JP3676047B2 - 硬貨選別方法および装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、硬貨選別方法および装置に関し、特に、材質や外形が正貨に酷似した外国貨や偽貨等の受け入れを防止することのできる硬貨選別方法および装置に関する。
【0002】
【従来技術】
一般に、自動販売機や両替機、サービス機器等に使用される硬貨選別装置では、硬貨投入口から投入された硬貨を正貨と偽貨とに振り分け、更にこの振り分けられた正貨を金種別に振り分けて受け入れるように構成されている。
【0003】
この硬貨の振り分けは、硬貨投入口から投入された硬貨を硬貨振り分け部に誘導する硬貨通路に設けられたセンサにより硬貨の材質や外形等の特徴を検出し、この検出結果に基づいて行う。
【0004】
硬貨の特徴を検出するセンサには、例えば硬貨通路の一側面にコイルを配設するとともに、このコイルを含む発振回路を形成したものがある。このセンサは硬貨がコイルの付近を通過する際に、硬貨によりコイルのインダクタンスが変化することを利用したもので、発振周波数の変化を検出することで通過した硬貨の情報を得るものである。
【0005】
また、別の構成としては硬貨通路の一側面に所定の周波数の励磁電流により励磁される発振コイルを配設するとともに、他側面に受信コイルを配設したセンサもある。これは硬貨が発振コイルと受信コイルの間を通過することによって発振コイルと受信コイルの間の相互結合係数(磁気結合係数)が変化することを利用したもので、受信コイルの出力電圧の変化を検出することで通過した硬貨の情報を得るものである。
【0006】
ところで、硬貨の通過により変化するインダクタンスや相互結合係数は硬貨の材質により異なるため、上述のセンサのいずれを利用してもその出力から硬貨の材質を検出することが可能であり、発振周波数や励磁周波数が低い場合には硬貨の表面の材質を、発振周波数や励磁周波数が高い場合には硬貨の内部の材質を検出することができる。
【0007】
また、硬貨通路に配設するセンサの位置を調整することで硬貨の外形を検出することも可能であるが、これは硬貨通路を通過する硬貨はその径により高さ(面積)が異なるため、所定の高さにセンサを設けることで通過する硬貨により出力が異なることを利用したものである。
【0008】
一般的には、従来の硬貨選別装置は、上述のセンサを硬貨の材質、外形を検出する用途で用いるために具備しており、各用途毎に1または複数のセンサを利用している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の硬貨選別装置では硬貨の材質と外形で投入された硬貨の正偽を判定しているため、材質や外形が正貨に酷似している外国貨等を正貨として受け入れてしまうことになり、現にこれを利用した犯罪も多発している。
【0010】
そこで、この発明は、材質や外形等が正貨に酷似している外国貨等の偽貨を検出することのできる硬貨選別方法および装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するため、請求項1の発明は、硬貨通路に少なくとも1個のセンサを配設し、該センサにより該硬貨通路を転動する硬貨の特徴を検出し、該検出結果に基づき前記硬貨の正偽を判定して、該判定により正と判定された前記硬貨を受け入れ、前記判定により偽と判定された前記硬貨を返却する硬貨選別方法において、前記センサの出力の波形が上昇から下降に変化する各変化点および下降から上昇に変化する各変化点のデータを記憶し、該記憶した複数のデータから所定の数のデータを選択することで、前記センサの出力を集約し、該集約したデータを基本パターンデータに変換するとともに、該変換した基本パターンデータを予め設定した金種毎の基準データと比較し、該比較結果に基づいて前記硬貨の正偽を判定することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記変換は、前記集約したデータを所定の順番に並べ替えることで行うことを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