JP3677854B2 - 同軸型パルス管冷凍機 - Google Patents
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Description
【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は、蓄冷器ケースとパルス管が同軸的に配置された同軸型パルス管冷凍機に係り、特に、パルス管冷凍機内の作動空間の圧力変動によるパルス管の変形の防止に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来のパルス管冷凍機は、作動ガスの圧力変動を生ぜしめる圧力振動源と、作動ガスと熱交換を行う蓄冷材と蓄冷材を収納する蓄冷器ケースからなる蓄冷器と、極低温発生部分であるコールドヘッドと、コールドヘッドを冷凍機の駆動部分（圧力振動源及び後述する位相調節源）から遠ざける働きを備えるパルス管と、作動ガスの圧力変動と変位変動との位相差を調節する前述した位相調節源とを直列接続したものからなる。このものにおいて、圧力振動源から供給される作動ガスの圧力変動と変位変動との位相差を位相調節源で調節することによって、蓄冷器の両端に温度差を生ぜしめ、コールドヘッドで極低温を発生するものである。上記したパルス管冷凍機をよりコンパクトなものとするため、同軸型パルス管冷凍機が知られている。このものについて、図２を用いて説明する。
【０００３】
図 に示す同軸型パルス管冷凍機１において、円筒状の蓄冷器ケース５と、円筒状であり且つ蓄冷器ケース５の径よりも小径なパルス管１１は同軸的に配置されている。蓄冷器ケース５とパルス管１１とで囲まれた空間Ａ内には蓄冷材６が充填される。蓄冷器４は、蓄冷器ケース５及び蓄冷材６からなる。また一般的に、この種の同軸型パルス管冷凍機において、蓄冷材として、図３に示すように、リング状の金属メッシュ６ａを複数枚積層したものが使用される。蓄冷器４の図示下端には圧力振動源２が、パルス管１１の図示下端には位相調節源１２が連結される。また、蓄冷器４及びパルス管１１の図示上端には低温通路形成部材９が連結される。低温通路形成部材９には、蓄冷材６が充填された空間Ａとパルス管１１の内部空間Ｂを連通する低温通路１０が設けられている。低温通路形成部材９には、その外周を取り巻くように、被冷却体に直接当接する冷却部材８が連結される。この低温通路形成部材９、冷却部材８により、コールドヘッド７が構成される。上記構成の同軸型パルス管冷凍機１において、圧力振動源２から与えられる作動ガスの圧力変動は、連結管３、蓄冷材６が充填された空間Ａから低温通路１０を経てパルス管１１に伝達される。このとき、位相調節源１２により、作動ガスの圧力変動と変位変動との位相差が生じる。この位相差を最適に調節することによりコールドヘッド７において極低温が発生する。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の同軸型パルス管冷凍機において、圧力振動源の作動により作動空間が高圧状態から低圧状態へと逐次変化するため、パルス管が変形する。具体的には、作動空間の圧力変動に伴って、パルス管が伸縮し、その伸縮の差は約７μｍ程度である。このようなパルス管の伸縮は、振動となってコールドヘッドに伝わり、冷凍性能が低下し、あるいは被冷却体への不要な加振源となりうる。故に、本発明は、パルス管の伸縮動作を規制し、パルス管の伸縮動作に起因する振動を低減することを、第１の技術的課題とするものである。
【０００５】
また、従来の同軸型パルス管冷凍機では、パルス管が伸縮することにより、パルス管の外周部と、パルス管の外側に配置された蓄冷材であるリング状の金属メッシュとは互いに摩擦摺動する。この摩擦摺動により発熱が生じるため、冷凍性能が低下する。
【０００６】
故に、本発明は、パルス管と蓄冷材との摩擦摺動を防止し、この摩擦摺動に起因する発熱による冷凍性能の低下を防止することを、第２の技術的課題とするものである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
上記第１の課題を解決するために、本発明の請求項１において講じた技術的手段は、圧力振動源と、蓄冷器ケースと、コールドヘッドと、パルス管と、位相調節源とを直列接続したパルス管冷凍機であって、前記蓄冷器ケースの内側に前記パルス管が同軸的に配置され、前記蓄冷器ケースと前記パルス管とで囲まれた空間に蓄冷材が充填されてなる同軸型パルス管冷凍機において、
前記パルス管の一端及び前記畜冷器ケースの一端は、固定部材に接合され、
