JP3667155B2 - ボールジョイント分離工具 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、主に自動車の整備作業においてドライブシャフトブーツの交換やショックアブソーバーの交換、サスペンションスプリングの交換、ボールジョイントの交換等の時に、サスペンションアームのボールジョイントの分離、タイロッドのボールジョイントの分離等を行うのに用いる工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車のかじ取り装置は、ステアリングホイールを回転させることによりラックアンドピニオン機構などのギヤ構造によりタイロッドを左右に移動させ、タイロッドエンドで結合されたナックルアームを通してタイヤの方向を変える構造が一般的である。
【0003】
タイロッドエンドのボールジョイント部には、3次元的な動きが要求され、ナックルアームの軸受環部内に圧入されるとともに固定ナットを螺合し抜け止めがなされている。軸受環部内からボールジョイントを分離する為には、図6、図7、図8に示す分離工具が開発され既に広く使われている。
【0004】
図8の工具は、一般に自動車メーカーの専用特殊工具として採用されているものであり、タイロッドエンドと軸受環部の間にフォーク状の受け具を挿入し、ジョイントピンの上方からプレスねじを締め込み、直接ジョイントピンに外力を加えることにより押し抜くものであり、構造的にシンプルで且つ安価である。しかしながらジョイントピンの軸線上に作業空間を必要とするとのデメリットがある為に使用できる車種が限定され、このために多種多様な車両が入庫する整備工場では、これだけでは対応しきれず、色々な大きさのものを揃えたり、図6に示す構造のものなどを合わせて所持する必要があった。
【0005】
図6の工具は、梃子の原理による倍力構造を採用したもので、その梃子の支点位置を一定とするものである。この種のものはプレスねじのねじ込みにつれてプレスねじとプレスレバーとの接触面及び角度が絶えず変化し、それ故に力の伝達効率が変化するとの欠点があった。(当然のことながら直角にあたる時が、伝達効率がよい)またボールジョイントの大きさは種類や車種によって様々であり、アームの間隔調整構造のないこの種の工具では、対応できないものも多く存在する。
【0006】
図6の工具の不具合を解決したものが、図7に示すものである。図7の工具は、タイロッド及びジョイントピンの大きさによりプレスレバーと受け具の間隔を調整可能にしたものである。支点ボルトに対しプレスレバーを回転させることによりプレスレバーと受け具の関係を平行状態に調整し、比較的効率よくプレスねじの推力をジョイントピンの押し力に変換しようとするものであるが、対象物が変わる度にプレスレバーを回転させていちいち間隔を調整しなければならないという欠点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、従来のボールジョイント分離工具における問題を鑑み、入力した力に損失が少なく、ボールジョイント及びジョイントピンの大きさに関係なく、またより広範な作業環境に対応し作業を行うことができるボールジョイント抜き取り工具を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するための第1の発明は、内周壁に雌ねじを螺設し中間部長手方向にスリットを対向させて設けた筒状のガイドと、前記ガイドにL字状に固定したフォーク状アームと、筒状のスライダーと、前記スライダーにL字状に固定したプレスアームと、雄ねじを螺設し上端に多角部を設けた中空状の推力ボルトと、推力ボルトの軸線上に設けた貫通孔より細径のシャフト部とシャフト部よりも大径で且つ軸線に対し直交する横孔を有するヘッド部と他端の抜止め具係合部からなるインナーシャフトと、抜止め具と、組付けボルトからなり、それぞれのアーム部を平行状態に保ちながら、ガイド外周にスライダーを嵌挿し、回動自在にインナーシャフト上を抜止め具とヘッド部の間で上下方向の動きを規制させた推力ボルトの雄ねじをガイドの雌ねじに螺合させ、組付けボルトを用いてスライダーとガイドのスリットおよびインナーシャフトのヘッド部横孔を挿通して組み付けることにより、推力ボルトのねじ込みにより、軸受け環部に圧入されたボールジョイントのジョイントピンに圧力を加えるプレスアームと軸受け環部とボールジョイントとの間に挿入したフォーク状アームが平行状態を保ちながら近接し、これによりボールジョイントをナックルアームから抜き取ることを特徴としたボールジョイント抜取り工具である。
