギヤ45が駆動規制ギヤ35と噛み合って付勢手段aによる回動付勢を規制する元の回転ロック状態に復帰する。
【0054】
なお、上述した図示実施の形態では、スライドピース20を、引戸Dの戸車用支持ブラケット12・13間においてガイドレール16上にセットした例を示した。しかし、本発明は、適用する引戸の開閉ストロークが比較的長い場合において、正常時に引戸をスライドさせて閉止するとき、戸尻側戸車の支持ブラケットがスライドピースに当たってワイヤーのような屈撓媒介部材を弛ませることがないように、スライドピースは、戸尻側戸車の支持ブラケットの更に戸尻側でガイドレール上にセットすることもできる。
【0055】
【発明の効果】
以上のような構成の本発明による防災用引戸自動閉鎖装置によれば、スライドピースに対する付勢手段と、そのロック制御機構を一体的に組み付けてユニット化し、このスライドピースの駆動をコントロールする駆動制御ユニットにスライドピースを連結した構成であるため、装置の組み付けは、単体の駆動制御ユニットを開口部の上方に取り付ける一方、これに屈撓媒介部材で繋いだスライドピースをガイドレール上にセットするだけで済み、これにより、取付位置精度に過度に苦慮することなく、例え熟練者でなくとも極めて簡単且つ迅速に取り付けることができ、その結果、引戸を自動的に閉鎖する動作精度も向上させることができる。
【0056】
また、スライドピースは、既存の引戸用ガイドレール上にセットし、そのガイドレールで案内させる構成であるため、従来のようにスライドピースを案内する専用のガイドを別途ガイドレールに沿って設置する必要がなく、その結果、余計に部品点数が増加して取付構造が複雑になることを防止することができ、加えて、そのようなガイド取付けの手間も余計に発生せず、ガイドの取付精度にも苦慮しないで済むという利点がある。
【0057】
さらに、装置としては、上述のようにスライドピースに対する付勢手段と、そのロック制御機構とが一体の駆動制御ユニットを、開口部上方の適宜位置に設置するだけでよく、しかも、スライドピース専用のガイドも不要であるため、従来のように開口部上方で上下に幅広な設置面を必要とせず、従って、そこを正面側から覆い隠す幕板も、比較的幅狭で小型なもので済み、その結果、引戸周りの見栄えがスッキリして美的外観性を高めることができる。
【0058】
加えて、本発明による防災用引戸自動閉鎖装置によれば、特にスライドピースは、吸着面にマグネットを付設し、吸着面をレールベース板正面に磁気的に吸着した状態でガイドレールに係合する構成であるため、正常時に、引戸を開閉するとき、スライドピースは、レールベース板正面に常に吸着状態のままガイドレール上をスライドし、駆動制御ユニットの付勢手段とスライドピースとの間を結ぶワイヤー等の屈撓媒介部材を弛ませることがなく、常に緊張状態で保持することから、ワイヤー等が引戸の開閉動作に干渉して障害になるようなことがなく、スライドピースを駆動制御ユニットと直接ワイヤー等で連結した構成であっても、何ら支障なく引戸をスムーズに開閉することができる。従って、このように常にワイヤー等を弛みなく緊張状態で保持するため、火災発生の異常時、付勢手段でスライダピースを引き寄せて引戸を強制的に閉鎖するときでも、その引戸閉鎖動作にワイヤー等が干渉して障害になるようなことが全くなく、スムーズに引戸を自動閉鎖することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による防災用引戸自動閉鎖装置の一例を組み付けた引戸構造体を、引戸が全開状態において示す正面図である。
【図2】 スライドピースのガイドレールに対する係合状態を示す縦断面図である。
【図3】 (A)・(B)はそれぞれ見る角度を逆向きにしてスライドピースを示す斜視図である。
【図4】 引戸自動閉鎖装置の分解斜視図である。
【図5】 引戸自動閉鎖装置の組立斜視図である。
【図6】 引戸自動閉鎖装置の正面図である。
【図7】 引戸自動閉鎖装置の正常時における作動説明図である。
【図8】 引戸自動閉鎖装置と火災検知器との電気的接続構成を説明するブロック図である。
【図9】 引戸自動閉鎖装置を組み付けた引戸構造体を、引戸を開止途中の状態において示す正面図である。
【図10】 引戸自動閉鎖装置を、異常時の作動状態において示す正面図である。
【図11】 引戸自動閉鎖装置の異常時における作動説明図である。
【図12】 従来の引戸自動閉鎖装置を示す斜視図である。
【図13】 従来の引戸自動閉鎖装置の要部を拡大して示す斜視図である。
【図14】 従来の引戸自動閉鎖装置の要部作動説明図である。
【符号の説明】
A 防災用引戸自動閉鎖装置
C 火災検知器
D 引戸
S 開口部
Y 駆動制御ユニット
a 付勢手段
b ロック制御機構
w ワイヤー(屈撓媒介部材)
11 レールベース板
11a レールベース板正面
12 戸先側戸車の支持ブラケット
14・15 戸車
16 ガイドレール
20 スライドピース
23 吸着面
25 マグネット
30 駆動伝達ギヤ
34 ロータリーダンパ
35 駆動規制ギヤ
40 作動制御手段
45 制動ギヤ
Claims (1)
- 開口部上方の磁性体からなるレールベース板に固定したガイドレールに、戸車を介して吊設した引戸が開放状態にあるとき、火災検知器からの火災検知信号を受信すると、引戸を強制的に閉方向へ摺動させて開口部を自動的に閉鎖する防災用引戸自動閉鎖装置において、
前記ガイドレール上にスライド自在に設け、火災を発生した異常時、前記戸車の支持ブラケットを押圧して前記引戸を可動させるスライドピースと、該スライドピースの駆動をコントロールする駆動制御ユニットとを備え、
前記スライドピースは、前記レールベース板の正面と対向する吸着面にマグネットを付設し、該吸着面をレールベース板正面に磁気的に吸着した状態で前記ガイドレールに係合してなり、
前記駆動制御ユニットは、
前記スライドピースを、屈撓媒介部材を介して連結して前記引戸を引き寄せる閉方向に付勢する付勢手段と、
前記火災検知器から火災検知信号を受信しない正常時は、該付勢手段の前記スライドピースに対する閉方向付勢力をロックする一方、火災検知信号を受信した異常時は、付勢手段のスライドピースに対する閉方向付勢力のロックを解除し、その閉方向付勢力を働かせてスライドピースを引き寄せるロック制御機構とを、
一体的に組み付けてユニット化してなる、防災用引戸自動閉鎖装置
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-
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