前記パルス管の他端及び前記蓄冷器ケースの他端は前記コールドヘッドに接合されていることを特徴とする、同軸型パルス管冷凍機としたことである。
また、本発明の請求項２において講じた技術的手段のように、前記パルス管の両端と前記蓄冷器ケースの両端とを、前記固定部材と前記コールドヘッドとにろう付けにより接合してなることを特徴とする、請求項１に記載の同軸型パルス管冷凍機とするのが好ましい。
【０００８】
上記技術的手段における作用は以下のようである。即ち、パルス管の一端が固定部材に固定され、パルス管の他端がコールドヘッドに固定されているので、圧力振動源から供給される作動ガスの圧力変動によるパルス管の伸縮動作が規制される。また、パルス管及び蓄冷器ケースの両端を固定部材及びコールドヘッドにそれぞれろう付けにより接合するようにしているので、各部品を真空加熱ろう付け工程により同時に接合することができる。
【０００９】
上記第１及び第２の技術的課題を解決するために、本発明の請求項３において講じた技術的手段は、圧力振動源と、蓄冷器ケースと、コールドヘッドと、パルス管と、位相調節源とを直列接続したパルス管冷凍機であって、前記蓄冷器ケースの内側に前記パルス管が同軸的に配置され、前記蓄冷器ケースと前記パルス管とで囲まれた空間に蓄冷材が充填されてなる同軸型パルス管冷凍機において、前記蓄冷材は、リング状に形成されたメッシュを複数枚積層してなり、前記リング状に形成されたメッシュの外周部は前記蓄冷器ケースの内周面に接合され、前記リング状に形成されたメッシュの内周部は前記パルス管の外周面に接合されていることを特徴とする、同軸型パルス管冷凍機としたことである。
【００１０】
上記技術的手段における作用は以下のようである。即ち、蓄冷材であるリング状のメッシュの内周がパルス管に接合されているため、パルス管が伸縮するときに蓄冷材が抵抗となり、パルス管の伸縮動作が規制される。また、万が一パルス管が伸縮した場合には、パルス管の伸縮動作に従って蓄冷材も動作する。このため、パルス管と蓄冷材がその接合部において相対的に同一の動作をし、両者の間で摩擦摺動が行われることはない。
【００１１】
上記第１の技術的課題を解決するために、本発明の請求項４において講じた技術的手段のように、前記蓄冷材は、リング状に形成されたメッシュを複数枚積層してなり、隣接した前記リング状に形成されたメッシュ同志は各々接触部分で固着されていることを特徴とする、請求項３に記載の同軸型パルス管冷凍機とするのが好ましい。リング状のメッシュを複数枚接合し、隣接するメッシュ同志をその接触部において固着させておけば、パルス管が伸縮しようとするときの抵抗力がより強力となり、パルス管の伸縮動作をより強く規制できる。
【００１２】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態例について、図面に基づいて説明するが、従来技術と同一部分については、同一符号で示す。。
【００１３】
図１は、本発明の実施形態例におけるパルス管冷凍機の部分断面図である。
【００１４】
図１に示す同軸型パルス管冷凍機１において、１３はボディーである。ボディー１３は円筒形状で、その両端がフランジ状に伸びた形となっている。さらに、ボディー１３の図示上端面には大径部１４ａ、小径部１４ｂ、段差部１４ｃ、底部１４ｄを備える段付孔１４が形成されている。またボディー１３には第１通路１５及び第２通路１６が形成されており、第１通路１５の一端はボディー１３の図示下端面に開口し、連結管３を経て圧力振動源２に連結している。一方、第１通路１５の他端は段付孔１４の段差部１４ｃに開口している。第２通路１６の一端はボディー１３の図示下端面に開口し、位相調節源１２に連結している。一方、第２通路１６の他端は段付孔１４の底部１４ｄに開口している。段付孔１４の小径部１４ｂには整流器１７が配置され、大径部１４ａには第３通路形成部材１８が配置されている。第３通路形成部材１８と整流器１７とで囲まれた空間で、第３通路１９が形成される。
【００１５】
ボディー１３は、ボルト２０によってフランジ２１と螺合固定されている。フランジ２１は円板状に形成されており、その中央部に段付孔２２を有する。段付孔２２は、大径部２２ａ、小径部２２ｂ、段差部２２ｃからなり、小径部２２ｂは両端開口している。段付孔２２の小径部２２ｂにはパルス管１１の一端が挿通され、小径部２２ｂとパルス管１１はニッケルろう付けにより接合されている。段付孔２２の大径部２２ａには蓄冷器ケース５の一端が挿入され、挿入部分において大径部２２ａと蓄冷器ケース５とはニッケルろう付けにより接合されている。パルス管１１は段付孔２２の小径部２２ｂから突出し、段付孔１４の大径部１４ａにまで達している。この突出部内に、整流器１７の、段付孔１４の小径部１４ｂから突出した部分が圧入され、圧入部においてもやはり両者はニッケルろう付けにより接合されている。また段付孔２２の段差部２２ｃには連絡路２３が形成されており、この連絡路２３は、蓄冷器ケース５とパルス管１１とで囲まれ、蓄冷材２が充填されている空間Ａと、第３通路１９とを連通するものである。尚、この場合において、フランジ２１が本発明の固定部材となる。
