JP3680710B2 - 誘電体平面アンテナ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体を用いた平面アンテナに係り、特に、高利得、高効率で小型化が可能な誘電体平面アンテナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
移動体通信、無線通信に使用される固定端末、半固定端末、移動端末には平面アンテナが使用される。また、車載レーダにも平面アンテナが使用される。
【0003】
従来、この種の平面アンテナは、伝送路(導波系)に導体線路を用いたマイクロストリップアンテナやプレートアンテナなどが主流である。しかしながら、これらの平面アンテナは、導体の使用割合が高いため、周波数の上昇とともに、導体に電磁波を励振した際に生ずる損失(導体損失)や放射による損失(放射損失)が大きく、高効率な送受信特性を得ることが困難となる。さらに、これら平面アンテナの小型化の際には導体部分の配置の複雑化に伴い、導体間の電磁誘導も顕著に発生するため、導体部分のパターンやサイズに関する自由度が狭くなる問題がある。
【0004】
そこで、高い周波数で使用するアンテナに関しては、導体の使用割合が高いアンテナ(マイクロストリップアンテナやプレートアンテナ)から、誘電体の使用割合を高くした誘電体アンテナへと推移する傾向がある。誘電体アンテナにおける従来技術として、アレイ型の誘電体アンテナに関して、IEEE Trans.Microwave Theory and Tecniques Vol.MMT-31,No2,pp.198-208,Feb.,1981.及びIEEE Trans.Antenna and Propagation Vol.MMT-39,No7.,pp.883-891,June,1991.に詳細に述べられている。ここで述べられたアレイ型の誘電体アンテナは、アンテナを構成する誘電体内を一方向に進行する電磁波が、誘電率の異なる誘電体同士の組み合わせ(誘電率の不連続部分)から外部に漏洩するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術では、励振方法が導波路内を一方向に進行する電磁波(の振幅)による励振(進行波励振)であるため、波長周期で電磁波(の振幅)が励振(定在波励振)する場合に比べ、より大きな利得が得られないという問題がある。また、使用周波数に対する誘電体導波路の長さ(励振長)により、小型化が困難な構造となっている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、高利得、高効率で小型化が可能な誘電体平面アンテナを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、直線部から他の直線部への反射面が形成された少なくとも1つの屈曲部を有する誘電体導波路と、前記直線部の終端の端面に密着設置された端面導体板と、前記誘電体導波路の上面に密着設置され、前記誘電体導波路とは誘電率の異なる誘電体ブロックと、前記誘電体導波路の下面に密着設置された下面導体板と、前記屈曲部の反射面外側に密着設置され、前記誘電体導波路とは誘電率の異なる誘電体領域とを備えたものである。
【0008】
また、本発明は、直線部から他の直線部への反射面が形成された複数の屈曲部を有し、無端状に形成された誘電体導波路と、前記誘電体導波路の上面に密着設置され、前記誘電体導波路とは誘電率の異なる誘電体ブロックと、前記誘電体導波路の下面に密着設置された下面導体板と、前記屈曲部の反射面外側に密着設置され、前記誘電体導波路とは誘電率の異なる誘電体領域とを備えたものである。
【0009】
前記反射面が全反射面であってもよい。
【0010】
前記誘電体領域の誘電率が前記誘電体導波路の誘電率よりも低くてもよい。
【0011】
前記反射面の角度が全反射条件を満たす角度であってもよい。
【0012】
複数の前記誘電体ブロックが前記誘電体導波路の管内波長の倍数で決定された間隔で配置されてもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0014】
図1に示されるように、本発明に係る誘電体平面アンテナは、屈曲部を有する誘電体導波路1と、その誘電体導波路1の終端の端面に密着設置された端面導体板2と、誘電体導波路1の上面に密着設置され、誘電体導波路1とは誘電率の異なる誘電体ブロック3と、誘電体導波路1の下面に密着設置された下面導体板4と、前記屈曲部の反射面外側に密着設置され、誘電体導波路1とは誘電率の異なる誘電体領域5と、誘電体導波路1の内部もしくは外部に設けられて誘電体導波路1内に電力を供給する給電部(図示せず)とを備えたものである。
【0015】
誘電体導波路1の屈曲部について図2、図3を用いて詳しく説明する。
【0016】
