JP3659137B2 - トルクシミュレータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両に搭載されるエンジンやモータ等の原動機、あるいは変速機などを試験対象としてその回転軸にダイナモメータからテストトルクを付与することにより、同試験対象を擬似的にその作動環境において試験を行うトルクシミュレータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば、車両用エンジンの試験システムとして、同エンジンを車両に搭載することなくテストベンチ上でその特性を計測するようにしたものが知られている。こうした試験システムでは、エンジンの出力軸とダイナモメータとを回転駆動軸によって連結し、ダイナモメータからエンジンにテストトルクとして負荷トルクを付与することで、エンジンが車両に搭載されて作動(運転)される状態を擬似的に作り出すようにしている。
【0003】
このような試験システムとして例えば、特開平10−176978号公報には、オートマティック車のトルクコンバータによって生じる動的負荷や変速時に自動変速機に生じる動的負荷を求め、これら求めた負荷に相当するトルクをダイナモメータによってエンジンに付与する装置が記載されている。
【0004】
このように、トルクコンバータや自動変速機によって生じる動的負荷を求め、これをエンジンに付与することで、自動変速機のシフトチェンジ時などにも対応した高精度の試験を行うことができるようになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のシステムでは、上記各動的負荷を求めるのに、数点の折れ線で表現されるマップを用いている。このため、システムとしても、それら各マップとの交信が必要になるために、負荷演算周期が長くなり、例えば自動変速機のシフトチェンジ時の負荷等を求めるにも、これを精度よく再現することが困難である。また、近年の電子制御による自動変速機などのような、多様化された複雑な制御ロジックが用いられるものでは、その負荷トルク特性も、上記数点の折れ線からなるマップ特性では表現しきれないものとなっている。
【0006】
なお、上述したエンジンの試験システムに限らず、車載に搭載される電動モータの試験システム、あるいはこれらエンジンやモータなどの原動機の代わりにダイナモメータを変速機に結合し、同変速機の試験のためにテストトルクを発生するものなどにあっても、それらトルクをシミュレートする装置としてのこうした実情は概ね共通したものとなっている。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、いかに複雑な制御系のトルクをシミュレートする場合であれ、これをより的確且つ高速に行うことのできるトルクシミュレータを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、車両の原動機の回転軸とダイナモメータとを連結し、同原動機の設定された作動環境においてその回転軸が連結される自動変速機に生じるトルク若しくはその相当値を所定の関数曲線にモデル式化し、該モデル式に基づいて同原動機の回転軸にかかるトルクを前記ダイナモメータを通じてシミュレートするトルクシミュレータであって、前記モデル式化するトルク若しくはその相当値は、前記自動変速機のシフトチェンジにおいて生じるトルク若しくはその相当値であり、前記モデル式化する所定の関数曲線の係数を、前記原動機の設定された作動環境において生じる環境パラメータを説明変数とする線形の重回帰式の目的変数として求めたことを特徴とするトルクシミュレータ。ことをその要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、モデル式化するトルク若しくはその相当値を所定の関数曲線にモデル式化し、該モデル式の係数を同試験対象の作動環境において生じる環境パラメータを説明変数とする重回帰式の目的変数として求めることで、マップを用いることなく複雑な制御パラメータを反映させた走行試験を簡易に行うことができるようになる。
【0010】
すなわち、駆動伝達系の動的特性と上記環境パラメータとの間の相関関係に着目することで、何ら力学的な複雑な方程式を解くことなく、同パラメータに応じたトルク若しくはその相当値を得ることができる。
