JP3668085B2 - 回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転電機に使用されるコイルにおいて、特にコイル端部のシリーズ接続部の絶縁処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、回転電機に使用されるコイルは、亀甲型または1ターン型コイルのいずれかを固定子鉄心のスロット内に装着し、この各コイル間が所定の結線図にしたがって結線される。そして、この各コイル間を結ぶ箇所をシリーズ接続部と称されている。
【0003】
従来、このシリーズ接続部は、接続銅帯をロー付けにより接続し、さらにマイカテープ等の絶縁テープを絶縁ワニスを塗りながら所定回数テーピングするか、または接続部全体をエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂とガラス繊維から成るシ−トを積層し、箱形にプレス成形した一体形絶縁部材で覆い、空隙部に常温硬化形の合成樹脂を充填する方法で絶縁処理が施されている。
【0004】
図14は、このような従来の方法で絶縁処理した回転電機のコイル端部のシリ−ズ接続部の構成例を示す断面図であり、図15は同じく図14のG−G線に沿う断面図である。
【0005】
すなわち、図14および図15に示すように、コイル端部のシリ−ズ接続部は、回転電機の鉄心1に有するスロット内に装着された上コイル2と下コイル3の口出し部4の裸導体5に接続銅帯6をロ−付けして結線し、さらにこの接続部全体を箱形の絶縁部材14で覆い、空隙部分に常温硬化形の合成樹脂15を充填する方法で絶縁処理されている。
【0006】
しかしながら、このような従来のコイル端部のシリ−ズ接続部の絶縁処理方法においては、絶縁処理作業が複雑であり、その作業に長時間を要する。また、コイルに不具合が生じたり、機械の定期点検時の絶縁診断試験を実施する場合には、コイルの分解、組立作業が困難である。
【0007】
さらに、回転電機の固定子コイルのシリ−ズ接続部は、通常、大地電位の固定子鉄心から相当離れた位置にあるために、本来それ程強固(高耐電圧)な絶縁は必要でないが、特に水車発電機等が設置される場所では、塵や埃等が多く湿度が高いため、導体と絶縁表面との間は、少なくとも気密性を高めて、塵や埃や湿気等で導体と絶縁表面とが短絡状態になることだけは避ける必要がある。
【0008】
これらの課題を解決する手段として、特開平9−215244号公報及び特開平10−146026号公報に示されているような絶縁処理方法が提案されている。
【0009】
すなわち、特開平9−215244号公報に示されている方法は、図16および図17に示すように回転電機の鉄心1に有するスロット内に装着された上コイル2と下コイル3の口出し部4における裸導体5の端部を接続銅帯6により相互に電気的に接続した後、前記接続部よりも大きい内法寸法を有し、かつ変形能と耐湿性、接着性を有する絶縁充填剤7があらかじめ充填された熱可塑性樹脂から成る2分割された一対の絶縁ケ−ス16で、前記各コイル2,3の対地絶縁層の一部を含む接続部全体を包含して固着し絶縁される。
【0010】
なお、前記絶縁ケ−ス16の外周部には固着するための融着代17が形成されており、この融着代17を融着装置で溶融し、2分割された絶縁ケ−ス16を一体形に結合するものである。また、前記絶縁ケ−ス16の内面には絶縁ケ−ス16の接続部への位置決めと移動防止および補強のためのボス18と受け座19およびブロック20が設けられると共に、接続部からの脱落防止のためのステ−10が設けられている。
【0011】
一方、特開平10−146026号公報に示されている絶縁処理方法は、図18乃至図21に示すように回転電機の鉄心1に有するスロット内に装着された上コイル2と下コイル3の口出し部4における裸導体5の端部を接続銅帯6で相互に電気的に接続して、前記接続部よりも大きい内法寸法を有し、かつ変形能と耐湿性、接着性を有する絶縁充填剤7があらかじめ充填された熱可塑性樹脂から成る2分割された一対の絶縁ケ−ス21で、前記各コイル2,3の対地絶縁層の一部を含む接続部全体を包含して一体形に結合することで絶縁される。
