JP3661254B2

JP3661254B2 - 軸受兼用組合せシール

Info

Publication number: JP3661254B2
Application number: JP34356795A
Authority: JP
Inventors: 大武藤; 利男門真; 也寸志中島
Original assignee: 株式会社阪上製作所
Priority date: 1995-12-28
Filing date: 1995-12-28
Publication date: 2005-06-15
Anticipated expiration: 2015-12-28
Also published as: JPH09177987A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、往復動のロッドまたはピストン用組合せシール、特に密封性能向上と摩擦低減および装着性を改善した、流体圧シリンダの軸受兼用組合せシールに関する。
【０００２】
【従来の技術】
図１は、従来の軸受兼用組合せシールをピストンロッドに装着したときの態様を模式的に説明するもので、シリンダー10内に組込まれたピストン12およびピストンロッド14にはぞれぞれ軸受兼用組合せシール16、18がそれぞれ装着されている。特に、このような組合せシールは車輛用ブレーキ装置等に用いる空気圧シリンダーに多く採用されている。
【０００３】
また、従来の一般的な技術としては、図４(b) に示すようなシール部と軸受部が別々の溝に取付けられていた。
図２は、ピストン12の断面図であり、これに設けられている従来の軸受兼用組合わせシール16は、ピストン表面の一段目溝19に装着される合成樹脂製薄板から成る円筒状リング20と、二段目溝21に装着されてこの円筒状リング20を背後から支持する弾性リング22とから構成されている。
【０００４】
ところで、近年に至り、コンパクト化と制御特性向上が求められるようになり、それに伴って、上述のような空気シリンダーにおいても高圧化と低摩擦係数という本来相反する特性を同時に満足する軸受兼用組合せシールが求められるようになってきた。
しかし従来のものでは密封性に劣る、特に圧力が高いほど漏れが多くなるなどの欠点も見られ、そのような要求を完全に満たすことはできなかった。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
かくして、本発明の目的は、高圧においても密封性の低下を解消できる軸受兼用組合せシールを提供することである。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
ここに、本発明は、溝底の浅い一段目溝の底の端部に溝底の深い二段目溝が形成された構造の溝に装着されるように構成されたシールであって、前記二段目溝内に装着される弾性リングと、該弾性リングを覆うように前記一段目溝内に装着される円筒リングとを組み合わせたシールであり、前記円筒状リングの接触面側の前記１段目溝と２段目溝との境界近傍に相当する位置に環状溝部を設けたことを特徴とする軸受兼用組合せシールである。
【０００７】
【発明の実施の形態】
図３は、本発明にかかる軸受兼用組合せシールの部分断面図であり、往復動可能なピストン部あるいはロッド部において溝底面が摺動面に平行で深さの異なる２段の溝を設ける。
【０００８】
ピストン部あるいはロッド部30に設けた溝のうち、溝底の深い２段目溝32には合成ゴム等の弾性リング34を装着し、他方１段目溝36には、１段目溝の長さにほぼ等しい長さの環状のＶ溝40付合成樹脂 (例：テフロン、ナイロン、デルリン等) 製薄板円筒状リング38を装着し、これらを組合せて軸受兼用シールとするものである。
【０００９】
環状の前記Ｖ溝40は、合成樹脂製薄板円筒状リング38を前記１段目溝36に取付ける際の１段目溝36と２段目溝32との境界近傍に相当する位置に設けられる。図示例のＶ溝40はＶ断面の他、Ｕ断面半円弧状、矩形断面などとしてもよい。
図４は接触面圧分布を示すもので、図４(a) および同(b) が従来技術のもの、図４(c) が本発明のものである。
【００１０】
従来形状は円筒状リング20が単純な矩形断面のため、弾性リング22からの押圧力により円筒状リング20の摺動面全体で相手摺動面に接触する。このため接触面圧分布は図４(a) で矢印で示すようになり、密封性能が悪く、摩擦力も大きくなる。しかし、図４(b) に示すように、軸受部42とシール部44とを分離させると、シール部44には弾性リング22からの押圧力が均等にかかるため全体として接触面圧は低い。
【００１１】
一方、本発明にしたがって構成される組合せシールでは図３および図４(c) に示すように、円筒状リング38の摺動面に環状にＶ溝40を設けることにより、バックリングによる円筒状リングを径方向に押す力が背後に設けられた弾性リング34に接する側の部分に集中するため、接触面圧分布は図４(c) に矢印で示すようにそのピークを、Ｖ溝を設けなかった場合に比較して、高くすることができる。
【００１２】
図５は円筒状リング36に設けた溝部50の部分拡大詳細図である。溝部50の深さはＶ溝40のときはｂ、点線で示すように凹形溝52のときはｃで表わされるが、それらは同筒状リング36の軸受部とシール部を機能的に分割できるものであればよいが、強度機能の両面から円筒リング36の肉厚(t) の2/3 以下であることが好ましく、また溝部50の幅ａは深さと同等あるいはそれ以下が好ましい。
【００１３】
このように、本発明にかかる構造を採用することにより、従来品と比較し、密封性能が向上し摩擦が軽くなる。
円筒状リングのシール部は溝部から端部方向へ拡張されるようになるため、端部の面圧が高くなりシール性が向上する。従って、本発明にかかるシールは特に空気圧用単動シリンダに対して効果を発揮する。
【００１４】
また、本発明にかかる軸受兼用組合せシールは軸受部が弾性リングの力を受けないため軸受けとしての機能を十分に発揮できる。
しかも、装着時には円筒状リングが溝部で変形するため、従来形状のものより容易に装着できる。
【００１５】
【実施例】
ここに、本発明の作用効果をさらに一層明らかにするために、図４(a) に示すようにＶ溝を設けていない従来品と、図４(b) による分割タイプのものと、そして図３および図４(c) に示す本発明にかかる組合せシールとを車輛ブレーキ用空気圧シリンダに同一条件で使用して、その特性を相対的に評価した。
結果は、表１にまとめて示す。なお、評価はいずれも４段階で行い、不良→良好の程度を×、△、○、◎で４段階で評価した結果をそれぞれ示す。
【００１６】
【表１】

