JP3675571B2 - 半導体封止用エポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無機質充填材の高充填化を可能とし、成形性、表面実装時における半導体パッケージの耐半田クラック性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ダイオード、トランジスタ、集積回路等の電子部品は、熱硬化性樹脂組成物で封止しているが、特に集積回路では、耐熱性、耐湿性に優れたオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をフェノールノボラック樹脂で硬化させ、充填材として溶融シリカ、結晶シリカ等の無機質充填材を配合したエポキシ樹脂組成物が用いられている。ところが近年、集積回路の高集積化に伴いチップがだんだん大型化し、且つパッケージは従来のDIPタイプから表面実装化された小型、薄型のQFP、SOP、SOJ、TSOP、TQFP、PLCCに変わってきている。
【0003】
即ち、大型チップを、小型で薄いパッケージに封入することになるため、熱応力によりクラックが発生し、これらのクラックによる耐湿性低下等の問題が大きくクローズアップされてきている。特に、半田付け工程で急激に200℃以上の高温に曝されるため、パッケージの割れや、樹脂とチップとの剥離が発生し、耐湿性が低下してしまう問題点が出てきている。この対策としては、エポキシ樹脂組成物中に無機質充填材を高充填化し、低吸水化及び熱時高強度化を達成する方法や、疎水性且つ可撓性を有する樹脂を用いて低吸水化及び基材との高密着性を達成する方法等が種々提案されている。
【0004】
しかしながら、無機質充填材の高充填化は、エポキシ樹脂組成物の成形時の流動性低下を招くため、低粘度の樹脂を用いる必要がある。しかし低粘度樹脂は分子量が小さく、特に可撓性骨格の樹脂を用いると架橋密度が低下し、熱時強度や硬化性の低下を招くので、成形性や耐半田クラック性が予期したほど向上しないのが現状である。従って、これらの大型チップを封止するのに適した、信頼性の高い半導体封止用エポキシ樹脂組成物の開発が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な問題点に対して、表面実装時における半導体パッケージの耐半田クラック性を著しく向上させ、且つ硬化性、流動性等の成形性に優れ、更に半田耐湿性にも優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)エポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂、(B)式(1)で示されるフェノール樹脂を、総フェノール樹脂硬化剤量中に30〜90重量%含むフェノール樹脂、
【0007】
【化6】
(式中のR1は水素、ハロゲン、アルキル基の中から選択される同一もしくは異なる原子又は基。m及びnは0又は1以上の整数)
(C)式(2)で示されるフェノール樹脂を、総フェノール樹脂硬化剤量中に10〜70重量%含むフェノール樹脂、
【0008】
【化7】
(D)無機質充填材、(E)硬化促進剤からなることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物であり、従来のエポキシ樹脂組成物に比べ、優れた信頼性として耐半田クラック性と半田処理後の耐湿性を有するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂としては、例えばビフェニル型エポキシ化合物、ビスフェノール型エポキシ化合物、スチルベン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。特にエポキシ樹脂組成物としての無機質充填材量を、総エポキシ樹脂組成物量中に80〜90重量%とする場合は、式(3)で示されるビフェニル型エポキシ化合物、式(10)で示されるビスフェノール型エポキシ化合物や式(6)で示されるスチルベン型エポキシ化合物等の結晶性のエポキシ樹脂がより好ましい。これらのエポキシ樹脂は単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0010】