【0012】
さらに、複雑な制御の組合せの影響を反映し易い部分である、変速機内に生じるトルクを多変量解析の手法を用いてモデル化することで、マップを用いることなく複雑な制御パラメータを反映させた走行試験を簡易に行うことができるようになる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記モデル式化する所定の関数曲線はロジスティック曲線であることをその要旨とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記ロジスティック曲線は、前記モデル式化するトルク若しくはその相当値をT、経過時間をt、前記環境パラメータと線形関係にある曲線係数をA,B,Cとして、
T=A/(1+exp(−B×t+C))
なる式にてモデル式化されることをその要旨とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、重回帰係数をK1i,K2i,K3i(i=1、2、…)、前記環境パラメータを説明変数Xi(i=1、2、…)とするとき、目的変数である前記曲線係数A,B,Cは、各々
A=Σ(K1i×Xi)
B=Σ(K2i×Xi)
C=Σ(K3i×Xi)
として算出されることをその要旨とする。
【0016】
有段の自動変速機においては、変速の際に同自動変速機内において生じるクラッチやブレーキの係合の変化が、トルクの変動の最も大きな要因となる。
この点、上記各構成によれば、このクラッチやブレーキの係合変化を、変速前のクラッチやブレーキの係合状態が変速に際して解除されていく態様を表現する仮想上のモデル関数と、変速完了後のクラッチやブレーキの係合状態へと係合していく態様を表現する仮想上のモデル関数とし、それぞれ多変量解析の手法を用いてロジスティック曲線でモデル化することで、マップを用いることなく複雑な制御パラメータを反映させた走行試験を簡易に行うことができるようになる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記環境パラメータは、少なくとも電子スロットル開度と自動変速機の入力軸の回転速度と自動変速機の出力軸の回転速度とを含むことをその要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、環境パラメータとして、少なくとも電子スロットル開度と自動変速機の入力軸の回転速度と自動変速機の出力軸の回転速度とを含むために、実際の自動変速機において行われるフィードバック制御等を反映したトルク変動を上記ロジスティック曲線によって的確に表現することができるようになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるトルクシミュレータを、自動変速機を搭載した車載エンジンの試験システムに適用した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1に、本実施形態のトルクシミュレータを含むこうした試験システムについて、その全体の概略構成を示す。
この試験システムは、ベンチ30上に設けられた車載ガソリンエンジン(以下単にエンジンという)10の出力軸(回転軸)に対してダイナモメータ20に発生するトルクを伝達軸50から伝達することにより、同エンジン10を擬似的に車両に搭載した負荷状態にして各種試験を行うものである。そして同システムは、大きくは、こうした仮想車両の走行パターンを設定する走行パターン設定部100及び上記エンジン10の各部を制御するエンジン制御部110、並びに、ダイナモメータ20をはじめ、車速演算部200、走行抵抗演算部210、負荷トルク演算部220、ダイナモメータ制御部230等の各部から構成されるトルクシミュレータを有して構成されている。
【0021】
一方、こうした試験システムの試験対象であるエンジン10には、その燃焼室(図示略)に吸入空気を供給するための吸気通路12と、同燃焼室内から既燃焼ガスを外部に排出するための排気通路(図示略)とが接続されている。
【0022】