【0012】
なお、前記絶縁ケ−ス21の外周部の対向する合せ面22は、各コイルの対地絶縁層の一部を含む接続部全体を包含して一体形に結合固定するように、一方が嵌合い凹部23、他方が嵌合い凸部24のような嵌合い構造になっている。
【0013】
このようなコイル端部のシリ−ズ接続部の絶縁処理方法においては、絶縁処理作業およびコイルの分解、組立作業が容易で、しかも防塵、耐湿性に優れた気密性の高いものとなし得る。
【0014】
しかしながら、シリ−ズ接続部は、鉄心内に収納された上コイルと下コイルの口出し部の裸導体に接続銅帯をロ−付けして形成されるため、各コイルの対地絶縁層の一部を含むシリ−ズ接続部全体の寸法が設計値よりも大きく仕上がることがある。
【0015】
前記絶縁ケ−スは、シリ−ズ接続部よりも大きい内法寸法に成形されているが、隣接するシリ−ズ接続部との距離を考慮すると絶縁ケ−スの内法寸法を大きくするには限度がある。しかも、絶縁ケ−ス内面には接続部への位置決めと移動防止および補強のためのボスと受け座およびブロックが設けられ、接続部からの脱落防止のためのステ−が設けられているため、この仕上がり度合いによっては絶縁ケ−ス内にあらかじめ充填された絶縁充填剤の一部を取除かねばならなくなり、絶縁性能、防塵性、耐湿性および気密性の低下を招くことがある。最悪の場合には、絶縁ケ−ス内面のボスや受座等の各部位に制約を受け、絶縁充填剤を除去しても2分割された絶縁ケ−スを一体化できなくなることもある。
【0016】
また、回転電機の定格や容量等でシリ−ズ接続部の形状・寸法が異なるため、その定格や容量等に応じたシリ−ズ接続部の形状及び寸法に適合する絶縁ケ−スの金型を数多く製作する必要がある。この絶縁ケ−スは熱可塑性樹脂を高温、高圧で射出成形されるため、その金型は強固なものが必要であり、形状も複雑であることから複数製作すればその費用も高額となる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように従来の回転電機のコイル端部におけるシリ−ズ接続部絶縁処理方法においては、絶縁処理作業が複雑であるばかりでなく、コイルの分解、組立作業が困難であり、さらに気密性が低いという問題があった。
【0018】
また、これらの課題を解決する手段として提案されている特開平9−215244号公報及び特開平10−146026号公報に示されているシーズ接続部の絶縁処理方法においては、2分割された絶縁ケ−スを一体化した場合、絶縁ケ−スの内容積が固定されるため、各コイルの対地絶縁層の一部を含むシリ−ズ接続部全体の寸法が設計値よりも大きく仕上がった場合、この度合いによっては絶縁ケ−ス内に充填された絶縁充填剤の一部を取除かねばならなくなり、絶縁性能、防塵性、耐湿性および気密性の低下を招くことがある。最悪の場合には、絶縁ケ−ス内面のボスや受座等の各部位に制約を受け、絶縁充填剤を除去しても2分割された絶縁ケ−スを一体化できなくなる。
【0019】
本発明の目的は、絶縁処理作業およびコイルの分解、組立作業が容易で、しかもシリ−ズ接続部全体の寸法が設計値よりも大きく仕上がっても絶縁処理作業が可能で、絶縁性能、防塵性、耐湿性および気密性の低下を招くことのない、また運転時の電磁振動や風圧等にも追随できる回転電機のシリ−ズ接続部絶縁処理方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するために、次のような方法により回転電機のシリーズ接続部を絶縁処理するものである。
【0021】