記硬貨の正偽の判定は、複数の項目毎の前記基本パターンデータと前記基準データとの差を示す離散値と、前記複数の項目の全ての項目に対応する前記離散値の総和とに基づいて行われることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記比較は、正貨に近似した偽貨に対応した前記基準データに対しても行い、該比較の結果が前記正貨と前記偽貨の両者に該当すると判定された場合には、前記硬貨は、前記正貨と前記偽貨とに対する比較結果のうち近似度の高い方に該当すると判定することを特徴とする。
【0015】
また、請求項5の発明は、硬貨通路に少なくとも1個のセンサを配設し、該センサにより該硬貨通路を転動する硬貨の特徴を検出し、該検出結果に基づき前記硬貨の正偽を判定して、該判定により正と判定された前記硬貨を受け入れ、前記判定により偽と判定された前記硬貨を返却する硬貨選別装置において、前記センサの出力の波形が上昇から下降に変化する各変化点および下降から上昇に変化する各変化点のデータを記憶し、該記憶した複数のデータから所定の数のデータを選択することで、前記センサの出力を集約するデータ集約手段と、前記集約手段により集約されたデータを基本パターンデータに変換する基本パターンデータ変換手段と、前記基本パターンデータ変換手段により変換された基本パターンデータを予め設定した金種毎の基準データと比較する基本パターンデータ比較手段とを具備し、前記基本パターンデータ比較手段での比較結果に基づいて前記硬貨の正偽を判定することを特徴とする。
【0016】
また、請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記基本パターンデータ変換手段は、前記集約手段が集約したデータを所定の順番に並べ替えることで、前記基本パターンデータへの変換を行うことを特徴とする。
【0017】
また、請求項7の発明は、請求項5の発明において、複数の項目毎に前記基本パターンデータと前記基準データとの差を示す離散値を算出する離散値算出手段と、前記離散値算出手段が前記複数の項目の全ての項目に対応して算出した離散値の総和を算出する総合離散値算出手段とをさらに具備し、前記基本パターンデータ比較手段は、前記離散値算出手段が算出した離散値と、前記総合離散値算出手段が算出した離散値の総和とに基づいて前記比較を行うことを特徴とする。
【0018】
また、請求項8の発明は、請求項5の発明において、前記基本パターンデータ比較手段に前記基本パターンデータと、正貨に近似した偽貨に対応した前記基準データとをさらに比較させ、該比較の結果が前記正貨と前記偽貨の両者に該当すると判定された場合に、前記硬貨が前記正貨と前記偽貨とに対する比較結果のうち近似度の高い方に該当すると判定する近似度判定手段をさらに具備することを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係わる硬貨選別方法および装置の一実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、硬貨選別装置の構成を示すブロック図である。
図1において、硬貨選別装置100は、投入された硬貨の選別制御を行う制御部1、硬貨の投入口である硬貨投入部2、硬貨の特徴を検出するセンサ部3、制御部1の制御に基づき投入された硬貨を振り分ける硬貨振分部4、投入された硬貨を返却する硬貨返却部5、投入された硬貨を受け入れる硬貨受入部6、投入された硬貨が移動する硬貨通路7(7−1、7−2、7−3、7−4)を具備して構成される。
【0021】
また、センサ部3は主として硬貨の材質を検知するセンサ31a、主として硬貨の外形を検知するセンサ31b、主として硬貨表面の模様を検知するセンサ31cを具備し、制御部1はセンサ31a乃至31cの検知結果から硬貨の情報を各々検出する検出手段11a乃至11c、検出手段11a乃至11cが検出したアナログ信号の情報をディジタル信号の情報に変換するA/D変換手段12a乃至12c、A/D変換手段12a乃至12cを介して入力された硬貨の情報に基づいて硬貨の判定処理を行うCPU13、CPU13での判定結果に基づいて硬貨振分部4を制御する硬貨振分制御手段14、CPU13が硬貨の判定処理の際に必要とする判定値を格納している判定値格納手段15、情報等を一時的に記憶するRAMや処理命令等が記録されたROM等で構成されるメモリ16を具備して構成される。
