JP3666464B2 - 近接センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、金属体を非接触で検出してオン信号を出力したり、金属体との間の距離を検出するなどの用途に使用される近接センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に近接センサは、LC共振回路を具備する高周波発振回路を検出部として、この発振回路の発振振幅の変化に基づき金属体の有無や金属体までの距離を検出するようにしている。さらに感度を高くして、より遠くの金属体を検知できるようにする必要がある場合には、差動コイル方式の近接センサが使用される。
【0003】
図12は、上記差動コイル方式の近接センサの構成を示す。このセンサの検出部は、高周波を発振する発振回路33と、この発振回路33に接続された励磁コイル30と、この励磁コイル30の前後に等距離をおいて配備された2個の検出コイル31,32とにより構成される。前記2個の検出コイル31,32は差動接続されており、それぞれのコイル31,32の出力端は処理回路34に入力される。なお、図中のFは検出対象の金属体を示す。
【0004】
上記構成において、各検出コイル31,32は励磁コイル30に対して同じ距離をおいて配備されるので、励磁コイル30から発生する磁束S(以下、これを「励磁磁束S」という。)によって、各検出コイル31,32に同じ大きさの電圧が誘起される。一方、検出領域内に金属体Fが入ると、この金属体Fに励磁磁束Sが作用して渦電流が発生する。この渦電流による磁束T(以下、「渦電流磁束T」という。)も各検出コイル31,32に作用するが、各検出コイル31,32は金属体Fに対してそれぞれ異なる距離をとるため、渦電流磁束Tによって各検出コイル31,32に誘起される電圧には差が生じることになる。
【0005】
前記処理回路34は、各検出コイル31,32間の差動電圧を検出する検波回路や、検出された電圧を所定のしきい値と比較するためのコンパレータなどを含み、このコンパレータからの出力に基づき金属体の有無を示す信号を出力する。またセンサの種類によっては、前記検出コイル31,32間の差動電圧に応じて距離を示す所定レベルの電圧信号を生成し、これを検出信号として出力する場合もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図12の構成において、金属体Fから発生する渦電流磁束Tは、励磁磁束Sに比べて格段に小さなものである。特に金属体Fが遠くにある場合には、渦電流磁束Tが検出コイル31,32に届きにくくなるため、この渦電流磁束Tによる誘起電圧は小さくなる。このため渦電流磁束T以外の要因による検出コイル31,32間の電位差を可能な限り小さくし、また各検出コイル31,32の電圧バランスをとり、かつ残留電圧を十分に小さくする必要がある。
【0007】
しかしながらコイルのインダクタンスには微小な差があるため、上記のように励磁コイル30に対する検出コイル31,32の距離を同じにしても、励磁磁束Sによって各検出コイル31,32に誘起される実際の電圧には差が生じる。処理回路34では、一般に、各検出コイル31,32による差動信号を増幅してから処理するので、励磁磁束Sによる誘起電圧の差が大きくなると、渦電流磁束Tに基づく電位差の検出が困難になる場合がある。
【0008】
また上記の構成では、検出コイル31,32と励磁コイル30との距離が近いため、コイル間の静電結合による電圧が発生する。このため検出コイル31,32間の電圧バランスをとることが難しく、残留電圧を小さくするのも困難である。また微小な渦電流磁束Tを検出するためには、検出コイル31,32を大きくする必要がある。
【0009】
さらに、単一のコイルで検出を行うタイプの近接センサであれば、コイルにE型やT型の断面のコアを使用することにより、側方や背後に励磁磁束Sが流れるのを制限して検出面側への磁束の指向性を高めることができるが、上記の差動コイル方式のセンサでは、励磁コイル30の前後両方向に検出コイル31,32を配備しなければならないため、このようなコアを用いることは不可能である。
