JP3676227B2 - 化学物質の検出装置および化学物質の濃度測定方法 - Google Patents

化学物質の検出装置および化学物質の濃度測定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、化学物質の検出装置および化学物質の濃度測定方法に関し、特に、ハロゲン化有機化学物質のような微量分子を高精度に検出するための化学物質の検出装置および化学物質の濃度測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
クロロベンゼン類、ダイオキシン類のような、微量で、有害な化学物質が、燃焼炉、金属精練炉から排出される排ガス中に含まれて排出されている。環境問題から、このような微量有害物質の検出および濃度測定を的確に行うことが、特に強く求められている。
【0003】
上述のような化学物質の検出、濃度測定のための装置として、ガスクロマトグラフ法、質量分析法のような慣用技術によるものが知られており、そのうち、飛行時間型の質量分析法は、ガスクロマトグラフ法に比べて、その計測時間が短い点で優れている。
【0004】
飛行時間型質量分析法は、短パルスレーザ光や短パルス放電などを用いてサンプルガスを一瞬にイオン化して生成したイオンパケット、あるいはサンプルガスを電子ビームや真空紫外光で連続的にイオン化し、一旦イオントラップに蓄積した後に一瞬に放出して得たイオンパケットを電界で加速してイオン検出器までの一定距離を飛行させ、イオン検出器に到達する飛行時間の違いにより質量分離を行い、その質量数に対比する飛行時間を計測することにより、その物質を同定する方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような飛行時間型質量分析法では、ある瞬間に生成したイオンパケットに対して基準時間を設定し、質量数に対応した飛行時間を計測するので、基準時間からずれて生成したイオンは、質量数に対応した飛行時間からずれたノイズとして検出され、計測感度の低下を招くことになる。
【0006】
特に、連続的なイオン化を行い、イオントラップで蓄積した後、一瞬に放出してイオンパケットを生成する場合には、イオントラップからの蓄積したイオンの放出後も、イオン生成及びイオントラップへのイオン入射を継続していれば、基準時間からずれてイオンを生成する事となり、飛行時間計測のノイズが増加することになり、計測感度の低下を招くことになる。
【0007】
この発明は、上述の如き問題点を解消するためになされたもので、基準時間からずれて飛行時間型質量分析装置に入るイオンを抑制して飛行時間計測のノイズを低減し、検出感度を向上することができ化学物質の検出装置および化学物質の濃度測定方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明において、課題を解決するための手段は下記のように表現される。
なお、その表現中の請求項対応の技術的事項には、括弧()付きで、番号、記号等が添記されている。その番号、記号等は、請求項対応の技術的事項と実施の複数形態のうちの少なくとも1つの形態の技術的事項との一致・対応関係を明白にしているが、その請求項対応の技術的車頃が実施の形態の技術的事項に限定されることを示すためのものではない。
【0009】
この発明による化学物質の検出装置は、サンプルガスをイオン化するための真空紫外光ランプ(5)のようなイオン化源と、高周波電界を内部に生成されてイオン化されたサンプルガスを蓄積するトラップ手段(7)と、前記トラップ手段(7)に蓄積されたサンプルガスを加速して加速された物質の飛行時間を計測する質量分析手段(6)と、前記質量分析手段(6)による飛行時間計測のタイミングに同期して前記サンプルガスのイオン化を停止するイオン化停止手段とを有しているものである。
【0010】
なお、加速された物質の飛行時間の計測によって質量を求め、その物質を同定することは、飛行時間型の質量分析技術として、慣用技術である。
【0011】
イオン化停止手段としては、前記イオン化源とサンプルガスのイオン化位置の間に設けられ、質量分析手段(6)による飛行時間計測のタイミングに同期して開閉してイオン化源から放出される光や電子線などが前記イオン化位置に至ることを禁止する遮蔽物によるものや、質量分析手段による飛行時間計測のタイミングに同期して前記イオン化源自体のイオン化動作をオン・オフ制御するもの(9)等がある。
【0012】
