JP3665165B2 - 増幅装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無線通信用送信装置に用いられる複数信号の共通増幅を必要とする高出力増幅装置に関し、該高出力増幅装置で発生する非線形歪を拡散し、通信に必要な信号対雑音比を損うことなく、高出力増幅装置の動作点を引き上げることにより、高い効率で信号の増幅を行なうことを可能にする増幅装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
無線通信用送信装置に用いられる複数信号の共通増幅を必要とする高出力増幅器においては、高出力増幅器の有する非線形性により歪が発生するので以下に記すような運用上の制限を生ずる。すなわち、高出力増幅器の非線形性により発生する歪は共通増幅を受ける通信信号への干渉源となるので、通信条件を満足するためには歪発生量がある規定値以下に収まる範囲になるように、高出力増幅器を動作させる必要がある。
【0003】
一般に高出力増幅器は動作点が出力飽和点に近付くに従い歪発生量が増加するので、動作点を出力飽和点より低いレベルに下げて動作させる。この時の、出力飽和点から動作点を下げることをバックオフといい、そのレベル低下量をバックオフ量という。一方、高出力増幅器の効率は通常出力飽和点近傍動作時に最大となり、動作点を下げる(バックオフ量を大きくする)ほど効率は低くなる。
【0004】
例えば、現状において高効率とされるS帯高出力増幅器(参考文献:M.Shigaki et. al: “S-Band High-Power and High-Efficiency SSPA for Onboarding Sate-llite," AIAA ICSSC Digest, pp.108-112, Feb.1996.)について言えば、通常出力飽和点とみなす2dB利得圧縮点から出力バックオフ量を0dB,1dB,2dB,3dB,4dBと増やした時にそれぞれの効率は、43%,37%,32%,26%とldB出力バックオフ量を増やす毎に効率が5〜6%ずつ低下してしまう。
【0005】
そこで、歪補償により高出力増幅器で発生する歪量の低減を図り、通信条件を満足する歪発生量以下の動作範囲を少しでも高いレベルに引き上げ、効率の高い動作点で高出力増幅器を動作させることが重要となってくる。特に衛星搭載用のように限られた電力で伝送容量を確保するためには、歪補償による高出力増幅器の高効率動作が非常に重要となってくる。
【0006】
さらに、大容量化を目的として、昨今衛星搭載用高出力増幅器には総合でキロワット[kW]以上の無線信号出力を必要とする高出力化が求められており、上記説明の中で引用したS帯高出力増幅器の効率の例に従えば、無線信号出力電力として1キロワット(kW)が要求される場合、DC電力としてそれぞれ、2.3kW,2.7kW,3.1kW,3.8kW,4.8kWが必要となる。
【0007】
従って、衛星に搭載して用いる場合には、それぞれの必要DC電力から信号出力電力1kWを差し引いた値がそのまま熱となるので、その排熱が熱設計上の大きな問題となる。このように、飽和点近傍では出力バックオフ量1dBの違いがシステムに多大に影響することが分かる。
【0008】
従来、高出力増幅器の歪補償に関しては、歪補償回路を高出力増幅器に付加して歪発生量を低減させる方法が多く採られてきた。これらは、いずれも歪補償回路として機能し、高出力増幅器で発生する歪を低減する効果を有している。
しかしながら、出力飽和点からのバックオフ量でみると、十分に歪を低減しているのはバックオフ量が大きいところであり、バックオフ量の小さい(数dB程度の)領域ではあまり歪低減がなされていない。
【0009】
(参考文献: G.Satoh and T.Mizuno:“Impact of a New TWTA Linea1izer Upon OPSK/TDMA Transmission Performance," IEEE Journal on Selected Areas in Communications, Vol.SAC-1,No.1, pp.39-45, Jan.1983. ,
R.Inada, H.Ogawa, S.Kitazume and P.DeSantis: “ A Compact 4GHz Linearizer for Space Use," IEEE MTTS Digest,pp.323-326,1986.,
