JP3669466B2 - 熱分光測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱分光測定装置に関するものであり、詳しくは、近接場光を利用した熱分光測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、物質の熱分光特性を測定する方法としては、熱音響法や熱レンズ法等の方法がある。熱音響法は、変調をかけたレーザ光を絞って試料に照射するとそのレーザ光を吸収した部分が熱で膨張と収縮を繰り返して超音波を発するという物質の性質を利用して、この超音波を集音して物質の光−熱変換効率を測定するものである。一方、熱レンズ法は、試料に光を照射するとその光を吸収した部分に発生する熱によってその部分の屈折率が変化するという物質の性質を利用して、別の光をその部分に照射してその屈折率を測定することにより物質の光−熱変換効率を測定するものである。
【0003】
これら従来の技術においては集音もしくは集光の際における音及び光の回折効果により分解能が制限される。例えば、熱レンズ法においては試料の励起光をレンズで結像させて集光するが、このとき結像させようとする光がわずかに広がり、像がぼやけてしまう。そのぼけの大きさは光の波長程度であるので、この光の波長の寸法以下に分解能をあげることができない。
【0004】
同様に、従来用いられてきた光学顕微鏡の分解能も光の回折効果により制限され、光の波長(可視光の波長は約390 〜760 ナノメートル)以下の寸法の試料は観察できなかった。
【0005】
しかし、近年になってフォトン走査トンネル顕微鏡(PSTM)と呼ばれ、上記の回折限界を打破する光学顕微鏡が出現した。例えば、コレクション型と称されるPSTMでは、試料表面で光が全反射するとき、表面の近く(表面から光の波長程度以内の”近接場”とよばれる領域)に発生するエバネッセント波により生じるエバネッセント場を利用する。エバネッセント場の光強度は表面から離れるにつれて急激に減少するが、表面にわずかな凹凸がある場合にも表面に沿って存在する。すなわち、エバネッセント場は物体表面の形状や構造を反映するものである。このエバネッセント場を先端の鋭いプローブ(針)で散乱させ、散乱光強度を測定する。プローブを試料表面上で走査し、試料表面の各位置における散乱光強度を測定することにより、物体の形状や構造についての情報を得ることができる。この測定の分解能はエバネッセント場の散乱領域の大きさによって決まる。すなわち、プローブ先端の開口径等によって分解能が決まるので、これが光の波長以下であれば従来の光学顕微鏡の回折限界を打破することができるのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
熱分光特性を測定するに当たっても、上述の光学顕微鏡の場合と同様に、光の回折効果に制限されず、高分解能で測定することができる熱分光測定装置が望まれている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、光の回折限界以下の分解能で熱分光特性を測定することができる熱分光測定装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の熱分光測定装置は、先端部に可視光波長よりも小さい径の微小開口を有し、先端を試料に近接させて配置されるプローブと、
前記試料に吸収される波長を有する励起光を前記プローブに入力させて前記微小開口から前記試料の微小部分に照射せしめる励起光用光学手段と、
前記試料に吸収されない波長を有するプローブ光を前記プローブに入力させて前記プローブの先端からエバネッセント光を出射させるプローブ光用光学手段と、
前記試料の微小部分が前記励起光の照射を受けている状態において該試料の微小部分と前記エバネッセント光とが相互作用することにより生じる第一の散乱光、および前記試料の微小部分が前記励起光の照射を受けていない状態において該試料の微小部分と前記エバネッセント光とが相互作用することにより生じる第二の散乱光を検出する光検出手段とを備え、
該光検出手段による前記第一の散乱光および第二の散乱光の検出に基づいて前記試料の微小領域の熱分光特性を測定することを特徴とするものである。
【0009】
すなわち、本熱分光測定装置は、微小開口を有するプローブを用い、プローブ先端から出射されたエバネッセント光と試料表面との相互作用を利用するイルミネーション型のフォトン走査トンネル顕微鏡と同様の構成を有する測定装置であって、プローブ先端部から試料の微小部分に励起光を照射して、当該微小領域の熱分光特性を測定するものである。
