JP3649780B2 - 電動式パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、オルタネータの脈動からエンジン回転数を算出する電動式パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5〜7に示す従来例の電動式パワーステアリング装置では、アシスト力を付与する電動モータmがコントローラーCを介してバッテリBに接続している。
上記バッテリBには、図示しないエンジンに連係するオルタネータ1を接続している。このオルタネータ1は三相発電式で、3つのコイル8を図に示すようにY結線している。そして、これら各コイル8における起電力を一括した三相式起電力を発生するものである。
さらに、このオルタネータ1は整流機能を有し、前記した起電力により交流電圧を発電したら、それを整流してバッテリBに蓄電させることができる。
なお、オルタネータ1内には図示しないレギュレータを組み込んで、オルタネータ1の発電量を調整している。例えば、バッテリ電圧が上昇すると、レギュレータがオルタネータ1の発電を停止させる。それに対し、バッテリ電圧が下降すると、レギュレータがオルタネータ1に発電を開始させる。このようにして、レギュレータがオルタネータ1をオン・オフ調整することで、バッテリBの蓄電量を一定に保っている。
【0003】
また、上記コントローラーCは、電動モータmを制御するためのものである。コントローラーCは、電動モータmに電圧を印加し、それを正転あるいは逆転させる駆動回路2と、この駆動回路2を制御する制御回路3と、コントローラーCに印加させる主電源及びバックアップ用電源のスイッチングを制御する電源回路4とから構成されている。
制御回路3は、車両の走行状態に応じて駆動回路2を制御する制御部7を備え、さらに、電源電圧Vからオルタネータの脈動周波数あるいは周期を読み込む読込み部5と、読み込まれた脈動周波数あるいは周期からエンジン回転数Nを算出する算出部6とを備えている。
【0004】
この従来例の電動式パワーステアリング装置では、次のようにして、エンジン回転数Nを算出している。
電源電圧Vには、オルタネータ1の発電交流電圧を整流した電圧が重畳している。
ここで、オルタネータ1はエンジンに連係するので、それが発電した交流電圧はエンジン回転数に比例した脈動を有している。そして、この交流電圧を整流した電圧には、交流電圧の脈動が含まれることになる。
つまり、図7に示すように、電源電圧Vには、オルタネータ1の脈動が含まれることになる。したがって、この電源電圧Vの脈動の周波数あるいは周期を読込み部5で読み込めば、オルタネータ1の脈動周波数あるいは周期を知ることができる。そして、オルタネータの脈動周波数あるいは周期を知ることができれば、算出部6でエンジン回転数Nを算出できる。
【0005】
このようにしてエンジン回転数Nを算出できれば、制御回路3が電源回路4を制御し、コントローラーCのスイッチングを制御できる。例えば、算出したエンジン回転数Nが設定値よりも大きければ、制御回路3が電源回路4を駆動させ主電源をコントローラーCに印加させる。それに対し、エンジン回転数Nが設定値以下であれば、制御回路3はシステムを起動させる必要が無いと判断し、電源回路4を駆動させバックアップ電源のみをコントローラーCに印加させる。
このようにすれば、コントローラーCのスイッチングを、外部のイグニッションスイッチなどに連動させる必要がなくなるので、外部配線を少なくでき、電動式パワーステアリング装置のコストダウン及び小型化が可能となる。
また、エンジン回転数Nは車速にほぼ比例するので、この算出されたエンジン回転数Nに応じて駆動回路2を制御することができる。したがって、車速センサを設けなくても、車速に応じたアシスト力制御ができ、コストダウン及び小型化が可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例において、三相式発電式のオルタネータは、断線などにより欠相が生じても発電をつづける。しかし、この欠相状態におけるオルタネータの脈動は、正常な状態におけるオルタネータの脈動とは異なってしまう。したがって、欠相状態にあることを知らないでエンジン回転数を算出すると、正しいエンジン回転数を得ることができない。
