JP3663373B2 - 赤身魚の肉性状検査法及びその装置 - Google Patents

赤身魚の肉性状検査法及びその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグロをはじめとする赤身魚の魚肉性状(肉質)を検査する技術に係わり、特に赤色色素タンパク質を含む魚肉の色調変化を知る尺度として、赤色色素タンパク質のメトミオグロビンへの変化量を定量的に示せるようにした簡易な方法と装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、馬肉や牛肉ほかマグロなどの魚肉(赤身)には、肉の赤色を形成する赤色色素タンパク質(ミオグロビン:Mb)が多く含まれることで良く知られる。ミオグロビンは筋肉組織に存在し、ヘモグロビンと同じく補欠分子族ヘム(ポルフィリンに2価鉄イオンの配位した錯化合物、狭義にはプロトヘム)を含むヘムタンパク質であり、その分子量は17,000で、1分子当たり1個の酸素を結合し、O2貯蔵体としての機能をもつ。
【0003】
特に、ミオグロビンはヘモグロビンと同じくO2およびCOを可逆的に結合するが、O2の結合力はヘモグロビンよりも強い。このため、ミオグロビン(還元型ミオグロビン)を含む切りたてのマグロ肉などを空気中に放置すると、ミオグロビンが酸素を結合して還元型から酸化型ミオグロビン(オキシミオグロビン:MbO2)となり、肉色が褐色気味の濃い赤色から淡い鮮明な赤色に変化する。その種の魚肉などは凍結貯蔵することにより変色の進行をある程度抑制できることが確認されているが、比較的高温での凍結貯蔵は却って褪色を助長し、凍結貯蔵などによる長期保存の場合には肉色が褐色に変化する。
【0004】
ここに、その褐色化は、主としてミオグロビンを構成するプロトヘムの2価の鉄が酸化剤の作用により3価の鉄に酸化され、ミオグロビンがメト型ミオグロビン(メトミオグロビン:met-Mb)になる事によるものとされているが、一般にこれをメト化といい、その生成率をメト化率と呼ぶ。
【0005】
尚、メト化したものと未メト化のものとの味覚上の差異はそれほど認められないが、メト化の進行により褐色化が明瞭になったマグロ肉などは視覚的に消費者に受け入れられ難い。このため、マグロなど食用の赤身魚を市場から仕入れたり、これを加工して流通させる場合には、メト化の進行度を知ることが極めて重要である。
【0006】
しかし、褐色化が明瞭に認められる以前の肉の表面を目視し、その色調からメト化の進行度を知ることは甚だ困難である。このため、赤身魚などの仕入れや流通に際し、その商品価値がいつ頃まで保たれるのか判別できず、場合によっては商品棚に陳列した途端に肉色の褐色化が明瞭となり、これが全く売れずに大損害を被ることがある。
【0007】
そこで、主にマグロ肉の色調を評価する方法として、従来からミオグロビンのメト化率を計り知ることが一般に広く行われている。その方法は、概してマグロ肉においてその抽出液に光(可視光線)を当て、540nmと503nm(MbO2とmet-Mbのβ極大)との透過光につきその吸光度の比を測定し、その値からメト化率を定量的に導き出すというものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
然し乍ら、従来のメト化定量法は、吸光度計を用いた光透過式であって、マグロ肉など測定対象物を切り身の状態のまま用いることができず、測定に当たっては上記のように抽出液の調製が必要となる。特に、その調製は肉塊を細かく切り刻むことにはじまり、これを冷却した蒸留水に溶いて濾過し、その濾液を遠心分離するといった煩わしく極めて困難なものである。
【0009】
このため、測定結果を得られるまでに時間が掛かる上、マグロを市場から購入する場合などには、その場で抽出液を調製することなど殆ど不可能であるし、購入するか否かを目的として肉塊の一部を抽出液の調製用に切除することなど許されるはずもない。
