JP3652990B2 - ヘリコプタのアクティブ制振装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘリコプタのアクティブ制振装置に関する。詳しくは、動電型加振器をベースとした慣性型マスダンパーを適応制御で駆動し、取付点近傍の振動を低減するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヘリコプタは、図10に示すように、ローターヘッド1を中心にしてメイン・ローター・ブレード(以下、ブレードという)2をガスタービンエンジン3で高速回転させることにより飛行しており、その際にブレード2作用する周期的加振力を受け、飛行中常に振動を受けている。
この周期的加振力は、ブレード2の枚数や回転速度、更には、外乱による影響ものが含まれ、乗員の疲労の原因となもなり、また、機体構造の疲労破壊や、搭載機器の信頼性低下の原因でもある。
【0003】
このため、従来から種々の防振システムが提案され、大別すると受動型と能動型に分けることができる。
受動型は、ロータ・ハブや胴体に、振り子とバネから成る動吸振機を各所に取付け、振動レベルを下げるものであるが、吸振周波数が一定であるため、ローターの回転数変化に弱い。
又、振り子の揺動軸に取付けられるベアリングの摩擦ダンピングのため、吸振能力に限界があった。
能動型(アクティブ型)は、機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号を制御コンピュータで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号によりアクチュエータを作動し、機体構造に加振力を加えて機体振動を打ち消すようにして防振するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した能動型の防振システムをヘリコプタに適用した発明としては、例えば、ヘリコプタに発生する機体振動を打ち消すためのアクチュエータとして油圧を利用するものがある(特開平7−81693号)。
しかし、この発明は、主として、機体の振動を抑制しようとするため、アクチュエータは機体とローターの間に配置されいた。
そのため、乗員に対して効果的に振動を抑制し得るものではなかった。
また、アクチュエータは、油圧を利用するため位相遅れがあり、効果的に制振することができなかった。
更に、制御方法としても、加速度センサーで検出した値をアクチュエータへ単にフィードバック制御するのみであったため、十分な効果が期待できなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の請求項1に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、ヘリコプタの機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号をコントローラで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号により作動するアクティブ制振装置において、前記制振装置は、前記ヘリコプタのキャビン内の座席下部に配置され、かつ、1軸方向の加振力を電磁石により発生させる並進一軸型制振装置であることを特徴とする。
【0006】
上記課題を解決する本発明の請求項2に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、ヘリコプタの機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号をコントローラで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号により作動するアクティブ制振装置において、前記制振装置は、前記ヘリコプタのローターヘッドのケーシング部に装着され、かつ、2軸方向の加振力を電磁石により発生させる並進二軸型制振装置であることを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決する本発明の請求項3に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、ヘリコプタの機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号をコントローラで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号により作動するアクティブ制振装置において、前記制振装置は、前記ヘリコプタのローターヘッドに装着され、かつ、回転方向の加振力を電磁石により発生させる回転一軸型制振装置であることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する本発明の請求項4に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項1,2又は3における前記加速度センサーは、前記座席近傍に配置されることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する本発明の請求項5に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項1,2又は3における前記加速度センサーは、前記ローターヘッドのケーシング部に配置されることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する本発明の請求項6に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項1,2又は3における前記加速度センサーは、メイン・ローター・ブレードの駆動源に設けられることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する本発明の請求項7に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項4,5又は6記載のヘリコプタにおいて各所に配置された前記加速度センサーにより検出された各々の加速度値を切り換えて前記コントローラに入力する切り替えスイッチを設けたことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する本発明の請求項8に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項1,2,3,4,5,6又は7における前記コントローラは、フィードフォワード制御を用いることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、図面に示す実施例を参照して詳細に説明する。