【0009】
また第2の発明は、さらに厳しい作業環境においても対応できる様に、それぞれのアームを着脱自在とし、またガイドとスライダーの取付部形状を共通とし、またプレスアームとフォーク状アームの被取付部形状をこれに対応した形状としたことにより、それぞれのアームの入れ替えを可能としたことを特徴とする請求項1記載のボールジョイントの分離工具である。
【0010】
また第3の発明は、推力ボルト回動時の反力を受けるためにモンキーレンチやスピンナーハンドルなどの工具を接続するための横巾方向に平行な二面を設けるとともに上下方向に開口した角孔をプレスアームまたはフォーク状アームの一端に設けたことを特徴とするボールジョイント分離工具である。
【0011】
【実施例】
以下、本発明に係るボールジョイントの抜き取り工具の実施例に基づき詳細に説明する。
【0012】
図4は、ガイド側にフォーク状アームをまたスライダー側にプレスアームを組み付けた時の部品展開図であり、これに基づき構成部品について説明する。
【0013】
筒状のガイド2の外周は、スライダー3を摺動可能に受け入れる小径部2fとアームを取付ける大径のアーム取付部2cとからなり、内周壁には雌ねじ2aを螺設し、また小径部2fには、スライダー3の回転を規制する為の長孔状のスリット2bを対向させて設けてある。また、アームに荷重がかかった時の抜け止め(圧力受け)としてガイド大径のアーム取付部2cよりも大きな外径を持つキャップ12をビス13を用いてガイド2の下端に固定可能とした。
【0014】
スライダー3は、外周下方にガイド2の大径のアーム取付部2cと同一型状のアーム取付部3cをまた中間部にアームに接して上側への圧力をうけるフランジ部3bを設け、内周壁はガイド2上をスライド可能にガイド小径部2fより若干大きな径の中空とし、上側開口部にはベアリングユニット11を受容するための段部3aを設けてある。
【0015】
推力ボルト4は、ガイド内周壁の雌ねじ2aに対応する雄ねじ4aを有する六角頭を有するボルトであり、軸線上に貫通孔4cを設けてある。インナーシャフト5は、貫通孔4cよりも若干小径で推力ボルト4の全長より僅かに長いのシャフト部5aと、これよりも大径で且つ軸線方向に対し直交方向に横孔5cを設けたヘッド部5bを一端に、また抜止め具係止部5dをもう一端に設けてある。インナーシャフト5上に挿入された推力ボルト4は、以上の構成によりインナーシャフト5のヘッド部5bと抜止め具6の間で、回動自在に組付けられることになる。
【0016】
ベアリングユニット11は、推力ボルト4の回転抵抗を軽減するためのものであり、特に構成上なくともボールジョイント分離工具として機能するが、より快適に作業を行うためには構成に組み込むことが好ましい。
【0017】
プレスアーム8は、一端にスライダー又はガイドのアーム取付部を受容する円孔8aを設けるとともにフォーク状アーム9と平行な平面8bを持ち、この面のジョイントピン21aと相対する箇所にジョイントピンがずれて外れるのを防止するための凹部8cを設けてある。(図2参照)
【0018】
フォーク状アーム9には、略中央部にガイド又はアームの取付部を受容する為の円孔9aを設け、一端にはボールジョイントと軸受環部との間に挿入しやすくする為に先端に向けて徐々に薄肉となる様にし、また出来る限り軸受環部との接触面積を大きくとる為に二股のフォーク状としている。プレスアーム8又はフォーク状アーム9のもう一方の端には、ボールジョイント押抜き時の推力ボルト4の回転に対し分離工具自体が回転しまうのを防ぐ為に反力受け10を設けてある。反力受け10はモンキーレンチなどを接続するために横巾方向に平行な二面10aを設けるとともに、スピンナハンドルなどを接続するための角孔10bを上下方向に開口して設けてある。
【0019】
以上を主要な構成とする本工具の各部品の関係を図面に沿って説明する。
【0020】
