JP3665698B2 - 慢性関節リウマチ用マーカーとしての使用および慢性関節リウマチ診断用免疫試薬 - Google Patents

慢性関節リウマチ用マーカーとしての使用および慢性関節リウマチ診断用免疫試薬 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のタンパク質に対する抗体の慢性関節リウマチ用マーカーとしての使用および慢性関節リウマチの診断用試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
慢性関節リウマチ(以下RAと略すこともある。)は全人口の約1%が羅患している原因不明の全身性自己免疫疾患である。病態の特徴は、関節滑膜の増殖を伴う羅患関節の破壊であり、適切な治療を実施しないと、疼痛、運動機能障害により日常生活に支障を来す。RAの診断はアメリカリウマチ学会の基準(1987年改訂版)を参考にして、血液マーカー、X線所見、組織学的所見、臨床経過を勘案し総合的に行われる。
【0003】
血液マーカーの測定は自動化されており、多検体を迅速かつ正確に検査することができ、臨床検査に適した方法といえる。RAの血液マーカーとしてはリウマトイド因子(RF)、赤血球沈降速度(ESR)、C反応性タンパク質(CRP)がよく測定される。RFは変性した免疫グロブリンG(IgG)に対する抗体でありRA患者の70〜80%に認められるが、その他の自己免疫疾患でも出現し、さらに健常人の2〜5%も陽性となる。ESRとCRPは炎症のマーカーであり、RA以外の炎症を伴う疾患でも高値となる。これまでのところRAに特異的な血液マーカーは存在しないため、血液マーカーによりRAを診断することは不可能であった。
【0004】
X線所見、組織学的所見は、関節部のX線写真や関節組織切片を観察し、病状を判断するもので、検査に熟練と時間を要する。また、検査する者の主観が入るため精度にばらつきが出る恐れがある。
【0005】
【発明の解決しようとする課題】
このように、従来のRAの診断法は煩雑で時間がかかり、また、精度にも問題を有していた。従って、本発明の目的は上記問題点を解決する新たなRA診断用マーカーを提供することにある。さらに、臨床検査に被検体として利用される体液中に存在し、かつRA発症患者と健常者の間で何らかの有意差を呈する上記RA診断用マーカーを検出する試薬を開発することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等はRAでは関節部が破壊されるために骨芽細胞より細胞成分が放出され、これらの成分に対する抗体がRA患者に特異的に存在すると考え、鋭意研究を行ってきたところ、抗アルドラーゼA抗体がRA患者に特異的に存在することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、抗アルドラーゼA抗体の慢性関節リウマチ用マーカーとしての使用である。
【0008】
また、別の発明は、アルドラーゼA又は変性されたアルドラーゼAを含んでなり、被検体中に存在する抗アルドラーゼA抗体を検出することを特徴とする慢性関節リウマチ診断用免疫試薬である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で慢性関節リウマチ(RA)用マーカーとして使用される抗アルドラーゼA抗体とは、アルドラーゼA、即ち、解糖系の酵素であるD-フルクトース-1,6-二リン酸 D-グリセルアルデヒド-3-リン酸 リアーゼ A(EC 4.1.2.13)に対する抗体であり、アルドラーゼAおよび変性されたアルドラーゼAを認識し、結合するという性質を有している抗体であれば特に限定されない。
【0010】
このような抗アルドラーゼA抗体は、後述する実施例に示されるようにRA患者体液中に特異的に存在することが本発明者等によって確認されたことからRA用マーカーとなりうる。RA患者の体液中に存在する抗アルドラーゼA抗体としては、全てのクラス、即ち、免疫グロブリンG(IgG)、免疫グロブリンM(IgM)、免疫グロブリンA(IgA)、免疫グロブリンD(IgD)、免疫グロブリンE(IgE)が挙げられるが、血中濃度の高いIgGが好適に用いられる。
【0011】