〔実施例1〕
本発明の第一の実施例を図1に示す。
本実施例は、並進一軸型制振装置に関するものである。
同図に示すように、ケーシング11の中心にシャフト12が配置されると共にシャフト12の外周には転がり軸受13を介して可動部14が摺動自在に嵌合し、更に、この可動部14を中心側へ付勢するためのコイルばね15がシャフト12に装着される一方、可動部14の周囲には鉄心16及び電磁石17が配置されている。
【0014】
従って、電磁石17に交流電流を通電し、可動部14に電磁力を作用させてシャフト12に沿いコイルばね15に抗しつつ可動部14を往復して摺動させることにより、図中矢印で示すように左右方向の加振力が発生することになる。
また、電磁石17に通電する交流電流の強さ、周波数或いはコイルばね15の強さ等を調節することにより、発生する加振力を自由に制御することが可能となる。
本実施例に係る並進一軸型制振装置を、後述する実施例で説明するように、ヘリコプタへ設置することにより、ヘリコプタで発生する周期的加振力を相殺することが可能となる。
特に、電磁石17を利用しているため、油圧を利用する制振装置に比較して、位相遅れが小さく、効果的に制振できるという利点がある。
【0015】
〔実施例2〕
本発明の第二の実施例を図2に示す。
本実施例は、並進二軸型制振装置に関するものである。
同図に示すように、外周リング21の内側には内側リング22が同軸に配置されると共にこれらリング21,22の間には周方向に等間隔に四箇所に防振ゴム23が介装され、更に、リング21,22の間には周方向に等間隔に四箇所に電磁石24が向かい合わせて介装されている。
つまり、図2において、電磁石24は、上下左右に4箇所に配置され、防振ゴムは、これらの電磁石24の間に配置されている。
【0016】
従って、上下の電磁石24に交流電流を通電することにより、外側リング21に対して内側リング22に電磁力を作用させ、防振ゴム23に抗して上下に往復して移動させることにより、図中に矢印で示す上下方向の加振力が発生することになる。
また、左右の電磁石24に交流電流を通電することにより、外側リング21に対して内側リング22に電磁力を作用させ、防振ゴム23に抗して左右に往復して移動させることにより、図中に矢印で示す左右方向の加振力が発生することになる。
【0017】
更に、上下左右の4箇所の電磁石24に通電することにより、任意の方向に対して加振力を発生させることができる。
電磁石24に通電する交流電流の強さ、周波数或いは防振ゴム23の強さ等を調節することにより、発生する加振力を自由に制御することが可能となる。
本実施例に係る並進二軸型制振装置を、後述する実施例で説明するように、ヘリコプタへ設置することにより、ヘリコプタで発生する周期的加振力を相殺することが可能となる。
特に、電磁石24を利用しているため、油圧を利用する制振装置に比較して、位相遅れが小さく、効果的に制振できるという利点がある。
【0018】
〔実施例3〕
本発明の第三の実施例を図3及び図4に示す。
本実施例は、回転一軸型制振装置に関するものである。
即ち、メインシャフト30が挿入される円環状の固定部31には4箇所の突起部31aが等間隔に形成されると共にこの固定部31には十字状の回転部32が周方向に摺動可能に遊嵌され、更に、固定部31の突起部31aと回転部32の間には周方向に電磁石33が配設され、また、回転部32を覆うカバー34が取り付けられている。
【0019】
従って、電磁石33に交流電流を通電することにより、固定部31に対して回転部32に電磁力を周方向に作用させ、回転部32を周方向に往復して回動させることにより、回転方向の加振力が発生することになる。
電磁石33に通電する交流電流の強さ、周波数等を調節することにより、発生する加振力を自由に制御することが可能となる。
本実施例に係る回転一軸型制振装置を、後述する実施例で説明するように、ヘリコプタへ設置することにより、ヘリコプタで発生する周期的加振力を相殺することが可能となる。
特に、電磁石33を利用しているため、油圧を利用する制振装置に比較して、位相遅れが小さく、効果的に制振できるという利点がある。
【0020】
〔実施例4〕
本発明の第四の実施例を図6に示す。
本実施例は、前述した並進一軸型制振装置をヘリコプタキャビンに適用したものである。
即ち、ヘリコプター41のキャビン42における座席43の下部には並進一軸型制振装置44が取り付けられ、その近傍には加速度センサー45が取り付けられている。
【0021】
加速度センサー45により検出された加速度値はコントローラ46に入力され、コントローラ46は検出された加速度値が低減するように、望ましくは、加速度値が0となるように、並進一軸型制振装置44へ制御する。
コントローラ46における制振制御としては、本実施例では、フィードフォワード制御の一形態である次の(i)〜(iii)に示す適応制御(Filtered-X LMSアルゴリズム)を用いる。
【0022】
(i)LMSフィルタ係数適応器の動作
図5(a)に示すように、入力−1と入力−2の関係を分析しながら、入力−2がゼロになるように、FIRの係数を時々刻々更新する。
ここで、FIRとは適応フィルタ(有限長インパルス応答 Finite Impulse Response)のことであり、また、LMSとはフィルタ係数適応器(Least Mean square)のことである。
【0023】
(ii)Plantの同定プロセス
(1)図5(b)に示すように、Plantはアクチュエータとヘリコプタの直列結合を示す。
(2)図5(b)に示すように、加振信号を入力するとモニター信号(加速度等)はFIRを「0」とすると、最初はPlantの応答だけが観測される。
(3)図5(b)に示すように、LMSはFIRがPlantの特性になるように係数を更新し、最終的にはFIRはPlantの特性となる。
【0024】
(iii)実機での制振プロセス
(1)図5(c)に示すように、同定されたFIRを「FIR(Plant)」とする
(2)図5(c)に示すように、モニター信号と異なる参照信号(例えば回転パルス) を導入する。
(3)図5(c)に示すように、最初、FIRを「1」とすると、 モニター信号には参照信号を入力とした場合のPlantの応答のみが観測される。
(4)−方、LMSには「FIR(Plant)」からモニター信号と同等の入力を受け、モニター信号がゼロになるようにフィルタ係数を更新する
(5)その結果、FIRは最終的にはPlantの逆特性となり、直列に結合されている為に相殺され、 モニター信号が非常に小さくなる。
【0025】