請求項1に対応する発明では、回転電機の鉄心スロット内に装着された上コイルと下コイルの口出し裸導体端部を接続銅帯で相互に電気的に接続して、当該接続部全体の絶縁処理を行う方法において、前記接続部よりも大きい内径寸法を有し、かつ変形能と耐湿性、接着性を有する絶縁充填剤があらかじめ充填されたポリフェニレンサルファイドやポリエーテルエーテルケトン等の高耐熱性、高強度の熱可塑性樹脂を射出成形してなる、2分割された片方が一方の内径寸法より小さくなるように形成された一対の絶縁ケースにより、前記各コイルの対地絶縁層の一部を含む接続部全体を包含し一体的に重ね合わせると同時に、前記2分割された各絶縁ケースの重ね合わせ部の対向面に設けられた複数段の鋸歯状突起により結合して前記接続部全体を絶縁するようにしている。
【0022】
ここで、特に上記絶縁充填剤としては、例えば請求項2に対応する発明のように、硬化後に変形能と耐湿性、接着性が発現するシリコ−ンゲルを用いることが好ましい。
【0023】
また、上記絶縁充填剤としては、例えば請求項3に対応する発明のように、硬化後に変形能と耐湿性、接着性を有し、かつ機械的強度の向上のためにシリコ−ンゲルに無機絶縁充填剤を配合して補強したものを用いることが好ましい。
【0025】
また、上記絶縁ケ−スとしては、例えば請求項4に対応する発明のように、機械的強度を向上させるため、ポリフェニレンサルファイドやポリエ−テルエ−テルケトン等の高耐熱性、高強度の熱可塑性樹脂にガラスチョップを10〜40重量%配合して射出成形したものであることが好ましい。
【0026】
さらに、上記絶縁ケ−スとしては、例えば請求項5に対応する発明のように、成形時の歪み発生を防止するため、ポリフェニレンサルファイドやポリエ−テルエ−テルケトン等の高耐熱性,高強度の熱可塑性樹脂にガラスフレ−クを10〜40重量%配合して射出成形したものであることが好ましい。
【0027】
さらにまた、上記絶縁ケ−スとしては、例えば請求項6に対応する発明のように成形性を向上させるため、ポリフェニレンサルファイドやポリエ−テルエ−テルケトン等の高耐熱性,高強度の熱可塑性樹脂にガラスビ−ズを10〜40重量%配合して射出成形したものであることが好ましい。
【0028】
また、上記各コイルの対地絶縁層と接する絶縁ケースの部位には、例えば請求項7に対応する発明のように、ゴムパッキンが設けられていることが好ましい。
【0029】
他方、請求項8に対応する発明は、回転電機の鉄心スロット内に装着された上コイルと下コイルの口出し裸導体端部を接続銅帯で相互に電気的に接続して、当該接続部全体の絶縁処理を行う方法において、前記接続部よりも大きい内径寸法を有し、かつ変形能と耐湿性、接着性を有する絶縁充填剤があらかじめ充填されたポリフェニレンサルファイドやポリエーテルエーテルケトン等の高耐熱性、高強度の熱可塑性樹脂を射出成形してなる、2分割された片方が一方の内径寸法より小さくなるように形成された一対の絶縁ケースにより、前記各コイルの対地絶縁層の一部を含む接続部全体を包含するように重ね合わせた後、前記一対の絶縁ケースを室温または加熱硬化型エポキシ樹脂を含浸した絶縁コードで一体的に縛り、しかる後前記室温または加熱硬化型エポキシ樹脂を硬化させることで、前記接続部全体を固定し絶縁するようにしている。
【0030】
上記一対の絶縁ケースを絶縁コードで縛るに際しては、例えば請求項9に対応する発明のように絶縁コードが脱落しないように各絶縁ケースの背面部に形成されたU字型突起内を通して一体的に縛って固定するようにしている。
【0031】
従って、請求項1から請求項7に対応する発明のコイル接続端部の絶縁処理方法において、2分割された片方が一方の内径寸法より小さくなるように成形された一対の絶縁ケース内に、硬化後の変形能と耐湿性、および接着性が発現するシリコーンゲルをあらかじめ充填し硬化させていることにより、回転電機の鉄心スロット内に装着された上コイルと下コイルの口出し裸導体端部を接続銅帯で相互に電気的に接続した後、その絶縁ケースでこの各コイルの対地絶縁層の一部を含む接続部全体を包含し一体的に重ね合せるだけで絶縁をすることができる。
【0032】
また、シリコ−ンゲルは接着性が良く、シリ−ズ接続部の導体や絶縁層と良く密着し、吸水率も低いため、導体と絶縁層表面との気密性は高い。そして、高耐熱性,高伸長であるため、運転中の電磁振動や冷熱サイクルおよび風圧等にも追随でき、亀裂や絶縁層との剥離は生じない。