【0022】
ここで、硬貨選別装置100に投入された硬貨の流れを図2を参照して説明する。
図2は、硬貨選別装置100における硬貨の流れを示す略図である。
【0023】
図2に示す硬貨選別装置においては、投入された硬貨を金種別に受け入れることができるように硬貨受入部6を硬貨受入部6a乃至6dに区分している(図1では省略している)。
【0024】
また、図1には示していない硬貨払出制御部8を付加して、硬貨受入部6a乃至dに受け入れられた硬貨を払い出しできるように構成している。
【0025】
さて、硬貨投入部2から投入された硬貨は、硬貨通路7を介して硬貨振分部4まで搬送されるが、搬送途中にセンサ部3により当該硬貨の特徴が検知され、このセンサ部3の出力は制御部1に入力され、制御部1ではセンサ部3の出力に基づき、当該硬貨の正偽と金種を選別し硬貨振分部4を制御する。
【0026】
硬貨振分部4は、硬貨通路7を介して搬送された硬貨を制御部1からの制御信号に基づき振り分ける。
【0027】
このとき、制御部1により当該硬貨が偽貨であると認められた場合には、当該硬貨を硬貨返却部5へ振り分け、当該硬貨は硬貨返却口9(図1では不図示)から投入者に返却される。
【0028】
また、制御部1により当該硬貨が正貨であると認められた場合には、当該硬貨を硬貨受入部6に振り分けるが、この場合には、更に金種別に硬貨受入部6a乃至6dのいずれかに当該硬貨を振り分ける。
【0029】
硬貨振分部6a乃至6dに振り分けられた硬貨は、釣り銭の払い出し等、必要に応じて硬貨払出制御部8の制御により、硬貨払出口10(図1では不図示)から払い出される。
【0030】
ところで、この硬貨選別装置100は、センサ部3にセンサ31a乃至31cの3つのセンサを具備し、これらのセンサで硬貨の材質や外形、模様等を検出する。
【0031】
硬貨の材質の検出は、センサ31aを利用して行うが、その検出方法は従来の硬貨選別装置と同様なので説明は省略する。
【0032】
硬貨の外形の検出は、センサ31bを利用して従来の硬貨選別装置と同様に行い(説明は省略する)、さらにセンサ31a乃至31cの3つのセンサの出力を利用して外形の検出を行う。
【0033】
また、硬貨表面の模様の検出は、センサ31cの出力を利用して行う。
【0034】
まず、図3乃至5を参照してセンサ31a乃至31cの3つのセンサを利用して行う硬貨の外形の検出方法を説明する。
【0035】
図3はセンサ部3におけるセンサ31a乃至31cの配置例と硬貨の軌跡を示した図であり、図4はセンサ部3における硬貨通路7の断面図、図5はセンサ31a乃至31cの検出出力を示した図である。
【0036】
センサ31a乃至31cは、図3に示すように配置されるが、このセンサの配置位置に関しては、硬貨選別装置100が受入対象とする硬貨のうち最小径硬貨と最大径硬貨の両者を検出できればどのように配置してもよい。
【0037】
また、センサ部3の硬貨通路7は図4に示すように、その底面を傾斜させており、通過する硬貨の厚みにより高さ方向の通過位置が変わるようにしている。
【0038】
さて、図3(a)はセンサ部3を通過する硬貨21の軌跡21−1乃至21−3を示したものであり、図3(b)は硬貨21よりも径が小さく、厚みの等しい硬貨22がセンサ部3を通過する際の軌跡22−1乃至22−3を、図3(c)は硬貨21と径が等しく、厚みの異なる硬貨23がセンサ部3を通過する際の軌跡23−1乃至23−3を示している。
【0039】
径の等しい硬貨21と硬貨23の通過軌跡が異なるのは、硬貨通路7の底面を傾斜させているためであり、図4に示すように硬貨21(図4(a)参照)と硬貨23(図4(b)参照)では高さ方向の通過位置が変わるためである。
【0040】