後述する実施例にも示されるように、RA患者の体液中に存在する抗アルドラーゼA抗体の量は健常者、その他の自己免疫疾患や関節炎を呈する疾患に比べて有意に高かったことから、抗アルドラーゼA抗体は臨床検査の領域において、RAのマーカーとなりうる。即ち、体液、特に血清または血漿中の抗アルドラーゼA抗体の量を測定することにより、RAの診断が可能となる。体液中の抗アルドラーゼA抗体を測定する方法としては、後述するアルドラーゼAと抗アルドラーゼA抗体の抗原抗体反応を利用した公知の方法により実施することができる。
【0012】
また、抗アルドラーゼA抗体をRA用マーカーとして使用することにより、RA診断試薬或いはRA治療のための医薬品の開発の過程においてこれらの性能や効果を評価したりすることもできる。
【0013】
次に本発明のRA診断用免疫試薬について説明する。
【0014】
本発明のRA診断用免疫試薬は、アルドラーゼA又は変性されたアルドラーゼAがRA患者の体液中に存在する抗アルドラーゼA抗体と抗原抗体反応を起こすことを利用し、当該抗アルドラーゼA抗体を検出できる方法であればその形態は特に限定されないが、アルドラーゼA又は変性されたアルドラーゼAが不溶性担体に担持された形態であるのが好適である。
【0015】
このとき、使用できる不溶性担体とは、上記抗原抗体反応の反応系で溶媒に不溶な担体であれば、その材質及び形状は特に制限されず、公知の不溶性担体が使用できる。即ち、不溶性担体の形状としては、使用目的に応じて適宜の形状を選択すれば良く、例えば、テストプレート状、ビーズ状、球状、ディスク状、チューブ状、フィルター状等が挙げられる。また、その材質としては、通常の免疫測定法用担体として用いられるもの、例えば、プロピレン、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル等の合成樹脂、又は、これらに公知の方法によりスルホン基、アミノ基などの反応性官能基を導入したもの、ガラス、多糖類又はその誘導体、シリカゲル、多孔性セラミックス、金属酸化物、赤血球等が例示できる。
【0016】
また、不溶性担体へのアルドラーゼA又は変性されたアルドラーゼAの固定化法は物理的吸着法、共有結合法、イオン結合法、架橋法等の公知の方法が何ら制限無く使用できる。
【0017】
この様なアルドラーゼA又は変性されたアルドラーゼAが不溶性担体に担持された形態の本発明の免疫試薬の具体的な態様を例示すれば、定性用の試薬としては、ラテックス凝集試薬、マイクロタイター試薬等を、定量用の試薬としては、ラジオイムノアッセイ試薬、エンザイムイムノアッセイ試薬、蛍光イムノアッセイ試薬、化学発光イムノアッセイ試薬、ラテックスイムノアッセイ試薬等をそれぞれ挙げることができる。これらいずれの態様においても本発明のRA診断用免疫試薬を被検体と接触させ、抗アルドラーゼA抗体と担持されたアルドラーゼAとの抗原抗体反応を検出することによりRAの診断を行うことができる。
【0018】
本発明の免疫試薬中に含まれるアルドラーゼAとしてはRA患者体液中に存在する抗アルドラーゼA抗体が認識し結合できるものであれば、特に制限無く各動物種由来のアルドラーゼA、遺伝子組換え技術により製造されるアルドラーゼA等およびこれらを変性させたものが使用できる。アルドラーゼAの製造方法としては、例えば、動物組織や培養細胞からの抽出精製、遺伝子組換え技術による微生物、培養細胞による合成、または化学合成等が挙げられる。また、RA患者体液中に存在する抗アルドラーゼA抗体が認識し結合できるものであれば、アルドラーゼAタンパク質の他に、遺伝子組換え技術や化学合成により合成されたアルドラーゼAの部分ペプチド、さらに、アルドラーゼAを化学的、酵素的に切断して得られるアルドラーゼAの部分ペプチドも使用できる。入手しやすさと反応性という観点から、ヒト組織または培養細胞から、例えばアチーブス・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジックス(Arch. Biochem. Biophys.)、228巻、342〜352頁(1984年)記載の方法に従って抽出精製されたヒトアルドラーゼA、広く市販されているウサギ筋肉由来アルドラーゼA、またはこれらを変性させたものが好適に使用できる。
【0019】