【0033】
さらに、無機絶縁充填材の配合量に応じて変形能が変わるため、回転電機の運転時、電磁振動や風圧等に応じて無機絶縁充填剤の配合量を選択することにより、機械的強度を調整することができる。
【0034】
一方、2分割された各絶縁ケ−スの重ね合わせ部の対抗面には、同方向に鋸歯状の突起が複数段形成されており、その絶縁ケ−スを重ね合わせた時に、鋸歯状突起が逆向きに対抗し嵌め合わさるため、ラチェットと同構造となり外れることがない。
【0035】
また、その絶縁ケ−スは、ポリフェニレンサルファイドやポリエ−テルエ−テルケトン等の高耐熱性,高強度の熱可塑性樹脂で射出成形されていることにより、その重ね合わせ部の対抗面に設けられた鋸歯状の突起部の信頼性が高く、各コイルの対地絶縁層の一部を含む接続部全体の寸法が設計値よりも大きく仕上がっていても、その鋸歯状の突起を複数段形成したことにより絶縁ケースの内容積が可変となり、その接続部の寸法に合った段数の突起部で重ね合わせることが可能となる。
【0036】
さらに、各コイルの対地絶縁層と接する絶縁ケースの部位には、ゴムパッキンが設けられていることにより、起動・停止の繰り返しによって生じる結露水および塵や埃の侵入を防止することができる。
【0037】
また、請求項8及び請求項9に対応する発明のコイル接続端部の絶縁処理方法においては、前記各コイルの対地絶縁層の一部を含む接続部全体を2分割された片方が一方の内径寸法より小さくなるように成形された一対の絶縁ケースで包含し、室温または加熱硬化型エポキシ樹脂を含浸した絶縁コードで全体を縛った後、前記室温または加熱硬化型エポキシ樹脂を硬化させることで一体形に固定し絶縁することができる。
【0038】
また、2分割された各絶縁ケ−スの背面部にU字型の突起部を形成し、そのU字型の突起部を通して前記絶縁コ−ドで縛ることで、運転中の電磁振動や冷熱サイクルおよび風等により、その絶縁コ−ドが絶縁ケ−スから外れて絶縁ケ−スが脱落することがない。
【0039】
以上により、簡易なシリ−ズ接続部の絶縁処理で、運転時の電磁振動や風圧等にも追随することができ、塵や埃および結露水の侵入を防止する気密性の高い絶縁が可能となる。また、シリ−ズ接続部全体の寸法が設計値よりも大きく仕上がっても絶縁ケ−スの内容積が可変であるため、絶縁処理作業が可能であり、絶縁ケ−ス内に充填された絶縁充填剤の一部を取除いたりする必要がないため、絶縁性能、防塵性、耐湿性および気密性等の低下を招くことがない。さらにまた、コイル絶縁に不具合等が生じたり、機械の定期点検時の絶縁診断を実施する場合に、コイルの分解、組立作業を容易に行うことが可能となる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0041】
図1及び図2は、本発明による回転電機のコイル接続端部の絶縁処理方法の第1の実施の形態を説明するためのもので、図1は2分割された絶縁ケースの一体化状態を示す内部構成図、図2は図1のA−A線に沿う矢視断面図である。
【0042】
図1及び図2に示すように、まず図示しない回転電機の鉄心1に有するスロット内に収納された上コイル2と下コイル3の口出し部4の裸導体5に接続銅帯6をロ−付けして、上コイル2と下コイル3を電気的に接続する。
【0043】
次にこの接続部よりも大きい内法寸法を有し、変形能と耐湿性、および接着性を有する絶縁充填剤7があらかじめ充填された熱可塑性樹脂からなる、2分割された片方が一方の内法寸法より小さくなるように成形された一対の絶縁ケ−ス8aにより、上記各コイル2,3の対地絶縁層の一部を含む接続部全体を包含し、一体形に重ね合わせて絶縁する。
【0044】
ここで、絶縁充填剤7としては、シリコ−ンゲル(例えば、東芝シリコ−ン製のTSE3070)を用いることができ、高耐熱性、高強度の熱可塑性樹脂であるポリフェニレンサルファイド(例えば、東レ製のトレリナA504)を射出成形してなる一対の2分割された絶縁ケ−ス8aに充填し、室温で硬化させたものである。
【0045】