図2、図3に示されるように、誘電体導波路1は、断面が角型で互いに直交する直線部6と他の直線部7とを備え、これら直線部6,7が交差する屈曲部には、直線部6,7の長さ方向に対して角度θで傾斜し、誘電体導波路1の上面、下面に対して垂直な反射面8が形成されている。この反射面8は、直線部6からの電磁波を直線部7へ反射し、直線部7からの電磁波を直線部6へ反射する反射面8である。ここでは、角度θ=45°としている。また、誘電体導波路1の誘電率ε1 と誘電体領域5の誘電率ε2 との大小関係はε1 >ε2 としてある。これら角度θ及び誘電率ε1 ,ε2 の大小関係は、スネルの法則から定義付けられる全反射条件を満たすものである。
【0017】
全反射条件について図4及び数式を用いて詳しく説明する。
【0018】
図4は、ある誘電体(誘電率ε1 )から他の誘電体(誘電率ε2 )に電磁波が入射された際の反射波、透過波の関係を簡単に示したものである。即ち、入射角θと反射角θとは等しく、透過角φは異なる。この関係はスネルの法則により簡単に証明される。
【0019】
このとき入射波を波の特徴により、電界が入射面に垂直な波(S波またはTE波)と、電界が入射面に平行な波(P波またはTM波)とに分けた場合、それぞれの波における反射係数(RS 、RP )は式(1)及び式(2)で定義される。入射角θが式(3)に示す臨界角θC を超えると、S波及びP波の反射係数RS 、RP の絶対値は式(4)のように1となり、このとき電磁波の全反射が実現される。従って、直線部6,7が所望の角度で交差する屈曲部に対して、誘電率の差異と反射面8の角度θとを適宜に組み合わせることで、全反射条件を満たすことができる。
【0020】
【数1】
Figure 0003680710
【0021】
なお、誘電体導波路1の誘電率ε1 を適宜に選ぶことにより、誘電体領域5に実体のある誘電体を設けない(空気を存在させる)で全反射条件を満たすことができる。
【0022】
図2に示した誘電体導波路1の軸長は、アンテナとして使用する際の使用周波数と誘電体導波路1の断面サイズと誘電率ε1 との兼ね合いで決定される管内波長の倍数とされている。
【0023】
図2の誘電体導波路1を用い、定在波励振を可能にする構成を図5、図6により説明する。図5では、電磁波の全反射条件を満たす屈曲した誘電体導波路1の両端に、金属からなる端面導体板2が端面に密着して設置されている。これにより、図6に示されるように、誘電体導波路1の外部もしくは内部より給電された電力は、片端の端面導体板2で反射され、そして、反射面8を有する屈曲部の全反射構造により方向が直角(ψ=90°)に変えられ、もう片端の端面導体板2に到達する。この動作により、誘電体導波路1内では、図中#1〜#3で示した電力の伝達経路長が全て等しく安定した定在波励振が可能となる。これにより、高利得、高効率で、しかも屈曲させたことにより小型化が可能な誘電体平面アンテナ用の誘電体導波路1が実現される。
【0024】
図1に示した誘電体平面アンテナは、金属からなる下面導体板4上にアンテナの導波系となる図5の誘電体導波路1を下面導体板4に密着して設置し、この誘電体導波路1上に放射素子となる誘電体ブロック3を誘電体導波路1に密着し、誘電体ブロック3同士の間隔をおいて並べて配置したものである。誘電体ブロック3は、所定の長さ、幅、高さを有する直方体である。
【0025】
誘電体ブロック3の誘電率は、誘電体導波路1の誘電率よりも高い。また、誘電体ブロック3を配置する間隔は、誘電体導波路1の管内波長の倍数である。さらに、この間隔は誘電体導波路1における定在波励振の電磁界強度振幅の分布において、振幅が一番高くなる周期の倍数と同じであり、誘電体ブロック3は、この振幅が一番高くなる位置に合わせて設置する。これにより、高効率の放射特性が得られると共に高効率の電力伝送が可能となる。さらに、導体損失が低く、結果として低消費電力動作の可能な誘電体平面アンテナが実現される。
【0026】
なお、図1の誘電体平面アンテナにおいて誘電体導波路1へ電力の供給を行う給電点は、図示しないが、誘電体導波路1の内側に設置されている。
【0027】
次に、本発明の他の実施形態を図7、図8を用いて説明する。
【0028】
図7に示した誘電体導波路9は、図5に示した誘電体導波路1を拡張したもので、直線部10を加えたことにより、全反射条件を満たす反射面8を持つ屈曲部が2箇所形成され、両端には端面導体板2が端面に密着して設置されている。この誘電体導波路9における動作原理は、図5の場合と同様である。
【0029】
図8に示した誘電体平面アンテナは、下面導体板4上に誘電体導波路9を導波系として下面導体板4に密着して設置し、この誘電体導波路9上に放射素子となる誘電体ブロック3を誘電体導波路9に密着し、誘電体ブロック3同士の間隔をおいて並べて配置したものである。誘電体ブロック3の誘電率及び設置方法は図1の場合と同じである。また、誘電体導波路9へ電力の供給を行う給電点は、図示しないが、誘電体導波路9の内側に設置されている。
【0030】
次に、本発明の他の実施形態を図9、図10を用いて説明する。
【0031】
図9に示した誘電体導波路11は、電磁波の全反射条件を満たす反射面8を持つ屈曲部を4箇所形成し、4つの直線部を連続構造にすることにより、誘電体導波路11を無端状に形成したものである。端面がないので、端面導体板2は使用されない。誘電体導波路11は、安定した定在波励振を可能にするものである。この誘電体導波路9における動作原理は、端面導体板2による電磁波の反射を除き、図5の場合と同様である。