【0010】
このように従来の差動コイル方式のセンサでは、検出部が大型化する上、構造上の制約を受け、また検出コイル間の電圧バランスをとるのが困難であるなどの欠点があり、十分な感度を得られないという問題がある。
【0011】
この発明は上記問題に着目してなされたもので、磁気抵抗素子を用いて渦電流磁束を検出するとともに、この渦電流磁束を励磁磁束の影響を受けにくいタイミングで検出するように調整することにより、近接センサの高感度化を実現することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかる近接センサは、検出対象の金属体に励磁磁束を作用させるための励磁コイルと、前記励磁コイルに所定の位置関係をもって配置される磁気インピーダンス素子と、前記励磁コイルおよび磁気インピーダンス素子にそれぞれ接続される高周波発振回路と、前記励磁コイルに流れる電流が反転する時点を基準に磁気インピーダンス素子からの出力をサンプリングして金属体検出のための信号処理を実行する信号処理部とを具備する。
【0013】
磁気インピーダンス素子(以下、「MI素子」という。)には、高周波電流を通電している状態下で、外部磁界により透磁率が変化し、その影響によってインピーダンスが大きく変化するという特性がある。この発明にかかる近接センサは、前記した検出コイルに代えて、このMI素子を渦電流磁束の検出手段として使用するようにしたものである。
【0014】
前記MI素子は、非磁性の基板上に一体化された薄膜素子であり、この素子および基板は、検出コイルに比べて格段に小さくすることができる。したがって、たとえば、励磁コイルの内側にMI素子の基板を配置することができる。ただしMI素子の配置位置はこれに限らず、励磁コイルに隣接あるいは励磁コイルの前方に配置することもできる。
【0015】
MI素子は、その長手方向を近接センサの検出面(たとえば、近接センサ本体を構成するケース体の端面となる。)に直交させた状態、言い換えれば、検査対象の金属体からの渦電流磁束がセンサの検出面に作用する方向にMI素子の長手方向を対応させた状態で配置するのが望ましい。これは、MI素子では、長手方向における磁気への感度が高いためである。
【0016】
高周波発振回路は、励磁コイル,MI素子にそれぞれ個別に設けられる。これらの高周波発振回路は、それぞれ励磁コイル,MI素子に高周波電流を流すためのものである。信号処理部は、MI素子のインピーダンス変化を電圧として取り出すための負荷抵抗,この電圧信号の検波回路,前記励磁コイルに与えられる高周波電流の極性変化を検出しつつ、所定のタイミングでサンプリングパルスを発生させるタイミング制御回路,前記サンプリングパルスに応じて検波回路からの出力を取り込むゲート回路などを含むものとすることができる。さらに処理部には、サンプリングされた信号を増幅または積分する回路や、この回路による処理後の信号を所定のしきい値と比較するコンパレータなどを含ませることができる。または、増幅後の信号を距離を示す電圧信号に変換して出力する回路を配備することもできる。よって、上記した「金属体検出のための信号処理」とは、金属体の有無または金属体までの距離の少なくともいずれか一方を実行するための信号処理ということができる。
また信号処理部にマイクロプロセッサを組み込んで、上記各回路による主要な処理をディジタル信号処理として実行することもできる。
【0017】
上記構成の近接センサによれば、励磁コイル,MI素子の双方にそれぞれ高周波電流が流れるので、励磁磁束を発生させた上で、この励磁磁束の作用を受けた金属体からの渦電流磁束をMI素子に作用させて、その磁束の大きさに応じたインピーダンスの変化を生じさせることが可能となる。