本発明で用いるフェノール樹脂は、式(1)及び式(2)を必須成分とする。式(1)の分子構造で示されるフェノール樹脂単独では、リードフレームとの高密着性及び低吸水性を得ることはできるが、成形性と耐半田クラック性の両立は困難だった。これは、エポキシ樹脂組成物を低粘度化するために、式(1)のフェノール樹脂として低分子量のものを使用すると、硬化物の架橋密度が著しく低くなり、熱時強度の低下を招くからである。更に、低分子量化に伴う硬化性の低下による成形性不良も問題となっていた。式(1)のm+n=1〜10であるが、10を越えると粘度が高くなり、ダイパッド、金線ワイヤーのずれ等が起こる。ところが式(2)で示されるフェノール樹脂を式(1)のフェノール樹脂に適正量配合すると、高流動性、熱時高強度、且つメチル基の存在による低吸水性を持つ様になり、良好な耐半田クラック性を得ることができる。
【0011】
更に式(1)の分子構造で示されるフェノール樹脂単独の場合と比較すると、架橋密度が増大し成形性が良好になる。これは式(2)のフェノール樹脂が一般的に、塩基性触媒下でオルソクレゾールとホルムアルデヒドを反応させることにより生成するオルソクレゾールジメチロール化合物を、酸性触媒下でフェノールと反応させる二段階製法でつくられることにより、フェノールノボラック樹脂或いはクレゾールノボラック樹脂とは異なり、分子量分布が狭いためである。これにより流動性が向上するばかりでなく、架橋密度が高いために熱時強度が高く、硬化性に優れる特徴を有する。式(2)のnは1〜10であり、n=1〜3の分子量分布(GPCにより体積比率を測定し、分子量分布を算出)が全体の70%以上を占めるものがより好ましい。n=4以上のフェノール樹脂のが多くなると、樹脂粘度が高くなるため、流動性が低下する。n=10を越えると更に流動性が低下するため、成形性に問題が生じてくる。更に耐半田クラック性を最大限に引き出すためには、式(1)で示されるフェノール樹脂を、総フェノール樹脂硬化剤量中に30〜90重量%、好ましくは50〜90重量%以上使用することが望ましい。30重量%未満だと、目標とする耐半田クラック性が不充分となる。一方、90重量%を越えると、充分な流動性および熱時強度を得られなくなる。又、式(2)で示されるフェノール樹脂は、総フェノール樹脂硬化剤量中に10〜70重量%、好ましくは10〜30重量%使用することが望ましい。10重量%未満だと、目標とする流動性、硬化性が不充分となる。一方、70重量%を越えると、吸水率が高くなるため、耐半田クラック性に悪影響を及ぼしてしまう。
【0012】
式(1)で示されるフェノール樹脂硬化剤以外に、他のフェノール樹脂硬化剤を併用することも可能であり、その場合は、フェノール性水酸基を有するポリマー全般を用いればよい。例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン化合物等が挙げられる。又、これらの硬化剤の配合量としては、エポキシ樹脂のエポキシ基数と硬化剤の水酸基数を合わせるように配合することが望ましい。
【0013】
本発明で用いる無機質充填材としては、溶融シリカ粉末、球状シリカ粉末、結晶シリカ粉末、二次凝集シリカ粉末、多孔質シリカ粉末、アルミナ等が挙げられ、特に球状シリカ粉末、及び溶融シリカ粉末と球状シリカ粉末との混合物が好ましい。又、無機質充填材の配合量としては、良好な耐半田クラック性を得るためには、総エポキシ樹脂組成物量中に80〜90重量%含むものが好ましい。無機質充填材量が80重量%未満だと低熱膨張性、低吸水性が得られず、耐半田クラック性が不充分になる。一方、90重量%を越えると、高粘度化のため半導体パッケージ中のダイパット、金線ワイヤーのずれ等の不都合が生じる。
【0014】
本発明で用いる硬化促進剤としては、エポキシ基と水酸基との硬化反応を促進させるものであれば良く、一般に封止材料に用いられているものを広く用いることができる。例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリフェニルホスフィン、ジメチルベンジルアミン、2−メチルイミダゾール等が挙げられ、これらは単独で用いても混合して用いてもよい。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂硬化剤、無機質充填材及び硬化促進剤を必須成分とするが、これ以外に必要に応じてシランカップリング剤、ブロム化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、ヘキサブロムベンゼン等の難燃剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、天然ワックス、合成ワックス等の離型剤、及び半導体封止用樹脂組成物に通常用いられているシリコーンオイル、ゴム等の低応力添加剤等、種々の添加剤を配合しても差し支えない。
【0016】