まずガイド2にスライダー3を嵌挿し、スライダー3の段部3aにベアリングユニット11を組み付ける。次にインナーシャフト5とインナーシャフトに組付けた推力ボルト4及び抜止め具6からなる推力ユニットをガイドの雌ねじ2aに推力ボルトの雄ねじ4aを螺合させて組み込む。スライダー3のアーム取付部3cに片方のアーム8(9)をガイド側から嵌挿する。次にアームの取付孔8d(9d)とスライダーのアーム取付孔3dとガイドに対向して設けたスリット2b、2bとインナーシャフトのヘッド部の横孔5cを直線上に調整したあと、組付けボルト14aを挿入し位置決めを行う。スリット2bの幅、スライダーのアーム取付孔3dの径、インナーシャフトヘッド部の横孔5c及びアームの一方の取付孔8d(9d)の径は、組付けボルトのシャフト径よりもやや大きく設定している。アームのもう一方の取付孔8d’(9d’)には、組付けボルトに対応する雌ねじ8e(9e)を螺設してあり、これに組付けボルト14aを螺合させることにより位置関係が確定する。次にもう一方のアーム9(8)をアーム同士が平行となるように組付けボルト14bを用いてガイド大径のアーム取付け部2cに固定し、抜止め防止(反力受け)の為にキャップ12をガイド2の下端にビス13を用いて固定し組み付けは完了する。
【0021】
スライダー3と一方のアーム8(9)及びインナーシャフト5は、図3に示す様に組付けボルト14により串刺し状に回動不能に位置決めされるが、推力ボルト4はインナーシャフト5上を、またベアリングユニット11は推力ボルト4の六角頭の下面とスライダーの段部3aとの間でそれぞれ回動自在に配置してある。
【0022】
図1は、ガイド2にプレスアーム8を、スライダー3にフォーク状アーム9を取付た本工具を、作業対象物であるタイロットエンド20のボールジョイント21及びナックルアーム30の軸受け環部30aに組み付けた状態を示す図であり、軸受け環部30aに対しボールジョイント21が下側から圧入された状態に対応してアーム8,9を組み合わせた状態の図である。
【0023】
次に本工具の動きについて図1、図2を用いて説明する。
【0024】
推力ボルト4を回転させてガイド2に対しねじ込むと、推力ボルト4に対し相対的にガイド2が下降する。(軸受け環部及びフォーク状アームは、不動で基準となる)この時、スライダー3とスライダーに組み付けられたフォーク状アーム9及びインナーシャフト5は、推力ボルト4に対し回動自在で且つ上下方向の動きが規制された状態にある為、推力ボルト4の回転に伴い移動することはない。図2は、図1の状態から推力ボルト4を回動させ、フォーク状アーム9にプレスアーム8を近接させてボールジョイント21のジョイントピン21aに対し圧力を加え、ボールジョイント21をナックルアーム30の軸受け環部30aから押抜いた状態を示す図である。図5は、軸受け環部30aに対し、上側からボールジョイント21が圧入された状態の対象物に対し、ガイド側にフォーク状アーム9を、スライダー側にプレスアーム8を組み付けた状態を示した図である。
【0025】
プレスアーム8とフォーク状アーム9は、ガイド2またはスライダー3に一体的に形成または固定されていても良いが、ボールジョイント21の取付状況や作業部位の空間環境に柔軟に対応する為に、それぞれを別体とするとともに接続部の形状を共通にし交換可能にすることが好ましい。
【0026】
以上は文字通り一実施例であり、当業者の常識に基づく種々の改良を施した態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0027】
【発明の効果】
本件第一の発明は以上のように構成したことにより、それぞれのアーム8,9の間隔を平行に移動させることができ、これによりジョイントピン21aをその軸線方向に垂直に押すことが可能となり、図6に示す工具にて発生していた外部からの入力に対する出力ロス及び伝達ロスを発生させることなく抜き取り作業がを行うことができる。またアーム8,9の間隔調整と押抜き作業の入力が、同一の推力ボルト4にて行えるため、図7に示す工具の様にボールジョイント等の大きさに合わせてアームの間隔を事前に調整する必要がなくなった。また一軸で構成させることにより工具の横幅をコンパクトにすることができた。図8に示す工具では、ジョイントピン21aの軸線に分離工具を挿入するスペースとプレスねじ40を廻す作業スペースを必要としていたが、プレスアーム8及びフォーク状アーム9をガイド2とスライダー3に対しそれぞれL字状に設定してオフセットさせ、また推力ボルト4への入力及びプレスアーム8とフォーク状アーム9の回り止め構造を一軸状で行ったことにより本工具を配置させまた推力ボルト4を回動させる間隙がボールジョイントの何れかの側面にあれば概ねボールジョイントの分離作業が出来るようになった。
【0028】
また第二の発明では、更にプレスアームとフォーク状アームをガイド及びスライダーと別体とし、それぞれの取付部の形状を共通としたことにより各アームの組み替えが可能となり、様々な作業環境に対応できるようになった。