ただしMI素子には、励磁コイルからの励磁磁束も作用するので、この励磁磁束による影響の小さい信号を取り出して処理するのが望ましい。この発明の信号処理部は、励磁コイルに流れる電流が反転する時点を基準としてMI素子からの出力をサンプリングするので、励磁磁束の大きさがゼロまたはゼロに近いときのMI素子からの出力を用いて金属体の検出処理を行うことができる。よって励磁磁束の影響の少ない信号をサンプリングして高精度の検出処理を行うことができる。
【0018】
またMI素子およびこの素子が搭載される基板は薄形であるので、センサ本体を小型化することができる。また励磁コイルの背後に他のコイルなどを配備しなくともよいから、励磁磁束の指向性を高めるためにフェライトコアを使用することができ、感度を高めることが可能となる。
【0019】
上記近接センサの好ましい態様では、励磁磁束を金属体に作用させたとき、この金属体に生じる渦電流磁束のピークと前記励磁コイルに流れる電流がゼロになる時点とのずれが所定時間内になるように、前記励磁コイルに接続される高周波発振回路の発振周波数を調整する。
【0020】
一般に渦電流磁束には、励磁磁束に対し、その励磁磁束の周波数に応じた角度だけ位相が遅れるという特性がある。ここで前記発振周波数の調整によって、この位相の差が90度になるようにすると、励磁コイルに流れる電流がゼロとなる時点と渦電流磁束にピークが現れる時点とが一致する。したがってこの時点でのMI素子からの出力をサンプリングすることにより、励磁磁束の影響を全く受けない、渦電流磁束のみの作用によるインピーダンスの変化を検出することができる。また渦電流磁束による信号成分を、最も効率良くサンプリングすることができる。
【0021】
よって上記の態様によれば、90度に近似する位相差が得られるように励磁コイル用の発振周波数を調整し、励磁コイルに流れる電流が反転する時点を基準にMI素子からの出力をサンプリングするので、励磁磁束の影響を大幅に除去することができる。また渦電流磁束による信号成分を効率良くサンプリングして高精度の検出処理を行うことができる。
なお、上記の励磁磁束と渦電流磁束との位相の関係は、金属体の透磁率や導電率によっても変化するので、上記態様の近接センサには、さらに励磁コイル用の発振周波数を調整する手段を設けてもよい。
【0022】
さらに好ましい態様の近接センサでは、前記MI素子の近傍には、この素子に対して所定のバイアス磁界を設定するための磁石またはコイルが配備される。また励磁磁束を金属体に作用させたとき、励磁コイルに流れる電流の極性が反転する時点を中心とする所定期間における極性が一定となるような渦電流磁束が前記金属体から発生するように、励磁コイルに接続される高周波発振回路の発振周波数が調整される。さらに信号処理部は、前記期間内におけるMI素子からの出力信号をサンプリングして積分した信号を用いて金属体の検出処理を実行するように構成される。
【0023】
上記の態様によれば、MI素子にバイアス磁界をかけることにより、MI素子に渦電流磁束が作用してインピーダンスが変化した場合に、作用した磁束の極性に応じた正または負の電圧信号を取り出すことが可能となる。
また上記の態様によれば、励磁磁束がゼロとなる時点を中心にする期間においては、渦電流磁束が正または負のいずれかの極性を持つ一方で、励磁磁束は正負両極に対してそれぞれ同じ割合で同じ量ずつ変化するようになる。この態様では、上記期間内のMI素子からの出力をサンプリングして積分するので、励磁磁束については、正負の信号成分が相殺されて積分結果がゼロになり、また渦電流磁束については、期間内の信号成分が累積されて大きな値を得ることができる。したがってこの積分結果を用いて金属体の検出処理を行うことにより、励磁磁束の影響を殆ど受けることなく、高精度の検出処理を行うことができる。
【0024】
なお上記の態様によれば、各サンプリング期間における積分結果には、正負の極性が交互に現れるが、極性は考慮せずに、積分結果の大きさに基づいて金属体の有無や距離を判別すれば良い。また積分結果が負の場合は正に反転させた上で、数回分のサンプリング期間における積分結果を順に累積し、その累積値を用いて上記の判別処理を行うようにしてもよい。
【0025】