この硬貨21乃至23がセンサ部3を通過した際のセンサ31a乃至31cの各出力は、図5に示すようになる。
【0041】
図5(a)、(b)、(c)は各々図3(a)、(b)(c)に対応し、図5(a)は硬貨21が通過した際の各センサの検出出力を、図5(b)は硬貨22が通過した際の各センサの検出出力を、図5(c)は硬貨23が通過した際の各センサの検出出力を示している。
【0042】
同図から明らかなように投入された硬貨の径や厚み等の外形によって、センサ31a乃至31cが硬貨を検出するタイミングや検出(持続)時間が異なる。しかし、同種の硬貨が投入された場合でも硬貨がセンサ部3を通過する際の速度が一定とは限らないために必ずしも同じ出力とはならない。
【0043】
そこで、センサ31aが硬貨の進入を検知した時刻を起点として、センサ31b、センサ31cが当該硬貨の進入を検知するまでの時間を計測し、その時間率Tを算出する。時間率Tはセンサ31aが硬貨の進入を検知してからセンサ31bが当該硬貨の進入を検知するまでの時間をA、センサ31aが硬貨の進入を検知してからセンサ31cが当該硬貨の進入を検知するまでの時間をBとして(1)式で示すように定義する。
【0044】
T = A/B ・・・(1)
【0045】
この時間率Tにより硬貨がセンサ部3を通過する際の速度のばらつきを吸収することができ、時間率Tは硬貨種別により異なる値となるため、時間率Tと各硬貨に対応した所定の値を比較することにより厚みを含めた硬貨の外形を判定することができる。
【0046】
次に、センサ31cの検出出力を利用した硬貨表面の模様の検出方法を説明する。
【0047】
硬貨表面の模様の検出は、センサ31cがセンサ部3に進入した硬貨表面の凹凸のパターンを検出し、この検出パターンと判定基準パターンを比較することで行うが、硬貨は通常、表裏でその模様が異なっており、さらに硬貨は硬貨通路7を転動してセンサ部3に進入するためセンサ31cが検出する凹凸のパターンは無限に存在することになる。
【0048】
しかし、凹凸のパターンが無限に存在するとしても同一の模様の凹凸を検出した場合には、検出データには何等かの特徴が存在することが考えられる。
【0049】
そこで、センサ31cの出力を基本パターンに編集する基本パターン化処理を行い、これを判定パターンと比較することで硬貨表面の模様の検出とすることができる。
【0050】
図6は、センサ31cの出力データとこれを基本パターン化したデータを示した図である。
【0051】
センサ31cの出力は図6(a)に示すように硬貨の表面の凹凸に応じて変化する波形となり、波形の上昇から下降および下降から上昇へと変化する変化点(変曲点)をデータとしてメモリ16に記憶し、このデータを所定個数に集約してデータの基本パターン化を行う。
【0052】
集約するデータの個数は奇数個であれば特に制約はないが、硬貨毎のデータのばらつきを吸収すること等を考慮し、ここでは5個とする。
【0053】
ここで、出力データの基本パターン化処理の方法を説明する。
図7は、出力データの基本パターン化処理の流れを示すフローチャートである。
【0054】
さて、硬貨表面の模様の検出が開始され(ステップ101)、センサ31cの検出出力が閾値よりも低くなると(図6(a)のA点)データのサンプリングが開始され(ステップ102でYES)、下に凸の変曲点P1を検出する(ステップ103)。
【0055】
次に、センサ31cの検出出力が閾値よりも低いままであるならばデータのサンプリングが続けられ(ステップ104でNO)、上に凸の変曲点P2を検出する(ステップ105)。
【0056】
このステップ103とステップ105での変曲点の検出はデータのサンプリングが終了するまで続けられ(変曲点P1乃至P9を検出)、センサ31cの検出出力が閾値よりも高くなると(図6(a)のB点)データのサンプリングが終了され(ステップ104でYES)、変化回数(変曲点の数)がメモリ16に記憶される(ステップ106)。
【0057】
ここで、メモリ16に記憶した変化回数が所定の回数よりも少なければ(ステップ107でNO)、当該硬貨は凹凸が少ない明らかな偽貨であるので当該硬貨を偽貨として返却して(ステップ108)、処理を終了する(ステップ109)。