【0010】
なお、熱分光特性とは、物質が光を吸収して熱に変換する熱変換効率のみならず、物質の光吸収スペクトルや、物質の二次元的な光吸収特性等を含むものとする。
【0011】
本発明の第二の熱分光測定装置は、先端部に可視光波長よりも小さい径の微小開口を有し、先端を試料に近接させて配置されるプローブと、
前記試料に吸収される波長を有する励起光を前記プローブに入力させて前記微小開口から前記試料の微小部分に照射せしめる励起光用光学手段と、
前記試料に吸収されない波長を有するプローブ光を、該試料の表面にエバネッセント光を生じさせるように、前記試料の裏面に入射せしめるプローブ光用光学手段と、
前記試料の微小部分が前記励起光の照射を受けている状態において該試料の微小部分の表面に生じた前記エバネッセント光と前記プローブの先端とが相互作用することにより生じる第一の散乱光、および前記試料の微小部分が前記励起光の照射を受けていない状態において該試料の微小部分の表面に生じた前記エバネッセント光と前記プローブの先端とが相互作用することにより生じる第二の散乱光を検出する光検出手段とを備え、
該光検出手段が、前記プローブの前記微小開口を通してピックアップされた前記第一の散乱光および前記第二の散乱光を検出するものであり、
前記光検出手段による前記第一の散乱光および第二の散乱光の検出に基づいて前記試料の微小領域の熱分光特性を測定することを特徴とするものである。
【0012】
すなわち、本熱分光測定装置は、試料表面に生じたエバネッセント光とプローブの先端との相互作用を利用し、プローブ先端部の微小開口を通じて散乱光をピックアップするコレクション型のフォトン走査トンネル顕微鏡と同様の構成を有する測定装置であって、プローブ先端部から試料の微小部分に励起光を照射して、当該微小領域の熱分光を測定するものである。
【0013】
ここで、前記「微小開口」とは、光が透過可能の開口であり、光透過領域を可視光の波長より小さい径の微小領域に制限するための開口をいう。このような微小開口を有するプローブとしては、例えば、光ファイバのコアを尖鋭化し、その後金属膜を蒸着し、先端部のみから蒸着膜を除去してコアの先端が露出されたものが用いられる。このとき、金属膜の除去された部分が微小開口であり、その開口からさらにコアの先端が突出した形状となっている。従って、一般にプローブ先端径は微小開口径より小さい。
【0015】
また、このイルミネーション型の熱分光測定装置においては、前記光検出手段が、前記散乱光を互いに異なる位置で検出する第一および第二の光検出器を備え、該両光検出器による検出値に基づいて前記散乱光の強度分布を求めるものであってもよい。
【0017】
上述のように、第一および第二の散乱光を検出可能の各熱分光測定装置においては、第一の散乱光および第二の散乱光を周期的に検出するために、前記励起光の強度をパルス変調する変調手段をさらに備えてもよい。
【0018】
また、前記試料の微小領域の熱分光特性の測定は、前記第一の散乱光の強度と前記第二の散乱光の強度とに基づいて、前記微小部分が前記励起光を吸収して熱に変換することにより変化する該微小部分における屈折率の変化量を求め、該屈折率の変化量に基づいて前記試料の熱分光分析を行うことにより実行することができる。
【0019】
また、上記各熱分光測定装置においては、前記励起光の波長を変化させる波長変換手段を備え、各波長における前記第一の散乱光を検出することにより熱分光スペクトルを得ることとしてもよい。
【0020】
さらに、前記プローブの先端と前記試料の表面との間の距離を調整する間隔調整手段を備えることが望ましい。
【0021】
間隔調整手段としては、従来のPSTMに用いられているシアーフォース(Sher Force )を測定して間隔調整するもののほか、前記第一もしくは第二の散乱光の強度に基づいて得られる前記試料表面の形状信号を前記プローブの先端と前記試料の表面との間の距離を一定に制御するためのフィードバック信号として利用するものであってもよい。
【0022】
なお、上述の各熱分光測定装置において、前記プローブが前記試料の表面に沿って走査するように、該プローブと該試料とを相対移動せしめる2次元走査手段を備えてもよい。
【0023】
【発明の効果】
既述のように、エバネッセント光を利用する測定装置においては、エバネッセント場の散乱される領域の大きさにより分解能が定まる。
【0024】
本発明の第一の熱分光測定装置は、先端部に微小開口を有するプローブを用い、該プローブの先端部から試料の微小部分に対して励起光を照射し、プローブ光によりプローブの先端から出射されるエバネッセント光とそれを乱す試料の微小部分との相互作用により生じる散乱光を検出して熱分光測定を行うものであり、該プローブにより可視光波長よりも小さい微小領域にエバネッセント光を照射することができることから光の回折限界以下の分解能で熱分光解析を行うことが可能となる。