【0010】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は高級魚とされるマグロを主たる対象魚とし、その肉塊を破壊せずして肉色に大きな影響を及ぼすメト化率を迅速かつ容易に知り得るようにする事にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、下記のような方法及び装置を提供するものである。
(1)赤色色素タンパク質を含む赤身魚の肉塊表面に所定の分光分布を有する光を照射し、肉塊表面からの反射光を分光して所定の波長範囲内における各波長成分の波長とその反射率との関係を表す回帰曲線式を導出し、特定の変曲点を抽出した後、回帰近似曲線の変曲点に対応する波長と保存時間との関係から得られる演算式を用いて前記肉塊の色調の経時変化を予知するための規準と成すメトミオグロビンの生成率を算定することを特徴とする赤身魚の肉性状検査法。
(2)赤色色素タンパク質を含む赤身魚の肉塊表面に所定の分光分布を有する光を照射し、肉塊表面からの反射光を分光して所定の波長範囲内における各波長成分の波長とその反射率との関係を表す回帰曲線式を導出し、その回帰曲線式で与えられる回帰近似曲線に上記の波長範囲で1又は2以上の変曲点が存在する場合、その波長範囲内における最も低波長側の1つの変曲点に対応する波長を対象データとして抽出し、その対象データを基にして予め設定した演算式から前記肉塊の色調の経時変化を予知するための規準と成すメトミオグロビンの生成率を算定することを特徴とする赤身魚の肉性状検査法。
(3)赤色色素タンパク質を含む赤身魚の肉塊表面に少なくとも波長が580〜700nmのスペクトルを含む光を照射し、肉塊表面からの反射光を波長幅0.1〜20nm間隔の波長成分に分光して波長範囲580〜700nm内における波長幅0.1〜20nmの各波長成分の波長とその反射率との関係を表す回帰曲線式を導出し、その回帰曲線式で与えられる回帰近似曲線に波長範囲580〜700nm内で1又は2以上の変曲点が存在する場合、その波長範囲580〜700nm内における最も低波長側の1つの変曲点に対応する波長を対象データとして抽出し、その対象データを基にして予め設定した演算式から前記肉塊の色調の経時変化を予知するための規準と成すメトミオグロビンの生成率を算定することを特徴とする赤身魚の肉性状検査法。
(4)マグロ、メバチ、キワダ、インドマグロ、又はタイセイヨウマグロなどのサバ科マグロ属を対象魚とする上記(1)〜(3)の何れか一項に記載した赤身魚の肉性状検査法。
(5)赤色色素タンパク質を含む赤身魚の肉塊表面に所定の分光分布を有する光を照射する照射光学系と、肉塊表面からの反射光を波長幅0.1〜20nm間隔の波長成分に分光してその各波長成分を個別に検出する受光系と、この受光系による各波長成分の検出量からその各波長成分の波長と反射率との関係を表す回帰曲線式を導出するデータ処理手段とを備え、このデータ処理手段は、上記回帰曲線式で与えられる回帰近似曲線の変曲点を求めて所定の波長範囲内に存在する最も低波長側の1つの変曲点に対応する波長を対象データとして抽出する演算回路と、上記対象データからメトミオグロビンの生成率を算定するための演算式が格納される記憶部とを具備すると共に、データ処理手段には上記演算式による演算結果を表示するための出力手段が接続されて成ることを特徴とする赤身魚の肉性状検査装置。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。先ず、図1にはミオグロビンの3形態(還元型A、酸化型B、メト型C)における分光反射率特性を示す。ここで、この分光反射率の測定にはミノルタ株式会社製分光測光器(CM3500-d)を用い、試料としてはマグロの赤身(筋肉組織)を用いた。尚、本測定に際し、還元型ミオグロビンAは、上記マグロの切り身をサイレントカッターで細断し、そのペースト化物に還元剤としてハイドロサルファイトナトリウム(NaS2O4)1%溶液を10重量%混合して誘導した。又、酸化型ミオグロビンBは凍結した上記切り身を流水で解凍した後、これを濡れ布で包んで5℃の下で6時間保存して誘導した。更に、メト型ミオグロビンCは上記ペースト化物に酸化剤としてフェリシアン化カリウム(K3Fe(CN)6)2%溶液を5重量%混合して誘導した。