また、この発明による化学物質の検出装置は、サンプルガスをイオン化するための真空紫外光ランプ(5)のようなイオン化源と、高周波電界を内部に生成されてイオン化されたサンプルガスを蓄積するトラップ手段(7)と、前記トラップ手段(7)に蓄積されたサンプルガスを加速して加速された物質の飛行時間を計測する質量分析手段(6)と、前記質量分析手段(6)による飛行時間計測のタイミングに同期して、イオン化したサンプルガスの前記トラップ手段(7)への入射を禁止する入射禁止手段とを有しているものである。
【0013】
入射禁止手段としては、前記イオン化源によるサンプルガスのイオン化位置と前記トラップ(7)との間に設けられ、前記質量分析手段(6)による飛行時間計測のタイミングに同期して開閉してイオン化したサンプルガスが前記トラップ手段(7)へ入射することを禁止する遮蔽物によるものや、前記イオン化源によるサンプルガスのイオン化位置と前記トラップ手段(7)との間に設けられ、前記質量分析手段(6)による飛行時間計測のタイミングに同期して電圧を印加されることにより、イオン化されたサンプルガスの前記トラップ手段(7)に対する入射方向を偏向する一対の偏向電極(10a、10b)によるもの等がある。
【0014】
また、サンプルガスをイオン化するイオン化源としては真空紫外光源(5)があり、発生した真空紫外光によってサンプルガスをイオン化する。この場合、特定物質のイオン化エネルギーに対して、それを上回る光子エネルギーを持つ真空紫外光を照射して、その物質を1光子のエネルギーでイオン化することができる。
【0015】
検出対象の化学物質としては、ポリクロロジベンゾパラダイオキシン、ポリクロロジベンゾフラン、ポリクロロビフェニール、ポリクロロベンゼン、ポリクロロフェノール、ポリクロロナフタレン等の塩素化有機化合物がある。
【0016】
また、この発明による化学物質の検出装置は、サンプルガスをイオン化し、イオン化されたサンプルガスをイオントラップ(7)によって蓄積し、蓄積されたイオン化ガスを加速し、加速された物質の飛行時間の計測に基づいて物質を同定し、濃度を測定するにあたり、飛行時間計測のタイミングと同期してサンプルガスのイオン化を停止するか、イオン化したサンプルガスのイオントラップ(7)への入射を停止するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照してこの発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1はこの発明による化学物質の検出装置の一つの実施例の形態を示している。
【0018】
この発明による化学物質の検出装置は、イオン化室1がガス導入装置2と共に設けられている。ガス導入装置2はガス噴射管3を備えている。ガス噴射管3は、パルスバルブのようなオリフィスを用いた開閉弁あるいはキャピラリ管により形成されている。ガス噴射管3に導入側から導入されるサンプルガスGsはイオン化室1に導入される。
【0019】
サンプルガスGsには、クロロベンゼンのようなハロゲン化有機化合物(以下、検出対象物質という)が含まれていることが想定されている。ガス噴射管3の周囲にはヒータ4が設けられている。ヒータ4は検出対象物質がガス噴射管3の内壁に付着することを防止するための加熱装置である。
【0020】
イオン化室1には紫外光発生手段として真空紫外光ランプ5が設けられている。真空紫外光ランプ5は、Ar、Kr、Xe等の希ガスや、H2、O2、Cl2等をAr、Heに添加したガスの放電により、真空紫外光Lを発生する。
【0021】
真空紫外光ランプ5は、放電するガスの種類を変えることで、発生する真空紫外光の光子エネルギ量を変え、計測する物質のイオン化エネルギ以上の光子エネルギを持つ真空紫外光Lを発生する。
【0022】
イオン化室1に導入されたサンプルガスGsは、イオン化室1内において、真空紫外光ランプ5が出力する真空紫外光Lの照射を受け、真空紫外光Lより光子エネルギを受け取ってイオン化する。
【0023】
イオン化したサンプルガスGsiは、高周波電界を内部に生成するイオントラップ7に蓄積される。イオントラップ7は、慣用技術によるものであり、イオントラップ電源8による高周波電圧の印加によって高周波電界を内部に生成する。イオントラップ電源8による高周波電圧とイオントラップ7の中で蓄積されるイオンの質量数との間には対応関係がある。
【0024】
検出対象の特定物質をイオントラップ7に一定時間蓄積した後に、イオントラップ7に対して引出し加速電圧を印加することにより、イオントラップ7に蓄積された特定のイオン化物質はイオントラップ7から引き出され、イオン化室1に隣接して設けられた質量分析装置6内に導入される。
【0025】