又、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物を成形材料として製造するには、エポキシ樹脂、フェノール樹脂硬化剤、無機質充填剤、硬化促進剤、その他の添加剤をミキサー等を用いて充分に均一に混合した後、熱ロール又はニーダー等で溶融混練し、冷却後粉砕して、封止材料とすることができる。これらの成形材料は、電気部品あるいは電子部品であるトランジスタ、集積回路等の被覆、絶縁、封止等に適用できる。
【0017】
以下本発明を実施例で具体的に説明する。
実施例1
式(6)で示されるエポキシ化合物(融点110℃) 7.70重量部
【化8】
【0018】
式(7)で示されるフェノール樹脂硬化剤(軟化点75℃,水酸基当量174g/eq)(以下P1とする) 4.88重量部
【化9】
(ただしnの値が1〜10の整数を示す混合物であり、その総体積に対する体積割合は、n=1が16%、n=2が13%、n=3以上が71%である。)
【0019】
を常温においてミキサーで混合し、70〜100℃で2軸ロールを用いて混練し、冷却後粉砕して成形材料とした。粉砕して得られた成形材料は、EMMI−I−66に準じた試験用金型を用い、175℃、70kg/cm2、120秒の条件でスパイラルフローを測定した。
【0020】
更に、得られた成形材料をタブレット化し、低圧トランスファー成形機にて175℃、70kg/cm2、120秒の条件で、耐半田クラック性試験用として6×6mmのチップを52pQFPに封止し、又、半田耐湿性試験用として3×6mmのチップを16pSOPに封止した。
封止したテスト用素子について、下記の耐半田クラック性試験、半田耐湿性試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0021】
評価方法
耐半田クラック性試験:封止したテスト用素子を、85℃、85%RHの環境下で24時間、48時間、72時間及び120時間処理し、その後260℃の半田槽に10秒間浸漬させた後、顕微鏡で外部クラックを観察した。クラック発生数/総数で表した。試験片の総数は16個とした。
半田耐湿性試験:封止したテスト用素子を、85℃、85%RHの環境下で72時間処理し、その後260℃の半田槽に10秒間浸漬させた後、プレッシャークッカー試験(条件125℃、100%RH)を行い、回路のオープン不良を測定した。試験片の総数数は16個とした。
【0022】
実施例2〜7
表1の処方に従って配合し、実施例1と同様にして成形材料を得た。なお実施例4に用いたフェノールノボラック樹脂硬化剤は、軟化点65℃、水酸基当量105g/eqであり、実施例5に用いた式(8)で示されるフェノール樹脂硬化剤は、軟化点77℃、水酸基当量174g/eq、ただしmの値が1〜5、nの値が1〜5の整数を示す混合物である。
【0023】
【化10】
実施例6に用いた式(9)で示されるエポキシ化合物は、融点108℃である。
【0024】
【化11】
実施例7に用いた式(10)で示されるエポキシ化合物は、融点77℃ある。
【0025】
【化12】
【0026】
この成形材料で試験用に封止した成形品を得、この成形品を用いて実施例1と同様に耐半田クラック性試験及び半田耐湿性試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0027】
比較例1,2
表2の処方に従って配合し、実施例1と同様にして成形材料を得た。比較例2のフェノールノボラック樹脂は実施例4のものと同一である。この成形材料で試験用に封止した成形品を得、この成形品を用いて実施例1と同様に耐半田クラック性試験及び半田耐湿性試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】
本発明に従うと、成形性、及び表面実装時における半導体パッケージの耐半田クラック性の両立が可能となる。
Claims (3)
- エポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂が、結晶性エポキシ化合物である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
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JP13980596A Expired - Fee Related JP3675571B2 (ja) | 1996-06-03 | 1996-06-03 | 半導体封止用エポキシ樹脂組成物 |
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