【0013】
ここに、還元型ミオグロビンAは560nm、酸化型ミオグロビンBは540nm及び580nm、メト型ミオグロビンCは630nmにそれぞれ特異的な光吸収極大をもつことが判る。
【0014】
次に、図2には魚肉の保存時間に関係する分光反射率の変化を示す。ここに、測定対象は上記と同じマグロ肉で、その凍結した切り身を流水で解凍した後、これを濡れ布で包んで5℃の下で保存し、保存後805分まで5分間隔で分光反射率の測定を行った。尚、図2には保存開始時T0、120分経過後T1、325分経過後T2、並びに805分経過後T3の分光反射率を示す。
【0015】
図2から明らかなように、保存開始時T0は吸収極大が560nm付近にあり、典型的な還元型のスペクトルを示すが、時間の経過と共に先ず酸化型の特徴、次いでメト型の特徴(630nm付近におけるスペクトルの変化量が大)が表れることが判る。
【0016】
そこで、本発明は630nm付近のスペクトルの変化からメト化の進行度を捉えるため、上記の測定結果を基に5分間隔の保存時間ごとに580〜700nmの波長範囲を対象として分光反射率の回帰分析を行い、上記の波長範囲に含まれる波長幅10nmの各波長成分の波長Xとその反射率yとの関係を最も良く表す回帰曲線式{y=f(X)}を求めた。
【0017】
【数1】
Figure 0003663373
そして、上記の回帰曲線式(数1)により与えられる回帰近似曲線の変曲点を求め、5分間隔の保存時間ごとに波長範囲580〜700nmに存在する最も低波長側の1つの変曲点に対応する波長成分の波長を変曲点波長λwとして抽出した。その結果を下表1に示す。
【0018】
尚、関数y=f(X)が点X=αの近くで3回微分可能で、且つy=f(X)の二次導関数f(2)(X)が連続であるとき、f(2)(α)=0,f(3)(α)≠0であれば、X=αに対応する点がy=f(X)の変曲点であるから、導出すべき回帰曲線式は3次式であれば足りるが、本例ではこれをより相関率の高い上記のような4次式とし、同式とその変曲点とを市販の表計算ソフト『Microsoft(R) Excel for Windows95』を用いて算出した。
【0019】
【表1】
Figure 0003663373
表1から明らかなように、変曲点波長λwは保存開始時で674.2nmであり、115分経過後以降は経時的に低波長側へと変化し、保存後805分では611.23nmとなった。尚、保存開始時から保存後115分までの間で変曲点波長λwにばらつきが認められるが、これは酸化型ミオグロビンの影響によるものと考えられる。
【0020】
尚、図1に示したミオグロビンの3形態(還元型A、酸化型B、メト型C)について、580〜700nmの波長範囲で変曲点波長を調べたところ、還元型Aで675nm、酸化型Bで654.5nm、メト型Cで606.7nmであった(※1)。
【0021】
次に、変曲点波長λwを横軸、保存時間Tを縦軸にとり、表1を直交座標系で表すと図3のようになり、保存時間の逆数1/Tを縦軸にとると図4のようになる。ここに、変曲点波長と保存時間との関係式は、本例において上記の表計算ソフトを用いて、
1/T=2.0579×10−5λw 3-0.0391λw 2+24.813λw-5244.574
(相関係数r2=0.98)となった。
【0022】
ここに、メト化率M=κ(2.0579×10-5λw 3-0.0391λw 2+24.813λw-5244.574)+εとし、定数κ,εを求めると、上記※1からλw=654.5のとき、メト化率=0%、λw=606.7のとき、メト化率=100%であるから、メト化率は次式で表される。
【0023】
【数2】
Figure 0003663373
尚、上記のメト化率と変曲点波長との関係を直交座標系を用いて表すと図5のようになる。
【0024】