さらにこの発明では、検出対象の金属体に励磁磁束を作用させるための励磁コイルと、前記励磁コイルを挟んで対称な位置に配備される一対のMI素子と、前記励磁コイルに接続される第1の高周波発振回路と、各MI素子に接続される第2の高周波発振回路と、前記励磁コイルに流れる電流が反転する時点を基準に各MI素子からの出力の差分信号をサンプリングして金属体検出のための信号処理を実行する信号処理部とを具備する近接センサを提供する。
【0026】
上記構成において、各MI素子は、前記した差動コイル方式の近接センサにおける検出コイルと同様に、検出対象の金属体に対する距離が異なる位置に配備される。したがってこれらMI素子からの出力の差分をとることにより、検出対象の金属体の位置に応じてレベルが異なる信号を得ることができる。ここで信号処理部は、励磁コイルに流れる電流が反転する時点を基準に各MI素子からの出力の差分信号をサンプリングするので、励磁磁束による影響の少ない信号をサンプリングすることができる。
【0027】
また前記したように、MI素子はコイルよりも小さな薄膜素子として形成されるので、励磁コイルに対して十分な距離をおいて配置することができ、コイルとの間の静電容量を小さくすることができる。またMI素子は一定のスペックに基づいて製造されるので、個々のMI素子間の出力のばらつきは小さくなる。よって前記差分信号における個体差の成分を小さくすることができ、精度の高い検出処理を行うことができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施例にかかる近接センサの構成を示す。
この近接センサは、励磁コイル2と、MI素子1とによる検出部を具備する。励磁コイル2,MI素子1は、それぞれ高周波を発振する発振回路5,6(図中、「励磁用発振回路5」,「MI駆動用発振回路6」として示す。)に接続される。励磁コイル2は、センサの検出面(図示しないセンサ本体を構成するケース体の端面に相当する。)に対して垂直となる方向に磁束が鎖交するように配備される。
【0029】
MI素子1は、ガラス板などの非磁性の基板3上に形成される。この基板3は、MI素子1の長さ方向を検出対象の渦電流磁束Tの方向に沿わせた状態で、励磁コイル2の内側に挿入される。
【0030】
前記励磁用発振回路5,MI駆動用発振回路6は、この近接センサの信号処理回路4に含まれる。このほか信号処理回路4には、MI素子1からの出力を処理して金属体Fの有無を示す信号(以下、「物体有無信号」という。)を出力するための構成として、タイミング制御回路7,検波回路8,ゲート回路9,正負サンプルホールド回路10,差動増幅回路11,コンパレータ12,出力回路13などが組み込まれる。
【0031】
前記励磁用発振回路5には、励磁コイル2への高周波電流(以下、「励磁電流」という。)の位相を電圧として検出するための抵抗14が接続される。この抵抗14により検出された電圧信号はタイミング制御回路7に入力される。このタイミング制御回路7には、前記電圧信号の極性を判別するための微分回路や、この極性の変化に基づきサンプリングパルスを生成するタイミング発生回路などが含まれる。
【0032】
前記検波回路8は、MI素子1の出力端に接続される。この接続経路には、MI素子1の基準のインピーダンスに相当する負荷抵抗15がかけられる。この抵抗15による分圧の作用によって、検波回路8には、MI素子1のインピーダンスの変化に相当する電圧が与えられる。検波回路8は、この電圧信号を振幅変調し、処理後の信号をゲート回路9へと出力する。
【0033】
この実施例のタイミング制御回路7は、前記励磁電流のレベルがゼロとなる時点を中心とし、この電流の極性が正から負、または負から正へと反転する所定期間内に、極性が変化する方向とは反対の極性を持たせたサンプリングパルスを生成して出力する。すなわち励磁電流が正から負に変化する場合には正極のパルスが、励磁電流が負から正に変換する場合には負極のパルスが、それぞれ生成されるので、正負の各サンプリングパルスが交互に出力されることになる。
【0034】
