JP3680448B2 - 催芽種子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、催芽種子の製造方法に関する。詳しくは、播種前に活性のある種子(活性種子)を催芽させ、幼根発生をもとに活性種子と不活性種子とを選別する催芽種子の製造方法に関する。さらに詳しくは、播種後の種子の迅速且つ均一な発芽を可能とし不良環境下での発芽力改善と、不活性種子を除去することによる種子ロットの品質向上とを目的とする、播種前の種子に施す催芽種子の製造方法に関する。
【0002】
本願において、「発芽」とは、播種後、水分、温度、酸素、光等の環境条件が適当な状態に揃った場合に、種子内部で様々な代謝活動が開始された後、完全な植物体となるべく生長を始めた状態をいい、「活性種子」とは、発芽することが可能な種子をいい、「不活性種子」とは、上記のような条件でも発芽が不可能な種子をいう。また、「催芽種子」とは、幼根が種皮から突出しているが、その他の植物器官が種子から出ていない状態の種子をいう。
【0003】
【従来の技術】
近年、農業や園芸生産においては、労働力の軽減や生産物の高品質化のために、機械化や大規模な育苗施設の利用がすすめられている。このような生産形態の中では、使用する作物の種子ロットの発芽率が100%近くで、しかも迅速且つ均一に発芽することが要望されている。しかし、実際には、採種時の自然条件やその後の輸送、保存条件等により、もともとの種子の発芽力は、同じ作物、品種であっても変動し、発芽率が100%に近い種子ロットを常に生産することは困難である。また、採種直後には100%近い発芽率を持つ種子ロットであっても、保存中に自然劣化し、播種時にはその発芽率が低下する場合も多い。
【0004】
▲1▼ そのため、通常、農業や園芸生産に使用される種子は、採種から播種までの過程で精選、選別等の作業により品質改善がはかられている。これらの改善方法には、篩分け、比重選別、色彩選別等がある。
【0005】
▲2▼ また、種子ロットの発芽率を高めるために、発芽可能な活性種子と発芽不能な不活性種子とを選別する技術として、今までに様々な方法が考案されてきた。例えば、液体中で種子を催芽させ、肉眼で催芽種子を選別する方法(W. E. Finch-Savage and J. M. T. McKEE, Ann. appl. Biol, 114;587-595 )、催芽した活性種子と不活性種子との比重差異により選別する方法(A. G. Taylor, S. W. Searcy, J. E. Motes, and L. O. Roth, Hort Science. 16(2);198-200)、劣化したアブラナ科作物種子からの種子組成物であるシナピンの漏出をもとに活性種子と不活性種子を選別する方法(特公平6−81562号)、劣化種子からの化学発光に基づく方法(特開平2−72802号)等が知られている。
【0006】
▲3▼ また、発芽の均一化や迅速化のために、催芽した種子を播種する方法がイネやホウレンソウ等の種子に対して行われていることはよく知られている。例えば、液体中で催芽させた催芽種子を液体とともに播種する流体播種が行われている(Wallace G. Pill, Hort Technology, Oct/Dec. 1991 )。
【0007】
▲4▼ また、催芽した種子の保存性を高めるために、水中で種子を催芽させた後、ポリエチレングリコール溶液等の浸透圧溶液中に数日間置くことによって催芽種子の耐乾燥性を高めようとする方法も知られている(P. VAN der Toorn, G. T. Burggink, Seed Science Research. 5;1-4)。
【0008】
▲5▼ また、大量の催芽種子を製造する技術として、種子と水を撹拌、流動化させて処理する装置に関する技術も知られている(特開平5−268805号、特開平6−169644号)。
【0009】