この発明の目的は、オルタネータが欠相状態となると、それを感知することのできる電動式パワーステアリング装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、アシスト力を付与する電動モータと、電動モータに電圧を印加する駆動回路及び駆動回路を制御する制御回路からなるコントローラーと、コントローラーに接続したバッテリと、エンジンに連係する三相発電式のオルタネータとを備え、しかも、上記コントローラーの制御回路は、オルタネータの脈動周波数あるいは周期を読み込む読込み部と、読み込まれた周波数あるいは周期からエンジン回転数を算出する算出部とを備えた電動式パワーステアリング装置を前提とする。
そして、第1の発明は、上記コントローラーの制御回路に欠相検出部を設け、この欠相検出部は、読み込まれた最新の周期がその前に読み込まれた周期よりも所定量だけ長くなると、欠相カウントするステップからなる第1プログラムと、設定時間内に欠相カウント数が設定した欠相カウント数に達すると、オルタネータが欠相状態にあると判断するステップからなる第2プログラムとを実行する構成とした点に特徴を有する。
【0008】
このような構成としたので、欠相検出部の第1プログラムにおいて、読み込まれた最新の周期がその前に読み込まれた周期よりも所定量だけ長くなると、欠相カウントされる。
同時に、第2プログラムにおいて、欠相カウント数が数えられる。そして、設定時間内に、この欠相カウント数が設定した欠相カウント数に達していれば、オルタネータは欠相状態にあると判断される。
実際に、オルタネータが欠相状態にあると、電源電圧には長い周期の脈動と正常な周期の脈動とが繰り返して発生する。そして、このような状態になれば、第1及び第2ステップで感知できるので、オルタネータの欠相を知ることができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、欠相検出部で実行される第1プログラムは、最新に読み込まれた周期がその前に読み込まれた周期を基準として所定の範囲内にあるか否かを比較し、所定の範囲内にあれば安定カウントするステップと、安定カウント数が設定した安定カウント数に達すると、欠相カウント数をゼロに戻すステップとを有する点に特徴を有する。
いま、オルタネータの欠相以外の原因で、読み込まれた周期がその前に読み込まれた周期よりも所定量だけ長くなり、欠相カウントされたとする。しかし、この場合には、その後に、安定カウント数が設定した安定カウント数に達すると、つまり、正常な周期が、設定した安定カウント数だけ続けば、オルタネータの欠相によるものではないと判断される。したがって、誤ってオルタネータが欠相状態にあると判断されることがない。
なお、正常な周期とは、その前に読み込まれた周期を基準として所定の範囲内にあることをいう。そして、所定の範囲とは、例えば、あるしきい値を設定しておき、読み込まれた最新の周期が、その前に読み込まれた周期とこのしきい値との積を越えないことをいう。
【0010】
第3の発明は、第1あるいは第2の発明において、コントローラーの制御回路は、算出されたエンジン回転数に応じて駆動回路を制御しアシスト力を付与する構成とする一方、欠相検出部には、オルタネータが欠相状態にあると判断したとき、マニュアルステアリングに切り換えるステップを設けた点に特徴を有する。このような構成としたので、算出されたエンジン回転数に応じてアシスト力を制御する場合に、欠相検出部がオルタネータに欠相が生じたと判断したら、アシスト力制御を停止しマニュアルステアリングに切り換えることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1に示すこの発明の実施の形態では、コンパレータ9を設け、それに電源電圧Vを入力している。このコンパレータ9は、電源電圧Vをある基準電圧で比較し、その脈動を矩形波に変換して出力するものである(図2参照)。
このようにして矩形波に変換された出力信号は、制御回路3の読込み部5に導かれ、その周期tが読み込まれることになる。なお、ここでいう周期tとは、図2に示すように、脈動が一回発生する時間をいう。
そして、この読み込まれた周期tに基づいて、算出部6ではエンジン回転数Nを算出する。エンジン回転数Nは、次式(1)、
N=60/(k・c・t)
k:オルタネータの極数 (オルタネータの一回転で発生する脈動)
c:プーリ比 (エンジンとオルタネータとの回転数比)
t:周期 (sec)
から求めることができる。
【0012】
さらに、この実施の形態では、制御回路3に欠相検出部10を設け、読込み部5で読み込まれた周期tをこの欠相検出部10にも入力している。
上記欠相検出部10は、図3、4に示すフローチャートに対応した第1及び第2プログラムを逐次実行することで、オルタネータが正常な状態にあるか欠相状態にあるかを判断するものである。
ここで、図3、4に示すフローチャートについて説明するが、その前に、コンパレータ9の出力信号について説明する。
【0013】