【0029】
また第三の発明では、フォーク状アームまたはプレスアームの一端に横巾方向に平行な二面と上下方向に開口する角孔を設けたことにより、ボールジョイント及び軸受け環部に対し不安定な状態でセッティングされた本工具を安定的に保持し、また推力ボルトに回転力を加えた時にボールジョイントを中心に本工具が回転してしまわないように保持することが可能となった。
【0030】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ナックルアームの軸受け環部に下側から圧入されたボールジョイントを分離するために本工具を組み付けた状態を示す一部断面図である。
【図2】図2は、図1の状態から推力ボルトを回転させてボールジョイントを分離した状態を示す断面図である。
【図3】図3は、図1に示す本工具のA−A断面図(一部除く)である。
【図4】図4は、本工具の部品展開図である。
【図5】図5は、ナックルアームの軸受け環部に上側から圧入されたボールジョイントを分離するため本工具を組み付けた状態を示す一部断面図である。
【図6】図6は、従来の梃子の原理を用いたボールジョイント押抜き具の斜視図である。
【図7】図7は、図6の工具を改良したものであり、アームの間隔を調整することができるタイプの従来からあるボールジョイント押抜き具の一部断面図である。
【図8】図8は、自動車メーカーが主に専用サービスツールとして採用しているジョイントピンを直接押抜くタイプのボールジョイント押抜き具の斜視図である。
【符号の説明】
1 ボールジョイント分離工具
2 ガイド
2a 雌ねじ
2b スリット
2c アーム取付部
2d 取付孔
2f 小径部
3 スライダー
3a 段部
3b フランジ部
3c アーム取付部
3d 取付孔
4 推力ボルト
4a 雄ねじ
4b 多角部
4c 貫通孔
5 インナーシャフト
5a シャフト部
5b ヘッド部
5c 横孔
5d 抜止め具係止部
6 抜止め具
8 プレスアーム
8a 円孔
8b 平面
8c 凹部
8d 取付孔
8e 雌ねじ
9 フォーク状アーム
9a 円孔
9d 取付孔
9e 雌ねじ
10 反力受け
10a 平行な二面
10b 角孔
11 ベアリングユニット
12 キャップ
13 ビス
14 組付けボルト
20 タイロッドエンド
21 ボールジョイント
21a ジョイントピン
30 ナックルアーム
30a 軸受け環部
40 プレスねじ
80 プレスレバー
90 フォーク状受け具

Claims (3)

  1. 内周壁に雌ねじを螺設し中間部長手方向にスリットを対向させて設けた筒状のガイドと、前記ガイドにL字状に固定したフォーク状アームと、筒状のスライダーと、前記スライダーにL字状に固定したプレスアームと、雄ねじを螺設し一端に多角部を設けた中空状の推力ボルトと、推力ボルトの貫通孔より細径のシャフト部と一端にシャフト部よりも大径で且つ軸線に対し直交する方向に向けて横孔を有するヘッド部と他端に抜け止め具係合部を備えてなるインナーシャフトと、抜け止め具と、組付けボルトからなり、それぞれのアーム部の平行状態を保ちながら、前記ガイドに前記スライダーを嵌挿し、前記インナーシャフト上に回動自在にまた抜止め具と前記ヘッド部の間で上下方向の動きを規制した前記推力ボルトの雄ねじを前記ガイドの雌ねじに螺合させ、前記組付けボルトを用いて前記スライダーと前記ガイドのスリット及び前記インナーシャフトのヘッド部横孔を挿通して組み付けることにより、前記推力ボルトをねじ込むことで、軸受け環部に圧入されたボールジョイントのジョイントピンに、圧力を加えるプレスアームと、軸受け環部とボールジョイントとの間に挿入したフォーク状アームが平行状態を保ちながら近接させてボールジョイントを抜取ることを特徴としたボールジョイント分離工具。
  2. 前記プレスアームと前記フォーク状アームをそれぞれ着脱自在とし、かつ前記プレスアームと前記フォーク状アームの取付部形状を共通し、前記プレスアームと前記フォーク状アームの入れ替えを可能としたことを特徴とする請求項1記載のボールジョイント分離工具。
  3. 前記推力ボルト回動時の反力を受け止める手段として、工具を接続する横巾上下方向に平行な二面と、上下方向に開口した角孔を有する反力受けを、前記プレスアームまたは前記フォーク状アームの一端に設けたことを特徴とする請求項2記載のボールジョイント分離工具。
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