本実施例では、座席43の近傍に加速度センサー45を取り付けて、座席近傍の加速度値を検出すると共に、上述した適応制御により、検出した加速度値が可能な限り低減するように、座席43の下部において並進一軸型制振装置43により振動を加えるため、乗員の感じ得る振動が低減されることにより、その疲労を軽減することが可能となる。
特に、電磁石17を利用した並進一軸型制振装置43を用いるため、油圧を利用する制振装置に比較して、位相遅れが小さく、効果的に制振できるという利点がある。
【0026】
〔実施例5〕
本発明の第五の実施例を図7に示す。
本実施例は、前述した並進二軸型制振装置をヘリコプタのローターヘッドに適用したものである。
即ち、ヘリコプター51には、ローターヘッド52にブレード53が回転自在に設けられると共にガスタービンエンジン54で駆動回転するように構成されている。
ローターヘッド52のケーシング上端部には、並進二軸型制振装置55が装着されると共にこの並進二軸型制振装置55の前後左右にはそれぞれ加速度センサー56が取り付けられている。
【0027】
並進二軸型制振装置55としては、例えば、図2に示す構造のものが用いられ、内側リング22がローターヘッド52の外周に固定されるように取り付けられる。
加速度センサー56により検出された前後左右の加速度値はコントローラ57,58に入力され、コントローラ57,58は検出された前後左右の加速度値が低減するように、望ましくは、加速度値が0となるように、並進二軸型制振装置44を制御する。
【0028】
コントローラ57,58における制御としては、上述した適応制御(Filtered-X LMSアルゴリズム)を用いる。
本実施例では、ヘリコプターにおける周期的加振力が発生する主要な部分であるローターヘッド52のケーシング上端部に並進二軸型制振装置55を直接に取り付け、その近傍に加速度センサー56を取り付けて前後左右の加速度を検出しているので、上述した適応制御により、検出した加速度値が可能な限り低減するように、ローターヘッド52において並進二軸型制振装置55により振動を加えるため、周期的加振力の根源的な振動が低減されることとなる。
特に、電磁石24を利用した並進二軸型制振装置55を用いるため、油圧を利用する制振装置に比較して、位相遅れが小さく、効果的に制振できるという利点がある。
【0029】
〔実施例6〕
本発明の第六の実施例を図8に示す。
本実施例は、前述した回転一軸型制振装置をヘリコプタのローターヘッドに適用したものである。
即ち、ヘリコプター61には、ローターヘッド62にブレード63が回転自在に設けられると共にガスタービンエンジン64で駆動回転するように構成されている。
ローターヘッド62には、回転一軸型制振装置65が装着されると共にこの回転一軸型制振装置65には加速度センサー66が取り付けられている。
【0030】
回転一軸型制振装置65としては、例えば、図3に示す構造のものが用いられ、固定部31がローターヘッド62のシャフト外周に固定されるように取り付けられる。
加速度センサー66により検出された回転方向の加速度値はコントローラ67に入力され、コントローラ67は検出された回転方向の加速度値が低減するように、望ましくは、加速度値が0となるように、回転一軸型制振装置65を制御する。
【0031】
コントローラ67における制御としては、上述した適応制御(Filtered-X LMSアルゴリズム)を用いる。
本実施例では、ヘリコプターにおける周期的加振力が発生する主要な部分であるローターヘッド62に回転一軸型制振装置65を直接に取り付け、その近傍に加速度センサー66を取り付けて回転方向の加速度を検出しているので、上述した適応制御により、検出した加速度値が可能な限り低減するように、ローターヘッド62において回転一軸型制振装置65により振動を加えるため、周期的加振力の根源的な振動が低減されることとなる。
特に、電磁石33を利用した回転一軸型制振装置65を用いるため、油圧を利用する制振装置に比較して、位相遅れが小さく、効果的に制振できるという利点がある。
【0032】
〔実施例7〕
本発明の第七の実施例を図9に示す。
本実施例は、前述した回転一軸型制振装置をベースに、制振対象を切り換えるものである。
即ち、ヘリコプター71には、ローターヘッド72にブレード73が回転自在に設けられると共にガスタービンエンジン74で駆動回転するように構成されている。
【0033】
ローターヘッド72には、回転一軸型制振装置75が装着されると共に回転一軸型制振装置75には加速度センサー80が取り付けられる一方、ガスタービンエンジン74及び席下部には加速度センサー76,77が取り付けられている。回転一軸型制振装置75としては、例えば、図3に示す構造のものが用いられ、固定部31がローターヘッド72のシャフト外周に固定されるように取り付けられる。
加速度センサー76,77,80により検出された加速度値は、スイッチ78を経由して選択的にコントローラ79に入力される。
【0034】
スイッチ78は、回転一軸型制振装置75の近傍における加速度値、ガスタービンエンジン74の近傍における加速度値又は座席近傍の加速度値をコントローラ79に選択的に入力するのである。
コントローラ79は、検出された各種の加速度値に適応して特性が切り替えできるように構成されており、切り替えられた加速度値が低減するように、望ましくは、加速度値が0となるように、回転一軸型制振装置65を制御する。
コントローラ79における制御としては、上述した適応制御(Filtered-X LMSアルゴリズム)を用いる。
【0035】
本実施例では、ヘリコプターにおける周期的加振力が発生する主要な部分であるローターヘッド72に回転一軸型制振装置75を直接に取り付け、各所に加速度センサー76,77,80を取り付けて各所の加速度を検出し、スイッチ78より切り換えているので、上述した適応制御により、各所で検出した加速度値が可能な限り低減するように、回転一軸型制振装置75により振動を加えるため、周期的加振力の効果的に低減されることとなる。
特に、電磁石33を利用した回転一軸型制振装置75を用いるため、油圧を利用する制振装置に比較して、位相遅れが小さく、効果的に制振できるという利点がある。
【0036】
【発明の効果】
以上、実施例に基づいて具体的に説明したように、本発明の請求項1に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、ヘリコプタの機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号をコントローラで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号により作動するアクティブ制振装置において、前記制振装置は、前記ヘリコプタのキャビン内の座席下部に配置され、かつ、1軸方向の加振力を電磁石により発生させる並進一軸型制振装置であるので、油圧を利用する制振装置に比較して位相遅れが小さく、効果的に制振できるため、乗員の疲労を軽減することが可能となる。