イオントラップ7に対する引出し加速電圧の印加タイミングに同期して真空紫外光ランプ5のランプ放電制御電源9をオン・オフ制御し、質量分析装置6でイオンの飛行時間を計測する一定時間だけ、放電を停止し、真空紫外光の発生を停止する。従って、ランプ放電制御電源9は、イオン化停止手段として機能し、質量分析装置6によるイオン化物質の飛行時間計測のタイミングに同期してサンプルガスのイオン化を停止する。
【0026】
質量分析装置6に導入されたイオン化物質は、一瞬に加速電圧を受けて質量分析装置6内を飛行する。質量分析装置6はその飛行時間を測定する。イオン化物質の飛行時間と飛行物質の質量との間には高度の対応関係があり、飛行時間より飛行物質の質量を検出し、質量より物質を同定することができる。
【0027】
【実施例1】
サンプルガスGsとして、ヘリウムガスにより希釈された10ppmのモノクロロベンゼンを用いた。ガス噴射管3に導入されるサンプルガスGsは、ヒータ4によって加熱された後にイオン化室1に導入される。
【0028】
イオン化室1に導入されたサンプルガスGsは、真空紫外光ランプ5が発生する真空紫外光Lの照射を受けてイオン化する。真空紫外光ランプ5は、真空紫外光Lとして、H2とArの混合ガスをマイクロ波放電し、光子エネルギ10.2eVの光を発生した。
【0029】
このような真空紫外光Lの照射を受けてイオン化したサンプルガスGsiは、高周波電界を内部に生成されるイオントラップ7内に蓄積される。イオントラップ7にはイオントラップ電源8によって高周波電圧が印加される。イオントラップ電源8で発生する高周波の周波数及び電圧と、イオントラップ7の中で蓄積されるイオンの質量数との間には、対応関係がある。
【0030】
イオントラップ7で特定物質を0.1s間蓄積した後、イオントラップ7に引出し加速電圧を印加することにより、イオントラップ7に蓄積された特定イオン化物質が質量分析装置6に導入されて質量分析装置6の中で飛行し、その飛行時間を測定することで、質量分析される。
【0031】
この時、イオントラップ7に引出し加速電圧を印加するトリガ信号に同期して、真空紫外光ランプ5のランプ放電制御電源9をオン・オフし、質量分析装置6で飛行時間を計測する10msの間、真空紫外光ランプ5の放電を停止し、真空紫外光Lを停止する。
【0032】
質量分析の結果として得られたモノクロロベンゼンの信号に対し、図3に示すように、ノイズレベルは0.5mVであった。同図には、従来方法である飛行時間計測中にも真空紫外光の照射を継続した場合のノイズレベルを示しており、その値は0.8mVであったことから、飛行時間計測中に、真空紫外光照射を停止する事により、ノイズレベルを低減できた。
【0033】
図2は、この発明による化学物質の検出装置の他の実施の形態を示している。図2におけるイオン化室1、ガス導入装置2、ガス噴射管3、ヒータ4、真空紫外光ランプ5、質量分析装置6の構成は、図1に示されるものと全く同一である。
【0034】
この実施の形態では、真空紫外光ランプ5の真空紫外光照射によるサンプルガスのイオン化位置Pとイオントラップ7との間に一対のイオン入射偏向電極10aと10bが設けられている。イオン入射偏向電極10a、10bは、電極電圧印加電源11による電圧印加により、イオン化されたサンプルガスGsiのイオントラップ7に対する入射方向を偏向し、イオン化されたサンプルガスGsiがイオントラップ7に入射することを選択的に禁止する。
【0035】
電極電圧印加電源11が、イオントラップ7に引出し加速電圧を印加するトリガ信号に同期して印加電圧を制御されることにより、質量分析装置6によるイオン化物質の飛行時間計測のタイミングに同期して、イオン入射偏向電極10a、10bによって、イオン化されたサンプルガスGsiがイオントラップ7に入射することが禁止される。
【0036】
【実施例2】
サンプルガスGsとして、ヘリウムガスにより希釈された10ppmのモノクロロベンゼンを用いた。ガス噴射管3に導入されるサンプルガスGsは、ヒータ4によって加熱された後にイオン化室1に導入される。
【0037】
イオン化室1に導入されたサンプルガスGsは、真空紫外光ランプ5が発生する真空紫外光Lの照射を受けてイオン化する。真空紫外光ランプ5は、真空紫外光Lとして、H2とArの混合ガスをマイクロ波放電し、光子エネルギ10.2eVの光を発生した。
【0038】
このような真空紫外光Lの照射を受けてイオン化したサンプルガスGsiは、イオン入射偏向電極10a、10bを通して、高周波電界を内部に生成されるイオントラップ7に蓄積される。イオン化したサンプルガスGsiをイオントラップ7に蓄積している間、イオン化したサンプルガスGsiがイオントラップ7に導入されるよう、一対のイオン入射偏向電極10aと10bの間には同電位を電極電圧印加電源11から印加している。
【0039】