【0010】
A.-M.Khilla and D.Leucht:“Linearized L/C-Band SSPA/UpconVerter for Mobi1e Communication Satellite,“AIAA ICSSC Digest, pp.86-93, Feb.1996. ,
野島,岡本,大山:「マイクロ波SSB−AM方式用プリディストーシヨン非線形ひずみ補償回路」, 電子通信学会論文誌, pp.78-85, VoL.J67-B No.1, Jan.1984. ,
【0011】
N.Imai, T.Nojima and T.Murase: “Novel Linearizeer Using Balanced Circulators and Its Application to Multilevel Digital Radio Systems,"IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques, Vol.37, No.8, pp.1237-1243, Aug. 1989. 等)
【0012】
数kWの高出力無線信号を得るためには、複数の高出力増幅器の並列バランス動作が必要となる。
図6は、従来の回路電力合成型並列動作高出力増幅装置の例を示す図であって、数字符号61は入力端子、62は電力分配回路、64−1〜64−Nは高出力増幅器、65は電力合成回路、66は出力端子、67−1〜67−Nは歪補償回路を表わしている。
【0013】
同図に示すように高出力増幅器を並列動作させる高出力増幅装置は、電力分配部分と並列増幅器部分と電力合成部分とから構成される。
電力合成部分が電気回路により構成されるものの代表例としてマルチポート増幅器(参考文献:M.Tanaka, K.Yamamoto, S.Egami, K.Ohkubo:“S-Band Multiple Beam Transmitter for N-STAR," AIAA ICSSC Digest, pp.80-85,Feb.1996.)等がある。
【0014】
図7に従来の空間電力合成型並列動作高出力増幅装置の例を示す。同図において、数字符号71は入力端子、72は給電回路、74−1〜74−Nは高出力増幅器、77−1〜77−Nは歪補償回路、78−1〜78−Nは放射器、79−1〜79−Mはビームを表わしている。
【0015】
この図に示すように各増幅器の後段に接続された放射手段により空間に放射され、空間において電力合成されるものの代表例がアクティブ・フェーズド・アレー・アンテナである。いずれにしろ、高出力増幅器を並列にバランス動作させる高出力増幅装置を歪補償により動作点を引き上げ高効率化することは、衛星の限られた電力発生能力内において有効に高出力無線信号を得ることになり、かつ、高出力増幅器から発生する熱の低減に直結し、衛星の限られた排熱能力内で有効に無線信号電力を確保する上で極めて有効な手段である。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
図6および図7に示したように、従来の並列バランス動作高出力増幅装置は、各増幅器に付加する歪補償回路により歪を低減している。そのため、個々の高出力増幅器の歪補償回路による歪補償と同様に、出力飽和点からのバックオフ量でみると、十分に歪を低減しているのはバックオフ量が大きいところであり、バックオフ量の小さい(数dB程度の)領域ではあまり歪低減がされないという前述の問題は解決されていない。
【0017】
これまでに実現された例を挙げると、特性の揃った高出力増幅器によりバランス動作させることになるが、実際の回路においては増幅器の特性(特に非線形特性)はバラツキを有し、かつ歪補償回路の特性もバラツキを有する。それゆえ、歪補償の結果得られる歪の残留分はある程度のバラツキを有することになる。
【0018】
文献(堀川、田中「歪補償型マルチポート増幅器における歪感度解析」、1992年電子情報通信学会春期大会講演論文集、B−221)によると、8台の歪補償回路を有する並列増幅器からなるマルチポート増幅器においては、各増幅器出力端での非線形歪には位相で90度程度のバラツキが発生していることを示している。
【0019】
これは、僅かではあるが歪低減につながるものであり、並列バランス動作ゆえのメリットである。しかしながら、バックオフ量の小さい領域での歪低減は不十分なままである。