【００１６】
蓄冷器ケース５及びパルス管１１の図示上端には低温通路形成部材９が配置される。低温通路形成部材９の図示下面には、その外径側に環状突起９ａが形成されており、環状突起９ａの内周面９ｂにはパルス管１１の他端がニッケルろう付けにより接合され、環状突起９ａの外周面９ｃには蓄冷器ケース５の他端がニッケルろう付けされている。また、低温通路形成部材９の内部には低温通路６が形成されている。被冷却体に直接当接する冷却部材８は、低温通路形成部材９を覆うように低温通路形成部材９の外側に配置されている。従って、蓄冷器ケース５の他端は、低温通路形成部材９と冷却部材８との間に挟み込まれた状態となる。低温通路形成部材８は、内部に低温通路１０が設けられており、この低温通路１０は、蓄冷材６が充填された空間Ａとパルス管１１の内部空間Ｂとを連通すべく形成されている。このため、蓄冷材が充填された空間Ａは、低温通路１０を経てパルス管５の内部空間Ｂに連通状態となる。尚、低温通路形成部材９及び冷却部材８により、コールドヘッド７が構成される。
【００１７】
本実施形態例におけるパルス管冷凍機１は、上記構成となっているため、冷凍機の内部空間は、圧力振動源２から連結管３、第１通路１５、第３通路１９、連通路２３、蓄冷器ケース５とパルス管１１とで囲まれ蓄冷材が充填された空間Ａ、低温通路１０、パルス管１１の内部空間Ｂ、整流器１７、第２通路１６、位相調節源８の順に連通する。
【００１８】
上記構成のパルス管冷凍機１において、蓄冷器ケース５の一端とフランジ２１に設けられた段付孔２２の大径部２２ａ、蓄冷器ケース５の他端と低温通路形成部材９に設けられた環状突起９ａの外周面９ｃ、パルス管５の一端とフランジ２１に設けられた段付孔２２の小径部２２ｂ、パルス管５の他端と低温通路形成部材９に設けられた環状突起９ａの内周面９ｂ、冷却部材８と低温通路形成部材９は、それぞれニッケルろう付けにより接合されている。また、蓄冷材６を構成するリング状の金属メッシュ６ａは、それぞれ隣接する金属メッシュ間同志で、接触部分が固着されている。以下に、これらの接合方法及び固着方法について、その製造方法とともに説明する。
【００１９】
▲１▼メッキ工程
冷却部材８、低温通路形成部材９、蓄冷器ケース５、パルス管１１をニッケルメッキ浴中に浸漬し、無電解メッキを行う。
【００２０】
▲２▼圧入工程
・冷却部材８の内部に低温通路形成部材９を圧入する。
【００２１】
・低温通路形成部材９に設けられた環状突起９ａの内周面９ｂにパルス管１１の他端を圧入する。
【００２２】
・蓄冷器ケース５の他端を、低温通路形成部材９に設けられた環状突起９ａの外周部９ｃと冷却部材８との隙間に圧入する。
【００２３】
・蓄冷器ケース５とパルス管１１とで囲まれた空間Ａ内に、リング状の金属メッシュ６ａを複数枚積層し、圧入する。
【００２４】
・フランジ２１に設けられた段付孔２２の小径部２２ｂにパルス管１１の一端を圧入し、段付孔２２の大径部２２ａに蓄冷器ケース５の一端を圧入する。
【００２５】
・パルス管１１の一端の内周部に整流器１７を圧入する。
【００２６】
▲３▼真空加熱ろう付け工程
上記圧入工程後に、各部品が圧入された状態で真空加熱する。
【００２７】
真空加熱後に、ボディー１３をボルト２０によりフランジ２１に螺合する。その後、圧力振動源２を連結管３を介してボディー１３に設けられた第１通路１５に連結し、位相調節源８を第２通路１６に連結する。
【００２８】
真空加熱ろう付け工程においては、加熱中にメッキしたニッケルが溶け出し、各圧入した部分がニッケルろう付けされる。また、真空加熱することにより、蓄冷材である金属メッシュは真空拡散結合を起こし、隣接するリング状のメッシュ同志が接触部分で固着される。
【００２９】
上記工程を経て製造されたパルス管冷凍機は、各圧入部分である、蓄冷器ケース５の一端と段付孔２２の大径部２２ａ、蓄冷器ケース５の他端と環状突起９ａの外周面９ｃ、パルス管１１の一端と段付孔２２の小径部２２ｂ、パルス管１１の他端と環状突起９ａの内周面９ｂ、冷却部材８と低温通路形成部材９が、それぞれニッケルろう付けされ、接合される。また、蓄冷材を構成するリング状の金属メッシュ６ａの外周部６ｂと蓄冷器ケース５の内周面、金属メッシュ６ａの内周部６ｃとパルス管１１の外周面も、ニッケルろう付けされる。さらに、真空拡散結合により、隣接する金属メッシュ同志も接触部分で固着される。