【0025】
本発明の第二の熱分光測定装置は、先端部に微小開口を有するプローブを用い、該プローブの先端部から試料の微小部分に対して励起光を照射し、試料の微小部分表面に生じるエバネッセント光とそれを乱すプローブ先端との相互作用により生じる散乱光を検出して熱分光測定を行うものであり、可視光波長よりも小さい径のプローブ先端によりエバネッセント場の微小領域を乱すことができ、光の回折限界以下の分解能で熱分光解析を行うことが可能となる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
本発明の第一の実施形態に係るイルミネーション型の熱分光測定装置の基本構成を図1に示す。
【0028】
本イルミネーション型熱分光測定装置1は、ガラス等の透明基板からなる試料ホルダ2に支持されている試料Sに先端を近接させて配置されるプローブ3と、励起光Le をプローブ3に導光する励起光用光学手段およびプローブ光Lp をプローブ3に導光するプローブ光用光学手段を兼ねる光学系4と、プローブ3の先端から出射されるエバネッセント光と試料表面とが相互作用することにより生じる散乱光Ls の強度分布を検出する光検出手段5とを備えている。
【0029】
ここで、励起光Le は試料Sに吸収される波長を有する光であり、プローブ光Lp は試料Sに吸収されない波長を有する光である。なお、測定対象である試料Sとしては、例えば、抗原・抗体等が挙げられる。
【0030】
図2にプローブ3の縦断面拡大図(a)およびプローブ3の先端部縦断面拡大図(b)を示す。プローブ3は、光ファイバ6のコア7を尖鋭化し、その後金属膜8を蒸着し、先端部のみから蒸着膜を除去して尖鋭化されたコア7の先端7a を露出して形成されたものであり、金属膜8が除去された金属膜の開口部8a が前述の微小開口であり、この微小開口8a からコア先端7a が突出している。この突出したコア先端7a がプローブ先端であり、先端の直径は微小開口径より小さいものとなる。なお、ここでは微小開口径Aは数nmの程度である。本熱分光測定装置の分解能はこの微小開口径およびプローブ先端曲率径に依存するものであり、これらが可視光波長より小さいものであれば、従来の熱分光測定装置における分解能の限界であった光の回折限界を打破することができる。
【0031】
光学系4は、励起光Le をプローブ3に向けて反射するミラー10と、励起光Le を透過してプローブ光Lp をプローブ3に向けて反射するダイクロイックミラー11とを備えたものである。
【0032】
光検出手段5は、試料ホルダ2の下方の互いに異なる箇所に配置された第一および第二の光検出器12,13と、両光検出器12,13で得られた信号の差分をとって出力する差動アンプ14とからなり、両光検出器12,13は試料Sを透過する励起光Le を遮断して上述の散乱光Ls のみを検出するために波長選択フィルタ15を備えている。
【0033】
本熱分光測定装置1による試料Sの光吸収率測定について説明する。
【0034】
励起光Le およびプローブ光Lp はミラー10およびダイクロイックミラー11を備えた光学系4によりそれぞれプローブ3の後端からプローブ3内部に入力される。これにより、プローブ先端7a が近接配置されている試料Sの微小部分に励起光Le が照射され、一方、プローブ光Lp がプローブ先端内部で反射することによりプローブ先端7a からエバネッセント光が出射され(エバネッセント光がしみだし)、、このエバネッセント光が試料Sの微小部分と相互作用することにより第一の散乱光Ls1が生じる。そこで、この第一の散乱光Ls1を第一および第二の光検出器12,13によってそれぞれの箇所で検出し、差動アンプ14によりその差を求めて励起光照射時の微小部分におけるエバネッセント場の光強度分布を測定する。
【0035】
また、次に、励起光Le をプローブ3に入力しない状態、即ち、励起光を微小部分に照射しない状態で、プローブ光Lp のみをプローブ3の後端からプローブ内部に入力する。上記の場合と同様に、プローブ光Lp によりプローブ先端からエバネッセント光がしみだし、このエバネッセント光が試料Sの微小部分と相互作用することにより第二の散乱光Ls2が生じる。そこで、この第二の散乱光Ls2を第一および第二の光検出器12,13によってそれぞれの箇所で検出し、差動アンプ14によりその差を求めて励起光非照射時の微小部分におけるエバネッセント場の光強度分布を測定する。