移動体衛星通信用の搭載高出力増幅器に必要とされる信号電力対干渉雑音比(C/I)は、方式に依存するが、概ね16〜18dB、厳しいものだと20dB以上である。C/Iは測定法に基づくパラメータで雑音電力比(NPR)で表現されることもあるが、その場合でも同じ数値が必要とされる。
【0020】
このような要求を満たすためには、歪補償回路による歪補償を行なっても、2dB利得圧縮点から、数dBバックオフした動作点で高出力増幅装置を運用しなければならない。すなわち、従来の装置では、高出力増幅器を最も高い効率で動作させることが可能な出力飽和点で運用することができなかった。
【0021】
本発明は、上述のように従来の装置では十分な歪低減を得ることのできなかった並列バランス動作高出力増幅装置の出力飽和点においても、通信に必要な性能を確保するための歪低減を可能とし、複数信号の共通増幅を必要とする無線送信装置に用いられる高出力増幅装置の飽和点動作による高効率信号増幅を可能にする並列バランス動作高出力増幅装置を提供することを目的としている。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明は、並列バランス動作高出力増幅装置において、各増幅器から出力される増幅された信号成分と非線形歪成分の内、非線形歪成分のみの出力の位相を調整できる歪制御回路を各増幅器に具備し、回路における電力合成がなされる並列バランス動作高出力増幅装置の場合は、信号が出力される端子以外の出力端子や終端されている端子等へ、
【0023】
また、空間における電力合成がなされる並列バランス動作高出力増幅装置の場合は、信号が放射される方向以外へ非線形歪を拡散することにより、高出力増幅器の出力飽和点動作時においても通信信号のC/I比を十分に確保することを最も主要な特徴とする。
【0024】
すなわち、請求項1の発明は、N≧M≧2とするとき、M個の入力端子と、該M個の入力端子の、それぞれに入力された無線信号を、N系列の信号に分配する電力分配回路と、該電力分配回路のN系列の出力信号を、並列動作によって、それぞれ増幅するN個の高出力増幅器と、該N個の高出力増幅器のそれぞれの出力を合成してM個の出力端子に信号を出力する電力合成回路とから成り、
【0025】
各入力端子に入力された無線信号の信号成分が、該入力端子に対応する出力端子から、それぞれ出力されるように構成した増幅装置であって、上記各高出力増幅器内または各高出力増幅器の前段あるいは後段に、各高出力増幅器で発生する非線形歪成分の位相を2πに渡って調整できる歪制御回路を設けた増幅装置である。
【0026】
請求項2の発明は、N≧M≧2とするとき、M個の入力端子と、該M個の入力端子の、それぞれに入力された無線信号を、N系列の信号に分配する給電回路と、該給電回路のN系列の出力信号を、並列動作によって、それぞれ増幅するN個の高出力増幅器と、該N個の高出力増幅器の、それぞれの出力を空間に放射するN個の放射器とから成り、前記放射器から放射された電波が空間において合成され、
【0027】
各入力端子に入力された無線信号の信号成分が、該各入力端子に対応するM個のビームとして形成されるように構成した増幅装置であって、上記各高出力増幅器内または各高出力増幅器の前段あるいは後段に、各高出力増幅器で発生する非線形歪成分の位相を2πに渡って調整できる歪制御回路を設けた増幅装置である。
【0028】
請求項3の発明は、前記請求項1または請求項2の発明において、歪制御回路と高出力増幅器とからなる系の信号成分に対する増幅特性を、各系について、ほぼ等しくするように構成したものである。
【0029】
前述したような従来の技術においては、各高出力増幅器毎に歪補償回路を付加することにより、各高出力増幅器出力において歪低減を図る手法を用いており、並列バランス動作増幅装置全体においては、各増幅器出力特性の有するある程度の不均一性によって、個々の歪補償回路を付加した高出力増幅器のC/I比より若干改善されたC/I比が得られるものの、出力飽和点における十分な歪低減が得られなかった。
【0030】
このような、従来の各増幅器の歪低減を図る歪補償回路を付加する構成に対し、本発明は信号成分が到達する方向以外に非線形歪を拡散するために各増幅器からの非線形歪成分の位相を2πに渡って調整する歪制御回路を付加する構成とする点で大きく異なる。
【0031】