また、吸気通路12には、同吸気通路12内に吸入される空気量をバルブの開閉によって調整する電子制御式のスロットルバルブ(電子スロットル)13が設けられている。同スロットルバルブ13の下流には、吸気通路12の内部に燃料を噴射するためのインジェクタ(図示略)が取り付けられている。このインジェクタから噴射された燃料は、同吸気通路12内で吸入空気と混合されて燃焼室へ供給される。燃焼室では、この供給された混合気に着火するための点火プラグ(図示略)が設けられている。
【0023】
上記スロットルバルブ13や、インジェクタ、点火プラグ等、エンジン10を制御する各種アクチュエータは、走行パターン設定部100から所定のタイミング周期で出力される目標車速に仮想車両の車速(以下、実車速という)を近似させるべく、エンジン制御部110によって制御される。前記走行パターン設定部100は、上記目標車速の他、仮想車両の走行する路面の勾配パターンや、外気温などの走行環境パターンを記録している。
【0024】
次に、トルクシミュレータについて説明する。
このトルクシミュレータは、負荷トルク演算部220によって算出される負荷トルクの値等から上記実車速を算出する車速演算部200や、同車速演算部200から供給される実車速に関する情報及び前記走行パターン設定部100から供給される路面の勾配等の情報に基づいて仮想車両の走行にかかる抵抗を算出する走行抵抗演算部210、回転速度センサ41やスロットルセンサ14等から供給されるエンジン10の運転状態及び走行抵抗演算部210によって算出される車両にかかる抵抗等の情報に基づいてエンジン10にかかる負荷トルクを算出する負荷トルク演算部220、同負荷トルク演算部220によって算出される負荷トルクとトルクセンサ42によって検出される実負荷トルクとの偏差に基づいた制御信号を生成し、同信号によってダイナモメータ20を制御するダイナモメータ制御部230を備えている。
【0025】
このように負荷トルク演算部220によって算出される負荷トルクをダイナモメータ20が発生させるべく、同算出された負荷トルク値に基づいた制御信号がダイナモメータ20に出力されるとともに、同ダイナモメータ20によって実際に生成される実負荷トルクがトルクセンサ42によって検出される。そして、この検出された実負荷トルクの大きさに関する信号が、ダイナモメータ制御部230にフィードバックされることで、エンジン10に所望の負荷トルクが付与されるようにしている。
【0026】
ここで、本実施形態における負荷トルク演算部220による負荷トルクの算出態様について更に説明する。
図2は、本実施形態における仮想車両の動力伝達系の構成を示す概念図である。同図2に示されるように、同動力伝達系は、大きくはエンジン10の出力軸と連結するトルクコンバータ310や、同トルクコンバータ310と入力軸311を介して連結する自動変速機320、同自動変速機320と出力軸329を介して連結する駆動系330によって構成されている。
【0027】
ここで、トルクコンバータ310から出力される第1のトルクtω1は、次のようにして設定される。まず、負荷トルク演算部220は、所定の周期毎に算出されるトルクコンバータ310の第1の回転速度ω1と、先の回転速度センサ41によって検出されるエンジン10の回転速度ωeとの速度比(ω1/ωe)を算出する。次に、算出された速度比(ω1/ωe)に基づいて、同負荷トルク演算部220内のメモリに記録されたマップを読込む。すなわち、上記第1のトルクtω1と、エンジン10の出力トルク、換言すればトルクコンバータ310に入力されるトルクtωeとの比であるトルク比t(ω1/ωe)と、前記速度比(ω1/ωe)との関係を定義するマップを読込む。そして、このマップによって、速度比(ω1/ωe)に対応したトルク比t(ω1/ωe)が算出される。
【0028】
上記算出されたトルク比t(ω1/ωe)は、次回の計算周期におけるトルク比t(ω1/ωe)として設定され、例えば、自動変速機320へ入力される第1のトルクtω1の算出に用いられる。このトルクコンバータ310から出力される第1のトルクtω1は、自動変速機320において所定の変更を受ける。
【0029】
そして、自動変速機320からは、出力軸329を介して第2のトルクtω2や、第2の回転速度ω2が出力される。これらの第2のトルクtω2や、第2の回転速度ω2が、駆動系330において最終的に駆動輪の回転力へと変換される。
【0030】