【0036】
励起光Le が照射された試料Sの微小部分は励起光Le を吸収して熱に変換して温度変化する。この温度変化に伴い該微小部分の屈折率が変化するため、微小部分において生じる散乱光Ls の発散角も変化する。従って、上述のようにして得られた第一および第二の散乱光Ls1,Ls2、すなわち励起光Le 照射時と非照射時との散乱光の光強度の差から、強度の変化すなわち発散角の変化が得られ、ひいては試料Sの微小部分における屈折率の変化が得られる。この屈折率の変化は試料Sが励起光Le を吸収してそのエネルギーを熱に変換した量に依存するものであることから、試料Sの微小部分における光−熱変換効率(光吸収率)を得ることができる。
【0037】
また、上述の熱分光測定装置において、励起光Le の波長を変化させる波長変調手段を備え、各波長の励起光Le を吸収した微小部分における散乱光の強度分布を調べることにより試料の各微小部分における熱吸収スペクトルを得るようにしてもよい。
【0038】
次に、上記第一の実施形態に係る熱分光測定装置を二次元走査型として試料の二次元的な物性を測定可能としたものを第二の実施形態に係る熱分光測定装置として図3に示して説明する。なお、既述の第一の実施形態と同様の構成要素については同一符号を付し詳細な説明を省略する。
【0039】
本熱分光測定装置21は、上記第一の実施形態の熱分光測定装置にプローブの先端と試料表面との間隔を一定に保ちつつ二次元走査を行う間隔調整手段および二次元走査手段として、間隔を調整するためおよび二次元走査を行うためのXYZピエゾ22と、間隔を測定するシアーフォース(Sher Force)検出手段23と、シアーフォース検出手段23による検出結果を基にXYZピエゾ22を制御するコントローラ24とをさらに備えている。なお、このコントローラ24は、第一および第二の光検出器12,13からの信号に基づいて光強度分布を求め、さらに第一の散乱光と第二の散乱光とのそれぞれの光強度分布の差から屈折率の変化量を求め、熱分析を行う分析手段であるデータ処理部も兼ねるものであり、処理して得られた二次元的な光吸収特性等をCRT等の表示装置25に出力する。
【0040】
なお、本熱分光測定装置における光学系4’は、励起光用光源31およびプローブ光用光源32からそれぞれ出射される励起光Le およびプローブ光Lp をそれぞれコリメートするコリメーターレンズ33,34と、励起光Le を透過しプローブ光Lp を反射するダイクロイックミラー35と、該ダイクロイックミラー35を透過した励起光Le および反射されたプローブ光Lp をプローブ3に集光せしめる集光レンズ36とからなるものである。
【0041】
なお、シアーフォース検出手段23は、プローブ3の先端部を振動させるために該プローブ3の先端部に備えられた励振ピエゾ26と、該励振ピエゾ26により振動せしめられているプローブの先端7a で集光するようにレーザ光を出射するレーザ光源27と、該プローブ先端7a で集光するように出射されたレーザ光の散乱光を検出するSF検出器28とからなるものである。プローブ3と試料表面との間の距離が変化すると両者間に働くファンデルワールス力が変化し、これに伴いプローブに働くせん断応力が変化してプローブの振動振幅が変化する。SF検出器28による検出値はこのプローブの振動振幅に依存するものであるため、コントローラ24はプローブ3の先端部と試料表面との間隔を常に一定とするために、SF検出器28からの出力を常に一定に維持するようにXYZピエゾ26を制御する。また、コントローラ24は同時にプローブ3の先端部が試料表面を二次元的に走査するようにXYZピエゾ26を制御する。
【0042】
励起光Le をプローブの微小開口から出射して試料に照射しつつ、上述のようにして、プローブ3の先端と試料表面との間隔を常に一定に保ちながらプローブ3が試料表面を二次元的に走査することにより、試料の二次元的な光吸収特性を得ることができる。
【0043】
また、励起光非照射状態で試料表面を二次元走査して励起光非照射時のエバネッセント場の光強度分布を測定後、励起光照射状態で同一表面を二次元走査して励起光照射時のエバネッセント場の光強度分布を測定し、このようにして得られた励起光非照射時および照射時の検出信号の差分から、試料表面の各微小部分における光吸収による屈折率変化を得、上述の場合と同様にして試料表面の各微小部分の光−熱変換効率(光吸収率)を得ることができる。
【0044】
なお、このとき表示手段25は二次元的に広がる試料表面の光吸収率もしくは得られた光吸収率から求められる他の分光特性等を表示する。
【0045】