【0058】
一方、メモリ16に記憶した変化回数が所定の回数以上であれば、最初の変化点P1を第1変化点P1DTと決定し(ステップ110)、最終の変化点P9を第5変化点P5DTと決定する(ステップ111)。
【0059】
次に、第1変化点P1DTと第5変化点P5DTに決定した変化点(P1、P9)を除いた変化点のうち、最も小さい値の変化点P5を第3変化点P3DTに決定する(ステップ112)。
【0060】
第1変化点P1DT、第3変化点P3DT、第5変化点P5DTはいずれも硬貨の凸部のデータ(下に凸の変曲点)であるため、次に硬貨の凹部の割り出しを行う。
【0061】
凹部の割り出しでは、第1変化点P1DTと第3変化点P3DTの間で最も大きい値の変化点P4を第2変化点P2DTと決定し(ステップ113)、第3変化点P3DTと第5変化点P5DTの間で最も大きい値の変化点P6を第4変化点P4DTと決定する(ステップ114)。
【0062】
これら決定した5個の変化点のうち、第1変化点P1DTと第5変化点P5DTは硬貨の外周部の形状を評価するためのデータであり、第2変化点P2DTと第3変化点P3DTと第4変化点P4DTは硬貨の凹凸(模様)を評価するためのデータである。
【0063】
なお、ここまでの処理でセンサ31cの検出出力の集約は終了し、以降の処理は基本パターン化を行う処理となる。
【0064】
基本パターン化の処理では、まず、第1変化点P1DTと第5変化点P5DTの値を比較し(ステップ115)、第1変化点P1DTの値の方が大きければ(ステップ115でYES)、第1変化点P1DTと第5変化点P5DTの値を入れ替えて(ステップ116)、両者を値の小さい順に並び変える。
【0065】
次に、第2変化点P2DTと第4変化点P4DTの値を比較し(ステップ117)、第2変化点P2DTの値の方が大きければ(ステップ117でYES)、第2変化点P2DTと第4変化点P4DTの値を入れ替える(ステップ118)。
【0066】
このステップ115乃至118の処理で検出データの基本パターン化が行われたが(図6(b)参照)、以降のステップ119乃至121の処理で、センサの特性や組み立てによる硬貨選別装置毎のばらつきや温度、経年変化等による電圧変動に対して一定基準でパターン判定を行うために各変化点の値を補正する。
【0067】
まず、第1乃至第5変化点(P1DT〜P5DT)の平均値DTAVEを算出し(ステップ119)、硬貨選別装置毎に予め設定した(メモリ16に記憶)パターン標準平均PTNMASを用いて(2)式から補正係数HOSを算出する(ステップ120)。
【0068】
次に、各変化点の値を(3)式を用いて補正し(ステップ121)、処理を終了する。
【0069】
HOS = PTNMAS/DTAVE ・・・(2)
PnDT′ = PnDT×HOS (n=1〜5)・・・(3)
【0070】
次に、基本パターン化した検出データから投入された硬貨の正偽を判定する正偽判定処理方法について説明する。
【0071】
判定処理は、予め多数のサンプリングデータから算出され判定値格納手段15に記憶された複数の判定要素、複数の判定金種に対応したデータの標準平均、標準偏差等の判定値を用いて行う。
【0072】
図8は、正偽判定処理の流れを示すフローチャートである。
正偽判定処理が開始されると(ステップ201)、複数ある判定項目のうちの1つの項目について判定処理を行う(ステップ202)。この判定項目については後述するが、ここでの判定処理は基本パターン化した検出データとメモリ16に記憶されている判定値を比較し当該硬貨の正偽を判定するとともに、比較結果に応じた離散値を算出するものである。
【0073】
この判定処理は全ての項目についての処理が終わるまで繰り返され(ステップ203でNO)、この間に判定処理毎に得られた離散値を累積した総合離散値を算出する(ステップ204)。
【0074】
全ての項目についての判定処理が終了すると(ステップ203でYES)、全判定項目について合格し(ステップ205でYES)、総合離散値が合格していた場合に(ステップ206でYES)、当該金種についての判定合格のフラグをオンとする(ステップ207)。