本発明は、上述のように各増幅器から出力される増幅された信号成分と非線形歪成分の内、非線形歪成分の位相を2πに渡って調整できる歪制御回路を各増幅器に具備する構成となっているので、信号成分については本来の出力端子、あるいは方向に電力合成の結果として得ることができる。
【0032】
また、非線形歪成分については、歪制御回路により各高出力増幅器の非線形歪成分の位相状態をばらまくことができる。(並列増幅器の数が多いほどその拡散量は大きくなる)従って、信号到達点での通信信号のC/I比に着目すると高出力増幅器の出力飽和点動作時にも大幅な歪低減がなされ、十分なC/I比が得られる。
【0033】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の形態の第1の例を示す図であって、数字符号11は入力端子、12は電力分配回路、13−1〜13−Nは歪制御回路、14−1〜14−Nは高出力増幅器、15は電力合成回路、16は出力端子を表わしている。
【0034】
この例は複数(M個)の入出力端子を有し、複数(N個)の並列増幅器から構成される並列動作増幅装置の例を示している。無線信号が入力される複数(M個)の入力端子を有し、各端子からの入力をそれぞれ複数(N個)の出力端子に分配して出力する電力分配回路と、それらN個の出力端子に縦続に接続されるN組の歪制御回路と高出力増幅器と、それらに接続されるN個の入力端子から入力される信号を合成しM個の出力端子に出力する電力合成回路から構成されている。
【0035】
電力分配回路の各入力端子から入力される信号はN個全ての増幅器において増幅され、合成された後、対応する電力合成回路の出力端子から出力される。N組の歪制御回路と高出力増幅器は、信号成分の増幅特性に関しては等しくバランス動作を行なう。一方、歪成分に対しては歪制御回路の機能により、N組それぞれ異なる特性を有する。
【0036】
このため、信号成分については従来の並列動作増幅装置と同様に増幅され、歪成分については位相が異なるように制御されることによりバランス動作が崩れ、特定の出力端子に集中することなく、全ての出力端子あるいは段間の終端器へ拡散されることになる。
【0037】
歪制御回路の機能により歪成分の位相だけでなく振幅もある程度制御することができると、個々の増幅器出力端においても歪成分を低減することができ、かつ拡散による歪低減も享受でき、非常に大きな歪低減を得ることができる。歪制御回路によりN組の歪位相を2πにばらまくように制御すれば、出力端において従来方式における最小のC/I比を[10* LOG(N)]dB(例えば8並列動作の場合9dB、32並列動作の場合15dB)改善することができる。
【0038】
上記動作の原理をより詳細に説明するために、図1の並列動作増幅器を具体化したものを図2に示す。同図において、数字符号21は入力端子、22は電力分配回路、2211〜2234は、それぞれ、3dB−π/2−ハイブリッド、23−1〜23−8は歪制御回路、24−1〜24−8は高出力増幅器、25は電力合成回路、2511〜2533は、それぞれ3dB−π/2−ハイブリッド、26は出力端子、27は終端回路を表わしている。
【0039】
この例は、5個の入・出力端子を有し、8個の歪制御回路23−1〜23−8と高出力増幅器からなる並列動作増幅器である。電力合成回路、電力分配回路は3dB−π/2−ハイブリッドで構成され、使われない端子は無反射終端されている。入力端子1から入力された信号は増幅された後出力端子1から出力されるように対応づけられている。以下に動作原理について説明する。
【0040】
図2に示す並列動作増幅装置の出力は、信号成分[Sout]と歪成分[Dout]を用いて、“数1”で示す(1)式のように表わすことができる。
【0041】
【数1】
【0042】
歪制御回路と高出力増幅器を組み合わせて一つの能動回路として特性を定義し、信号成分に対する歪制御回路と高出力増幅器の特性を[Samp]、歪成分に対する歪制御回路と高出力増幅器の特性を[Damp]とすると、(1)式右辺の各項は、入力[IN]、電力分配回路[DIV]、電力合成回路[COMB]を用いて、“数2”で示す(2)式、および“数3”で示す(3)式のように表わすことができる。
【0043】
【数2】
【0044】
【数3】
【0045】
(3)式における[DIST]は、歪制御回路の入力信号すなわち[DIV]・[IN]を基に、歪制御回路と高出力増幅器の有する非線形性により伝送信号帯域内に発生する相互変調歪積からなる歪成分を表わしている。相互変調の基となる信号の入力経路の情報と、歪積の周波数情報からなるIMにより表わされるものである。