【0037】
上記課題を解決する本発明の請求項2に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、ヘリコプタの機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号をコントローラで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号により作動するアクティブ制振装置において、前記制振装置は、前記ヘリコプタのローターヘッドのケーシング部に装着され、かつ、2軸方向の加振力を電磁石により発生させる並進二軸型制振装置であるので、油圧を利用する制振装置に比較して位相遅れが小さく、効果的に制振できるため、ヘリコプタの周期的加振力の根源的な振動が低減されることとなる。
【0038】
上記課題を解決する本発明の請求項3に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、ヘリコプタの機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号をコントローラで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号により作動するアクティブ制振装置において、前記制振装置は、前記ヘリコプタのローターヘッドに装着され、かつ、回転方向の加振力を電磁石により発生させる回転一軸型制振装置であるので、油圧を利用する制振装置に比較して位相遅れが小さく、効果的に制振できるため、ヘリコプタの周期的加振力の根源的な振動が低減されることとなる。
【0039】
上記課題を解決する本発明の請求項4に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項1,2又は3における前記加速度センサーは、前記座席近傍に配置されるので、乗員の感じ得る加速度を検出することが可能となる。
【0040】
上記課題を解決する本発明の請求項5に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項1,2又は3における前記加速度センサーは、前記ローターヘッドのケーシング部に配置されるので、ヘリコプタの周期的加振力の根源的な振動を検出することが可能となる。
【0041】
上記課題を解決する本発明の請求項6に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項1,2又は3における前記加速度センサーは、メイン・ローター・ブレードの駆動源に設けられるので、ヘリコプタの周期的加振力の根源的な振動を検出することが可能となる。
【0042】
上記課題を解決する本発明の請求項7に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項4,5又は6記載のヘリコプタにおいて各所に配置された前記加速度センサーにより検出された各々の加速度値を切り換えて前記コントローラに入力する切り替えスイッチを設けたため、任意の箇所における振動を低減させることが可能となる。
【0043】
上記課題を解決する本発明の請求項8に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項1,2,3,4,5,6又は7における前記コントローラは、フィードフォワード制御を用いるため、効率的に振動を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例に係る並進一軸型制振装置の断面図である。
【図2】図2(a)は本発明の第二の実施例に係る並進二軸型制振装置の横断面図、同図(b)はその縦断面図である。
【図3】図3(a)は本発明の第三の実施例に係る回転一軸型制振装置の正面図、同図(b)はその側面図である。
【図4】本発明の第三の実施例に係る回転一軸型制振装置の組立斜視図である。
【図5】本発明のヘリコプタのアクティブ制振装置のFiltered-X適応制御を示す説明図である。
【図6】図6(a)は本発明の第四の実施例に係る並進一軸型制振装置をローターヘッドに適用したヘリコプタの外観図、同図(b)はその要部拡大図である。
【図7】図7(a)は本発明の第五の実施例に係る並進二軸型制振装置をローターヘッドに適用したヘリコプタの外観図、同図(b)はその要部拡大図、同図(c)は同図(b)中のC部の詳細図である。
【図8】図8(a)は本発明の第六の実施例に係る回転一軸型制振装置をローターヘッドに適用したヘリコプタの外観図、同図(b)はその要部拡大図、同図(c)は同図(b)中のC部の詳細図である。
【図9】本発明の第七の実施例に係る並進一軸型制振装置をベースに制振対象を切り替え可能なヘリコプタの外観図である。
【図10】従来技術に係るヘリコプタの周期的加振力についての説明図である。
【符号の説明】
1 ローターヘッド
2 タービンブレード
3 ガスタービンエンジン
41,51,61,71,ヘリコプタ
42 キャビン
44 並進一軸型制振装置
45,56,66,76,77,80 加速度センサー
46,57,58,67,79 コントローラ
55 並進二軸型制振装置
65,75 回転一軸型制振装置
78 スイッチ
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘリコプタのアクティブ制振装置に関する。詳しくは、動電型加振器をベースとした慣性型マスダンパーを適応制御で駆動し、取付点近傍の振動を低減するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヘリコプタは、図10に示すように、ローターヘッド1を中心にしてメイン・ローター・ブレード(以下、ブレードという)2をガスタービンエンジン3で高速回転させることにより飛行しており、その際にブレード2作用する周期的加振力を受け、飛行中常に振動を受けている。
この周期的加振力は、ブレード2の枚数や回転速度、更には、外乱による影響ものが含まれ、乗員の疲労の原因となもなり、また、機体構造の疲労破壊や、搭載機器の信頼性低下の原因でもある。
【0003】
このため、従来から種々の防振システムが提案され、大別すると受動型と能動型に分けることができる。
受動型は、ロータ・ハブや胴体に、振り子とバネから成る動吸振機を各所に取付け、振動レベルを下げるものであるが、吸振周波数が一定であるため、ローターの回転数変化に弱い。