イオントラップ7で特定物質を0.1s間蓄積した後、イオントラップ7に対して引出し加速電圧を印加することにより、イオントラップ7に蓄積された特定イオン化物質が質量分析装置6に導入されて質量分析装置6の中で飛行し、その飛行時間を測定することで、質量分析される。
【0040】
この時、イオントラップ7に引出し加速電圧を印加するトリガ信号に同期して、電極電圧印加電源11を制御して質量分析装置6で飛行時間を計測する0.1msの間、イオン入射偏向電極10aと10b間に5Vの電位差を印加する事により、イオン化したサンプルガスGsiがイオントラップ7に入射することが阻止される。
【0041】
質量分析の結果として得られたモノクロロベンゼンの信号に対し、図3に示すようにノイズレベルは0.6mVであった。同図には、従来方法としてイオン入射偏向電極10を使用しない場合のノイズレベルを示しており、その値は0.8mVであったことから、飛行時間計測中に、イオントラップ7へのイオン入射を阻止する事により、ノイズレベルを低減できた。
【0042】
【発明の効果】
以上の説明から理解される如く、この発明による化学物質の検出装置および化学物質の濃度測定方法によれば、質量分析装置での飛行時間計測時にサンプルガスのイオン化を停止、あるいはイオントラップへのイオンの入射を禁止することにより、計測のノイズレベルの低下が図れ、その結果、計測感度の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による化学物質の検出装置の一つの実施の形態を示す構成図である。
【図2】この発明による化学物質の検出装置の他の実施の形態を示す構成図である。
【図3】この発明による化学物質の検出装置におけるノイズレベルと従来の化学物質の検出装置におけるノイズレベルとを比較して示すグラフである。
【符号の説明】
1 イオン化室
2 ガス導入装置
3 ガス噴射管
4 ヒータ
5 真空紫外光ランプ
6 質量分析装置
7 イオントラップ
8 イオントラップ電源
9 ランプ放電制御電源
10a、10b イオン入射偏向電極
11 電極電圧印加電源

Claims (4)

  1. 発生した真空紫外光によってサンプルガスをイオン化するイオン化源としての真空紫外光源と、
    高周波電界を内部に生成させてイオン化されたサンプルガスを蓄積するトラップ手段と、
    前記トラップ手段に蓄積されたサンプルガスを加速して加速された物質の飛行時間を計測する質量分析手段と、
    前記トラップ手段に対する引出し加速電圧の印加タイミングに同期して前記真空紫外光源のイオン化動作をオン・オフ制御して前記質量分析手段で飛行時間を計測する一定時間だけ前記サンプルガスのイオン化を停止するイオン化停止手段と、
    を有していることを特徴とする化学物質の検出装置。
  2. 発生した真空紫外光によってサンプルガスをイオン化するイオン化源としての真空紫外光源と、
    高周波電界を内部に生成されてイオン化されたサンプルガスを蓄積するトラップ手段と、
    前記トラップ手段に蓄積されたサンプルガスを加速して加速された物質の飛行時間を計測する質量分析手段と、
    前記イオン化源によるサンプルガスのイオン化位置と前記トラップ手段との間に設けられ、前記トラップ手段に対する引出し加速電圧の印加タイミングに同期して電圧を印加して前記質量分析手段で飛行時間を計測する一定時間だけイオン化されたサンプルガスの前記トラップ手段に対する入射方向を偏向する偏向電極を有することで入射を禁止する入射禁止手段と、
    を有していることを特徴とする化学物質の検出装置。
  3. サンプルガスを真空紫外光によってイオン化し、イオン化されたサンプルガスをイオントラップによって蓄積し、蓄積されたイオン化ガスを加速し、加速された物質の飛行時間の計測に基づいて物質を同定し、濃度を測定するにあたり、イオントラップに対する引出し加速電圧の印加タイミングに同期してイオン化動作をオン・オフ制御して飛行時間を計測する一定時間だけサンプルガスのイオン化を停止することを特徴とする化学物質の濃度測定方法。
  4. サンプルガスを真空紫外光によってイオン化し、イオン化されたサンプルガスをイオントラップによって蓄積し、蓄積されたイオン化ガスを加速し、加速された物質の飛行時間の計測に基づいて物質を同定し、濃度を測定するにあたり、イオントラップに対する引出し加速電圧の印加タイミングに同期してイオン化したサンプルガスのイオントラップに対する入射方向を偏向することで入射を停止することを特徴とする化学物質の濃度測定方法。
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