JP3672744B2 - 天井や壁等に用いる面材の補強構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天井板や壁板等の面材において、特にその耐火性能を向上するための補強構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物における天井板や壁板等には、石膏ボードやロックウール吸音板等の安価で施工性の容易な面材が多く用いられている。しかし、これらの面材は、その厚さが一般的に薄く、耐火性能や強度面に問題がある。例えば、石膏ボードの場合には、火災等によって高温になると、結晶水の放出に伴う吸熱反応が起こることで遮熱効果を発揮するが、結晶水が放出してしまうと、大きく強度が低下して亀裂が生じたりその一部が脱落してしまい、遮熱効果はおろか遮炎効果までも著しく損なうことがある。また、ロックウール吸音板の場合には、石膏ボードのような高温時の亀裂や脱落は起こりにくく、火災時の遮炎効果は期待できるが、それ自体の強度が低いため、人や物が頻繁に接触する壁等に使用した場合には破損し易く、このため使用部位が天井等の非接触部位に限定されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来より、建築物の耐火構造として、天井板や壁板等の面材の耐火性能を高めることによって、鉄骨構造躯体を火災の加熱から保護したり、面材が燃え抜けて火災が拡大することを抑制するようにしたものがあるが、上記の石膏ボードやロックウール吸音板の耐火性能を向上させようとする場合、幾重にも重ね合わせたり、或いは厚みを十分に厚くするといった方法が採られており、施工性が悪かったり、材料費の高騰を招いていた。
【0004】
本発明は、上記に鑑み、安価にしかも施工性を損なうことなく面材の耐火性能を向上させることができる面材の補強構造の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、耐火性能を有する薄い金属板を貼り付けた面材の短手方向の端部を鋼製野縁へ固定した面材取付け構造において、前記鋼製野縁に対して直交し且つ鋼製野縁のない面材長手方向端部間の互いに隣接する目地部分に、前記の金属板間に跨るようにして耐火性能を有するジョイント材を取り付け、このジョイント材を金属板とともに面材側から打ち込むか又はねじ込んだ固定具で面材に固定することによって、隣り合う面材の一方の金属板からジョイント材を介して他方の金属板へと連続する耐火材の層を形成したことを特徴とする。
【0006】
また、耐火性能を有する薄い金属板を貼り付けた面材の短手方向の端部を鋼製野縁へ固定した面材取付け構造において、前記鋼製野縁に対して直交し且つ鋼製野縁のない面材長手方向端部間の互いに隣接する目地部分に、これらの金属板間に跨るようにして耐火性能を有するジョイント材を取り付け、これら面材を金属板及びジョイント材とともに面材側から打ち込むか又はねじ込んだ固定具で下地材に固定することによって、隣り合う面材の一方の金属板からジョイント材を介して他方の金属板へと連続する耐火材の層を形成したことを特徴とする。
【0007】
さらに、前記ジョイント材は、前記目地部分に嵌り込む位置決め用の突部が形成された鋼板からなり、また前記金属板は、厚さ60ミクロン程度の亜鉛鉄板箔からなる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る天井板の補強構造の一部を破断した状態を示す斜視図、図2は金属板を張り付けた天井板の斜視図、図3は隣接する天井板の鋼製野縁に沿った目地部分の縦断面図、図4は隣接する天井板の鋼製野縁と直交する方向の目地部分の縦断面図、図5は同じくその鋼製野縁と直交する箇所の縦断面図である。
【0009】
図において、(1)は面材としての石膏ボード等からなる天井板である。この天井板(1)は、図2に示すように、長方形状とされている。そして、天井板(1)の裏面側には、接着剤又は両面粘着テープ(2)によって耐火性能を有する薄い金属板(3)が張り付けられている。
【0010】
この金属板(3)は、ボードナイフで切断可能とされた厚さ60ミクロン程度の亜鉛鉄板箔からなる。従って、大きな石膏ボードをボードナイフで切断して複数の天井板(1)(1)…を加工する場合、予め金属板(3)を張り付けた状態で石膏ボードを切断すれば、金属板(3)も同時に切断することができ、これにより金属板(1)を切断する手間が省け、施工性を向上させることができる。また、石膏ボードを天井板(1)として加工する場合、通常、石膏ボードに表面紙を張り付けているが、この表面紙の代わりに金属板(3)を張り付けるようにすれば、石膏ボードを単に天井板(1)として加工するときと同じ工程で、金属板(3)を張り付けた天井板(1)を加工することができる。