又、振り子の揺動軸に取付けられるベアリングの摩擦ダンピングのため、吸振能力に限界があった。
能動型(アクティブ型)は、機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号を制御コンピュータで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号によりアクチュエータを作動し、機体構造に加振力を加えて機体振動を打ち消すようにして防振するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した能動型の防振システムをヘリコプタに適用した発明としては、例えば、ヘリコプタに発生する機体振動を打ち消すためのアクチュエータとして油圧を利用するものがある(特開平7−81693号)。
しかし、この発明は、主として、機体の振動を抑制しようとするため、アクチュエータは機体とローターの間に配置されいた。
そのため、乗員に対して効果的に振動を抑制し得るものではなかった。
また、アクチュエータは、油圧を利用するため位相遅れがあり、効果的に制振することができなかった。
更に、制御方法としても、加速度センサーで検出した値をアクチュエータへ単にフィードバック制御するのみであったため、十分な効果が期待できなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の請求項1に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、ヘリコプタの機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号をコントローラで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号により作動するアクティブ制振装置において、前記制振装置は、前記ヘリコプタのキャビン内の座席下部に配置され、かつ、1軸方向の加振力を電磁石により発生させる並進一軸型制振装置であることを特徴とする。
【0006】
上記課題を解決する本発明の請求項2に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、ヘリコプタの機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号をコントローラで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号により作動するアクティブ制振装置において、前記制振装置は、前記ヘリコプタのローターヘッドのケーシング部に装着され、かつ、2軸方向の加振力を電磁石により発生させる並進二軸型制振装置であることを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決する本発明の請求項3に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、ヘリコプタの機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号をコントローラで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号により作動するアクティブ制振装置において、前記制振装置は、前記ヘリコプタのローターヘッドに装着され、かつ、回転方向の加振力を電磁石により発生させる回転一軸型制振装置であることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する本発明の請求項4に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項1,2又は3における前記加速度センサーは、前記座席近傍に配置されることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する本発明の請求項5に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項1,2又は3における前記加速度センサーは、前記ローターヘッドのケーシング部に配置されることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する本発明の請求項6に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項1,2又は3における前記加速度センサーは、メイン・ローター・ブレードの駆動源に設けられることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する本発明の請求項7に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項4,5又は6記載のヘリコプタにおいて各所に配置された前記加速度センサーにより検出された各々の加速度値を切り換えて前記コントローラに入力する切り替えスイッチを設けたことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する本発明の請求項8に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項1,2,3,4,5,6又は7における前記コントローラは、フィードフォワード制御を用いることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、図面に示す実施例を参照して詳細に説明する。
〔実施例1〕
本発明の第一の実施例を図1に示す。
本実施例は、並進一軸型制振装置に関するものである。
同図に示すように、ケーシング11の中心にシャフト12が配置されると共にシャフト12の外周には転がり軸受13を介して可動部14が摺動自在に嵌合し、更に、この可動部14を中心側へ付勢するためのコイルばね15がシャフト12に装着される一方、可動部14の周囲には鉄心16及び電磁石17が配置されている。
【0014】
従って、電磁石17に交流電流を通電し、可動部14に電磁力を作用させてシャフト12に沿いコイルばね15に抗しつつ可動部14を往復して摺動させることにより、図中矢印で示すように左右方向の加振力が発生することになる。
また、電磁石17に通電する交流電流の強さ、周波数或いはコイルばね15の強さ等を調節することにより、発生する加振力を自由に制御することが可能となる。
本実施例に係る並進一軸型制振装置を、後述する実施例で説明するように、ヘリコプタへ設置することにより、ヘリコプタで発生する周期的加振力を相殺することが可能となる。
特に、電磁石17を利用しているため、油圧を利用する制振装置に比較して、位相遅れが小さく、効果的に制振できるという利点がある。