ここで、本発明によれば上記のように表される演算式(数2)を用いて、メトミオグロビンを含むマグロ肉におけるメトミオグロビンの生成率を算定し、その算定値から当該マグロ肉が赤色に発色するのか、又は褐色に褪色するのかを判別することができる。
【0025】
その手段として、本発明は後述するような検査装置(分光測光器)を用い、図6に示すよう先ず赤色色素タンパク質を含む赤身魚(本例においてマグロ肉)の肉塊表面に、波長が580〜700nmのスペクトル(連続スペクトル)を含む所定の分光分布を有する光(波長400〜700nmの可視光)を照射する。そして、その肉塊表面からの反射光を波長幅0.1〜20nm、好ましくは10nm間隔の波長成分に分光し、その各波長成分ごとに反射率を測定する。
【0026】
特に、上記の式(数1)を得たときのようにして、所定の波長範囲580〜700nmに含まれる各波長成分の波長X′と反射率y′との関係を最もよく表す回帰曲線式{y′=f(X′);X′について3回微分可能なn次多項式/本例において4次多項式}を最小二乗法などによって導出し、その回帰曲線式で与えられる回帰近似曲線の変曲点を求める。ここで、580〜700nmの波長範囲に変曲点が1つだけ存在する場合は、これに対応する波長成分の波長を対象データとして抽出し、上記波長範囲に変曲点が2つ以上存在する場合にはその波長範囲内における最も低波長側の1つの変曲点に対応する波長成分の波長を対象データとして抽出する。
【0027】
尚、図5に示したようなグラフを予め作成しておき、これに上記のようにして得た対象データを照らしてメト化率を読み取ることもできるが、好ましくは対象データを基に上記のようにして得た演算式(数2)からメト化率を算定、算出する。つまり、対象データを演算式(数2)のパラメータλwに代入して演算を行い、その結果をメト化率として取得する。
【0028】
ここに、そのメト化率が例えば0%であったときは、検査した肉塊が褐色気味であっても、その肉塊がやがて鮮明な赤色に発色(ミオグロビンが還元型から酸化型へ移行)すると判断できる。又、得られたメト化率が例えば30%であって、検査した肉塊が褐色気味であれば、その褐色化がやがて明瞭になることが判り、メト化率が40%程度であれば近日中にも褐色化が明瞭になると判断できる(ミオグロビンの酸化型からメト型への移行による)。尚、メト化率が60%以上であるような場合は、以上のような検査をしなくとも肉塊の褐色化を目視で認めることができる。
【0029】
因に、マグロ肉は冷蔵保存中にメト化が進行するもミオグロビンが還元されることはないことが確認されているが、123の検体(マグロ肉)につき本発明による方法でメト化率を調べたところ何れも実証通り保存後にメト化率の増加傾向が認められたのに対し、公知の色度指数(Lab値)では123検体中、保存後のa値が84検体で低下し、39検体で増加した。又、L値は保存後に低下したが、a値およびb値は大きなばらつきが認められた。このことから、本発明よる方法はLab値と比較してマグロ肉の色調変化をより正確に捉えられると考えられる。
【0030】
次に、かかる検査装置について説明すれば、図7はその好適な一例を示した斜視図、図8はその部分断面図であり、図9にはそのロジック回路を示す。本例において、検査装置はミノルタ株式会社の分光測光器CM-525iを主体として構成され、後述する記憶部にはメト化率を算定するための演算式として例えば上記の演算式(数2)が格納され、装置上部には演算式(数2)による演算結果を表示する出力手段としての液晶ディスプレイ1が設けられる。2は測定対象すなわち赤色色素タンパク質を含む赤身魚の肉塊表面に所定の分光分布を有する光を照射するための照射光学系であり、これは光源3およびその放射光を拡散する中空球体4(積分球)から構成され、中空球体4の底部には光源3からの放射光を肉塊表面に照射するための開口部5が形成される。尚、光源3は分光分布が判っている標準光源であり、本例装置ではその光源3として放射光の波長範囲が400〜700nmのパルスキセノンランプが用いられる。
【0031】