【0046】
歪制御回路の入力として与えられる信号の積(ミキシングによる生成物)として生じるものであるので、一般式で表現するのは非常に複雑となるため、本説明では動作原理を説明するに足りる範囲で簡略化して(3)式のように表現する。
【0047】
このとき図2(b)に示す3dB−π/2−ハイブリッドの入出力関係を、“数4”で示す(4)式のように、複素表示を用いて定義すると、[DIV]、[COMB]、[Samp]、[Damp]はそれぞれ、“数5”〜“数8”で示す(5)式〜(8)式のように表わすことができる。
【0048】
【数4】
【0049】
【数5】
【0050】
【数6】
【0051】
【数7】
【0052】
【数8】
【0053】
ここで、並列動増幅装置は、バランス動作、すなわち信号成分の増幅特性を揃えた動作をするように構成されているので、(7)式に示すように、信号成分に対する8組の歪制御回路と高出力増幅器の組合せにおける各増幅特性は等しいものとして“外1”として与えた。Gは利得、“外2”は通過位相を表わしている。また、歪成分に対する特性は8組それぞれ違う物として(8)式にて与えた。Dn(n=l〜8)は利得、“外3”は通過位相を表わしている。
【0054】
【外1】
【0055】
【外2】
【0056】
【外3】
【0057】
以上の数式から信号成分に関して入出力関係をまとめると、“数9”で示す(9)式のようになり、入力端子対出力端子は1対1に対応づけられ利得Gを与えられ出力される様子が分かる。
【0058】
【数9】
【0059】
一方、歪成分に関しては(9)式のようには単純な表現とはならない。そこで、並列動作増幅装置において、C/I比の条件からみて最も厳しくなる全信号が1個の端子に集中する場合について説明する。入力端子1から全信号が入力される場合を考えると、(3)、(5)、(6)、(8)式から歪成分出力[Dout]は、“数10”で示す(10)式のように表現することができる。
【0060】
【数10】
【0061】
歪制御回路と高出力増幅器において発生する歪成分の周波数情報からなるIMと、各歪制御回路の制御により決定される歪成分の振幅・位相の情報“外4”の積によって表現されている。従来の並列動作増幅装置においては、Dn 、φn はそれぞれほぼ同じ値(ほぼ揃った特性)となるので、(9)式の信号成分の関係式と同様に、“数11”で示す(11)式のようになる。
【0062】
【外4】
【0063】
【数11】
【0064】
(11)式において、ほぼ等しいという表現になっているのは、従来技術の項でも説明したように、実際の回路においては増幅器の特性(特に非線形特性)はバラツキを有することになるので、Dn 、φn はそれぞれ厳密には等しい値とはならないためである。
【0065】
本発明における歪制御回路による歪制御は、従来の偶然の産物による僅かな位相のバラツキによるものではなく、2πに渡り歪成分の位相をばらまくことであり、例えば、φ 1〜φ8 の値がそれぞれ0,π/4,π/4,π/2,π/4,π/2,π/2,3π/4となるように歪制御回路により制御すると、歪成分の出力は、“数12”で示す(12)式のようになる。
【0066】
【数12】
【0067】
すなわち、(11)式において出力端子1に集中していた歪成分が全ての出力端子と無反射終端器に分散され、出力端子1に出力される信号成分への干渉源として振る舞う歪成分が低減され、C/I比が[10*LOG(8)]dB改善されることになる。
【0068】
これは信号成分については所定の出力端において全てが同位相で合成、すなわち電圧和(増幅器の台数をNとすると、足し合わせ分は[20* LOG(N)]dB)であり、歪成分については全ての経路に分散され、丁度電力分配されることになり、このとき信号出力端に出力される歪成分は各増幅器出力分の電力和(足し合わせ分は[10* LOG(N)]dB)となつている。
【0069】
歪分散がない従来構成では歪成分に関しても電圧和の関係があるので、本発明の適用により電圧和と電力和の差に相当する[10* LOG(N)]dBの歪低減効果を得ることができる。
【0070】