【0011】
(4)は、天井板(1)を取り付ける下地材としての角パイプ状の鋼製野縁であり、この鋼製野縁(4)は、天井裏に一定の間隔をあけて水平方向に複数本配されている。
【0012】
次に、金属板(3)を張り付けた天井板(1)の鋼製野縁(4)への施工について説明する。まず、天井板(1)を、その金属板(3)が上側になるようにして鋼製野縁(4)(4)の下面間に跨って配置する。このとき、隣接する天井板(1)(1)の短手方向の目地部分(6)が、鋼製野縁(4)に沿って配され、長手方向の目地部分(7)が、鋼製野縁(4)と直交する方向に沿って配されている。
【0013】
そして、長手方向の目地部分(7)には、隣接する天井板(1)(1)の金属板(3)(3)間に跨るようにして耐火性能を有するジョイント材(10)を取り付けておく。このジョイント材(10)は、中央に目地部分(7)に嵌り込む突部(11)が折曲形成された断面略T字形の帯状鋼板からなる。従って、ジョイント材(10)の突部(11)を目地部分(7)に沿って嵌め込むだけで、ジョイント材(10)を簡単に位置決めすることができる。
【0014】
この状態において、図3に示すように、天井板(1)の下方からその短手方向の端部に打ち込んだビス(15)を、金属板(3)を貫通させて鋼製野縁(4)に螺合させることによって、天井板(1)の短手方向の端部を金属板(3)とともに鋼製野縁(4)に固定する。
【0015】
これにより、短手方向の目地部分(6)が鋼製野縁(4)によって塞がれ、目地部分(6)を挟んで隣り合う金属板(3)(3)同士が鋼製野縁(4)を介して連続する。
【0016】
また、図4に示すように、天井板(1)の下方からその長手方向の端部に打ち込んだ固定具としてのビス(16)を、金属板(3)を貫通させてジョイント材(10)に螺合させることによって、ジョイント材(10)を金属板(3)とともに天井板(1)の長手方向の端部に固定する。さらに、鋼製野縁(4)と長手方向の目地部分(7)とが直交する部位において、図5に示すように、天井板(1)の下方からその長手方向の端部に打ち込んだビス(16)を、金属板(3)を貫通させてジョイント材(10)及び鋼製野縁(4)に螺合させることによって、天井板(1)の長手方向の端部を金属板(3)及びジョイント材(10)とともに鋼製野縁(4)に固定する。
【0017】
これにより、長手方向の目地部分(7)がジョイント材(10)によって塞がれ、目地部分(7)を挟んで隣り合う金属板(3)(3)同士がジョイント材(10)を介して連続する。このことにより、隣り合う面材である天井板 ( 1 )( 1 ) の一方の金属板 ( 3 ) からジョイント材 (10) を介して他方の金属板 (3) へと連続する耐火材の層が形成される。
【0018】
従って、鋼製野縁(4)(4)…に取り付けた複数の天井板(1)(1)…の金属板(3)(3)…が、鋼製野縁(4)(4)…やジョイント材(10)(10)…を介して一体的に連続し、天井板(1)(1)…全体に金属板(3)(3)…を隙間なく張り付けた状態となり、天井板(1)(1)…を補強してその耐火性能を向上させることができる。なお、金属板(3)は、天井板(1)の裏面側だけに限らず、表面側にも張り付けるようにしても良い。
【0019】
ここで、壁板の場合を例にとって、その裏面側のみ、表面側のみ及び表裏面側の両方に金属板(3)を張り付けた場合の耐火性能について説明する。まず、図6に示すように、壁板(20)の裏面側にのみ金属板(3)を張り付けた場合には、表面側から火災加熱(21)を受けると、壁板(20)に亀裂が生じたり、壁板(20)の一部が脱落することがあるが、金属板(3)はビス(22)によって鋼製下地材(23)に固定されたまま脱落することがない。従って、壁板(20)の内側に炎が直接入り込むのを防止することができ、遮炎効果を発揮することができる。この場合、金属板(3)よりも内側に不燃性の断熱材(24)等を充填してある程度の遮熱効果を確保する。これは、天井板(1)においても、同じことが言える。
【0020】
図7に示すように、壁板(20)の表面側にのみ金属板(3)を張り付けた場合には、表面側から火炎加熱(21)を受けても、金属板(3)に亀裂が生じたり、金属板(3)が脱落するようなことはないので、壁板(20)の表面側への脱落を防止して、遮炎効果を発揮することができる。この場合、壁板(20)の裏面側に不燃性の断熱材(24)等を充填すれば、壁板(20)の裏面側への脱落も防止することができ、壁板(20)の遮熱効果を有効に発揮させることができる。なお、天井板(1)の場合には、その表面側に金属板(3)を張り付けると、金属板(3)だけで天井板(1)の脱落を防止することができ、断熱材を充填しなくても天井板(1)の遮熱効果を有効に発揮させることができる。