前記サンプリングパルスは、ゲート回路9および正負サンプルホールド回路10に与えられる。ゲート回路9は、サンプリングパルスに応じて検波回路8からの出力を正負サンプルホールド回路10へと通過させる。
正負サンプルホールド回路10には、正極のサンプリングパルスに応じて動作する回路と負極のサンプリングパルスに応じて動作する回路とが含まれる。これらの回路には積分回路が含まれており、前記ゲート回路9を通過した信号をサンプリングパルスに応じて積分した後、その積分結果を差動増幅回路11に出力する。なお、この実施例の正負サンプルホールド回路10は、前記積分結果をつぎの同極のサンプリングパルスが与えられるまで保持しながら、そのホールドした信号を差動増幅回路11に出力するようにしている。
【0035】
差動増幅回路11では、正極のサンプリングパルスに対応する信号を+側入力端子に、負極のサンプリングパルスに対応する信号を−側入力端子に、それぞれ入力して、両信号間の差動増幅処理を実行する。コンパレータ12は、この差動増幅信号を取り込んで、これを所定のしきい値と比較する。さらに出力回路13は、コンパレータ12の比較出力を取り込んで、これを物体有無信号として外部に出力する。
【0036】
図2は、前記励磁コイル2から発生した励磁磁束Sと、金属体Fから発生した渦電流磁束Tとの関係を示す。渦電流磁束Tは、励磁磁束Sの作用を受けて発生するため、励磁磁束Sに対して所定時間t分の位相遅れが生じる。
【0037】
図3は、励磁磁束S,渦電流磁束T、および両磁束S,T間に生じる位相の差との関係を、励磁磁束Sを基準とした電気角によりベクトル表示したものである。図中のベクトルAは励磁磁束Sに、ベクトルBは渦電流磁束Tに、それぞれ相当する。またベクトルCは、これらベクトルA,Bの合成ベクトル、すなわち近接センサの検出面に作用する磁束に相当する。
【0038】
図中の角度θは、渦電流磁束Tの励磁磁束Sに対する位相のずれ時間tに対応する。この位相の差θは、励磁磁束Sの周波数(以下、「励磁周波数」という。),および金属Fの透磁率ならびに導電率に応じて変化する。ここで励磁周波数fを0から∞まで変化させるものとすると、ベクトルB,Cの先端は、図中の破線X,Yで示す軌跡のように変化する。なお、図中、Xは磁性金属について得られる軌跡であり、Yは非磁性金属について得られる軌跡である。いずれの軌跡においても、前記ベクトルAに対するベクトルBの角度θ、すなわち励磁磁束Sに対する渦電流磁束Tの位相遅れが90度になるような周波数fが存在する。
【0039】
上記位相の差θが90度になる状態では、励磁磁束Sがゼロとなる時点と渦電流磁束Tがピークをとる時点とが一致することになる。すなわち励磁磁束Sがゼロとなる時点では、MI素子1には励磁磁束Sが作用しない一方、周期の中で最もレベルの大きい渦電流磁束Tが作用することになる。したがってこの時点のMI素子1からは、渦電流磁束Tの作用によるインピーダンス変化を最も効率良く、かつ励磁コイルによる影響を受けない状態で取り出すことが可能となる。
渦電流磁束Tと励磁磁束Sとの位相の関係は、金属体Fの種類や励磁周波数が変わらない限り一定である。したがって、位相差θが90度になるような励磁周波数を選択し、励磁磁束Sの極性が反転するタイミングに沿ってMI素子1からの出力をサンプリングするようにすれば、励磁磁束Sの影響を受けずに高精度の信号処理を行うことができる。
【0040】
前記図1に示した近接スイッチは、上記の原理を適用してなされたもので、励磁用発振回路5は、あらかじめ計測した結果に基づき、渦電流磁束Tに対する位相差θが90度に近似する角度になるような周波数で発振するように設定される。なお、この発振周波数を複数段階に調整できるようにすれば、検出対象の金属体Fの種類に応じて、励磁周波数を調整することができる。
【0041】
図4は、図1の近接スイッチの動作を示す。