また、歪制御回路によりφ1 〜φ8 の値として別の組合せになるように調整すると上記説明に用いた入力端子1に全ての信号が集中する場合に、出力端子1に全く歪成分を出力させずに、残りの出力端子あるいは無反射終端器に出力させることも可能であるが、入力信号状態が異なる場合に[10* LOG(N)]dBの改善が得られない場合が生じる。
【0071】
本説明例はいかなる信号入力分布の場合でも全端子にばらまくことができるので、[10* LOG(N)]dBのC/I比改善が常に得られることを示している。これは、各増幅器出力端において信号成分と歪成分を観測し、C/I比が0dB(レベル差無し)であっても、100台の高出力増幅器の並列動作であれば、出力端では20dBのC/I比が得られることになる。このように、各高出力増幅器を飽和動作させても、通信に必要なC/I比を確保することが可能となり、従来に無い高効率高出力増幅が可能になる。
【0072】
図3は本発明の実施の形態の第2の例を示す図である。同図において、数字符号31は入力端子、32は給電回路、33−1〜33−Nは歪制御回路、34−1〜34−Nは高出力増幅器、35−1〜35−Nは放射器、36−1〜36−Mはそれぞれビームを表わしている。
【0073】
この例は、先に説明した図1の構成の電力分配器を給電回路に置き換えると共に、電力合成回路部分を、放射器により電波を放射し空間で電力合成する方式に置き換えたものである。この例では、出力端子に代わり照射方向という形で信号の出力先が与えられる。
【0074】
このように、空問電力合成型並列増幅装置においても前述の回路電力合成型並列増幅装置の場合と同様に、並列動作する高出力増幅器の信号成分に対する特性はバランスさせ、歪成分に対する特性にはバラツキをもたせることで、信号成分を所望の方向へ照射させることができ、歪成分はそれ以外の方向へ拡散させることができるので、C/I比を大幅に改善することができる。
【0075】
図4は図3の構成の具体的な例を示す図であって、数字符号41は入力端子、42−1〜42−3は給電回路、43−1〜43−8は歪制御回路、44−1〜44−8は高出力増幅器、45−1〜45−8は放射器、46は減衰器、47は移相器を表わしている。
【0076】
この例は3個の入力端子と8個の出力端子を有する給電回路と、8組の歪制御回路と高出力増幅器とそれらに接続される放射器とから構成されている。給電回路において、移相器と可変減衰器により3照射方向のビームパターンを形成するための8素子の励振分布を付与する。このような構成によっても歪制御回路により歪成分を制御することでC/I比が改善できる例を示している。
【0077】
図5に図4の構成の空間電力合成型並列動作増幅装置のアンテナパターンの解析例を示す。放射器は開口径λ/2(λは無線信号の波長)の円形開口アンテナとし、8放射器がλ/2間隔で等間隔に配置されているものとした。この場合、ビームの半値幅は約15度となるので、−15,0,15度の3方向に照射する例を考える。
【0078】
−15度の場合を照射方向1、0度の場合を照射方向2、15度の場合を照射方向3としたとき、図5における数字符号51は照射方向1の信号成分のビームパターン、52は照射方向2の信号成分のビームパターン、53は照射方向3の信号成分のビームパターン、54は照射方向1から外した歪成分のビームパターン、55は照射方向3から外した歪成分のビームパターン、56a,56bは照射方向2から外した歪成分のビームパターンを示している。
【0079】
給電回路における振幅の励振分布はサイドローブ量−20dBの得られるチェビシェフ分布とし、3照射方向分全て同じものを与えている。8組の歪制御回路と高出力増幅器の信号成分に対する特性は等しいものとし、歪成分に対する特性は歪制御回路による制御により、端から順番に0,π,0,π,・・・となるように設定する。
【0080】
この時、信号成分の照射アンテナパターンは図5に示すように、−15,0,15度の3方向に形成され、従来方式のままであれば、それら信号成分と同方向に照射されていた歪成分に関しては、信号成分が照射される方向とは全く違う方向へ拡散されることになる。
【0081】
図5において斜線を施した照射角度内が伝送に使用されるとすると、伝送上C/I比は大幅に改善され、本説明例においては25dB以上改善されることになる。この改善量は高出力増幅器を飽和動作させても伝送に必要なC/I比を確保することが可能であることを示している。本説明において用いた歪制御回路による設定値はほんの1例であり、信号成分が照射される方向と異なる方向へ歪成分のみを拡散するための解はたくさんある。