【0075】
これらのステップ202乃至207の処理は、全金種に対して行われ(ステップ208でNO)、全金種についての判定が終了すると(ステップ208でYES)、オンになっている判定フラグの数から判定合格した金種数REGを割り出す(ステップ209)。
【0076】
ここで、判定合格した金種数REGが0であれば(ステップ210でYES)、投入された硬貨は偽貨であると判定されたことになるので、これを偽貨として返却して(ステップ215)、正偽判定処理を終了し(ステップ216)、判定合格した金種数REGが1であれば(ステップ210でNO、ステップ211でYES)、投入された硬貨は正貨であると判定されたことになるので、これを正貨として受け入れて(ステップ214)、正偽判定処理を終了する(ステップ216)。
【0077】
一方、判定合格した金種数REGが2以上であれば(ステップ210でNO、ステップ211でNO)、さらに近似度判定を行い(ステップ212)、近似偽貨と判定されれば(ステップ213でYES)、投入された硬貨を偽貨として返却して(ステップ215)、正偽判定処理を終了し(ステップ216)、近似偽貨と判定されなければ(ステップ213でNO)、投入された硬貨を正貨として受け入れ(ステップ214)、正偽判定処理を終了する(ステップ216)。
【0078】
ステップ212で行う近似度判定は、ステップ202で行う個々の判定では判別不可能な、正貨に非常に近似している変造貨および外国貨(以降、悪貨と呼ぶ)に対して行われるもので、対象となる悪貨の多数のサンプルデータを基に悪貨の標準平均、標準偏差などの判定値を設定しておき、ステップ202乃至208の処理時に正貨と同様に悪貨に対しての判定も行っておき、ステップ204で算出した総合離散値が正貨と悪貨を含めた判定値のうちのいずれかに最も近いかを判定する処理である。
【0079】
ここで、ステップ202における判定処理の方法(離散値の算出方法)について説明する。なお、ここでは8通りの判定処理方法について説明するがこれは一例であり、他の方法によって判定処理を行うことも可能である。
【0080】
A.各変化点に対する判定(パターン判定)
各変化点の標準平均PnAVEと、それに対応した補正済みの検出データPnDT′との差を求め、標準偏差Pnσで割り算した値を離散値とし(式(4)参照)、5個の変化点全てに対してこれを求め、判定値と比較して正偽判定を行う。
【0081】
離散値(1,n) = ABS(PnAVE−PnDT′)/Pnσ
(n=1〜5) ・・・(4)
【0082】
B.パターン離散の総和による判定
A項で算出した5個の変化点の離散値の総和を求め、判定値と比較して正偽判定を行う。
【0083】
C.凹凸差判定1
硬貨表面の模様の凹凸度を基本パターン化した際の前半部の凹部と凸部の差により判定を行う方法で、第2変化点と第3変化点の差の標準平均P23AVEと、補正済みの検出データP2DT′とP3DT′の差P23DTとの差を求め、標準偏差P23σで割り算した値を離散値とし(式(5)参照)、判定値と比較して正偽判定を行う。
【0084】
P23DT = P2DT′−P3DT′
離散値(2) = ABS(P23AVE−P23DT)/P23σ
・・・(5)
【0085】
D.凹凸差判定2
硬貨表面の模様の凹凸度を基本パターン化した際の後半部の凹部と凸部の差により判定を行う方法で、第3変化点と第4変化点の差の標準平均P34AVEと、補正済みの検出データP3DT′とP4DT′の差P34DTとの差を求め、標準偏差P34σで割り算した値を離散値とし(式(6)参照)、判定値と比較して正偽判定を行う。
【0086】
P34DT = P3DT′−P4DT′
離散値(3) = ABS(P34AVE−P34DT)/P34σ
・・・(6)
【0087】
E.外周部−中央差判定1
硬貨表面の模様の凹凸度を基本パターン化した際の前半部の外周部と中央の差により判定を行う方法で、第1変化点と第3変化点の差の標準平均P13AVEと、補正済みの検出データP1DT′とP3DT′の差P13DTとの差を求め、標準偏差P13σで割り算した値を離散値とし(式(7)参照)、判定値と比較して正偽判定を行う。