図中、(a)はタイミング制御回路7からのサンプリングパルスの出力タイミングを示す。この実施例では、前記したように、励磁磁束Sがゼロとなる時点を中心とする所定期間をサンプリング期間として、この期間に極性が変化する方向とは反対の極性を持つサンプルパルスを出力する。このサンプリング期間において、励磁磁束Sは正負の両極に対してほぼ同じ量ずつ変化する。一方、各サンプリング期間における渦電流磁束Tは、励磁磁束Sより約90度遅れの位相を持つため、サンプリングパルスと同じ極性を持つことになる。
【0042】
図4(b)は、前記正負サンプルホールド回路10の信号出力のタイミングを示すもので、正負のサンプルパルスに対応する積分結果が、つぎに同極のサンプリングパルスが与えられるまで維持されつつ、出力されている。
【0043】
正負サンプルホールド回路10では、サンプリング期間内のMI素子1からの出力を積分処理するから、正負の各極に同じ量ずつ変化する励磁磁束Sは相殺される一方、サンプリングパルスと同極の極性を持つ渦電流磁束Tのレベルは累積される。よって正負サンプルホールド回路10からは、サンプリング期間における渦電流磁束Tの作用によるインピーダンスの変化を高精度に反映した信号が出力されることになる。また各サンプリング期間でのMI素子1からの出力は、サンプリングパルスと同じ極性を持つから、その積分処理結果を示す信号も、同様の極性を持つものとなる。
【0044】
図4(c)は差動増幅回路11からの信号出力のタイミングを、図4(d)は出力回路13からの物体有無信号の変化の状態を、それぞれ示す。
前記したように、差動増幅回路11は、正極のサンプリングパルスに対応する信号を+側の入力端子に、負極のサンプリングパルスに対応する信号を−側入力端子に、それぞれ入力するので、負極のサンプリングパルスに対応する負の積分結果は正極に反転して、正の積分結果に累積されることになる。したがって金属体Fの接近によって渦電流磁束Tが大きくなると、差動増幅出力も大きな値をとるようになる。この差動増幅出力のレベルがコンパレータ12の比較レベルを越えると、コンパレータ12の出力レベルはオン状態となる。これに対応して出力回路13からの物体有無信号も、「金属体あり」を示すオン状態に設定される。
【0045】
図4の例では、渦電流磁束Tが徐々に大きくなっており、各周期における正負の各ピークを中心とする信号がサンプリングされて、前記積分処理および差動増幅処理が行われた結果、図中、3周期目の正極の信号のサンプルホールド出力がなされた時点で差動増幅回路11から前記コンパレータ12の比較レベルを上回るレベルの信号が出力される。この信号レベルの変化に応じて、物体有無信号がオン状態になる。
【0046】
このように図1の実施例では、従来の差動コイル方式のセンサでの検出コイルに代えて、薄く小型のMI素子1を使用するので、センサを小型化することができる。またこの実施例によれば、励磁コイル2の後方に他のコイルなどを設ける必要がないので、フェライトコアを用いて励磁コイル2の側方や後方への磁束の流れを制限することができ、励磁磁束Sの指向性を高めて感度を向上することができる。しかも上記した励磁周波数の調整と信号処理とにより、励磁磁束Sの影響を受けにくい信号を効率良くサンプリングして、高精度の検出処理を行うことができる。
【0047】
なお、上記実施例では、MI素子1を励磁コイル2の内側に配置するようにしたが、これに限らず、図5,6に示すような配置関係を設定してもよい。
【0048】
図5,6の例では、MI素子1と励磁コイル2とは、並列に配置される。図5の例では、MI素子1と励磁コイル2との間での向きの関係については、第1の実施例と同様である。これに対し、図6の例では、励磁コイル2を幅方向が長い構成にして、その端面をMI素子1に対向させた状態で配置する。このような配置により、MI素子1に対する励磁磁束Sは、MI素子1の幅方向に沿う方向から作用するようになる。MI素子1の幅方向における磁気への感度は、長手方向における感度よりもはるかに弱くなるので、MI素子1への励磁磁束Sの作用による影響を小さくすることができる。
なお、図6のような配置関係を設定する場合に、図7に示すように、励磁コイル2に断面I型のコア16を使用すれば、MI素子1に及ぼす励磁磁束Sの影響をさらに小さくすることができる。