▲6▼ さらに、播種前に種子の発芽を迅速且つ均一にするための発芽改善方法として、様々なプライミング処理技術が開発考案され、その幾つかは実用化されてきた(Horticultural reviews volume. 16;109-134)。ここで、「プライミング処理」とは、発芽に向かう種子内部での代謝活動を開始させるには充分であるが催芽や発芽を起こさせるには不十分な水分、時間及び温度で種子を処理する方法をいう。これらの方法には、例えば、連続的に通気されたポリエチレングリコールや無機塩類等の高浸透圧水溶液中で種子を処理する方法(W. Heydecker, P. Coolbear, Seed Science and Technology. 5;353-425 )や、水分保持力の高い粒状固体に水分を吸収させ種子と混合して処理する方法(特開平1−503437号)等がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
これらの種子選別、催芽種子の製造・利用、発芽改善方法はいずれも効果が認められているが、それぞれ次のような欠点を有している。
【0011】
上記▲1▼の篩分け、比重選別、色彩選別等は、種子の持つ大きさ、比重、色等の物理的な特性に基づくものであり、種子内部の活性の程度に基づくものではない。したがって、これらの方法では、発芽可能な活性種子と発芽不能な不活性種子とを100%確実に選別することができない。
【0012】
上記▲2▼の液体中で種子を催芽させた後、催芽種子を肉眼や比重により選別する方法では、催芽処理が液体中でなされるため、種子同士が付着して処理後の取扱性に劣るという問題がある。また、特に、比重選別する方法では、作物により種子比重が異なり、また極僅かな比重差異で選別するために、比重溶液の調整が煩雑で、大量の種子を選別する場合、作業が著しく困難である。一方、種子内部からのシナピン漏出に基づく方法は、使用対象作物がアブラナ科作物に限定される点で汎用性がない。また、劣化種子からの化学発光による方法は、種子の発光程度と活性程度の相関関係を決めるのが煩雑で、実際の測定には高価な装置と高度技術を要する等の問題がある。
【0013】
上記▲3▼の種子ロット中の種子が催芽し始めた後、種子を液体とともに播種する流体播種では、発芽の均一化や迅速化の効果が得られるものの、使用する種子ロットの発芽率自体は向上しない。
【0014】
上記▲4▼の水中で種子を催芽させた後、浸透圧溶液中に置いて催芽種子の耐乾燥性を高める方法では、催芽種子と未催芽種子との機械的な選別は可能であるが、浸透圧溶液を除去する必要があるため、処理後の種子の取り扱いが容易とは言えず、また次のような欠点を有する。種子を催芽させる過程で、催芽の早い種子と遅い種子との催芽の同調性を得ることが困難であり、また、急激に種子に吸水させる点や種子への酸素供給が不十分になりやすい点から、種子の活性が低下している種子ロットでは、処理そのものがさらに活性を低下させる原因となる。
【0015】
上記▲5▼の種子を水とともに撹拌、流動化させて催芽種子を製造する方法では、種子表面に付着した水分等のために種子の流動性が低く、活性種子と不活性種子との選別や取扱いが容易でない。
【0016】
上記▲6▼の種子の発芽を迅速且つ均一にするためのプライミング処理は、活性種子の発芽を改善するものであって、不活性種子の発芽力を回復させるものではないため、処理後にそのまま播種したのでは発芽率の向上にはつながらない。これらのプライミング処理方法により催芽種子を製造することは可能であるが、以下のような問題がある。ポリエチレングリコールや無機塩類等の高浸透圧水溶液中でプライミング処理する方法では、その浸透圧を下げることにより種子の吸水量が増加して催芽するが、この際に溶液物質が幼根にダメージを及ぼすという問題がある。また、催芽後に種子から該水溶液を除去しなければならず、通常は種子を水洗しているが、その際に種子が大量の水にさらされるため、必要以上に幼根が伸長したり、損傷を受けたりするという問題がある。また、水分保持力の高い粒状固体に水分を吸収させ種子と混合して処理する方法では、粒状固体に水を加えることにより種子を催芽させることは可能であるが、催芽状態が確認できず、処理後に種子と該粒状固体を篩分けする必要があり、また幼根に該粒状固体が付着しやすくその後の選別を困難にする等の問題がある。
【0017】
以上のように、広範囲な種類の作物に対し、その種子ロット中の発芽力のある活性種子と発芽力のない不活性種子とを効率的に選別し、且つそれらの種子の取り扱いが容易であるような技術はまだないのが現状である。
【0018】