【0032】
図10に示した誘電体平面アンテナは、下面導体板4上に誘電体導波路11を導波系として下面導体板4に密着して設置し、この誘電体導波路11上に放射素子となる誘電体ブロック3を誘電体導波路11に密着し、誘電体ブロック3同士の間隔をおいて並べて配置したものである。誘電体ブロック3の誘電率及び設置方法は図1の場合と同じである。また、誘電体導波路11へ電力の供給を行う給電点は、図示しないが、誘電体導波路11の内側に設置されている。
【0033】
以上、説明したように、本発明の誘電体平面アンテナは、誘電率の異なる複数の誘電体を所定の角度で組み合わせて電磁波の全反射条件を満たす反射面を形成した屈曲部を有する少なくとも1つの誘電体導波路を使用し、誘電体導波路の端面に金属からなる端面導体板を設置するか、または誘電体導波路を無端状に形成することで定在波励振を可能にしたものである。この定在波励振により、進行波励振である従来の誘電体アンテナに比べ、伝送電力を誘電体導波路内に保持できることから高利得の誘電体アンテナを実現できる。
【0034】
さらに、屈曲した誘電体導波路を使用することで、導波系の配置に自由度が広がる。よって、定在波励振による高効率の電力伝送と、低導体損失による高い電力利得とが得られることから、結果として低消費電力動作で、さらに小型化も容易な誘電体平面アンテナを実現できる。
【0035】
また、本発明の誘電体平面アンテナは、導波路形成プロセス等の量産性の高い製造方法で作製可能である。
【0036】
また、放射素子となる誘電体ブロック3の位置決めを誘電体導波路の管内波長により容易に決定できる。
【0037】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0038】
(1)高利得、高効率で小型化が可能な誘電体平面アンテナが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す誘電体平面アンテナの斜視図である。
【図2】図1の誘電体平面アンテナの屈曲部を示した斜視図である。
【図3】図1の誘電体平面アンテナの屈曲部を示した平面図である。
【図4】異なる誘電率を持つ誘電体間の入射波と反射波及び透過波との関係図である。
【図5】図1の誘電体平面アンテナに用いる誘電体導波路の斜視図である。
【図6】図5の誘電体導波路における電力の伝達経路を示した平面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に用いる誘電体導波路の斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示す誘電体平面アンテナの斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態に用いる誘電体導波路の斜視図である。
【図10】本発明の他の実施形態を示す誘電体平面アンテナの斜視図である。
【符号の説明】
1、9、11 誘電体導波路
2 端面導体板
3 誘電体ブロック
4 下面導体板
5 誘電体領域
6、7、10 直線部
8 反射面

Claims (6)

  1. 直線部から他の直線部への反射面が形成された少なくとも1つの屈曲部を有する誘電体導波路と、前記直線部の終端の端面に密着設置された端面導体板と、前記誘電体導波路の上面に密着設置され、前記誘電体導波路とは誘電率の異なる誘電体ブロックと、前記誘電体導波路の下面に密着設置された下面導体板と、前記屈曲部の反射面外側に密着設置され、前記誘電体導波路とは誘電率の異なる誘電体領域とを備えたことを特徴とする誘電体平面アンテナ。
  2. 直線部から他の直線部への反射面が形成された複数の屈曲部を有し、無端状に形成された誘電体導波路と、前記誘電体導波路の上面に密着設置され、前記誘電体導波路とは誘電率の異なる誘電体ブロックと、前記誘電体導波路の下面に密着設置された下面導体板と、前記屈曲部の反射面外側に密着設置され、前記誘電体導波路とは誘電率の異なる誘電体領域とを備えたことを特徴とする誘電体平面アンテナ。
  3. 前記反射面が全反射面であることを特徴とする請求項1又は2記載の誘電体平面アンテナ。
  4. 前記誘電体領域の誘電率が前記誘電体導波路の誘電率よりも低いことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の誘電体平面アンテナ。
  5. 前記反射面の角度が全反射条件を満たす角度であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の誘電体平面アンテナ。
  6. 複数の前記誘電体ブロックが前記誘電体導波路の管内波長の倍数で決定された間隔で配置されることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の誘電体平面アンテナ。
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