RA患者の体液中に存在する抗アルドラーゼA抗体は変性、未変性を問わずにアルドラーゼAを認識するが、変性したアルドラーゼAとより強く反応する性質を持っているので、変性されたアルドラーゼAを使用すればより感度良く抗アルドラーゼA抗体を検出することができる。
【0020】
アルドラーゼAを変性させる方法としては、酵素タンパク質の立体構造を破壊する公知の方法、即ち、熱、酸、アルカリ、イオン系界面活性剤、変性剤(尿素、塩酸グアニジン等)等による処理により実施することができる。これら各変性方法について具体的に説明すると、熱変性の方法としては、例えばアルドラーゼAを約40〜100℃で約1〜60分間加熱することにより行うことができる。また、酸又はアルカリによる変性の場合には、それぞれ例えば約0.01〜1Mの塩酸水溶液又は約0.01〜1Mの水酸化ナトリウム水溶液中でアルドラーゼAを約10分〜5時間放置することにより行うことができる。また、イオン系界面活性剤或いは変性剤を使用する場合には、例えば約0.1〜10重量%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液、約1〜9Mの尿素水溶液、或いは約1〜8Mの塩酸グアニジン水溶液中でアルドラーゼAを約10分〜5時間放置することにより行うことができる。これらの変性方法はそれぞれ単独あるいは複数の方法を組み合わせて行っても良い。
【0021】
これらの方法で変性されたアルドラーゼAを不溶性担体に担持させるに際しては、担体への吸着を阻害しないように、担持時の溶液のpHを中性付近に制御し、過剰のイオン系界面活性剤、変性剤を透析やゲルろ過等により除去してから行うのが好適である。また、変性されたアルドラーゼAを不溶性担体に均一に担持させるためには担持時に変性されたアルドラーゼAが不溶化しないようにすることが重要であり、そのために変性されたアルドラーゼAの溶液に還元剤及び/又は非イオン系界面活性剤を約0.0001〜1重量%程度添加するのが好適である。この時使用する還元剤としては2−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール等が挙げられ、非イオン系界面活性剤としてはトリトンX−100、ツイーン20等が挙げられる。
【0022】
上記のようにして得られた本発明の免疫試薬を被検体と接触させると、該被検体中に抗アルドラーゼA抗体が存在する場合には、該抗アルドラーゼA抗体を検出することができる。
【0023】
ここで、使用する被検体とは、抗アルドラーゼA抗体を含有する可能性がある溶液であれば特に限定されないが、血清、血漿等の体液が好適に使用される。
【0024】
本発明の免疫試薬を用いて被検体中の抗アルドラーゼA抗体を検出する方法としては、被検体中の抗アルドラーゼA抗体と本発明の免疫試薬に含まれるアルドラーゼA又は変性されたアルドラーゼAとの抗原抗体反応に基づく物理量の変化を検知することができる方法が何ら制限無く採用できる。例えば、いわゆる標識免疫測定試薬で行われているように標識物質を利用して発色、発光、蛍光として上記抗原抗体反応を検出する方法、いわゆる免疫学的凝集試薬で行われているように不溶性担体の凝集として目視や濁度により上記抗原抗体反応を検出する方法等、抗原抗体反応を利用した公知の免疫学的診断試薬において一般的に採用されている検出方法が採用できる。
【0025】
具体的には、本願発明の免疫試薬が標識免疫測定試薬である場合には、標識剤として放射性ヨード、放射性炭素等放射性同位体元素或いはフルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミン等の蛍光色素を使用して、放射活性或いは蛍光強度を測定するか、又は標識剤としてアルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ等の酵素を用い酵素反応に基づく発色、蛍光、化学発光を測定すればよい。酵素反応の基質は、一般的に用いられている公知の化合物が特に制限無く使用できる。例えば、標識酵素としてアルカリフォスファターゼを使用した場合には、酵素反応の基質としてp-ニトロフェニルリン酸、4-メチルウンベリフェリルリン酸、ジオキセタン誘導体等を用いることができ、標識酵素量はそれぞれ酵素反応による発色(比色)、蛍光、化学発光により測定できる。また、標識酵素としてパーオキシダーゼを使用した場合は、酵素反応の基質として例えば、2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾ-チアゾリン-6-スルホン酸)、ルミノール誘導体等を基質として使用でき、標識酵素量はそれぞれ比色、化学発光により測定できる。