駆動系330は、プロペラシャフトや、デファレンシャルギヤ、タイヤ等をモデル化する部分である。具体的には、自動変速機320から出力される第2のトルクtω2や第2の回転速度ω2が、プロペラシャフトやデファレンシャルギヤを伝達する過程で変化する。この変化が駆動系330のモデルに基づいて算出され、最終的に駆動輪へ伝達される伝達トルクが算出される。この伝達トルクと駆動輪から受けるトルクとの偏差によって、仮想車両の加速及び減速が決定される。そして、これから最終的な駆動輪の回転速度が決定され、この駆動輪の回転速度に関する情報に基づいて先の車速演算部200では実車速が算出される。
【0031】
なお、上記駆動輪から受けるトルクは、先の走行パターン設定部100によって設定される走行路の勾配情報や、車速演算部200によって算出される実車速に基づいて走行抵抗演算部210によって算出される走行抵抗に関する情報に基づいて算出される。
【0032】
このように、図2に示す動力伝達系のモデルに基づいてエンジン10のトルクtωeが受ける変更を的確に反映することで、実走行に近い高精度の走行試験を行うことができるようになる。そして、仮想車両の走行において所定の条件が満たされると、自動変速機320によって変速が行われる。この変速が行われるときには、トルクコンバータ310や自動変速機320内での動力変化を考慮した負荷トルクがダイナモメータ20によって生成される。以下、これについて説明する。
【0033】
図3は、自動変速機320に設定される各クラッチやブレーキの配置態様を示すスケルトン図である。同図に示されるように、この自動変速機320は、副変速機401と主変速機402とを備えている。
【0034】
副変速機401を構成するオーバードライブ用遊星歯車機構410のキャリア411は、先の図2に示すトルクコンバータ310と連結する自動変速機320の入力軸311に連結されている。そして、この遊星歯車機構410におけるキャリア411とサンギヤ412との間には、クラッチC0とワンウェイクラッチF0とが設けられている。このワンウェイクラッチF0は、サンギヤ412がキャリア411に対し入力軸311の回転方向を正として相対的に正回転する場合に係合するように設定されている。
【0035】
上記サンギヤ412の回転は、ブレーキB0によって固定される。また、上記遊星歯車機構410を構成するリングギヤ413は、主変速機402への中間入力軸414と連結されている。
【0036】
上記態様にて構成される副変速機401によって、入力軸311の回転速度は同一速度又は、増速されて上記中間入力軸414から出力される。すなわち、クラッチC0又はワンウェイクラッチF0が係合した状態では、遊星歯車機構410が一体的に回転するため、中間入力軸414は入力軸311と同速度で回転する。一方、ブレーキB0を係合させることでサンギヤ412を固定すると、リングギヤ413が入力軸311の回転速度に対して増速されて回転する。
【0037】
一方、主変速機402は、3組の遊星歯車機構420、430、440を備えて構成されており、これらを用いて同主変速機402では後進1段と前進4段とを設定する。以下、この主変速機402の係合態様について説明する。
【0038】
第1の遊星歯車機構420のサンギヤ422と、第2の遊星歯車機構430のサンギヤ432とが互いに一体的に連結されている。また、第1の遊星歯車機構420のリングギヤ423と第2の遊星歯車機構430のキャリア431と第3の遊星歯車機構440のキャリア441とが一体的に連結されている。そして、この第3の遊星歯車機構440のキャリア441は、出力軸329と連結されている。更に、第2の遊星歯車機構430のリングギヤ433が第3の遊星歯車機構440のサンギヤ442と連結されている。
【0039】
上記第2の遊星歯車機構430のリングギヤ433及び第3の遊星歯車機構440のサンギヤ442と中間入力軸414との間には、前進段にて係合するクラッチC1が設けられている。一方、第1の遊星歯車機構420のサンギヤ422及び第2の遊星歯車機構430のサンギヤ432と中間入力軸414との間には、後進段にて係合するクラッチC2が設けられている。
【0040】
また、上記第1の遊星歯車機構420及び第2の遊星歯車機構430のサンギヤ422及び432は、ブレーキB1によって固定される。更に、これらサンギヤ422と432とには、ワンウェイクラッチF1とブレーキB2とが連結されている。このワンウェイクラッチF1は、同サンギヤ422、432が逆回転するときに係合するように設定されている。