この絶縁充填剤7であるシリコーンゲルは、接着性が良く、シリーズ接続部の導体や絶縁層と良く密着し、吸水率も低いため、導体と絶縁層表面との気密性が高い。そして、高耐熱性、高伸長であるため、運転中の電磁振動や冷熱サイクルおよび風圧等にも追随でき、亀裂や絶縁層との剥離は生じない。さらに、無機絶縁充填剤の配合量に応じて変形能が変わるため、回転電機の運転時、電磁振動や風圧等に応じて無機絶縁充填剤の配合量を選択することにより、機械的強度を調整することができる。
【0046】
また、絶縁ケ−ス8aは、上記接続部よりも大きい内法寸法を有し、2分割された片方が一方の内法寸法より小さくなるように成形されており、図3乃至図6に示すように、その重ね合わせ部の対向面の4箇所には、同方向に鋸歯状突起9が複数段形成されており、その絶縁ケ−スを重ね合わせた時に、図7に示すように鋸歯状突起9が逆向きに対向して嵌め合わさるため、ラチェットと同構造となり外れることがない。
【0047】
また、その絶縁ケ−ス8aは、ポリフェニレンサルファイドやポリエ−テルエ−テルケトン等の高耐熱性,高強度の熱可塑性樹脂で射出成形されていることにより、その重ね合わせ部の対向面に設けられた鋸歯状突起9の信頼性が高く、各コイルの対地絶縁層の一部を含む接続部全体の寸法が設計値よりも大きく仕上がっていても、その鋸歯状突起9が複数段形成されているため、その接続部の寸法に合った段数の突起部で重ね合わせることが可能である。
【0048】
さらに、絶縁ケ−ス8aの内面には、補強用のステー10が設けられており、上記各コイル2,3の対地絶縁層と接する絶縁ケ−ス8aの部位には、ゴムパッキン11を設けている。ここで、ゴムパッキン11としては、例えば独立単泡シリコーンゴムスポンジ(ジョウン工業製)を用いることができる。このゴムパッキン11が設けられていることにより、起動及び停止の繰り返しによって生じる結露水および塵や埃の侵入を防止することができる。
【0049】
以上により簡易化されたシリーズ接続部の絶縁処理で、運転時の電磁振動や風圧等による絶縁ケ−ス8aの移動や脱落を防止することができ、塵や埃および起動及び停止の繰り返しにより生じる結露水の侵入を防止することが可能となる。また、コイル絶縁に不具合等が生じたり、機械の定期点検時の絶縁診断を実施する場合に、コイル2,3の分解、組立作業を容易に行うことが可能となる。
【0050】
次に本発明による回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法の第2の実施の形態について説明する。
【0051】
第2の実施の形態による回転電機のコイル接続端部の絶縁処理方法は、前述した第1の実施の形態において、絶縁充填剤7であるシリコーンゲルに、無機絶縁充填剤であるシリカ(例えば、龍森製のクリスタルライトA1)を、例えば1:1の配合比で混合して絶縁充填剤7を変化させる。
【0052】
このような第2の実施の形態による回転電機のコイル接続端部の絶縁処理方法によれば、硬化後の絶縁充填剤7の変形能は、前述した第1の実施の形態の場合よりも多少減少するが、機械的強度を向上させることができる。また、上述した絶縁充填剤7を用いて接続端部を絶縁処理しても、第1の実施の形態の場合とほぼ同様な作用効果を得ることができる。さらに、無機絶縁充填剤としてアルミナを配合することにより、絶縁充填剤7の熱伝導率が向上して、接続部の熱放散を改善することができる。
【0053】
次に本発明による回転電機のコイル接続端部の絶縁処続理方法の第3の実施の形態について述べる。
【0054】
第3の実施の形態による回転電機のコイル接続端部の絶縁処続理方法では、前述した第1の実施の形態において、絶縁ケース8aとしてポリフェニレンサルファイドにガラスチョップを30〜40重量%配合して射出成形により得るものである。
【0055】
このような第3の実施の形態による回転電機のコイル接続端部の絶縁処理方法によれば、絶縁ケ−ス8aを射出成形した結果、引張り及び曲げ等の機械的強度を著しく向上することができる。また、本絶縁ケ−ス8aを用いて接続部を絶縁処理しても、前述した第1の実施の形態の場合とほぼ同様な作用効果を得ることができる。