【0082】
図1、図2のように回路で電力合成する並列動作増幅装置の場合のC/I比改善が並列台数Nに依存し、[10* LOG(N)]dBの改善量となるのに対し、空問電力合成型並列動作増幅装置の場合、並列台数がさほど多くなくても、広い空間を有効に活用することで伝送上のC/I比を大幅に改善することが可能となり、高効率大電力増幅が可能となる。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来の増幅回路では十分な歪低減を得ることのできなかった並列バランス動作高出力増幅装置の出力飽和点近傍において、非線形歪拡散による歪低減が可能となり、複数信号の共通増幅を必要とする無線送信装置に用いられる高出力増幅装置の飽和点動作による高効率な信号増幅を実現することができる。
【0084】
また、衛星搭載用高出力増幅器に適用することで、従来の発電能力のままでも高出力化を達成することが可能になる。さらに、同じ無線信号電力を得るのに生ずる放熱を低減できるので、排熱能力に限りのある衛星において有効に高出力化を達成することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1の例を示す図である。
【図2】実施の形態の第1の例の具体的な回路を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態の第2の例を示す図である。
【図4】実施の形態の第2の例の具体的な構成を示す図である。
【図5】実施の形態の第2の例のアンテナパターンの解析例を示す図である。
【図6】従来の回路電力合成型並列動作高出力増幅装置の例を示す図である。
【図7】従来の空間電力合成型並列動作高出力増幅装置の例を示す図である。
【符号の説明】
11,21,31,41,61,71 入力端子
12,22,62 電力分配回路
13−1〜13−N,23−1〜23−8,33−1〜33−N,43−1〜43−8 歪制御回路
14−1〜14−N,24−1〜24−8,34−1〜34−N,44−1〜44−8,64−1〜64−N,74−1〜74−N 高出力増幅器
15,25,65 電力合成回路
16,26,66 出力端子
2211〜2234,2511〜2533 ハイブリッド
27 終端回路
32,42−1〜42−3 給電回路
35−1〜35−N,45−1〜45−8 放射器
36−1〜36−M ビーム
46 減衰器
47 移相器
51〜53 信号成分のビームパターン
54,55,56a,56b 歪成分のビームパターン
67−1〜67−N,77−1〜77−N 歪補償回路
Claims (3)
- N≧M≧2とするとき、M個の入力端子と、
該M個の入力端子の、それぞれに入力された無線信号を、N系列の信号に分配する電力分配回路と、
該電力分配回路のN系列の出力信号を、並列動作によって、それぞれ増幅するN個の高出力増幅器と、
該N個の高出力増幅器のそれぞれの出力を合成してM個の出力端子に信号を出力する電力合成回路とから成り、
各入力端子に入力された無線信号の信号成分が、該入力端子に対応する出力端子から、それぞれ出力されるように構成した増幅装置であって、
上記各高出力増幅器内または各高出力増幅器の前段あるいは後段に、各高出力増幅器で発生する非線形歪成分の位相を2πに渡って調整できる歪制御回路を設けたことを特徴とする増幅装置。 - N≧M≧2とするとき、M個の入力端子と、
該M個の入力端子の、それぞれに入力された無線信号を、N系列の信号に分配する給電回路と、
該給電回路のN系列の出力信号を、並列動作によって、それぞれ増幅するN個の高出力増幅器と、
該N個の高出力増幅器のそれぞれの出力を空間に放射するN個の放射器とから成り、
前記放射器から放射された電波が空間において合成され、各入力端子に入力された無線信号の信号成分が、該各入力端子に対応するM個のビームとして形成されるように構成した増幅装置であって、
上記各高出力増幅器内または各高出力増幅器の前段あるいは後段に、各高出力増幅器で発生する非線形歪成分の位相を2πに渡って調整できる歪制御回路を設けたことを特徴とする増幅装置。 - 歪制御回路と高出力増幅器とからなる系の信号成分に対する増幅特性を、各系について、ほぼ等しくした請求項1または請求項2に記載の増幅装置。
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