【0041】
更に、上記第1の遊星歯車機構420のキャリア421を固定するブレーキB3、第3の遊星歯車機構440のリングギヤ443を固定するブレーキB4及びワンウェイクラッチF2がそれぞれ設けられている。なお、このワンウェイクラッチF2は、リングギヤ443が逆回転する際に係合するように設定されている。
【0042】
上記態様にて構成される副変速機401と主変速機402において、変速段を設定するためのクラッチ及びブレーキの係合作動表を図4に示す。同図4に示すように、副変速機401と主変速機402とが備えるクラッチやブレーキの係合態様を変化させることで、入力軸311から入力される第1の回転速度ω1や第1のトルクtω1は、出力軸329において所望の回転速度ω2やトルクtω2に変更される。そして、仮想車両の定常走行時には、出力軸329の回転速度ω2や出力トルクtω2が各変速段に応じて先の負荷トルク演算部220において算出される。
【0043】
一方、変速時においては、上記各クラッチやブレーキの係合態様が変化するために、出力軸329の回転速度ω2や出力トルクtω2を仮想車両の定常走行時と同様にして算出することはできない。
【0044】
例えば、先の図3及び図4から明らかなように、4速(4th)での運転時には入力軸311の回転速度が、副変速機401からそのまま出力されていたのが、5速(5th)へ切り替わることで、増速されるようになる。すなわち、それまで一体的に回転していた遊星歯車機構410は、5速走行へ移行する際、ブレーキB0によって遊星歯車機構410のサンギヤ412が固定されることで、同サンギヤ412の回りをキャリア411が公転しながら回転するとともに、リングギヤ413に自身の公転よりも速い回転速度を付与するようになる。ここで、ブレーキB0の作動によりサンギヤ412が固定されるまでの過渡的な期間においては、副変速機401の出力特性は、4速での定常走行時や5速での定常走行時と一致しないものとなる。
【0045】
そこで本実施形態においては、この変速時の過渡的な出力特性を考慮すべく、(1)変速前の変速機320内のクラッチやブレーキの係合状態において出力軸329側へ出力される伝達トルクを100%とする。そして、変速が完了するまでの過渡的な期間において徐々に解除されていく前記係合状態によって出力軸329側へ仮想的に伝達されるトルクの減衰態様を定量的に評価する。
(2)変速完了後の変速機320内のクラッチやブレーキの係合状態において出力軸329側へ出力される伝達トルクを100%とする。そして、変速開始から完了までの過渡的な期間において徐々に前記状態へと係合されていくことによって出力軸329側へ伝達されていくトルクの増加態様を定量的に評価する。
(3)上記評価される2つの係合状態の推移及び変速機320へ入力される第1のトルクtω1に基づいて、同変速機320から出力される第2のトルクtω2を算出する。
ようにしている。
【0046】
図5に、上記係合状態の変化を定量的に評価するためのモデル関数を示す。同図5に示すように、変速前の係合状態が過渡期間において徐々に解除されていく態様を評価するモデル関数f1は、変速開始とともに徐々に減少していく右肩下がりの関数として設定されている。一方、変速完了後の係合状態へと徐々に係合されていく態様を評価するモデル関数f2は、変速開始とともに徐々に増加していく右肩上がりの関数として設定される。
【0047】
上記2つの関数によって、過渡期間における変速機320内のクラッチやブレーキの係合状態を評価することで、変速が行われる過渡期間における駆動伝達系に発生するトルク変動を算出ことができるようになる。
【0048】
ところで、この変速の際の過渡的な期間における係合状態の変化態様は、自動変速機320を制御する様々なパラメータに依存している。したがって、エンジン10と連結するダイナモメータ20によって実走行に近い仮想的な走行試験を行うためには、実際の自動変速機の制御パラメータの影響を加味してモデル関数を設定することが望ましい。ただし、同パラメータの影響を加味した複数のモデル関数を予めマップとして記録しておくようにすると、マップの製作に膨大な工数がかかることや、仮にマップが製作できたとしても走行試験中にマップを適宜読み出す際に要する時間が長くなり実走行を精度よくシュミレートすることができないなどの問題を生じる。