なお、XY方向への二次元的な走査を行う二次元走査手段は、プローブ3を試料表面に対して二次元的に相対的に移動せしめる手段であればよく、上述のXYZピエゾに限らずプローブ3を試料表面に沿って移動させるプローブ移動手段、および/もしくは、プローブ3が試料表面に沿って走査するように試料Sを移動させる試料移動手段であればどのような形態のもであってもよい。
【0046】
また、プローブ先端と試料表面との間隔を一定とするためにプローブ3、および/もしくは、試料SをZ方向に移動させる手段も上述のXYZピエゾに限るものではない。
【0047】
なお、本熱分光測定装置は、励起光Le を照射しない状態では一般のフォトン走査トンネル顕微鏡と同等に作用し、励起光非照射時に得られる前述の第二の散乱光Ls2は、試料表面の形状に関する情報を与えるものである。そこで、第二の散乱光Ls2の強度分布の測定信号を、SF検出手段によるSF信号に代えてプローブ先端と試料Sとの間隔を一定とするためのフィードバック信号として利用してもよい。
【0048】
次に、本発明の第三の実施形態に係るコレクション型の熱分光測定装置の基本構成を図4に示して説明する。
【0049】
本コレクション型熱分光測定装置41は、プリズム42上に支持された試料Sに先端7a を近接させて配置されるプローブ3と、励起光Le をプローブ3に導光する励起光用光学系43と、プローブ光Lp を試料Sの裏面で全反射させるように入射させる、前述のプリズム42を含むプローブ光用光学系44と、プローブ光Lp が試料Sの裏面すなわち試料Sとプリズムとの界面で全反射することにより試料表面に生じるエバネッセント光とプローブ3の先端部とが相互作用することにより生じる散乱光Ls を検出する光検出器45とを備えている。
【0050】
なお、ここで用いられている励起光用光学系43は、ダイクロイックミラー46を備え、励起光波長を反射してプローブ後端からプローブ3内部に入射せしめ、プローブ3の微小開口3a を介してピックアップされた散乱光Ls を透過させて光検出器45に導くものである。
【0051】
次に、本熱分光測定装置41による試料Sの光吸収率測定について説明する。
【0052】
励起光Le はダイクロイックミラー46を備えた励起光用光学系43によりプローブ3の後端からプローブに入力されてプローブ内部に導光され、その先端部に設けられた微小開口3a から試料Sの微小部分に向けて出射される。一方、プローブ光Lp はプローブ光用光学手段44によりプリズム42と試料Sとの界面に対して全反射する角度で入射せしめられる。該プローブ光Lp の全反射により試料表面にエバネッセント光が生じ、このエバネッセント光がプローブ先端7a と相互作用することにより第一の散乱光Ls1が生じる。そこで、この第一の散乱光Ls1をプローブ3の微小開口3a を介してピックアップし、光検出器45によって検出する。
【0053】
また、次に、励起光Le をプローブ3に入力しない状態、即ち、励起光Le を微小部分に照射させない状態で、プローブ光Lp をプリズム42と試料Sとの界面に対して全反射する角度で入射せしめる。上記の場合と同様に、試料表面にエバネッセント光が生じ、このエバネッセント光がプローブ先端部と相互作用することにより第二の散乱光Ls2が生じる。そこで、この第二の散乱光Ls2をプローブ3の微小開口3a を介してピックアップし、光検出器45によって検出する。
【0054】
励起光Le が照射された試料Sの微小部分は該励起光Le を吸収して熱に変換して温度変化する。この温度変化に伴い該微小部分の屈折率も変化し、この屈折率の変化に伴い、散乱光Ls のプローブ3へのカップリング効率が変化するため、光検出器45に入射する光量が変化する。従って、上述のようにして得られた第一および第二の散乱光Ls1,Ls2、すなわち励起光照射時と非照射時との散乱光の光量の差から、試料Sの微小部分における屈折率の変化が得られる。この屈折率の変化は試料Sが励起光Le を吸収してそのエネルギーを熱に変換した量に依存するものであることから、試料Sの微小部分における光−熱変換効率(光吸収率)を得ることができる。
【0055】
なお、図4に示すように、上述の第三の実施形態に係るコレクション型熱分光測定装置において、励起光Le の強度をパルス変調する励起光強度変調手段として、励起光用光学系43と図示しない励起光光源との間にチョッパー51を備え、周期的に励起光Le が照射される状態とされない状態を切り換え、励起光照射時の散乱光Ls1と非照射時の散乱光Ls2との光量の変化分をロックインアンプ52によりロックイン検出するようにしてもよい。
【0056】