【0015】
〔実施例2〕
本発明の第二の実施例を図2に示す。
本実施例は、並進二軸型制振装置に関するものである。
同図に示すように、外周リング21の内側には内側リング22が同軸に配置されると共にこれらリング21,22の間には周方向に等間隔に四箇所に防振ゴム23が介装され、更に、リング21,22の間には周方向に等間隔に四箇所に電磁石24が向かい合わせて介装されている。
つまり、図2において、電磁石24は、上下左右に4箇所に配置され、防振ゴムは、これらの電磁石24の間に配置されている。
【0016】
従って、上下の電磁石24に交流電流を通電することにより、外側リング21に対して内側リング22に電磁力を作用させ、防振ゴム23に抗して上下に往復して移動させることにより、図中に矢印で示す上下方向の加振力が発生することになる。
また、左右の電磁石24に交流電流を通電することにより、外側リング21に対して内側リング22に電磁力を作用させ、防振ゴム23に抗して左右に往復して移動させることにより、図中に矢印で示す左右方向の加振力が発生することになる。
【0017】
更に、上下左右の4箇所の電磁石24に通電することにより、任意の方向に対して加振力を発生させることができる。
電磁石24に通電する交流電流の強さ、周波数或いは防振ゴム23の強さ等を調節することにより、発生する加振力を自由に制御することが可能となる。
本実施例に係る並進二軸型制振装置を、後述する実施例で説明するように、ヘリコプタへ設置することにより、ヘリコプタで発生する周期的加振力を相殺することが可能となる。
特に、電磁石24を利用しているため、油圧を利用する制振装置に比較して、位相遅れが小さく、効果的に制振できるという利点がある。
【0018】
〔実施例3〕
本発明の第三の実施例を図3及び図4に示す。
本実施例は、回転一軸型制振装置に関するものである。
即ち、メインシャフト30が挿入される円環状の固定部31には4箇所の突起部31aが等間隔に形成されると共にこの固定部31には十字状の回転部32が周方向に摺動可能に遊嵌され、更に、固定部31の突起部31aと回転部32の間には周方向に電磁石33が配設され、また、回転部32を覆うカバー34が取り付けられている。
【0019】
従って、電磁石33に交流電流を通電することにより、固定部31に対して回転部32に電磁力を周方向に作用させ、回転部32を周方向に往復して回動させることにより、回転方向の加振力が発生することになる。
電磁石33に通電する交流電流の強さ、周波数等を調節することにより、発生する加振力を自由に制御することが可能となる。
本実施例に係る回転一軸型制振装置を、後述する実施例で説明するように、ヘリコプタへ設置することにより、ヘリコプタで発生する周期的加振力を相殺することが可能となる。
特に、電磁石33を利用しているため、油圧を利用する制振装置に比較して、位相遅れが小さく、効果的に制振できるという利点がある。
【0020】
〔実施例4〕
本発明の第四の実施例を図6に示す。
本実施例は、前述した並進一軸型制振装置をヘリコプタキャビンに適用したものである。
即ち、ヘリコプター41のキャビン42における座席43の下部には並進一軸型制振装置44が取り付けられ、その近傍には加速度センサー45が取り付けられている。
【0021】
加速度センサー45により検出された加速度値はコントローラ46に入力され、コントローラ46は検出された加速度値が低減するように、望ましくは、加速度値が0となるように、並進一軸型制振装置44へ制御する。
コントローラ46における制振制御としては、本実施例では、フィードフォワード制御の一形態である次の(i)〜(iii)に示す適応制御(Filtered-X LMSアルゴリズム)を用いる。
【0022】
(i)LMSフィルタ係数適応器の動作
図5(a)に示すように、入力−1と入力−2の関係を分析しながら、入力−2がゼロになるように、FIRの係数を時々刻々更新する。
ここで、FIRとは適応フィルタ(有限長インパルス応答 Finite Impulse Response)のことであり、また、LMSとはフィルタ係数適応器(Least Mean square)のことである。
【0023】
(ii)Plantの同定プロセス
(1)図5(b)に示すように、Plantはアクチュエータとヘリコプタの直列結合を示す。
(2)図5(b)に示すように、加振信号を入力するとモニター信号(加速度等)はFIRを「0」とすると、最初はPlantの応答だけが観測される。
(3)図5(b)に示すように、LMSはFIRがPlantの特性になるように係数を更新し、最終的にはFIRはPlantの特性となる。
【0024】
(iii)実機での制振プロセス
(1)図5(c)に示すように、同定されたFIRを「FIR(Plant)」とする
(2)図5(c)に示すように、モニター信号と異なる参照信号(例えば回転パルス) を導入する。
(3)図5(c)に示すように、最初、FIRを「1」とすると、 モニター信号には参照信号を入力とした場合のPlantの応答のみが観測される。
(4)−方、LMSには「FIR(Plant)」からモニター信号と同等の入力を受け、モニター信号がゼロになるようにフィルタ係数を更新する
(5)その結果、FIRは最終的にはPlantの逆特性となり、直列に結合されている為に相殺され、 モニター信号が非常に小さくなる。
【0025】
本実施例では、座席43の近傍に加速度センサー45を取り付けて、座席近傍の加速度値を検出すると共に、上述した適応制御により、検出した加速度値が可能な限り低減するように、座席43の下部において並進一軸型制振装置43により振動を加えるため、乗員の感じ得る振動が低減されることにより、その疲労を軽減することが可能となる。
特に、電磁石17を利用した並進一軸型制振装置43を用いるため、油圧を利用する制振装置に比較して、位相遅れが小さく、効果的に制振できるという利点がある。
【0026】
〔実施例5〕
本発明の第五の実施例を図7に示す。
本実施例は、前述した並進二軸型制振装置をヘリコプタのローターヘッドに適用したものである。
即ち、ヘリコプター51には、ローターヘッド52にブレード53が回転自在に設けられると共にガスタービンエンジン54で駆動回転するように構成されている。
ローターヘッド52のケーシング上端部には、並進二軸型制振装置55が装着されると共にこの並進二軸型制振装置55の前後左右にはそれぞれ加速度センサー56が取り付けられている。
【0027】
並進二軸型制振装置55としては、例えば、図2に示す構造のものが用いられ、内側リング22がローターヘッド52の外周に固定されるように取り付けられる。