例えば、オルタネータ1が正常な状態にあれば、電源電圧Vに含まれるオルタネータ1の脈動は、図2のe区間に示す矩形波として出力される。
しかし、オルタネータ1のコイルの断線などにより、三相のうち一相が欠相してしまうと、オルタネータ1の脈動は図2のf区間に示す矩形波として出力されてしまう。
したがって、実際のエンジン回転数がある回転数に保たれているときに、オルタネータ1で一相が欠相すると、矩形波の周期は正常時の周期tと、この周期tの2程の長さの周期t’とが繰り返してコンパレータ9から出力されてしまう。そのため、式(1)によって算出されるエンジン回転数Nが、実際のエンジン回転数の2/3程度のものに算出されてしまう。
【0014】
次に、図3、4に示すフローチャートについて説明する。
欠相検出部10では、図3に示すフローチャートに対応した第1プログラムを逐次実行している。
まず、ステップ101で、読み込まれた周期txが、その前に読み込まれた周期tx-1としきい値a(>1)との積より大きいか否かを比較する。なお、しきい値aとしては、この実施の形態では、例えばa=1.5としている。
そして、読み込まれた周期txが、その前に読み込まれた周期tx-1としきい値a(>1)との積以下であれば、ステップ102で、この周期txが、その前に読み込まれた周期tx-1としきい値b(<1)との積以下であるか否かを比較する。なお、このしきい値bとしては、例えばb=0.5としている。
このようにしてステップ101、102で、読み込まれた最新の周期txがその前に読み込まれた周期tx-1を基準として所定の範囲にあるか否かが判断される。そして、周期txが、周期tx-1×しきい値b<周期tx≦周期tx-1×しきい値aの範囲、つまり、周期tx-1を基準として±50%の範囲にあれば、この周期txが正常なものであると判断し、安定カウンタでカウント+1とされる。
【0015】
ただし、ステップ101、102で、周期txが、周期tx-1×しきい値b<周期tx≦周期tx-1×しきい値aの範囲外にあれば、この周期txが異常なものと判断され、安定カウンタのカウント数がゼロに戻される。
特に、ステップ101で、周期tx周期tx-1×しきい値a、つまり、周期txがその前に読み込まれた周期tx-1の1.5より大きいと、オルタネータ1に欠相の恐れがあると判断され、欠相カウンタ+1とされる。
また、ステップ103では、安定カウンタのカウント数が、設定した安定カウント数xに達したか否かを判断している。そして、例えば、x=3とした場合、安定カウンタのカウント数が3に達すると、欠相カウンタのカウント数はゼロに戻される。
つまり、ステップ101で、欠相以外の何等かの原因により、周期txがその前に読み込まれた周期tx-1の1.5より大きくなっても、その後、正常な周期が3回読み込まれれば、異常な周期txが欠相によるものではないと判断されることになる。
【0016】
同時に、欠相検出部10では、図4に示すフローチャートに対応した第2プログラムが、設定時間毎に繰り返して実行されている。そして、ここでは、例えば、25msec毎に処理されているものとする。
ステップ201では、25msec毎にフェールタイマのカウントが+1とされる。そして、ステップ202で、このフェールタイマのカウント数が設定数に達したか否かが判断される。なお、ここでは、設定数を400としている。
フェールタイマのカウント数が400に達していれば、つまり、25msec×400=10secとなると、ステップ203で、第1プログラムの欠相カウンタのカウント数が、設定した欠相カウント数yに達しているか否かが判断される。なお、ここでは、設定した欠相カウント数y=1000としている。
そして、ステップ203で、欠相カウンタのカウント数が1000に達していれば、つまり、10秒間で欠相カウンタのカウント数が1000に達していると、オルタネータ1が欠相状態にあると判断され、ステップ204でフェール処理がなされる。
なお、ステップ203で、10秒間で欠相カウンタのカウント数が1000に達してなければ、欠相ではないと判断されフェールタイマのカウントがゼロに戻される。
【0017】
次に、この実施の形態の電動式パワーステアリング装置の作用を、具体的に説明する。
図2に示すように、車両の走行中のある時間T0に、オルタネータ1の三相のうち一相が欠相したとする。このとき、欠相した時間T0後の最初の周期t1は、その前の正常時の周期t0に比べ長くなってしまうので、第1プログラムのステップ101で、欠相カウンタが+1とされる。