【0049】
そこで本実施形態においては、上記2つのモデル関数をロジスティック曲線によって表現するとともに、同ロジスティック曲線の係数を多変量解析における重回帰式の目的変数とし、更に自動変速機の制御パラメータを重回帰式の説明変数に設定する。すなわち、上記変速前の係合状態の解除態様を評価するモデル関数と変速完了後の係合状態への移行態様を評価するモデル関数とは、いずれも上記係数を適宜変更することでロジスティック曲線によって表現することができる。そして、同係数が自動変速機の制御パラメータによって変化する構成とすることで、同ロジスティック曲線をこれらパラメータの影響を加味したモデル関数とすることができるようになる。
【0050】
以下に、このロジスティック曲線の式を示す。
T=A/(1+exp(−B×t+C) …(1)
A=Σ(K1j×Xj) (j=1〜n) …(2)
B=Σ(K2j×Xj) (j=1〜n) …(3)
C=Σ(K3j×Xj) (j=1〜n) …(4)
上式(1)〜(4)において、A、B、Cは、ロジスティック曲線の式(1)の係数である。また、前記係数を目的変数としたときの説明変数Xj(j=1〜n)は、自動変速機320の各種制御パラメータである。更に、K1j、K2j、K3j(j=1〜n)は、重回帰分析における重回帰係数である。
【0051】
上記各説明変数Xj(j=1〜n)となる自動変速機320の各種制御パラメータとしては、例えば、先の図1のスロットルバルブ13の開度や、同自動変速機320の入力軸311の回転速度ω1、同自動変速機320の出力軸329の回転速度ω2、自動変速機320のクラッチやブレーキを作動させる作動油の油温、先の図4に示される係合状態に基づく所望の係合状態へと変速機320のクラッチやブレーキを変化させる各変速指令信号等がある。ここで、回転速度については、実際の自動変速機の制御が回転速度を見ながら油圧によりクラッチやブレーキの係合をコントロールしていること等を反映させたものであり、油温については同作動油の影響を考慮するためのものである。なお、油温については、先の図1の走行パターン設定部100によって設定され、同設定に基づく信号が負荷トルク演算部220に供給される。
【0052】
このように、上式(1)を用いて、そのB及びCを適宜設定するのみで(詳しくは、f1においてはB<0、f2においてはB>0)、上記2つの関数f1及びf2が好適に設定される。そして、これら関数f1及びf2を用いて自動変速機320内で生じるトルク変動を的確に表現することができるため、上記複数のパラメータを反映したマップを用いた場合と比較して制御速度を格段に高速化することができるようになる。
【0053】
次に、上記重回帰係数K1j、K2j、K3j(j=1〜n)の算出手法について簡潔に説明する。この重回帰係数の算出に際しては、
(イ)車両の実際の走行試験によって変速時の駆動伝達系に生じるトルク変動のデータをとる。
(ロ)自動変速機の制御に用いられている既存の制御データから変速時の駆動伝達系に生じるトルク変動を算出する。
などして、データを収集する。そして、同データを用いて変速前の係合状態の解除態様を評価するモデル関数と変速完了後の係合状態への推移を評価するモデル関数とを算出する。次に、上記算出されたモデル関数に基づいて周知の重回帰係数の算出法を用いて同係数を算出する。
【0054】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)変速前の係合状態の解除態様を評価するモデル関数と変速完了後の係合状態へと係合されていく態様を評価するモデル関数とを用いることで、変速時のトルク変動を好適に反映した走行試験を行うことができるようになる。
【0055】
(2)上記モデル関数としてロジスティック曲線を用いることで、上記モデル関数を好適に表現することができるようになる。
(3)上記ロジスティック曲線の係数を重回帰式の目的変数とし、同目的変数に対する説明変数として自動変速機の制御パラメータを設定することで、1つの演算式で自動変速機の複雑な制御を反映することができる。更に、上記説明変数と目的変数との関係を定める重回帰係数は、所定範囲の排気量を有するエンジンにおいて共通して適用可能であることから汎用性が良好である。