【0088】
P13DT = P1DT′−P3DT′
離散値(4) = ABS(P13AVE−P13DT)/P13σ
・・・(7)
【0089】
F.外周部−中央差判定2
硬貨表面の模様の凹凸度を基本パターン化した際の後半部の外周部と中央の差により判定を行う方法で、第3変化点と第5変化点の差の標準平均P35AVEと、補正済みの検出データP3DT′とP5DT′の差P35DTとの差を求め、標準偏差P35σで割り算した値を離散値とし(式(8)参照)、判定値と比較して正偽判定を行う。
【0090】
P35DT = P3DT′−P5DT′
離散値(5) = ABS(P35AVE−P35DT)/P35σ
・・・(8)
【0091】
G.パターン標準平均−中央差判定
パターン標準平均と中央部との差により判定を行う方法で、パターン標準平均PTNMASと第3変化点の差の標準平均PA3AVEと、パターン標準平均PTNMASと補正済みの検出データP3DT′の差PA3DTとの差を求め、標準偏差PA3σで割り算した値を離散値とし(式(9)参照)、判定値と比較して正偽判定を行う。
【0092】
PA3DT = ABS(PTNMAS−P3DT′)
離散値(6) = ABS(PA3AVE−PA3DT)/PA3σ
・・・(9)
【0093】
H.補正率(係数)判定
パターン的には合致するがレベル的に異なる硬貨についての正偽判定を行う方法で、補正率標準平均HOSAVEと検出データの補正率(補正係数)HOSDTの差を求め、標準偏差HOSσで割り算した値を離散値とし(式(10)参照)、判定値と比較して正偽判定を行う。
【0094】
離散値(7) = ABS(HOSAVE−HOSDT)/HOSσ
・・・(10)
【0095】
以上、ステップ202における判定処理と離散値の算出方法について説明したが、ステップ204で総合離散値を算出する際に、ステップ202で求めた離散値を単純に累積する他に、各判定内容に応じて離散値に重み付けをして総合離散値を算出することもできる。
【0096】
以上、硬貨の外形の検出方法および模様の検出方法について説明したが、硬貨選別装置100は、硬貨の外形、模様に加え、従来と同様の方法で検出する硬貨の材質の判定結果に基づいて投入された硬貨の正偽を判定するが、全ての判定に合格した硬貨のみを正貨として受け入れ、他の硬貨を偽貨として返却することで、より確実に正貨に酷似している外国貨等の偽貨を検出することができる。
【0097】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、投入された硬貨の材質を検出するとともに、硬貨の外形を時間率を利用した精度の高い方法で検出し、センサの出力を基本パターン化することで転動する硬貨の表面の模様を検出し、これらの検出結果に基づいて、投入された硬貨の正偽を判定するように構成したので、材質や外形、模様等が正貨に酷似している外国貨等の偽貨をより確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 硬貨選別装置の構成を示すブロック図。
【図2】 硬貨選別装置における硬貨の流れを示す略図。
【図3】 センサ部におけるセンサの配置例と硬貨の軌跡を示した図。
【図4】 センサ部における硬貨通路の断面図。
【図5】 センサの検出出力を示した図。
【図6】 センサの出力データとこれを基本パターン化したデータを示した図。
【図7】 出力データの基本パターン化処理の流れを示すフローチャート。
【図8】 正偽判定処理の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
1 制御部
2 硬貨投入部
3 センサ部
4 硬貨振分部
5 硬貨返却部
6、6a、6b、6c、6d 硬貨受入部
7、7−1、7−2、7−3、7−4 硬貨通路
8 硬貨払出制御部
9 硬貨返却口
10 硬貨払出口
11a、11b、11c 検出手段
12a、12b、12c A/D変換手段