【0049】
上記図5,6の例についても、信号処理部4については、図1と同様に構成することができる。
ところで、MI素子1の外部磁界に対するインピーダンスは、図8(1)(2)に示すように、外部磁界がゼロまたはゼロに近い時点を最大として、磁界が強くなるにつれて小さくなるという特性がある。前記図1の構成では、正負サンプルホールド回路10に正極,負極の各極性を持つ信号を入力する都合上、MI素子1には所定のバイアス磁界をかける必要がある。すなわち図8(1)(2)において、インピーダンスが略直線状に変化する領域rの中間地点(図中、点pで示す。)付近の磁界をバイアス磁界として設定するとともに、このバイアス磁界に対応するインピーダンスを前記抵抗15に持たせるようにすれば、MI素子1のインピーダンス変化を正負両極にふれる電圧信号として検出することができる。
【0050】
図9は、前記図1の構成の近接センサの検出部に、バイアス磁界用のコイル17を設けた例を示す。図9(1)の例では、前記励磁コイル2の内側に、励磁コイル2と同じ方向を向けてバイアス磁界用のコイル17を配備し、さらにこのコイル17の内側にMI素子1を配備する。
【0051】
図9(2)の例でも、励磁コイル2の内側にバイアス磁界用のコイル17が配備されるが、このコイル17は、励磁コイル2とは直交する方向に向けられる。またMI素子1は、このコイル17の一側方に配備される。
【0052】
図9(1)(2)のいずれにおいても、バイアス磁界用のコイル17は、図示しない直流電源に接続されており、MI素子1に対して正極側のバイアス磁界がかけられる。なおバイアス磁界をかける手段はコイルに限らず、MI素子1の近傍に永久磁石を配備してもよい。
【0053】
図10,11は、この発明にかかる他の近接センサの構成を示す。
この実施例の近接センサでは、図1の実施例と同様に配置された励磁コイル2の前後にそれぞれMI素子1a,1bが配置される。これら一対のMI素子1a,1bは、励磁コイル2に対して同じ距離をおいて配備され、また同じMI駆動用発振回路6から高周波電流の供給を受ける。
【0054】
この実施例の信号処理部4には、各MI素子1a,1bには、それぞれ基準インピーダンスに相当する負荷抵抗15a,15bと検波回路8a,8bとが設けられる。また各検波回路8a,8bからの出力の差分をとるための差動増幅回路18や、この差動増幅出力をさらに増幅される増幅回路19などが配備される。なお、信号処理部4内の他の回路については図1と同様であり、また図1と同様の動きをするように設定されているので、説明は省略する。
【0055】
上記構成において、ゲート回路9には、増幅回路19を介した差動増幅出力、すなわち各MI素子1a,1bからの出力の差に応じた信号が与えられる。よって正負サンプルホールド回路10により、各サンプリング期間にそれぞれのMI素子1a,1bに作用した渦電流の大きさの差に相当する電圧が積分され、さらに差動増幅回路11によりこの積分結果を累積した電圧信号が出力される。
【0056】
よって検出対象の金属体Fによって、各MI素子1a,1bからの出力レベルに差が生じると、上記の各回路によりこの差が検出されてコンパレータ12の比較出力がオン状態となり、出力回路13からの物体有無信号もオン状態に設定されることになる。
【0057】
MI素子1a,1bは、コイルよりも小さな薄膜素子として形成されるので、図10のように配置しても、励磁コイル2と各MI素子1との間には十分な距離をおくことができる。このため、各MI素子1と励磁コイル2との間の静電容量を小さくすることができる。またMI素子1は、一定のスペックに基づいて製造されるので、個々の素子間の出力のばらつきも小さくすることができる。よってMI素子1の個体差や励磁コイル2との間に生じる静電容量のばらつきによるノイズを小さくして、金属体Fからの渦電流磁束Tに起因する出力差を精度良くサンプリングできるので、従来の差動コイル方式の近接センサよりも、はるかに精度の高い検出処理を行うことができる。
【0058】
【発明の効果】