本発明の課題は、広範囲な種類の作物に対し、種子ロット中からの活性種子の選別と取り扱いが容易で、播種後に高い発芽率で迅速且つ均一な発芽を可能にする、催芽種子の製造方法を提供する処にある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、広範囲な種類の作物の種子ロット中から発芽力のある活性種子を選別し、播種後に高い発芽率で迅速且つ均一な発芽をする催芽種子を生産する技術を検討した結果、水を吸収した吸水性シート状材料とプライミング処理した吸水種子をそのまま又は乾燥した後に接触させて、活性のある種子を均一に催芽させることにより、活性種子の選別及び取り扱いが容易で、播種後に高い発芽率で迅速且つ均一な発芽をする催芽種子を生産する技術を見出し、本発明を完成した。
【0020】
すなわち、本発明の催芽種子の製造方法は、水を吸収した吸水性シート状材料とプライミング処理された種子とを接触させて、活性のある種子を催芽させるものであって、前記吸水性シート状材料を運動させることにより、吸水性シート状材料とプライミング処理された種子とを接触させることを特徴とするものである。
【0021】
詳細には、前記吸水性シート状材料を運動させることにより、吸水性シート状材料とプライミング処理された種子とを接触させて活性のある種子を催芽させ、催芽していない不活性種子を種子ロット中から除去する。
【0022】
本発明においては、種子に水分を供給する媒体として吸水性シート状材料を用いており、この吸水性シート状材料が保持する水分を種子が一定量吸収する。そのため、上記従来の液体中で催芽させる場合のように、種子同士が付着することがなく、また、催芽種子と他の材料とを分離したり、洗浄する必要がない。さらに、種子表面に過剰な水分が付着していないため、種子の流動性が高く、催芽種子と催芽していない不活性種子とを、既存の種子色彩選別機や画像解析による選別機等で容易に選別でき、その後の輸送等の取扱いも容易である。このように選別が容易であるため、不活性種子を効率的に除去して、種子ロットの発芽率を高くすることができる。
【0023】
また、本発明においては、プライミング処理された種子を用いているため、活性種子内部の発芽過程が同調しており、そのため、催芽段階で活性の高い種子だけが先に催芽してしまうことがなく、同じ状態の催芽種子を効率よく生産することができる。
【0024】
以上より、本発明の方法によれば、活性種子と不活性種子との選別及びそれら種子の取扱いが容易であり、播種後に高い発芽率で迅速かつ均一に発芽する催芽種子を得ることができる。
【0025】
本発明の方法において、吸水性シート状材料とプライミング処理された種子との接触は、必ずしも連続的である必要はなく、該接触には、前記吸水性シート状材料及び/又は前記種子を運動させることによって、断続的又は間欠的に両者が接触する場合も含まれる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられるプライミング処理された種子とは、上述したように、発芽に向かう種子内部での代謝活動を開始させるには充分であるが、催芽や発芽を起こされるには不十分な水分、時間及び温度で処理された種子をいう。このようなプライミング処理方法としては、上記した高浸透圧水溶液中で種子を処理する方法や、水分保持力の高い粒状固体に水分を吸収させ種子と混合して処理する方法の他、回転するドラム内の種子に水を直接噴霧し種子水分量を調節する方法(GB−2192781A)、種子の含水量を高めるように種子に水を含浸し、その後相対湿度、温度を制御した環境に種子を保持する方法(Fujikura, Karssen, Seed and Technology. 21;639-642; 特開平7−289021号)、高吸水性ポリマーに水分を吸水させ種子と混合して処理する方法(特開平8−51809号)、吸水性シート状材料よりなる容器や撹拌器具等を用いて、水を吸収させた該シート状材料を運動させ該シート状材料と種子とを接触させることにより処理する方法(特願平8−29687号)等が挙げられる。そのうち、吸水性シート状材料と種子とを接触させて処理する方法が、プライミング処理と本発明の方法とを連続的に行なうことができるという点から好ましい。
【0027】
本発明に用いることが可能な種子としては、例えばタマネギ、ネギ等のユリ科作物、ニンジン、セルリー、ミツバ等のセリ科作物、キャベツ、ブロッコリー、ハクサイ、ダイコン、ナタネ等のアブラナ科作物、レタス、サラダナ、シュンギク、ゴボウ、ヒマワリ等のキク科作物、ホウレンソウ、フダンソウ等のアカザ科作物、トマト、ナス、ピーマン、トルバム、アカナス、タバコ等のナス科作物、キュウリ、メロン、スイカ、カボチャ、カンピョウ等のウリ科作物、トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ等のイネ科作物、エンドウ、ソラマメ、インゲン、ダイズ等のマメ科作物等の食用作物および飼料用、工芸用作物およびパンジー、アフリカホウセンカ、ユーストマ、ナデシコ、ゼラニュウム、シクラメン、バーベナ等の花卉類の種子を挙げることができる。