【0056】
一方、上記ガラスチョップの代わりに、ガラスフレークを30〜40重量%配合して、絶縁ケ−ス8aを射出成形することにより、成形時の歪み発生防止効果を高めることができる。また、上記ガラスチョップの代わりに、ガラスビーズを30〜40重量%配合して、絶縁ケ−ス8aを射出成形することにより、射出時の熱可塑性樹脂の流れが良くなり、成形性を著しく向上することができる。これらの絶縁ケ−ス8aを用いて接続部を絶縁処理した結果、第1の実施の形態の場合とほぼ同様な作用効果を得ることができる。
【0057】
次に本発明による回転電機のコイル接続端部の絶縁処理方法の第4の実施の形態について図8乃至図13により説明する。
【0058】
第4の実施の形態による回転電機のコイル接続端部の絶縁処理方法では、前述した第1の実施の形態と同様に、回転電機の図示しない鉄心スロット内に収納された上コイル2と下コイル3の口出し部4の裸導体5に接続銅帯6をロ−付けして、上コイル2と下コイル3を電気的に接続する。
【0059】
次に変形能と耐湿性、および前述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様の接着性を有するシリコーンゲルから成る絶縁充填剤7があらかじめ充填され、且つ前記接続部よりも大きい内法寸法を有し、熱可塑性樹脂製の2分割された片方が一方の内法寸法より小さくなるように成形された一対の絶縁ケ−ス8bにより、上記各コイル2,3の対地絶縁層の一部を含む接続部全体を包含するように重ね合わせた後、前記絶縁ケ−ス8bを絶縁コ−ド13で縛り一体形に固定して絶縁する。
【0060】
前記絶縁ケ−ス8bは、前記第1および第3の実施の形態と同様にポリフェニレンサルファイド(例えば、東レ製のトレリナA504)で射出成形されており、図8乃至図12に示すように2分割された片方が一方の内法寸法より小さくなるように成形されている。その絶縁ケ−ス8bの内面には、補強用のステー10が設けられている。
【0061】
さらに、上記各コイル2,3の対地絶縁層と接する絶縁ケ−ス8bの部位には、例えば独立単泡シリコーンゴムスポンジ(ジョウン工業製)から成るゴムパッキン11が設けられている。また、その絶縁ケ−ス8bの背面中央部にはU字型突起12が形成されており、図13に示すように前記各コイル2,3の対地絶縁層の一部を含む接続部全体を包含した後、室温硬化型エポキシ樹脂(例えば、チバガイギ社製のGY250とHY956を4:1の割合で混合)を含浸したガラス紐(有沢製作所製)から成る絶縁コ−ド13で、この絶縁コ−ド13が脱落しないようにU字型突起12内を通して全体を縛り一体形に固定される。
【0062】
このように2分割された各絶縁ケ−ス8bの背面部にU字型突起12部を形成し、そのU字型突起12部を通るようにして前記絶縁コ−ド13で縛り一体形に固定することで、運転中の電磁振動や冷熱サイクルおよび風等により、その絶縁コ−ド13が絶縁ケ−ス8bから外れて絶縁ケ−ス8bが脱落することがない。
【0063】
以上の様な簡易化されたシリーズ接続部の絶縁処理で、前記第1の実施例の場合とほぼ同様な作用効果を得ることができる。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように本発明による回転電機のコイル接続端部の絶縁処理方法によれば、シリ−ズ接続部全体の寸法が設計値よりも大きく仕上がっても絶縁ケ−スの内容積が可変であるため、絶縁処理作業が可能で絶縁ケ−ス内に充填された絶縁充填剤の一部を取除いたりする必要がなく、絶縁性能、防塵性、耐湿性および気密性の低下を招くことがない。
【0065】
また、コイル絶縁に不具合等が生じたり、機械の定期点検時の絶縁診断を実施する場合、コイルの分解,組立作業が容易に行える。
【0066】