【0026】
本願発明の免疫試薬が標識免疫測定試薬である場合、該試薬を用いた測定方法は、通常のラジオイムノアッセイ(RIA)法や、ELISA法、ウェスタンブロッティング法、ドットブロッティング法等の酵素免疫測定(EIA)法等に従うことができ、例えば次のようにして行うことができる。即ち、不溶性担体にアルドラーゼAを0.01〜1000μg/cm2の割合で坦持した後に、被検体を接触させ抗アルドラーゼA抗体を抗原抗体反応により結合させる。次いで、0.001〜1000μgの標識された抗ヒト免疫グロブリン抗体を作用させ、放射活性、比色、蛍光、化学発光等により結合した抗アルドラーゼA抗体を測定することができる。また、標識抗ヒト免疫グロブリン抗体の代わりに、ビオチンを結合させた抗ヒト免疫グロブリン抗体と標識されたアビジンを使用することによりさらに高感度に測定することができる。この場合は、0.001〜1000μgのビオチン結合抗ヒト免疫グロブリン抗体を接触させた後、0.001〜1000μgの標識されたアビジンを接触させ、同様に、放射活性、比色、蛍光、化学発光等により結合した抗アルドラーゼA抗体を測定することができる。
【0027】
また、本願発明の免疫試薬が免疫学的凝集反応試薬である場合には、該試薬を用いた測定は、通常の赤血球凝集反応、受身凝集反応、免疫比色法、免疫比濁法等と同様に、例えば次のようにして行うことができる。即ち、粒子状の不溶性担体1g当たり0.001〜1000mgのアルドラーゼAを坦持した粒子(以下感作粒子と略す)を0.001〜15重量%となるように水性媒体に分散させて免疫試薬の有効成分として使用すればよい。アルドラーゼAを坦持する抗体の粒径は、抗原抗体反応後の凝集の起こりやすさや凝集の判別のしやすさなどの観点から平均粒径が0.05〜10μmの不溶性担体を使用するのが好適である。かかる方法にて作成した感作粒子を被検体中の抗アルドラーゼA抗体と接触させ、該感作粒子の凝集の度合いを測定する。粒子の凝集の度合いは、目視、光学的測定等従来の方法が制限無く使用できる。
【0028】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1
(1)RAでは関節部で骨破壊が進行し、骨芽細胞より細胞成分が放出される。これらの成分に対する抗体がRA患者に特異的に存在すると考え、骨芽細胞株であるMG63(ATCC CRL1427)を用いて次のようにしてRA患者血清に特異的に存在する抗体を検索した。
【0030】
MG63(1×107細胞)に1mlの細胞溶解液(50mM トリス塩酸緩衝液 pH7.4,150mM NaCl,1% NP-40)添加し、氷中で30分間放置した。遠心後上清をとり細胞抽出液とした。10%ゲルを用いたSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により細胞溶解液を分離した後、ニトロセルロース膜にタンパク質を電気転写し、RA患者血清を用いてMG63の細胞成分を認識する抗体の検索を行った。タンパク質を転写したニトロセルロース膜を5% スキムミルクを含むPBS(10mM リン酸緩衝液 pH7.0,150mM NaCl)に室温で1時間浸しブロッキングを行った。洗浄液1(0.1% ツイーン20を含むPBS)で15分づつ3回洗浄した後、ニトロセルロース膜を分割しそれぞれを洗浄液1で100倍に希釈したRA患者血清(4検体)と健常者血清(5検体)に膜を浸し、室温で1時間振とうした。洗浄液1で15分づつ3回洗浄した後、洗浄液1で10000倍に希釈したパーオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(カッペル社)中で1時間、室温で浸透した。洗浄液1で15分づつ3回洗浄した後、ECLウエスタンブロッティング検出試薬(アマシャム社)により抗原タンパク質に結合した抗体を検出した。ウエスタンブロッティング法を行った後の各膜の写真を図1に示す。図中の矢印は40kDaのタンパク質の位置を示す。RA患者血清に浸した膜では矢印部分にバンドが明確に確認できるのに対し、健常者の血清に浸した膜では該部分にバンドが確認できない。このとから、RA患者血清では40kDaのタンパク質を認識する抗体が特異的に存在することが明らかとなった。