【００３０】
上記のように製造されたパルス管冷凍機において、実際に運転させてみると、圧力振動源による冷凍機内の圧力変動が１５ｋｇｆ／ｃｍ2 程度生じ、従来ではパルス管がこの圧力変動により７μｍ程度伸縮したが、本実施形態例によるパルス管冷凍機では２μｍ程度の伸縮で抑えられた。これは、パルス管１１の一端がフランジ２１に接合され、他端が低温部材９に接合されていること、及び、蓄冷材を構成するリング状の金属メッシュ６ａの内周部６ｃがパルス管１１にニッケルろう付けで接合されていること、のため、パルス管に当接する各部品は全てパルス管に接合されており、パルス管１１の伸縮動作が規制されたことに起因する。またこの場合において、蓄冷材６を構成するリング状の金属メッシュ６ａのそれぞれは、隣接する金属メッシュと接触部分において真空拡散結合により固着されている。このため、パルス管が伸縮しようとするときに、より強い抵抗力となり、パルス管の伸縮動作の規制を助長する。このため、コールドヘッド７に伝わる振動も極めて小さいものとなり、冷凍性能に及ぼす影響もわずかなものとなり、冷凍性能の低下を防止することができた。
【００３１】
また、蓄冷材であるリング状の金属メッシュ６ａの内周部６ｃがパルス管１１の外周面にニッケルろう付けにより接合されているため、万が一パルス管１１が伸縮しても、蓄冷材である金属メッシュ６ａとパルス管１１は摩擦摺動することがなく、この摩擦摺動による発熱が起こらない。このため、この摩擦摺動に基づく発熱による冷凍性能の低下を防止できた。
【００３２】
【発明の効果】
請求項１の発明は、以下の如く効果を有する。
【００３３】
パルス管の一端が固定部材に固定され、パルス管の他端がコールドヘッドに固定されているので、圧力振動源から供給される作動ガスの圧力変動によるパルス管の伸縮動作が規制される。このため、パルス管の伸縮動作に起因する振動の発生を極力防止でき、この振動による冷凍性能の低下を防止できた。
【００３４】
請求項２の発明は、以下の如く効果を有する。
【００３５】
蓄冷材であるリング状のメッシュの内周がパルス管に接合されているため、パルス管が伸縮するときに蓄冷材が抵抗となり、パルス管の伸縮動作が規制される。このため、パルス管の伸縮動作に起因する振動の発生を極力防止でき、この振動による冷凍性能の低下を防止できた。
【００３６】
また、万が一パルス管が伸縮した場合には、パルス管の伸縮動作に従って蓄冷材も動作する。このため、パルス管と蓄冷材がその接合部において相対的に同一の動作をし、両者の間で摩擦摺動が行われることはない。従って、パルス管と蓄冷材との摩擦摺動に基づく発熱による冷凍性能の低下を防止できた。
【００３７】
請求項３の発明は、以下の如く効果を有する。
【００３８】
リング状のメッシュを複数枚接合し、隣接するメッシュ同志をその接触部において固着させた構成であるため、パルス管が伸縮しようとするときの抵抗力がより強力となり、パルス管の伸縮動作をより強く規制できる。このため、パルス管の伸縮動作に起因する振動の発生を極力防止でき、この振動による冷凍性能の低下をさらにより一層防止できた。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施形態例である同軸型パルス管冷凍機の部分断面図である。
【図２】同軸型パルス管冷凍機の概略図である。
【図３】蓄冷材を構成するリング状の金属メッシュが積層された状態を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
１ 同軸型パルス管冷凍機
２ 圧力振動源
４ 蓄冷器
５ 蓄冷器ケース
６ 蓄冷材 ６ａ リング状メッシュ部材
６ｂ 外周部 ６ｃ 内周部
７ コールドヘッド
８ 冷却部材
９ 低温通路形成部
１１ パルス管
１２ 位相調節源
２１ フランジ（固定部材）
２２ 段付孔 ２２ａ 大径部 ２２ｂ 小径部
【産業上の利用分野】
本発明は、蓄冷器ケースとパルス管が同軸的に配置された同軸型パルス管冷凍機に係り、特に、パルス管冷凍機内の作動空間の圧力変動によるパルス管の変形の防止に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来のパルス管冷凍機は、作動ガスの圧力変動を生ぜしめる圧力振動源と、作動ガスと熱交換を行う蓄冷材と蓄冷材を収納する蓄冷器ケースからなる蓄冷器と、極低温発生部分であるコールドヘッドと、コールドヘッドを冷凍機の駆動部分（圧力振動源及び後述する位相調節源）から遠ざける働きを備えるパルス管と、作動ガスの圧力変動と変位変動との位相差を調節する前述した位相調節源とを直列接続したものからなる。このものにおいて、圧力振動源から供給される作動ガスの圧力変動と変位変動との位相差を位相調節源で調節することによって、蓄冷器の両端に温度差を生ぜしめ、コールドヘッドで極低温を発生するものである。上記したパルス管冷凍機をよりコンパクトなものとするため、同軸型パルス管冷凍機が知られている。このものについて、図２を用いて説明する。