【0028】
本発明において用いられる吸水性シート状材料は、水吸水性を有するシート状材料であり、その水分保持および吸水機構は、毛管力のように物理的なものや高吸収性ポリマーのように化学的な原理に基づくもの等いずれでも構わない。これらのシート状材料の水分吸収力は、吸水した水の量により変るので、一概にいうことはできない。処理される種子に供水できる量の水分を含有するようシート状材料の量(大きさ、厚み)及び水の量を設定して使用する。
【0029】
この吸水性シート状材料の表面に孔隙がある場合には、孔隙の大きさが処理対象の種子の大きさよりも小さく、種子がこの孔隙に捕捉されなければよい。
【0030】
この吸収性シート状材料の厚さは、サブミクロンのフィルム状のものから、10mm程度の厚さのものが用いられる。好ましくは20μ〜3mm程度が実際上使用しやすい。このようなシート状材料を例示すれば、親水性多孔質焼結樹脂、尿素樹脂、ロックウール、高吸水性ポリマー、セラミックス、硬質および軟質スポンジ状物質等よりなるシート状材料、または、不織布、フェルト状の布、セロハン等の半透性膜等が挙げられる。望ましくは、表面の濡れが少なく、水滴等が直ちに内部に吸水し、種子と接触して過剰な水分が種子表面に付着しない材料が好ましい。
【0031】
吸水性シート状材料とプライミング処理された種子とを接触させる方法としては、吸水性シート状材料を用いて構成された容器内に該種子を入れ、該容器を運動させる方法、吸水性シート状材料を用いて構成された撹拌器具で該種子を撹拌する方法、あるいは吸水性シート状材料の表面で該種子を運動させる方法などがある。
【0032】
前記容器としては、例えば、容器内面側に該吸水性シート状材料を全面的あるいは部分的に設置したもの、あるいは該吸水性シート状材料そのものからなるもの等が挙げられ、また、その形状は、円柱状、角柱状、球状、椀状など特に限定されない。そして、それを運動させるとは、これらの容器を回転、振動、傾斜等させることをいう。
【0033】
また、前記撹拌器具としては、例えば、容器内の種子を撹拌するプロペラ、スクリュー等の器具に該吸水性シート状材料を設置したもの、あるいは該吸水性シート状材料そのものでできた器具等が挙げられる。そして、該撹拌器具で種子を撹拌することにより、該吸水性シート状材料と種子との接触が図れる。
【0034】
吸水性シート状材料の表面で該種子を運動させる方法としては、前記の吸水性シート状材料よりなる容器に、該種子を入れ、これを通常の撹拌器具で撹拌する方法等が挙げられる。
【0035】
本発明において使用する水は、種子の発芽に障害を及ぼさないものであれば、特に限定されず、種子伝染性病防除のためや発芽代謝過程を促進したり、処理後の発芽力をさらに向上させるために、様々な物質を添加することができる。これらの物質には例えば、殺菌剤、ジベレリン、サイトカイニン、アブシジン酸、ブラシノステロイド等の植物ホルモン、硝酸カリウム、チオ尿素、アミノ酸類、糖類等の植物栄養分が挙げられる。必要に応じてこれらの物質の水溶液を前記吸水性シート状材料に吸収させればよい。
【0036】
吸水性シート状材料に吸収させる水分量としては、プライミング処理された種子を催芽させる段階における種子の水分含有率が20〜60%生重量(種子の重量に対する種子の含有水分量の割合)、好ましくは40〜50%生重量になるように設定することが好ましい。このような所定の種子の水分含有率を達成するために該シート状材料に加える水の量は、処理対象となる種子の作物種類や、種子ロット及びプライミング処理後の種子の含有水分率等により異なるが、催芽処理前の種子の水分含有率と処理種子量より容易に算出できる。
【0037】
また、催芽までに要する期間は、処理対象となる作物種類や、種子ロット及びプライミング処理方法、処理温度等によっても異なるが、これは大量処理をする前に小規模な予備試験で容易に設定することができる。
【0038】
また、処理温度は、処理対象となる作物種類等により異なるが、おおよそ対象となる作物の発芽適温かまたは数℃低い温度で行う。