又、6は開口部5より中空球体4内に入射する反射光の光路上に設けられる集光レンズ、7はその集光レンズ6による集光部分に配置される受光系(分光センサ)であり、この分光センサ7は当該部分に到達した反射光を波長幅0.1〜20nm(本例において10nm)間隔の波長成分に分光する回折格子などの分光素子、並びにその分光素子で分けた波長成分を個別に検出する光センサから成り、その光センサとしてはシリコンフォトダイオードアレイが用いられる。尚、中空球体4には光ファイバ8の一端が接続されると共に、分光センサ7の近隣には光ファイバ8による伝達光を検出する別の光センサ9が設けられる。そして、分光センサ7は照光面(赤身魚の肉塊表面)からの反射光を、分光センサ9は中空球体4内に拡散された光源3の放射光をそれぞれ分光し、その光の強度に応じた電流をデータ処理手段10に出力する。ここに、分光センサ7,9からの出力を後述のCPUで演算処理することにより、光源3の分光特性および光量の僅かな変動を補正し、分光センサ7,9の出力値の比から正確な分光反射率を得ることができる。
【0032】
一方、データ処理手段10は、図9に示すよう分光センサ7,9からの電流出力をA/D変換するアナログ処理回路11、種々の演算を実行する演算回路12(CPU)、並びにその演算に必要なデータなどを格納する上記の記憶部13などから構成される。ここに、記憶部13は本例において演算式(数2)が格納されるメモリ13a(EEPROM)ほか、メモリ13b(ROM)、メモリ13c(SRAM)、並びにメモリ13d(RAMカード)から成る。
【0033】
そして、演算回路12はアナログ処理回路11でA/D変換された信号から各波長成分の反射率を求め、各波長成分の波長と反射率とを対応させた分光データとしてメモリ13cに格納するほか、その分光データから上記の関数式(数1)を得たときのようにして、所定の波長範囲(580〜700nm)に含まれる波長成分の波長X′と反射率y′との関係を表す回帰曲線式{y′≒f(X′);X′ について3回微分可能なn次多項式(n=3〜5)/本例において4次多項式}を導出し、その回帰曲線式で与えられる回帰近似曲線の変曲点を求め、波長範囲580〜700nm内に1又は2以上の変曲点が存在する場合に、その波長範囲内に存在する最も低波長側の1つの変曲点に対応する波長成分の波長を対象データとして抽出し、これをメモリ13c又は13dに格納する。又、その対象データを基にメモリ13aに格納された演算式(数2)からメト化率を求める演算を実行し、その演算結果をメト化率としてメモリ13c又は13dに格納する。
【0034】
因に、回帰曲線式やその変曲点を求めるためのプログラムは例えばメモリ13bに格納される。又、出力手段としての液晶ディスプレイ1は上記のようなデータ処理手段10に信号線を介して接続され、その画面上にデータ処理手段で得られたメト化率が数値化して表示されるようになっている。
【0035】
尚、データ処理手段としてパーソナルコンピュータ本体を用い、出力手段としてコンピュータ本体に接続するCRT、LCD、又はプリンタなどを利用することもできる。
【0036】
以上、本発明について説明したが、メト化率を求める演算式は上記した形式に限るものでなく、例えば波長にかかる係数を小数第3位までの数値で表すようにしても良い。又、対象魚はマグロすなわち本マグロ、メバチ、キワダ、インドマグロ、又はタイセイヨウマグロなどのサバ科マグロ属ほか、カツオ、サバ、イワシなどが挙げられる。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば赤色色素タンパク質を含む赤身魚の肉塊表面に照射した光の分光反射率を基にして、魚肉中におけるメト化率を算定するようにしていることから、魚肉を破砕せずしてそのメト化率を容易且つ迅速に取得し、その値から色調の変化を予知することができる。
【0038】