【０００３】
図 に示す同軸型パルス管冷凍機１において、円筒状の蓄冷器ケース５と、円筒状であり且つ蓄冷器ケース５の径よりも小径なパルス管１１は同軸的に配置されている。蓄冷器ケース５とパルス管１１とで囲まれた空間Ａ内には蓄冷材６が充填される。蓄冷器４は、蓄冷器ケース５及び蓄冷材６からなる。また一般的に、この種の同軸型パルス管冷凍機において、蓄冷材として、図３に示すように、リング状の金属メッシュ６ａを複数枚積層したものが使用される。蓄冷器４の図示下端には圧力振動源２が、パルス管１１の図示下端には位相調節源１２が連結される。また、蓄冷器４及びパルス管１１の図示上端には低温通路形成部材９が連結される。低温通路形成部材９には、蓄冷材６が充填された空間Ａとパルス管１１の内部空間Ｂを連通する低温通路１０が設けられている。低温通路形成部材９には、その外周を取り巻くように、被冷却体に直接当接する冷却部材８が連結される。この低温通路形成部材９、冷却部材８により、コールドヘッド７が構成される。上記構成の同軸型パルス管冷凍機１において、圧力振動源２から与えられる作動ガスの圧力変動は、連結管３、蓄冷材６が充填された空間Ａから低温通路１０を経てパルス管１１に伝達される。このとき、位相調節源１２により、作動ガスの圧力変動と変位変動との位相差が生じる。この位相差を最適に調節することによりコールドヘッド７において極低温が発生する。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の同軸型パルス管冷凍機において、圧力振動源の作動により作動空間が高圧状態から低圧状態へと逐次変化するため、パルス管が変形する。具体的には、作動空間の圧力変動に伴って、パルス管が伸縮し、その伸縮の差は約７μｍ程度である。このようなパルス管の伸縮は、振動となってコールドヘッドに伝わり、冷凍性能が低下し、あるいは被冷却体への不要な加振源となりうる。故に、本発明は、パルス管の伸縮動作を規制し、パルス管の伸縮動作に起因する振動を低減することを、第１の技術的課題とするものである。
【０００５】
また、従来の同軸型パルス管冷凍機では、パルス管が伸縮することにより、パルス管の外周部と、パルス管の外側に配置された蓄冷材であるリング状の金属メッシュとは互いに摩擦摺動する。この摩擦摺動により発熱が生じるため、冷凍性能が低下する。
【０００６】
故に、本発明は、パルス管と蓄冷材との摩擦摺動を防止し、この摩擦摺動に起因する発熱による冷凍性能の低下を防止することを、第２の技術的課題とするものである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
上記第１の課題を解決するために、本発明の請求項１において講じた技術的手段は、圧力振動源と、蓄冷器ケースと、コールドヘッドと、パルス管と、位相調節源とを直列接続したパルス管冷凍機であって、前記蓄冷器ケースの内側に前記パルス管が同軸的に配置され、前記蓄冷器ケースと前記パルス管とで囲まれた空間に蓄冷材が充填されてなる同軸型パルス管冷凍機において、
前記パルス管の一端及び前記畜冷器ケースの一端は、固定部材に接合され、
前記パルス管の他端及び前記蓄冷器ケースの他端は前記コールドヘッドに接合されていることを特徴とする、同軸型パルス管冷凍機としたことである。
また、本発明の請求項２において講じた技術的手段のように、前記パルス管の両端と前記蓄冷器ケースの両端とを、前記固定部材と前記コールドヘッドとにろう付けにより接合してなることを特徴とする、請求項１に記載の同軸型パルス管冷凍機とするのが好ましい。
【０００８】
上記技術的手段における作用は以下のようである。即ち、パルス管の一端が固定部材に固定され、パルス管の他端がコールドヘッドに固定されているので、圧力振動源から供給される作動ガスの圧力変動によるパルス管の伸縮動作が規制される。また、パルス管及び蓄冷器ケースの両端を固定部材及びコールドヘッドにそれぞれろう付けにより接合するようにしているので、各部品を真空加熱ろう付け工程により同時に接合することができる。
【０００９】