【００１７】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、一体的に作られた同筒状リングの接触面を溝部によりシール面と軸受面に機能的に二つに分割したことから次のような優れた作用効果が得られる。
【００１８】
▲１▼バックリングによる押圧力が集中的に作用することから全体として密封性能が向上した。
▲２▼シール性が高められたにも係わらず、全体として接触面圧が低下したことから摩擦が軽くなった。
【００１９】
▲３▼接触表面に溝部を設けることで円筒状リングの可撓性が高まり装着が容易になった。
▲４▼溝部が潤滑剤を溜める機能をもつことで、摩擦が少なくなり、かつ潤滑切れなどによる異常摩耗がなくなった。
【００２０】
▲５▼軸受部に不必要な面圧が掛からず、軸受としての機能が高まった。
本発明にかかる軸受兼用組合わせシールに見られるこのような顕著な作用効果は、特に空気圧用シリンダでその効果が大きかった。
【図面の簡単な説明】
【図１】軸受兼用の組合わせシールを組込んだピストンロッドの概略説明図である。
【図２】従来技術における軸受兼用組合せシールの使用状況の説明図である。
【図３】本発明にかかる軸受兼用組合せシールの断面図である。
【図４】図４(a) および(b) は、従来技術における軸受兼用組合せシールの接触面圧分布図であり、図４(c) は、本発明にかかる軸受兼用組合せシールの接触面圧分布図である。
【図５】本発明にかかる軸受兼用組合せシールの溝部の形状の説明図である。

Claims

溝底の浅い一段目溝の底の端部に溝底の深い二段目溝が形成された構造の溝に装着されるように構成されたシールであって、前記二段目溝内に装着される弾性リングと、該弾性リングを覆うように前記一段目溝内に装着される円筒リングとを組み合わせたシールであり、前記円筒状リングの接触面側の前記１段目溝と２段目溝との境界近傍に相当する位置に環状溝部を設けたことを特徴とする軸受兼用組合せシール。