13 CPU
14 硬貨振分制御手段
15 判定値格納手段
16 メモリ
21、21−1、21−2、21−3 硬貨
22、22−1、22−2、22−3 硬貨
23、23−1、23−2、23−3 硬貨
31a、31b、31c センサ
100 硬貨選別装置

Claims (8)

  1. 硬貨通路に少なくとも1個のセンサを配設し、該センサにより該硬貨通路を転動する硬貨の特徴を検出し、該検出結果に基づき前記硬貨の正偽を判定して、該判定により正と判定された前記硬貨を受け入れ、前記判定により偽と判定された前記硬貨を返却する硬貨選別方法において、
    前記センサの出力の波形が上昇から下降に変化する各変化点および下降から上昇に変化する各変化点のデータを記憶し、該記憶した複数のデータから所定の数のデータを選択することで、前記センサの出力を集約し、該集約したデータを基本パターンデータに変換するとともに、該変換した基本パターンデータを予め設定した金種毎の基準データと比較し、該比較結果に基づいて前記硬貨の正偽を判定することを特徴とする硬貨選別方法。
  2. 前記変換は、前記集約したデータを所定の順番に並べ替えることで行うことを特徴とする請求項1記載の硬貨選別方法。
  3. 前記硬貨の正偽の判定は、複数の項目毎の前記基本パターンデータと前記基準データとの差を示す離散値と、前記複数の項目の全ての項目に対応する前記離散値の総和とに基づいて行われることを特徴とする請求項1記載の硬貨選別方法。
  4. 前記比較は、正貨に近似した偽貨に対応した前記基準データに対しても行い、該比較の結果が前記正貨と前記偽貨の両者に該当すると判定された場合には、前記硬貨は、前記正貨と前記偽貨とに対する比較結果のうち近似度の高い方に該当すると判定することを特徴とする請求項1記載の硬貨選別方法。
  5. 硬貨通路に少なくとも1個のセンサを配設し、該センサにより該硬貨通路を転動する硬貨の特徴を検出し、該検出結果に基づき前記硬貨の正偽を判定して、該判定により正と判定された前記硬貨を受け入れ、前記判定により偽と判定された前記硬貨を返却する硬貨選別装置において、
    前記センサの出力の波形が上昇から下降に変化する各変化点および下降から上昇に変化する各変化点のデータを記憶し、該記憶した複数のデータから所定の数のデータを選択することで、前記センサの出力を集約するデータ集約手段と、
    前記集約手段により集約されたデータを基本パターンデータに変換する基本パターンデータ変換手段と、
    前記基本パターンデータ変換手段により変換された基本パターンデータを予め設定した金種毎の基準データと比較する基本パターンデータ比較手段と
    を具備し、
    前記基本パターンデータ比較手段での比較結果に基づいて前記硬貨の正偽を判定する
    ことを特徴とする硬貨選別装置。
  6. 前記基本パターンデータ変換手段は、
    前記集約手段が集約したデータを所定の順番に並べ替えることで、前記基本パターンデータへの変換を行うことを特徴とする請求項5記載の硬貨選別装置。
  7. 複数の項目毎に前記基本パターンデータと前記基準データとの差を示す離散値を算出する離散値算出手段と、
    前記離散値算出手段が前記複数の項目の全ての項目に対応して算出した離散値の総和を算出する総合離散値算出手段と
    をさらに具備し、
    前記基本パターンデータ比較手段は、前記離散値算出手段が算出した離散値と、前記総合離散値算出手段が算出した離散値の総和とに基づいて前記比較を行う
    ことを特徴とする請求項5記載の硬貨選別装置。
  8. 前記基本パターンデータ比較手段に前記基本パターンデータと、正貨に近似した偽貨に対応した前記基準データとをさらに比較させ、該比較の結果が前記正貨と前記偽貨の両者に該当すると判定された場合に、前記硬貨が前記正貨と前記偽貨とに対する比較結果のうち近似度の高い方に該当すると判定する近似度判定手段をさらに具備することを特徴とする請求項5記載の硬貨選別装置。
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