上記第１及び第２の技術的課題を解決するために、本発明の請求項３において講じた技術的手段は、圧力振動源と、蓄冷器ケースと、コールドヘッドと、パルス管と、位相調節源とを直列接続したパルス管冷凍機であって、前記蓄冷器ケースの内側に前記パルス管が同軸的に配置され、前記蓄冷器ケースと前記パルス管とで囲まれた空間に蓄冷材が充填されてなる同軸型パルス管冷凍機において、前記蓄冷材は、リング状に形成されたメッシュを複数枚積層してなり、前記リング状に形成されたメッシュの外周部は前記蓄冷器ケースの内周面に接合され、前記リング状に形成されたメッシュの内周部は前記パルス管の外周面に接合されていることを特徴とする、同軸型パルス管冷凍機としたことである。
【００１０】
上記技術的手段における作用は以下のようである。即ち、蓄冷材であるリング状のメッシュの内周がパルス管に接合されているため、パルス管が伸縮するときに蓄冷材が抵抗となり、パルス管の伸縮動作が規制される。また、万が一パルス管が伸縮した場合には、パルス管の伸縮動作に従って蓄冷材も動作する。このため、パルス管と蓄冷材がその接合部において相対的に同一の動作をし、両者の間で摩擦摺動が行われることはない。
【００１１】
上記第１の技術的課題を解決するために、本発明の請求項４において講じた技術的手段のように、前記蓄冷材は、リング状に形成されたメッシュを複数枚積層してなり、隣接した前記リング状に形成されたメッシュ同志は各々接触部分で固着されていることを特徴とする、請求項３に記載の同軸型パルス管冷凍機とするのが好ましい。リング状のメッシュを複数枚接合し、隣接するメッシュ同志をその接触部において固着させておけば、パルス管が伸縮しようとするときの抵抗力がより強力となり、パルス管の伸縮動作をより強く規制できる。
【００１２】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態例について、図面に基づいて説明するが、従来技術と同一部分については、同一符号で示す。。
【００１３】
図１は、本発明の実施形態例におけるパルス管冷凍機の部分断面図である。
【００１４】
図１に示す同軸型パルス管冷凍機１において、１３はボディーである。ボディー１３は円筒形状で、その両端がフランジ状に伸びた形となっている。さらに、ボディー１３の図示上端面には大径部１４ａ、小径部１４ｂ、段差部１４ｃ、底部１４ｄを備える段付孔１４が形成されている。またボディー１３には第１通路１５及び第２通路１６が形成されており、第１通路１５の一端はボディー１３の図示下端面に開口し、連結管３を経て圧力振動源２に連結している。一方、第１通路１５の他端は段付孔１４の段差部１４ｃに開口している。第２通路１６の一端はボディー１３の図示下端面に開口し、位相調節源１２に連結している。一方、第２通路１６の他端は段付孔１４の底部１４ｄに開口している。段付孔１４の小径部１４ｂには整流器１７が配置され、大径部１４ａには第３通路形成部材１８が配置されている。第３通路形成部材１８と整流器１７とで囲まれた空間で、第３通路１９が形成される。
【００１５】
ボディー１３は、ボルト２０によってフランジ２１と螺合固定されている。フランジ２１は円板状に形成されており、その中央部に段付孔２２を有する。段付孔２２は、大径部２２ａ、小径部２２ｂ、段差部２２ｃからなり、小径部２２ｂは両端開口している。段付孔２２の小径部２２ｂにはパルス管１１の一端が挿通され、小径部２２ｂとパルス管１１はニッケルろう付けにより接合されている。段付孔２２の大径部２２ａには蓄冷器ケース５の一端が挿入され、挿入部分において大径部２２ａと蓄冷器ケース５とはニッケルろう付けにより接合されている。パルス管１１は段付孔２２の小径部２２ｂから突出し、段付孔１４の大径部１４ａにまで達している。この突出部内に、整流器１７の、段付孔１４の小径部１４ｂから突出した部分が圧入され、圧入部においてもやはり両者はニッケルろう付けにより接合されている。また段付孔２２の段差部２２ｃには連絡路２３が形成されており、この連絡路２３は、蓄冷器ケース５とパルス管１１とで囲まれ、蓄冷材２が充填されている空間Ａと、第３通路１９とを連通するものである。尚、この場合において、フランジ２１が本発明の固定部材となる。
【００１６】
蓄冷器ケース５及びパルス管１１の図示上端には低温通路形成部材９が配置される。低温通路形成部材９の図示下面には、その外径側に環状突起９ａが形成されており、環状突起９ａの内周面９ｂにはパルス管１１の他端がニッケルろう付けにより接合され、環状突起９ａの外周面９ｃには蓄冷器ケース５の他端がニッケルろう付けされている。また、低温通路形成部材９の内部には低温通路６が形成されている。被冷却体に直接当接する冷却部材８は、低温通路形成部材９を覆うように低温通路形成部材９の外側に配置されている。従って、蓄冷器ケース５の他端は、低温通路形成部材９と冷却部材８との間に挟み込まれた状態となる。低温通路形成部材８は、内部に低温通路１０が設けられており、この低温通路１０は、蓄冷材６が充填された空間Ａとパルス管１１の内部空間Ｂとを連通すべく形成されている。このため、蓄冷材が充填された空間Ａは、低温通路１０を経てパルス管５の内部空間Ｂに連通状態となる。尚、低温通路形成部材９及び冷却部材８により、コールドヘッド７が構成される。