【0039】
催芽開始は、幼根が種皮から突出するので容易に確認できる。なお、自然状態では土壌粒子中を幼根が侵入するため、幼根先端部の根冠は他の根組織よりも構造的に強いが、必要以上に幼根が伸長した場合には折れる可能性がある。そのため、本発明の目的に適した催芽種子の幼根長は、幼根の種皮からの突出が種子外部より肉眼あるいは色彩選別機あるいは画像解析装置で確認できる長さから1cm程度までであり、好ましくは0.1〜3mmである。
【0040】
活性種子を催芽させた後、催芽していない不活性種子を除去する方法としては、上記したように、幼根が発生しているか否かを基準として、肉眼や、既存の種子色彩選別機、画像解析選別機等により、活性種子と不活性種子とを選別して行なうことができる。かかる選別により不活性種子を除去して、活性種子のみからなる種子ロットを作成する。
【0041】
本発明においては、活性種子を催芽させた後に催芽種子を乾燥させてもよい。かかる乾燥は、上記選別の前でも後でもよい。乾燥方法としては、催芽処理後にその処理容器に通風したり、あるいは該容器を相対湿度の低い環境に置くことで可能であり、催芽処理工程と乾燥工程とを連続的に行なうことができる。また、該容器から催芽処理後の種子を取り出して、他のいかなる種子乾燥方法を取ることもできる。かかる乾燥温度及び時間は、種子種類や種子ロットおよび処理量によって一概には言えないが、温度20〜40℃、好ましくは20〜30℃で、乾燥時間4時間〜7日間、好ましくは1〜4日間にわたりゆっくりと乾燥させるのが望ましく、催芽種子の最終的な種子の水分含有率が10〜50%生重量、好ましくは20〜40%生重量になるまで乾燥させればよい。
【0042】
本発明で製造された催芽種子は、温度0〜30℃、好ましくは5〜20℃で密封して保存することが望ましい。
【0043】
【実施例】
以下、実施例についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0044】
実施例1
市販の親水性多孔質焼結樹脂(サンファインAQ−800、2mm厚シート、20×10cm、旭化成工業株式会社製)により、図1(a)に示すように、円筒形の容器を作成し、該樹脂の含有水分率が35重量%になるように水を加えた。
【0045】
次に、ポリエチレングリコールの水溶液を使用してプライミング処理をした後に乾燥させたアフリカホウセンカ(Impatiens sultanii HOOKf)種子(2)(含有水分率8%生重量)10gを、該容器(1)に入れた状態で、全体をポリエチレンフィルム(3)で被覆し、両端の開放部に直径1cmの通気口(4)(4)を開けた。
【0046】
このようにして種子(2)を入れた該容器(1)を、図1(b)に示すように、2本の回転軸(5)(5)上に載置し、両回転軸(5)(5)を回転させることにより、20℃の温度条件の下、3rpmで回転させて、2日間処理を行った。2日目の種子の含有水分率は42%生重量であり、幼根長が1〜2mmの催芽種子が多数得られた。これらの種子(2)を該容器(1)から取り出したが、種子表面には過剰な水分が付着しておらず種子の流動性は高かった。幼根の発生をもとに催芽種子と未催芽種子を肉眼で選別し、100%催芽種子の種子ロットを作成した。
【0047】
実施例2
市販のビニロンフィルム(11)(VF LH#18、東セロ株式会社製、20×30cm)を10分間、水に浸漬し充分に吸水させた。次に、該フィルム(11)を、図2に示すように、上方に開口する透明なプラスチック製の箱(12)(20×30×5cm)の底部に敷設した。無機塩類水溶液でプライミング処理を行った後、表面の水分を拭い取っただけで乾燥させていないキュウリ(Cucumis sativa)種子20g(13)(含有水分率38生重量%)を、該箱(12)に入れ、その上面をポリエチレンフィルム(14)で被覆した。
【0048】
催芽処理は、種子(13)を入れた該箱(12)を、水平方向に振とうさせる振とう機(15)上に載置して、25℃の温度条件で1日間、ゆっくりと振とうさせて行った。1日後には、幼根長1〜2mmの多数の催芽種子が得られた。これらの種子(13)を該箱(12)から取り出し、20℃の温度条件で1日間乾燥させた後、催芽種子と未催芽種子とを肉眼で選別し、100%催芽種子の種子ロットを得た。
【0049】
実施例3