【0031】
また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりMG63細胞抽出液より40kDaタンパク質を精製し、N末端アミノ酸配列8残基を調べた結果、該8残基はPYQYPALTであることが分かった。また、データベースによりホモロジーを検索したところ、ヒトアルドラーゼAと完全に一致した。
【0032】
(2)次に、RA患者血清と市販ウサギアルドラーゼAとの反応について調べた。なお、ウサギアルドラーゼAはヒトアルドラーゼAと96%の相同性を有している。RA患者血清と市販ウサギアルドラーゼA(和光純薬)との反応性を調べた。市販ウサギアルドラーゼAを用いた他は上記(1)と同様にしてウサギアルドラーゼAをSDS-PAGE後にニトロセルロース膜に転写し、抗原抗体反応を行ったところ、RA患者血清はウサギアルドラーゼAを認識した。ウエスタンブロッティング法を行った後の各膜の写真を図2に示す。図中矢印で示されるバンドがウサギアルドラーゼAを表す。RA患者血清に浸した膜では矢印部分に強いバンドが確認できるのに対し、健常者の血清に浸した膜では該部分にバンドが確認できない。このとから、RA患者血清ではウサギアルドラーゼAを認識する抗体が特異的に存在することが明らかとなった。
【0033】
(3)さらに、次のようにして市販ウサギアルドラーゼAによるRA患者血清の吸収試験を行った。即ち、前記(1)に従ってMG63細胞抽出液とRA患者血清を反応させる際に、市販ウサギアルドラーゼAによる吸収試験を行った。洗浄液1で100倍に希釈したRA患者血清に100μg/mlまたは、10μg/mlとなるように市販ウサギアルドラーゼAを添加し、室温で1時間放置した。対照として100μg/mlの牛血清アルブミン(BSA)による吸収も行った。吸収後は(1)と同様に抗原抗体反応を行わせ、ECLウエスタンブロッティング検出試薬により検出した。ウエスタンブロッティング法を行った後の各膜の写真を図3に示す。図中の矢印は40kDaのタンパク質、即ちヒトアルドラーゼAを表す。BSAによる吸収ではアルドラーゼAのバンドの強さに変化はないが、市販ウサギアルドラーゼAで吸収した場合は、バンドが消失した。このことから、RA患者血清中に存在する特異的な抗体は40kDaのタンパク質を認識し、該40kDaタンパク質はヒトアルドラーゼAであることが確認できた。
【0034】
これらの結果から、40kDaのタンパク質はアルドラーゼAであり、RA患者血清ではアルドラーゼAを認識する抗体が存在することが明らかとなった。また、RA患者血清中に存在するアルドラーゼAを認識する抗体はヒトアルドラーゼAおよびウサギアルドラーゼAを認識する抗アルドラーゼA抗体であることが明らかとなった。
【0035】
実施例2
[ELISA法による被検体中の抗アルドラーゼA抗体の測定]
市販ウサギアルドラーゼAを8Mの尿素溶液に懸濁し、1時間室温で放置して変性させた。変性後の溶液を0.4重量%2−メルカプトエタノール、0.1重量%SDS、0.1重量%ツイーン20を含むPBSに対して室温で透析を行い過剰の尿素を除去し、変性アルドラーゼA溶液(3mg/ml)を調製した。洗浄液2(0.05% ツイーン20を含むPBS)に変性アルドラーゼA溶液を添加し(20μg/ml)抗原感作液とした。100μlの抗原感作液を96穴マイクロプレートの各ウェルに分注し、4℃で一晩放置した。洗浄液2で3回洗浄し、250μlのブロッキング溶液(1% スキムミルク、1% ツイーン20、PBS)を分注し、室温で3時間放置した。洗浄液2で3回洗い、100μlの血清希釈液(1% カゼイン、1% スキムミルク、2%エマルジット25、PBS)を各ウェルに分注した。10μlの血清を分注し、ウェル内で11倍に希釈した。プレートシールで蓋をし、37℃で1時間静置し一次抗体反応をおこなった。