【００１７】
本実施形態例におけるパルス管冷凍機１は、上記構成となっているため、冷凍機の内部空間は、圧力振動源２から連結管３、第１通路１５、第３通路１９、連通路２３、蓄冷器ケース５とパルス管１１とで囲まれ蓄冷材が充填された空間Ａ、低温通路１０、パルス管１１の内部空間Ｂ、整流器１７、第２通路１６、位相調節源８の順に連通する。
【００１８】
上記構成のパルス管冷凍機１において、蓄冷器ケース５の一端とフランジ２１に設けられた段付孔２２の大径部２２ａ、蓄冷器ケース５の他端と低温通路形成部材９に設けられた環状突起９ａの外周面９ｃ、パルス管５の一端とフランジ２１に設けられた段付孔２２の小径部２２ｂ、パルス管５の他端と低温通路形成部材９に設けられた環状突起９ａの内周面９ｂ、冷却部材８と低温通路形成部材９は、それぞれニッケルろう付けにより接合されている。また、蓄冷材６を構成するリング状の金属メッシュ６ａは、それぞれ隣接する金属メッシュ間同志で、接触部分が固着されている。以下に、これらの接合方法及び固着方法について、その製造方法とともに説明する。
【００１９】
▲１▼メッキ工程
冷却部材８、低温通路形成部材９、蓄冷器ケース５、パルス管１１をニッケルメッキ浴中に浸漬し、無電解メッキを行う。
【００２０】
▲２▼圧入工程
・冷却部材８の内部に低温通路形成部材９を圧入する。
【００２１】
・低温通路形成部材９に設けられた環状突起９ａの内周面９ｂにパルス管１１の他端を圧入する。
【００２２】
・蓄冷器ケース５の他端を、低温通路形成部材９に設けられた環状突起９ａの外周部９ｃと冷却部材８との隙間に圧入する。
【００２３】
・蓄冷器ケース５とパルス管１１とで囲まれた空間Ａ内に、リング状の金属メッシュ６ａを複数枚積層し、圧入する。
【００２４】
・フランジ２１に設けられた段付孔２２の小径部２２ｂにパルス管１１の一端を圧入し、段付孔２２の大径部２２ａに蓄冷器ケース５の一端を圧入する。
【００２５】
・パルス管１１の一端の内周部に整流器１７を圧入する。
【００２６】
▲３▼真空加熱ろう付け工程
上記圧入工程後に、各部品が圧入された状態で真空加熱する。
【００２７】
真空加熱後に、ボディー１３をボルト２０によりフランジ２１に螺合する。その後、圧力振動源２を連結管３を介してボディー１３に設けられた第１通路１５に連結し、位相調節源８を第２通路１６に連結する。
【００２８】
真空加熱ろう付け工程においては、加熱中にメッキしたニッケルが溶け出し、各圧入した部分がニッケルろう付けされる。また、真空加熱することにより、蓄冷材である金属メッシュは真空拡散結合を起こし、隣接するリング状のメッシュ同志が接触部分で固着される。
【００２９】
上記工程を経て製造されたパルス管冷凍機は、各圧入部分である、蓄冷器ケース５の一端と段付孔２２の大径部２２ａ、蓄冷器ケース５の他端と環状突起９ａの外周面９ｃ、パルス管１１の一端と段付孔２２の小径部２２ｂ、パルス管１１の他端と環状突起９ａの内周面９ｂ、冷却部材８と低温通路形成部材９が、それぞれニッケルろう付けされ、接合される。また、蓄冷材を構成するリング状の金属メッシュ６ａの外周部６ｂと蓄冷器ケース５の内周面、金属メッシュ６ａの内周部６ｃとパルス管１１の外周面も、ニッケルろう付けされる。さらに、真空拡散結合により、隣接する金属メッシュ同志も接触部分で固着される。
【００３０】
上記のように製造されたパルス管冷凍機において、実際に運転させてみると、圧力振動源による冷凍機内の圧力変動が１５ｋｇｆ／ｃｍ2 程度生じ、従来ではパルス管がこの圧力変動により７μｍ程度伸縮したが、本実施形態例によるパルス管冷凍機では２μｍ程度の伸縮で抑えられた。これは、パルス管１１の一端がフランジ２１に接合され、他端が低温部材９に接合されていること、及び、蓄冷材を構成するリング状の金属メッシュ６ａの内周部６ｃがパルス管１１にニッケルろう付けで接合されていること、のため、パルス管に当接する各部品は全てパルス管に接合されており、パルス管１１の伸縮動作が規制されたことに起因する。またこの場合において、蓄冷材６を構成するリング状の金属メッシュ６ａのそれぞれは、隣接する金属メッシュと接触部分において真空拡散結合により固着されている。このため、パルス管が伸縮しようとするときに、より強い抵抗力となり、パルス管の伸縮動作の規制を助長する。このため、コールドヘッド７に伝わる振動も極めて小さいものとなり、冷凍性能に及ぼす影響もわずかなものとなり、冷凍性能の低下を防止することができた。