さらに、このような簡易なシリ−ズ接続部の絶縁処理で運転時の電磁振動や風圧等にも追随でき、塵や埃および結露水の侵入を防止することができると共に、気密性の高い回転電機のコイル端部のシリ−ズ接続部とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による回転電機のコイル端部のシリ−ズ接続部絶縁処理方法の第1の実施例における2分割された絶縁ケ−スの一体化状態を示す内部構造図。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図。
【図3】本発明による回転電機のコイル接続端部の絶縁処理方法の第1の実施例における2分割した一方側の絶縁ケ−スの平面図。
【図4】図3のC−C線に沿う断面図。
【図5】本発明による回転電機のコイル接続端部の絶縁処理方法の第1の実施例における2分割したもう一方側の絶縁ケ−スの平面図。
【図6】図5のD−D線に沿う断面図。
【図7】本発明による回転電機のコイル接続端部の絶縁処理方法の第1の実施例における2分割された絶縁ケ−スを重ね合わせて一体化した状態の鋸歯状突起部の断面図。
【図8】本発明による回転電機のコイル接続端部の絶縁処理方法の第4の実施例における2分割した一方側の絶縁ケ−スの平面図。
【図9】図8をE矢印方向から見た平面図。
【図10】図8のF−F線に沿う断面図。
【図11】本発明による回転電機のコイル接続端部の絶縁処理方法の第4の実施例におけるシリ−ズ接続部包含前の2分割された絶縁ケ−スの一体化状態を図8のE矢印方向から見た組立図。
【図12】本発明による回転電機のコイル接続端部の絶縁処理方法の第4の実施例における2分割された絶縁ケ−スの一体化状態の重ね合わせ部の断面図。
【図13】本発明による回転電機のコイル接続端部の絶縁処理方法の第4の実施例における組立完成図。
【図14】従来の回転電機のコイル端部のシリ−ズ接続部絶縁処理方法の一例を示す断面図。
【図15】図14のG−G線に沿う断面図。
【図16】従来の回転電機のコイル端部のシリ−ズ接続部絶縁処理方法の一例を示す要部断面図。
【図17】図16のシリ−ズ接続部絶縁処理方法の一例を示す側面内部構造図。
【図18】従来の回転電機のコイル端部のシリ−ズ接続部絶縁処理方法の一例を示す要部断面図。
【図19】図18のシリ−ズ接続部絶縁処理方法の一例を示す側面内部構造図。
【図20】図18の合せ面の嵌合い構造部の詳細断面図。
【図21】図18の合せ面の嵌合い構造部の詳細断面図。
【符号の説明】
1…鉄心
2…上コイル
3…下コイル
4…口出し部
5… 裸導体
6…接続銅帯
7…絶縁充填剤
8a,8b…絶縁ケ−ス
9…鋸歯状突起
10…ステ−
11…ゴムパッキン
12…U字型突起
13…絶縁コ−ド,
14…絶縁部材
15…合成樹脂
16…絶縁ケ−ス
17…融着代
18…ボス
19…受座
20…ブロック
21…絶縁ケ−ス
22…合せ面
23…嵌合い凹部
14…嵌合い凸部
Claims (9)
- 回転電機の鉄心スロット内に装着された上コイルと下コイルの口出し裸導体端部を接続銅帯で相互に電気的に接続して、当該接続部全体の絶縁処理を行う方法において、前記接続部よりも大きい内径寸法を有し、かつ変形能と耐湿性、接着性を有する絶縁充填剤があらかじめ充填されたポリフェニレンサルファイドやポリエーテルエーテルケトン等の高耐熱性、高強度の熱可塑性樹脂を射出成形してなる、2分割された片方が一方の内径寸法より小さくなるように形成された一対の絶縁ケースにより、前記各コイルの対地絶縁層の一部を含む接続部全体を包含し一体的に重ね合わせると同時に、前記2分割された各絶縁ケースの重ね合わせ部の対向面に設けられた複数段の鋸歯状突起により結合して前記接続部全体を絶縁するようにしたことを特徴とする回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法。
- 請求項1記載の回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法において、前記絶縁充填剤としては、硬化後に変形能と耐湿性、接着性が発現するシリコーンゲルを用いることを特徴とする回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法。