加速度センサー56により検出された前後左右の加速度値はコントローラ57,58に入力され、コントローラ57,58は検出された前後左右の加速度値が低減するように、望ましくは、加速度値が0となるように、並進二軸型制振装置44を制御する。
【0028】
コントローラ57,58における制御としては、上述した適応制御(Filtered-X LMSアルゴリズム)を用いる。
本実施例では、ヘリコプターにおける周期的加振力が発生する主要な部分であるローターヘッド52のケーシング上端部に並進二軸型制振装置55を直接に取り付け、その近傍に加速度センサー56を取り付けて前後左右の加速度を検出しているので、上述した適応制御により、検出した加速度値が可能な限り低減するように、ローターヘッド52において並進二軸型制振装置55により振動を加えるため、周期的加振力の根源的な振動が低減されることとなる。
特に、電磁石24を利用した並進二軸型制振装置55を用いるため、油圧を利用する制振装置に比較して、位相遅れが小さく、効果的に制振できるという利点がある。
【0029】
〔実施例6〕
本発明の第六の実施例を図8に示す。
本実施例は、前述した回転一軸型制振装置をヘリコプタのローターヘッドに適用したものである。
即ち、ヘリコプター61には、ローターヘッド62にブレード63が回転自在に設けられると共にガスタービンエンジン64で駆動回転するように構成されている。
ローターヘッド62には、回転一軸型制振装置65が装着されると共にこの回転一軸型制振装置65には加速度センサー66が取り付けられている。
【0030】
回転一軸型制振装置65としては、例えば、図3に示す構造のものが用いられ、固定部31がローターヘッド62のシャフト外周に固定されるように取り付けられる。
加速度センサー66により検出された回転方向の加速度値はコントローラ67に入力され、コントローラ67は検出された回転方向の加速度値が低減するように、望ましくは、加速度値が0となるように、回転一軸型制振装置65を制御する。
【0031】
コントローラ67における制御としては、上述した適応制御(Filtered-X LMSアルゴリズム)を用いる。
本実施例では、ヘリコプターにおける周期的加振力が発生する主要な部分であるローターヘッド62に回転一軸型制振装置65を直接に取り付け、その近傍に加速度センサー66を取り付けて回転方向の加速度を検出しているので、上述した適応制御により、検出した加速度値が可能な限り低減するように、ローターヘッド62において回転一軸型制振装置65により振動を加えるため、周期的加振力の根源的な振動が低減されることとなる。
特に、電磁石33を利用した回転一軸型制振装置65を用いるため、油圧を利用する制振装置に比較して、位相遅れが小さく、効果的に制振できるという利点がある。
【0032】
〔実施例7〕
本発明の第七の実施例を図9に示す。
本実施例は、前述した回転一軸型制振装置をベースに、制振対象を切り換えるものである。
即ち、ヘリコプター71には、ローターヘッド72にブレード73が回転自在に設けられると共にガスタービンエンジン74で駆動回転するように構成されている。
【0033】
ローターヘッド72には、回転一軸型制振装置75が装着されると共に回転一軸型制振装置75には加速度センサー80が取り付けられる一方、ガスタービンエンジン74及び席下部には加速度センサー76,77が取り付けられている。回転一軸型制振装置75としては、例えば、図3に示す構造のものが用いられ、固定部31がローターヘッド72のシャフト外周に固定されるように取り付けられる。
加速度センサー76,77,80により検出された加速度値は、スイッチ78を経由して選択的にコントローラ79に入力される。
【0034】
スイッチ78は、回転一軸型制振装置75の近傍における加速度値、ガスタービンエンジン74の近傍における加速度値又は座席近傍の加速度値をコントローラ79に選択的に入力するのである。
コントローラ79は、検出された各種の加速度値に適応して特性が切り替えできるように構成されており、切り替えられた加速度値が低減するように、望ましくは、加速度値が0となるように、回転一軸型制振装置65を制御する。
コントローラ79における制御としては、上述した適応制御(Filtered-X LMSアルゴリズム)を用いる。
【0035】
本実施例では、ヘリコプターにおける周期的加振力が発生する主要な部分であるローターヘッド72に回転一軸型制振装置75を直接に取り付け、各所に加速度センサー76,77,80を取り付けて各所の加速度を検出し、スイッチ78より切り換えているので、上述した適応制御により、各所で検出した加速度値が可能な限り低減するように、回転一軸型制振装置75により振動を加えるため、周期的加振力の効果的に低減されることとなる。
特に、電磁石33を利用した回転一軸型制振装置75を用いるため、油圧を利用する制振装置に比較して、位相遅れが小さく、効果的に制振できるという利点がある。
【0036】
【発明の効果】
以上、実施例に基づいて具体的に説明したように、本発明の請求項1に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、ヘリコプタの機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号をコントローラで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号により作動するアクティブ制振装置において、前記制振装置は、前記ヘリコプタのキャビン内の座席下部に配置され、かつ、1軸方向の加振力を電磁石により発生させる並進一軸型制振装置であるので、油圧を利用する制振装置に比較して位相遅れが小さく、効果的に制振できるため、乗員の疲労を軽減することが可能となる。
【0037】
上記課題を解決する本発明の請求項2に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、ヘリコプタの機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号をコントローラで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号により作動するアクティブ制振装置において、前記制振装置は、前記ヘリコプタのローターヘッドのケーシング部に装着され、かつ、2軸方向の加振力を電磁石により発生させる並進二軸型制振装置であるので、油圧を利用する制振装置に比較して位相遅れが小さく、効果的に制振できるため、ヘリコプタの周期的加振力の根源的な振動が低減されることとなる。
【0038】