【００３１】
また、蓄冷材であるリング状の金属メッシュ６ａの内周部６ｃがパルス管１１の外周面にニッケルろう付けにより接合されているため、万が一パルス管１１が伸縮しても、蓄冷材である金属メッシュ６ａとパルス管１１は摩擦摺動することがなく、この摩擦摺動による発熱が起こらない。このため、この摩擦摺動に基づく発熱による冷凍性能の低下を防止できた。
【００３２】
【発明の効果】
請求項１の発明は、以下の如く効果を有する。
【００３３】
パルス管の一端が固定部材に固定され、パルス管の他端がコールドヘッドに固定されているので、圧力振動源から供給される作動ガスの圧力変動によるパルス管の伸縮動作が規制される。このため、パルス管の伸縮動作に起因する振動の発生を極力防止でき、この振動による冷凍性能の低下を防止できた。
【００３４】
請求項２の発明は、以下の如く効果を有する。
【００３５】
蓄冷材であるリング状のメッシュの内周がパルス管に接合されているため、パルス管が伸縮するときに蓄冷材が抵抗となり、パルス管の伸縮動作が規制される。このため、パルス管の伸縮動作に起因する振動の発生を極力防止でき、この振動による冷凍性能の低下を防止できた。
【００３６】
また、万が一パルス管が伸縮した場合には、パルス管の伸縮動作に従って蓄冷材も動作する。このため、パルス管と蓄冷材がその接合部において相対的に同一の動作をし、両者の間で摩擦摺動が行われることはない。従って、パルス管と蓄冷材との摩擦摺動に基づく発熱による冷凍性能の低下を防止できた。
【００３７】
請求項３の発明は、以下の如く効果を有する。
【００３８】
リング状のメッシュを複数枚接合し、隣接するメッシュ同志をその接触部において固着させた構成であるため、パルス管が伸縮しようとするときの抵抗力がより強力となり、パルス管の伸縮動作をより強く規制できる。このため、パルス管の伸縮動作に起因する振動の発生を極力防止でき、この振動による冷凍性能の低下をさらにより一層防止できた。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施形態例である同軸型パルス管冷凍機の部分断面図である。
【図２】同軸型パルス管冷凍機の概略図である。
【図３】蓄冷材を構成するリング状の金属メッシュが積層された状態を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
１ 同軸型パルス管冷凍機
２ 圧力振動源
４ 蓄冷器
５ 蓄冷器ケース
６ 蓄冷材 ６ａ リング状メッシュ部材
６ｂ 外周部 ６ｃ 内周部
７ コールドヘッド
８ 冷却部材
９ 低温通路形成部
１１ パルス管
１２ 位相調節源
２１ フランジ（固定部材）
２２ 段付孔 ２２ａ 大径部 ２２ｂ 小径部
Claims (4)
- 圧力振動源と、蓄冷器ケースと、コールドヘッドと、パルス管と、位相調節源とを直列接続したパルス管冷凍機であって、前記蓄冷器ケースの内側に前記パルス管が同軸的に配置され、前記蓄冷器ケースと前記パルス管とで囲まれた空間に蓄冷材が充填されてなる同軸型パルス管冷凍機において、
前記パルス管の一端及び前記畜冷器ケースの一端は、固定部材に接合され、
前記パルス管の他端及び前記蓄冷器ケースの他端は前記コールドヘッドに接合されていることを特徴とする、同軸型パルス管冷凍機。 - 前記パルス管の両端と前記蓄冷器ケースの両端とを、前記固定部材と前記コールドヘッドとにろう付けにより接合してなることを特徴とする、請求項１に記載の同軸型パルス管冷凍機。
- 圧力振動源と、蓄冷器ケースと、コールドヘッドと、パルス管と、位相調節源とを直列接続したパルス管冷凍機であって、前記蓄冷器ケースの内側に前記パルス管が同軸的に配置され、前記蓄冷器ケースと前記パルス管とで囲まれた空間に蓄冷材が充填されてなる同軸型パルス管冷凍機において、
前記蓄冷材は、リング状に形成されたメッシュを複数枚積層してなり、前記リング状に形成されたメッシュの内周部は前記パルス管の外周面に接合されていることを特徴とする、同軸型パルス管冷凍機。 - 前記蓄冷材は、リング状に形成されたメッシュを複数枚積層してなり、隣接した前記リング状に形成されたメッシュ同志は各々接触部分で固着されていることを特徴とする、請求項３に記載の同軸型パルス管冷凍機。
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