実施例1で用いた図1(a)に示す円筒形の容器(1)に、その樹脂の含有水分率が25重量%になるように水を加えた。
【0050】
次に、20gのナス(Solanum melongena. L)種子(2)(含有水分率8%生重量)を該容器(1)に入れた状態で全体をポリエチレンフィルム(3)で被覆し、両端の開放部に直径1cmの通気口(4)(4)を開けた。
【0051】
このようにして種子(2)を入れた該容器(1)を、図1(b)に示すように、2本の回転軸(5)(5)を回転させることにより、25℃の温度条件の下、3rpmで回転させて、5日間プライミング処理を行った。5日目の種子の含有水分率は38%生重量であり、催芽している種子はなかった。また該樹脂の含有水分率は1重量%であった。
【0052】
次に、該樹脂の含有水分率が8重量%になるように水を加え、全体をポリエチレンフィルム(3)で被覆し、さらに1日間、回転軸(5)(5)上で回転させた。1日目の種子の含有水分率は42%生重量であり、幼根長が1〜2mmの催芽種子が多数得られた。該容器(1)の開放部以外の部分からポリエチレンフィルム(3)を取り去り、20℃の温度条件の下、2日間回転軸(5)(5)上で回転させ、該種子(2)を乾燥させた。2日後の該種子の含有水分率は25%生重量であった。該種子(2)を該容器(1)から取り出し、幼根の発生をもとに催芽種子と未催芽種子を肉眼で選別し、100%催芽種子の種子ロットを作成した。
【0053】
試験例1
実施例1によって得られた催芽種子と、比較対象である無処理種子、プライミング処理種子とをそれぞれ400粒シャーレに置床し発芽試験を行った。試験方法は国際種子検査規定(1993年)に準じて行った。結果を表1に示す。
【0054】
表1に示すように、実施例1の催芽種子は、無処理種子に比べて発芽が迅速且つ均一で総発芽率も高くなり、プライミング処理種子に比べて総発芽率が高くなった。
【0055】
【表1】
試験例2
実施例2によって得られた催芽種子と、比較対象である無処理種子、プライミング処理種子とをそれぞれ200粒、慣行法に従って200穴のセル成型苗用トレイに播種し、発芽試験を行った。結果を表2に示す。
【0056】
実施例2の催芽種子は、無処理種子に比べて発芽が迅速且つ均一で総発芽率も高くなり、プライミング処理種子に比べて総発芽率が高くなった。
【0057】
【表2】
試験例3
実施例3によって得られた催芽種子と、比較対象である無処理種子とをそれぞれ200粒、慣行法に従って200穴のセル成型苗用トレイに播種し、発芽試験を行った。結果を表3に示す。
【0058】
実施例3の催芽種子は、無処理種子に比べて発芽が迅速且つ均一で総発芽率も高くなった。
【0059】
【表3】
【0060】
【発明の効果】
以上のように、本発明の方法によれば、広範囲な種類の作物に対して、活性種子と不活性種子との選別及びそれら種子の取扱いが容易であり、播種後に高い発芽率で迅速かつ均一に発芽する催芽種子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1及び3の催芽種子の製造方法を説明するための図であって、(a)は、当該方法に用いる容器の斜視図であり、(b)は、製造時における容器の要部欠截斜視図である。
【図2】実施例2の催芽種子の製造方法における製造時の容器の要部欠截斜視図である。
【符号の説明】
1…容器
2,13…種子
5…回転軸
11…ビニロンフィルム
15…振とう器
Claims (3)
- 水を吸収した吸水性シート状材料とプライミング処理された種子とを接触させて、活性のある種子を催芽させる催芽種子の製造方法であって、
前記吸水性シート状材料を運動させることにより、吸水性シート状材料とプライミング処理された種子とを接触させることを特徴とする催芽種子の製造方法。 - 吸水性シート状材料を用いて構成された容器内にプライミング処理された種子を入れ、該容器を運動させることにより、吸水性シート状材料とプライミング処理された種子とを接触させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 吸水性シート状材料とプライミング処理された種子とを接触させて活性のある種子を催芽させた後、催芽していない種子を除去することを特徴とする請求項1又は2に記載の催芽種子の製造方法。
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