検体として、RA患者血清、変形性関節症(OA)患者血清、全身性エリトマトーデス(SLE)患者血清、痛風患者血清、そして関節炎症状のない健常者血清を用いた。洗浄液2で3回洗い、パーオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体を抗体希釈液(1% BSA、0.05% ツイーン20、PBS)で1000倍に希釈して調製した二次抗体液を100μlづつ各ウェルに分注した。プレートシールで蓋をし、37℃で1時間静置し二次抗体反応を行った。洗浄液で3回洗い、基質液として、100μlの2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾ-チアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)とH2O2溶液の等量混合液(KPL社)を各ウェルに分注した。遮光して室温で30分放置し、100μlのSDS溶液を加えて反応を停止した。各ウェルの405nmの吸光度を測定した(図4)。
【0036】
図4に示されるように、RA以外の検体ではすべて吸光度が0.3以下であり、抗アルドラーゼA抗体はRA特異的に検出された。この結果から、抗アルドラーゼA抗体はRAの優れたマーカーとなることが明らかとなった。
【0037】
実施例3
[アルドラーゼAを変性することの抗アルドラーゼA抗体の反応性へ及ぼす効果の検討]
ELISA法による抗アルドラーゼA抗体の測定の際に、変性アルドラーゼA及び未変性アルドラーゼAによる吸収試験を行い、RA患者に存在する抗アルドラーゼA抗体の反応性を調べた。
【0038】
即ち、20μg/mlの変性アルドラーゼA又は未変性アルドラーゼAを含む血清希釈液を使用した以外は実施例2と同様にしてRA患者血清を用いてELISA法を行った。その結果を図5に示す。図5に示されるように、変性アルドラーゼAによる吸収で強く阻害を受けたことから、RA患者血清中に存在する抗アルドラーゼA抗体は、未変性アルドラーゼAよりも変性アルドラーゼAと強く反応することが明らかとなった。
【0039】
【発明の効果】
本発明者等はRA患者の体液中に存在する抗アルドラーゼA抗体の量は、健常者その他の自己免疫疾患や関節炎を呈する疾患に比べて有意に高いことを見出した。このことは抗アルドラーゼA抗体がRAを診断する新規な臨床マーカーとして有効に使用できることを示すものである。特に、抗アルドラーゼA抗体をRA用のマーカーとして使用した場合には偽陽性の発生率が極めて低く(具体的には、健常者およびその他の疾患の被検体45検体について測定したところ陽性を示した検体は0であった。)、アルドラーゼAを含む本発明の診断試薬を使用することにより精度の高いRAの診断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本図は骨芽細胞株(MG63)抽出液及びRA患者血清又は健常者血清を用いてウエスタンブロッティング法を行った後の各ニトロセルロース膜の写真である。
【図2】 本図は市販ウサギアルドラーゼAとRA患者血清および健常者血清を用いたウエスタンブロッティング法を行った後の各ニトロセルロース膜の写真である。
【図3】 本図はRA患者血清又は市販ウサギアルドラーゼA或いはBSAで吸収を行ったRA患者血清と骨芽細胞株(MG63)抽出液を用いてウエスタンブロッティング法を行った後の各ニトロセルロース膜の写真である。
【図4】 本図はRA患者と健常者、RA以外の関節炎を伴う疾患の患者の血清中抗アルドラーゼ抗体の関係をELISA法によって調べた結果を示す図である。
【図5】 本図はELISA法における変性アルドラーゼA及び未変性アルドラーゼAの阻害効果を示す図である。

Claims (3)

  1. 抗アルドラーゼA抗体の慢性関節リウマチ用マーカーとしての使用。
  2. アルドラーゼAを含んでなり、被検体中に存在する抗アルドラーゼA抗体を検出することを特徴とする慢性関節リウマチ診断用免疫試薬。
  3. 変性させたアルドラーゼAを含んでなり、被検体中に存在する抗アルドラーゼA抗体を検出することを特徴とする慢性関節リウマチ診断用免疫試薬。
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