上記課題を解決する本発明の請求項3に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、ヘリコプタの機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号をコントローラで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号により作動するアクティブ制振装置において、前記制振装置は、前記ヘリコプタのローターヘッドに装着され、かつ、回転方向の加振力を電磁石により発生させる回転一軸型制振装置であるので、油圧を利用する制振装置に比較して位相遅れが小さく、効果的に制振できるため、ヘリコプタの周期的加振力の根源的な振動が低減されることとなる。
【0039】
上記課題を解決する本発明の請求項4に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項1,2又は3における前記加速度センサーは、前記座席近傍に配置されるので、乗員の感じ得る加速度を検出することが可能となる。
【0040】
上記課題を解決する本発明の請求項5に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項1,2又は3における前記加速度センサーは、前記ローターヘッドのケーシング部に配置されるので、ヘリコプタの周期的加振力の根源的な振動を検出することが可能となる。
【0041】
上記課題を解決する本発明の請求項6に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項1,2又は3における前記加速度センサーは、メイン・ローター・ブレードの駆動源に設けられるので、ヘリコプタの周期的加振力の根源的な振動を検出することが可能となる。
【0042】
上記課題を解決する本発明の請求項7に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項4,5又は6記載のヘリコプタにおいて各所に配置された前記加速度センサーにより検出された各々の加速度値を切り換えて前記コントローラに入力する切り替えスイッチを設けたため、任意の箇所における振動を低減させることが可能となる。
【0043】
上記課題を解決する本発明の請求項8に係るヘリコプタのアクティブ制振装置は、請求項1,2,3,4,5,6又は7における前記コントローラは、フィードフォワード制御を用いるため、効率的に振動を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例に係る並進一軸型制振装置の断面図である。
【図2】図2(a)は本発明の第二の実施例に係る並進二軸型制振装置の横断面図、同図(b)はその縦断面図である。
【図3】図3(a)は本発明の第三の実施例に係る回転一軸型制振装置の正面図、同図(b)はその側面図である。
【図4】本発明の第三の実施例に係る回転一軸型制振装置の組立斜視図である。
【図5】本発明のヘリコプタのアクティブ制振装置のFiltered-X適応制御を示す説明図である。
【図6】図6(a)は本発明の第四の実施例に係る並進一軸型制振装置をローターヘッドに適用したヘリコプタの外観図、同図(b)はその要部拡大図である。
【図7】図7(a)は本発明の第五の実施例に係る並進二軸型制振装置をローターヘッドに適用したヘリコプタの外観図、同図(b)はその要部拡大図、同図(c)は同図(b)中のC部の詳細図である。
【図8】図8(a)は本発明の第六の実施例に係る回転一軸型制振装置をローターヘッドに適用したヘリコプタの外観図、同図(b)はその要部拡大図、同図(c)は同図(b)中のC部の詳細図である。
【図9】本発明の第七の実施例に係る並進一軸型制振装置をベースに制振対象を切り替え可能なヘリコプタの外観図である。
【図10】従来技術に係るヘリコプタの周期的加振力についての説明図である。
【符号の説明】
1 ローターヘッド
2 タービンブレード
3 ガスタービンエンジン
41,51,61,71,ヘリコプタ
42 キャビン
44 並進一軸型制振装置
45,56,66,76,77,80 加速度センサー
46,57,58,67,79 コントローラ
55 並進二軸型制振装置
65,75 回転一軸型制振装置
78 スイッチ
Claims (8)
- ヘリコプタの機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号をコントローラで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号により作動するアクティブ制振装置において、前記制振装置は、前記ヘリコプタのキャビン内の座席下部に配置され、かつ、1軸方向の加振力を電磁石により発生させる並進一軸型制振装置であることを特徴とするヘリコプタのアクティブ制振装置。
- ヘリコプタの機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号をコントローラで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号により作動するアクティブ制振装置において、前記制振装置は、前記ヘリコプタのローターヘッドのケーシング部に装着され、かつ、2軸方向の加振力を電磁石により発生させる並進二軸型制振装置であることを特徴とするヘリコプタのアクティブ制振装置。
- ヘリコプタの機体振動を機体に取付けた加速度センサーにより検知し、その信号をコントローラで処理し、前記機体振動を減少する方向の加振信号を作り出し、この加振信号により作動するアクティブ制振装置において、前記制振装置は、前記ヘリコプタのローターヘッドに装着され、かつ、回転方向の加振力を電磁石により発生させる回転一軸型制振装置であることを特徴とするヘリコプタのアクティブ制振装置。
- 前記加速度センサーは、前記座席近傍に配置されることを特徴とする請求項1,2又は3記載のヘリコプタのアクティブ制振装置。
- 前記加速度センサーは、前記ローターヘッドのケーシング部に配置されることを特徴とする請求項1,2又は3記載のヘリコプタのアクティブ制振装置。
- 前記加速度センサーは、メイン・ローター・ブレードの駆動源に設けられることを特徴とする請求項1,2又は3記載のヘリコプタのアクティブ制振装置。
- 各所に配置された前記加速度センサーにより検出された各々の加速度値を切り換えて前記コントローラに入力する切り替えスイッチを設けたことを特徴とする請求項4,5又は6記載のヘリコプタのアクティブ制振装置。
- 前記コントローラは、フィードフォワード制御を用いることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6又は7記載のヘリコプタのアクティブ制振装置。
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