さらに、最新の周期t2が読み込まれるが、この周期t2はほぼ正常時の周期と同程度となる。そして、周期t 2 は、周期t 1 ×aよりも小さいので、ステップ102へ進み、周期t 2 が周期t 1 ×b、すなわち周期t 1 ×0.5以下か否か判断するが、周期t 2 が周期t 1 ×0.5以下の場合安定カウンタをゼロにする。次に、周期t3が読み込まれると、今度は、この周期t3が周期t2とがステップ101で比較され欠相カウンタが+1とされる。
このようにしてオルタネータ1の三相のうち一相が欠相すると、長い周期t’と正常な周期tとが繰り返してコンパレータ9から出力される。したがって、欠相カウンタ+1が繰り返され、第2プログラムにおいて、設定時間の10秒間に欠相カウント数が1000に達し、オルタネータ1の欠相を感知することができる。
【0018】
このようにしてオルタネータ1の欠相を判断したら、第2プログラムのステップ204でフェール処理がなされる。つまり、欠相状態でエンジン回転数を算出しても正確ではないので、欠相を知ったらそれ以後はエンジン回転数の算出を停止する。
また、フェール処理としては、例えば算出されたエンジン回転数から車速を推定し、制御回路3駆動回路2を制御しアシスト力を付与する場合には、オルタネータ1の欠相を知ったら、マニュアルステアリングに切り換えてもよい。
【0019】
【発明の効果】
第1の発明によれば、オルタネータのコイルが断線するなどして欠相状態になったら、それを感知することができる。したがって、エンジン回転数の算出を停止すれば、間違ったエンジン回転数を算出することがなくなる。
第2の発明によれば、第1の発明において、オルタネータの欠相以外の原因によって、読み込まれた周期がその前に読み込まれた周期よりも所定量だけ長くなっても、安定カウント数が設定数に達すると欠相カウントをゼロに戻すので、間違ってオルタネータの欠相と判断することがない。
第3の発明によれば、第1あるいは第2の発明において、算出されたエンジン回転数から車速を推定し、制御回路3駆動回路2を制御しアシスト力を付与する場合に、オルタネータ1の欠相を知ったら、マニュアルステアリングに切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態における電動式パワーステアリング装置の回路図を示す。
【図2】オルタネータ1の脈動とコンパレータ9の出力との関係を示した図である。
【図3】第1プログラムを示すフローチャート図である。
【図4】第2プログラムを示すフローチャート図である。
【図5】従来例の電動式パワーステアリング装置の回路図を示す。
【図6】オルタネータ1が三相発電式であることを示す図である。
【図7】電源電圧Vに重畳するオルタネータ1の脈動電圧の特性を示す図である。
【符号の説明】
m 電動モータ
C コントローラー
B バッテリ
1 オルタネータ
2 駆動回路
3 制御回路
5 読込み部
6 算出部
10 欠相検出部

Claims (3)

  1. アシスト力を付与する電動モータと、電動モータに電圧を印加する駆動回路及び駆動回路を制御する制御回路からなるコントローラーと、コントローラーに接続したバッテリと、エンジンに連係する三相発電式のオルタネータとを備え、しかも、上記コントローラーの制御回路は、オルタネータの脈動周波数あるいは周期を読み込む読込み部と、読み込まれた周波数あるいは周期からエンジン回転数を算出する算出部とを備えた電動式パワーステアリング装置において、上記コントローラーの制御回路に欠相検出部を設け、この欠相検出部は、読み込まれた最新の周期がその前に読み込まれた周期よりも所定量だけ長くなると、欠相カウントするステップからなる第1プログラムと、設定時間内に欠相カウント数が設定した欠相カウント数に達すると、オルタネータが欠相状態にあると判断するステップからなる第2プログラムとを実行する構成としたことを特徴とする電動式パワーステアリング装置。
  2. 欠相検出部で実行される第1プログラムは、最新に読み込まれた周期がその前に読み込まれた周期を基準として所定の範囲内にあるか否かを比較し、所定の範囲内にあれば安定カウントするステップと、安定カウント数が設定した安定カウント数に達すると、欠相カウント数をゼロに戻すステップとを有することを特徴とする請求項1記載の電動式パワーステアリング装置。
  3. コントローラーの制御回路は、算出されたエンジン回転数に応じて駆動回路を制御しアシスト力を付与する構成とする一方、欠相検出部には、オルタネータが欠相状態にあると判断したとき、マニュアルステアリングに切り換えるステップを設けたことを特徴とする請求項1あるいは2記載の電動式パワーステアリング装置。
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