- 請求項1記載の回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法において、前記絶縁充填剤としては、硬化後に変形能と耐湿性、および接着性が発現するシリコーンゲルに、機械的強度向上のための無機絶縁充填剤を配合し補強したものを用いることを特徴とする回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法。
- 請求項1記載の回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法において、前記絶縁ケースとしては、ポリフェニレンサルファイドやポリエーテルエーテルケトン等の高耐熱性、高強度の熱可塑性樹脂に、機械的強度向上のためのガラスチョップを10〜40重量%配合して射出成形したものであることを特徴とする回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法。
- 請求項1記載の回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法において、前記絶縁ケースとしては、ポリフェニレンサルファイドやポリエーテルエーテルケトン等の高耐熱性、高強度の熱可塑性樹脂に、成形時の歪み発生防止のためのガラスフレークを10〜40重量%配合して射出成形したものであることを特徴とする回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法。
- 請求項1記載の回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法において、前記絶縁ケースとしては、ポリフェニレンサルファイドやポリエーテルエーテルケトン等の高耐熱性、高強度の熱可塑性樹脂に、成形性向上のためのガラスビーズを10〜40重量%配合して射出成形したものであることを特徴とする回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法。
- 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法において、前記コイルの対地絶縁層と接する絶縁ケースの部位には、ゴムパッキンが設けられていることを特徴とする回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法。
- 回転電機の鉄心スロット内に装着された上コイルと下コイルの口出し裸導体端部を接続銅帯で相互に電気的に接続して、当該接続部全体の絶縁処理を行う方法において、前記接続部よりも大きい内径寸法を有し、かつ変形能と耐湿性、接着性を有する絶縁充填剤があらかじめ充填されたポリフェニレンサルファイドやポリエーテルエーテルケトン等の高耐熱性、高強度の熱可塑性樹脂を射出成形してなる、2分割された片方が一方の内径寸法より小さくなるように形成された一対の絶縁ケースにより、前記各コイルの対地絶縁層の一部を含む接続部全体を包含するように重ね合わせた後、前記一対の絶縁ケースを室温または加熱硬化型エポキシ樹脂を含浸した絶縁コードで一体的に縛り、しかる後前記室温または加熱硬化型エポキシ樹脂を硬化させることで、前記接続部全体を固定し絶縁するようにしたことを特徴とする回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法。
- 請求項8記載の回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法において、前記一対の絶縁ケースを絶縁コードで縛るに際して、前記絶縁コードが脱落しないように各絶縁ケースの背面部に形成されたU字型突起内を通して一体的に縛って固定することを特徴とする回転電機のシリーズ接続部の絶縁処理方法。
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