【0021】
図8に示すように、壁板(20)の表裏面側の両方に金属板(3)(3)を張り付けた場合には、表面側から火災加熱(21)を受けても、表裏面側の金属板(3)(3)はともに脱落するようなことはないので、壁板(20)の脱落を金属板(3)(3)だけで確実に防止することができ、より有効に遮熱及び遮炎効果を発揮させることができる。なお、天井板(1)の場合にも、同じことが言える。
【0022】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によると、薄い金属板を面材に張り付けることによって、特にその遮炎効果を高めるようにしており、従来のように面材を幾重にも重ね合わせたり、厚みを十分に厚くすることなく、安価にしかも簡単に面材の耐火性能を向上させることができる。しかも、金属板の張り付け位置によっては、火災加熱によって強度の低下した面材の脱落を防止することができ、面材の強度アップを図るとともに、面材の遮熱効果を有効に発揮させて耐火性能をより向上させることができる。その上、隣接する面材の金属板同士を耐火性能を有するジョイント材を介して一体的に連続させているので、面材の目地部分からの炎の侵入を確実に防止することができ、これによって耐火性能の信頼性を高めることができる。
【0023】
また、ジョイント材には、位置決め用の突部が形成されているため、ジョイント材の突部を目地部分に沿って嵌め込むだけで、ジョイント材を目地部分に簡単に位置決めすることができ、施工性の向上を図ることができる。さらに、金属板を、厚さ60ミクロン程度の亜鉛鉄板箔から構成することによって、金属板の切断や加工を簡単に行うことことができ、施工性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る天井板の補強構造の一部を破断した状態を示す斜視図である。
【図2】金属板を張り付けた天井板の斜視図である。
【図3】隣接する天井板の鋼製野縁に沿った目地部分の縦断面図である。
【図4】隣接する天井板の鋼製野縁と直交する方向の目地部分の縦断面図である。
【図5】同じくその鋼製野縁と直交する箇所の縦断面図である。
【図6】壁板の裏面側にのみ金属板を張り付けたときの耐火性能を説明するための図である。
【図7】壁板の表面側にのみ金属板を張り付けたときの耐火性能を説明するための図である。
【図8】壁板の表裏面側の両方に金属板を張り付けたときの耐火性能を説明するための図である。
【符号の説明】
(1) 天井板
(3) 金属板
(4) 鋼製野縁(下地材)
(7) 目地部分
(10) ジョイント材
(11) 突部
(16) ビス
Claims (4)
- 耐火性能を有する薄い金属板を貼り付けた面材の短手方向の端部を鋼製野縁へ固定した面材取付け構造において、前記鋼製野縁に対して直交し且つ鋼製野縁のない面材長手方向端部間の互いに隣接する目地部分に、前記の金属板間に跨るようにして耐火性能を有するジョイント材を取り付け、このジョイント材を金属板とともに面材側から打ち込むか又はねじ込んだ固定具で面材に固定することによって、隣り合う面材の一方の金属板からジョイント材を介して他方の金属板へと連続する耐火材の層を形成したことを特徴とする天井や壁等に用いる面材の補強構造。
- 耐火性能を有する薄い金属板を貼り付けた面材の短手方向の端部を鋼製野縁へ固定した面材取付け構造において、前記鋼製野縁に対して直交し且つ鋼製野縁のない面材長手方向端部間の互いに隣接する目地部分に、これらの金属板間に跨るようにして耐火性能を有するジョイント材を取り付け、これら面材を金属板及びジョイント材とともに面材側から打ち込むか又はねじ込んだ固定具で下地材に固定することによって、隣り合う面材の一方の金属板からジョイント材を介して他方の金属板へと連続する耐火材の層を形成したことを特徴とする天井や壁等に用いる面材の補強構造。
- 前記ジョイント材は、前記目地部分に嵌り込む位置決め用の突部が形成された鋼板からなる請求項1又は2記載の天井や壁等に用いる面材の補強構造。
- 前記金属板は、厚さ60ミクロン程度の亜鉛鉄板箔からなる請求項1乃至3のいずれかに記載の天井や壁等に用いる面材の補強構造。
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