この発明では、励磁磁束を金属体に作用させることにより生じる渦電流磁束を検出するための手段として磁気インピーダンス素子を使用するとともに、励磁コイルに流れる電流が反転する時点を基準に磁気インピーダンス素子からの出力をサンプリングして金属体検出のための信号処理を実行するようにしたから、励磁磁束の影響が少なく、かつ渦電流磁束の大きさを高精度に反映した信号を用いた検出処理を行うことができる。よって金属体に対する感度が大幅に向上され、検出可能な金属体までの距離を長くすることができ、高性能の近接センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例にかかる近接センサの検出部および信号処理部の構成を示す図である。
【図2】励磁磁束と渦電流磁束との位相の関係を説明する図である。
【図3】励磁磁束と渦電流磁束との位相の関係をベクトルにより説明する図である。
【図4】金属体検出のための信号処理の具体例を示すタイミングチャートである。
【図5】励磁コイルとMI素子との他の配置例を示す説明図である。
【図6】励磁コイルとMI素子との他の配置例を示す説明図である。
【図7】図6の励磁コイルにコアを使用した例を示す説明図である。
【図8】MI素子におけるインピーダンス変化の特性を示す説明図である。
【図9】バイアス磁界用のコイルの配置例を示す説明図である。
【図10】検出部に一対のMI素子を使用する場合の具体例を示す説明図である。
【図11】図10の検出部を用いた近接センサの構成を示すブロック図である。
【図12】従来の差動コイル方式の近接センサの構成を示す説明図である。
【符号の説明】
1 MI素子
2 励磁コイル
4 信号処理部
5 励磁用発振回路
6 MI駆動用発信回路
7 タイミング制御回路
9 ゲート回路
10 正負サンプルホールド回路
17 バイアス磁界用コイル
S 励磁磁束
T 渦電流磁束
F 金属体

Claims (4)

  1. 検出対象の金属体に励磁磁束を作用させるための励磁コイルと、
    前記励磁コイルに所定の位置関係をもって配置される磁気インピーダンス素子と、
    前記励磁コイルおよび磁気インピーダンス素子にそれぞれ接続される高周波発振回路と、
    前記励磁コイルに流れる電流が反転する時点を基準に磁気インピーダンス素子からの出力をサンプリングして金属体検出のための信号処理を実行する信号処理部とを具備して成る近接センサ。
  2. 前記励磁磁束を金属体に作用させたとき、この金属体に生じる渦電流磁束のピークと前記励磁コイルに流れる電流がゼロになる時点とのずれが所定の時間内になるように、励磁コイルに接続される高周波発振回路の発振周波数が調整されて成る請求項1に記載された近接センサ。
  3. 前記磁気インピーダンス素子の近傍には、このインピーダンス素子に対して所定のバイアス磁界を設定するための磁石またはコイルが配備されており、
    前記励磁磁束を金属体に作用させたとき、励磁コイルに流れる電流がゼロとなる時点を中心とする所定期間における極性が一定となるような渦電流磁束が前記金属体から発生するように、励磁コイルに接続される高周波発振回路の発振周波数が調整されており、
    前記信号処理部は、前記期間内における磁気インピーダンス素子からの出力をサンプリングして積分した信号を用いて金属体の検出処理を実行する請求項1または2に記載された近接センサ。
  4. 検出対象の金属体に励磁磁束を作用させるための励磁コイルと、
    前記励磁コイルを挟んで対称な位置に配備される一対の磁気インピーダンス素子と、
    前記励磁コイルに接続される第1の高周波発振回路と、
    各磁気インピーダンス素子に接続される第2の高周波発振回路と、
    前記励磁コイルに流れる電流が反転する時点を基準に各磁気インピーダンス素子からの出力の差分信号をサンプリングして金属体検出のための信号処理を実行する信号処理部とを具備して成る近接センサ。
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