特に、肉色の微妙な違いを目視で見分けることによる判断ミスがなく、魚の目利きに長けた者でなくとも定量的に示されるメト化率から肉色の変化を知り得るので肉質の良否を誰でも適正に判断でき、しかも魚肉を破壊せずして検査できることから魚市場などにおいて良質の魚をその場で可及的安価に仕入れる事が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】メトミオグロビンの3形態の分光反射率特性を示すグラフ
【図2】マグロ肉の保存時間に関係する分光反射率の変化を示すグラフ
【図3】マグロ肉の保存時間と変曲点波長の関係を示すグラフ
【図4】マグロ肉の保存時間と変曲点波長の関係を示すグラフ
【図5】変曲点波長とメト化率の関係を示すグラフ
【図6】本発明に係る検査法を示すブロック図
【図7】本発明に係る検査装置を示す斜視図
【図8】同検査装置の部分断面図
【図9】同検査装置の制御系を示すブロック図
【符号の説明】
1 液晶ディスプレイ(出力手段)
2 照射光学系
3 光源
4 中空球体
7 分光センサ(受光系)
10 データ処理手段
12 演算回路(CPU)
13 記憶部

Claims (5)

  1. 赤色色素タンパク質を含む赤身魚の肉塊表面に所定の分光分布を有する光を照射し、肉塊表面からの反射光を分光して所定の波長範囲内における各波長成分の波長とその反射率との関係を表す回帰曲線式を導出し、特定の変曲点を抽出した後、回帰近似曲線の変曲点に対応する波長と保存時間との関係から得られる演算式を用いて前記肉塊の色調の経時変化を予知するための規準と成すメトミオグロビンの生成率を算定することを特徴とする赤身魚の肉性状検査法。
  2. 赤色色素タンパク質を含む赤身魚の肉塊表面に所定の分光分布を有する光を照射し、肉塊表面からの反射光を分光して所定の波長範囲内における各波長成分の波長とその反射率との関係を表す回帰曲線式を導出し、その回帰曲線式で与えられる回帰近似曲線に上記の波長範囲で1又は2以上の変曲点が存在する場合、その波長範囲内における最も低波長側の1つの変曲点に対応する波長を対象データとして抽出し、その対象データを基にして予め設定した演算式から前記肉塊の色調の経時変化を予知するための規準と成すメトミオグロビンの生成率を算定することを特徴とする赤身魚の肉性状検査法。
  3. 赤色色素タンパク質を含む赤身魚の肉塊表面に少なくとも波長が580〜700nmのスペクトルを含む光を照射し、肉塊表面からの反射光を波長幅0.1〜20nm間隔の波長成分に分光して波長範囲580〜700nm内における波長幅0.1〜20nmの各波長成分の波長とその反射率との関係を表す回帰曲線式を導出し、その回帰曲線式で与えられる回帰近似曲線に波長範囲580〜700nm内で1又は2以上の変曲点が存在する場合、その波長範囲580〜700nm内における最も低波長側の1つの変曲点に対応する波長を対象データとして抽出し、その対象データを基にして予め設定した演算式から前記肉塊の色調の経時変化を予知するための規準と成すメトミオグロビンの生成率を算定することを特徴とする赤身魚の肉性状検査法。
  4. マグロ、メバチ、キワダ、インドマグロ、又はタイセイヨウマグロなどのサバ科マグロ属を対象魚とする請求項1〜3の何れか一項に記載した赤身魚の肉性状検査法。
  5. 赤色色素タンパク質を含む赤身魚の肉塊表面に所定の分光分布を有する光を照射する照射光学系と、肉塊表面からの反射光を波長幅0.1〜20nm間隔の波長成分に分光してその各波長成分を個別に検出する受光系と、この受光系による各波長成分の検出量からその各波長成分の波長と反射率との関係を表す回帰曲線式を導出するデータ処理手段とを備え、このデータ処理手段は、上記回帰曲線式で与えられる回帰近似曲線の変曲点を求めて所定の波長範囲内に存在する最も低波長側の1つの変曲点に対応する波長を対象データとして抽出する演算回路と、上記対象データからメトミオグロビンの生成率を算定するための演算式が格納される記憶部とを具備すると共に、データ処理手段には上記演算式による演算結果を表示するための出力手段が接続されて成ることを特徴とする赤身魚の肉性状検査装置。
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