【0056】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記実施形態において想定した自動変速機320の構成は、図3及び図4に示すものに限られない。また、上記自動変速機320の制御パラメータも、上述したものに限られず、例えば、エンジン水温などを加えてもよい。更には、例えば走行パターン設定部100において雪道の走行を設定し、同雪道走行時における既存のスリップ防止制御等を考慮してもよい。
【0057】
・上記実施形態においては、変速前の係合状態の解除態様を評価するモデル関数と変速完了後の係合状態へと係合されていく態様を評価するモデル関数とをロジスティック曲線によって表現したが、必ずしもロジスティック曲線に限られない。
【0058】
・更に、上記2つの関数f1及びf2の設定態様についても必ずしも完全に係合した状態において出力軸329側に伝達されるトルクを100%とした比率を表すものにも限られない。
【0060】
・更に、駆動伝達系において生じるトルクをモデル関数として表現する代わりに、同駆動伝達系内の所定箇所のトルク回転速度等のトルク相当値をモデル関数で表現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるトルクシミュレータを適用した一実施形態に関する試験システムの概略構成を示す図。
【図2】同実施形態における仮想車両の駆動伝達系の概念を示す模式図。
【図3】同実施形態において想定される自動変速機のスケルトン図。
【図4】同実施形態において想定される自動変速機の作動係合態様を示す図。
【図5】同実施系形態における変速時の自動変速機のトルク変動を示す図。
【符号の説明】
10…エンジン、12…吸気通路、13…スロットルバルブ、20…ダイナモメータ、30…ベンチ、41…回転速度センサ、50…伝達トルク、100…走行パターン設定部、110…エンジン制御部、200…車速演算部、210…走行抵抗演算部、220…負荷トルク演算部、230…ダイナモメータ制御部、310…トルクコンバータ、311…入力軸、320…自動変速機、329…出力軸、330…駆動系、401…副変速機、402…主変速機、410、420、430、440…遊星歯車機構、411、421、431、441…キャリア、412、422、432、442…サンギヤ、413、423、433、443…リングギヤ。
Claims (5)
- 車両の原動機の回転軸とダイナモメータとを連結し、同原動機の設定された作動環境においてその回転軸が連結される自動変速機に生じるトルク若しくはその相当値を所定の関数曲線にモデル式化し、該モデル式に基づいて同原動機の回転軸にかかるトルクを前記ダイナモメータを通じてシミュレートするトルクシミュレータであって、
前記モデル式化するトルク若しくはその相当値は、前記自動変速機のシフトチェンジにおいて生じるトルク若しくはその相当値であり、前記モデル式化する所定の関数曲線の係数を、前記原動機の設定された作動環境において生じる環境パラメータを説明変数とする線形の重回帰式の目的変数として求めた
ことを特徴とするトルクシミュレータ。 - 前記モデル式化する所定の関数曲線はロジスティック曲線である
請求項1記載のトルクシミュレータ。 - 前記ロジスティック曲線は、前記モデル式化するトルク若しくはその相当値をT、経過時間をt、前記環境パラメータと線形関係にある曲線係数をA,B,Cとして、
T=A/(1+exp(−B×t+C))
なる式にてモデル式化される
請求項2記載のトルクシミュレータ。 - 重回帰係数をK1i,K2i,K3i(i=1、2、…)、前記環境パラメータを説明変数Xi(i=1、2、…)とするとき、目的変数である前記曲線係数A,B,Cは、各々
A=Σ(K1i×Xi)
B=Σ(K2i×Xi)
C=Σ(K3i×Xi)
として算出される
請求項3記載のトルクシミュレータ。 - 前記環境パラメータは、少なくとも電子スロットル開度と自動変速機の入力軸の回転速度と自動変速機の出力軸の回転速度とを含む請求項4記載のトルクシミュレータ。
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