なお、同様のパルス変調手段を第一および第二の実施形態に係るイルミネーション型熱分光測定装置に備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るイルミネーション型熱分光測定装置の構成図
【図2】(a)プローブおよび(b)プローブの先端部の説明図
【図3】本発明の第二の実施形態に係るイルミネーション型熱分光測定装置の構成図
【図4】本発明の第三の実施形態に係るコレクション型熱分光測定装置の構成図
【図5】パルス変調手段を備えた熱分光測定装置の構成図
【符号の説明】
1 イルミネーション型熱分光装置
2 試料ホルダ
3 プローブ
5 光学系
6 光検出手段
S 試料
Claims (9)
- 先端部に可視光波長よりも小さい径の微小開口を有し、先端を試料に近接させて配置されるプローブと、
前記試料に吸収される波長を有する励起光を前記プローブに入力させて前記微小開口から前記試料の微小部分に照射せしめる励起光用光学手段と、
前記試料に吸収されない波長を有するプローブ光を前記プローブに入力させて前記プローブの先端からエバネッセント光を出射させるプローブ光用光学手段と、
前記試料の微小部分が前記励起光の照射を受けている状態において該試料の微小部分と前記エバネッセント光とが相互作用することにより生じる第一の散乱光、および前記試料の微小部分が前記励起光の照射を受けていない状態において該試料の微小部分と前記エバネッセント光とが相互作用することにより生じる第二の散乱光を検出する光検出手段とを備え、
該光検出手段による前記第一の散乱光および前記第二の散乱光の検出に基づいて前記試料の微小領域の熱分光特性を測定することを特徴とする熱分光測定装置。 - 先端部に可視光波長よりも小さい径の微小開口を有し、先端を試料に近接させて配置されるプローブと、
前記試料に吸収される波長を有する励起光を前記プローブに入力させて前記微小開口から前記試料の微小部分に照射せしめる励起光用光学手段と、
前記試料に吸収されない波長を有するプローブ光を前記試料の裏面に入射させて該試料の表面にエバネッセント光を生じさせるプローブ光用光学手段と、
前記試料の微小部分が前記励起光の照射を受けている状態において該試料の微小部分の表面に生じた前記エバネッセント光と前記プローブの先端とが相互作用することにより生じる第一の散乱光、および前記試料の微小部分が前記励起光の照射を受けていない状態において該試料の微小部分の表面に生じた前記エバネッセント光と前記プローブの先端とが相互作用することにより生じる第二の散乱光を検出する光検出手段とを備え、
該光検出手段が、前記プローブの前記微小開口を通してピックアップされた前記第一の散乱光および前記第二の散乱光を検出するものであり、
前記光検出手段による前記第一の散乱光および前記第二の散乱光の検出に基づいて前記試料の微小領域の熱分光特性を測定することを特徴とする熱分光測定装置。 - 前記光検出手段が、前記散乱光を互いに異なる位置で検出する第一および第二の光検出器を備え、該両光検出器による検出値に基づいて前記散乱光の強度分布を求めるものであることを特徴とする請求項1記載の熱分光測定装置。
- 前記励起光の強度をパルス変調する変調手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から3いずれか記載の熱分光測定装置。
- 前記第一の散乱光の強度と前記第二の散乱光の強度とに基づいて、前記微小部分が前記励起光を吸収して熱に変換することにより変化する該微小部分における屈折率の変化量を求め、該屈折率の変化量に基づいて前記試料の熱分光分析を行う分析手段を備えたことを特徴とする請求項1から4いずれか記載の熱分光測定装置。
- 前記励起光の波長を変化させる波長変調手段を備え、各波長における前記第一の散乱光を検出することにより熱分光スペクトルを得ることを特徴とする請求項1から5いずれか記載の熱分光測定装置。
- 前記プローブの先端と前記試料の表面との間の距離を調整する間隔調整手段を備えたことを特徴とする請求項1から6いずれか記載の熱分光測定装置。
- 前記間隔調整手段が、前記第一もしくは第二の散乱光の強度に基づいて得られる前記試料表面の形状信号を前記プローブの先端と前記試料の表面との間の距離を一定に制御するためのフィードバック信号として利用するものであることを特徴とする請求項7記載の熱分光測定装置。
- 前記プローブが前記試料の表面に沿って走査するように、該プローブと該試料とを相対移動せしめる2次元走査手段を備えたことを特徴とする請求項1から8いずれか記載の熱分光測定装置。
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