JP3646637B2 - 高機能性牛乳の生産方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、牛乳に特有の牛乳臭を除去し、風味を向上させると同時に、抗菌性及び抗酸化性を付与してなる高機能性牛乳の生産方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近の研究によれば、人間の体内で発生する活性酸素は、鉄が酸化して錆びるのと同じように人間の体に悪影響を及ぼし、老化、糖尿病、ガン、老人性痴呆症等の原因となるとされている。また、近年、環境破壊の影響でオゾン層が破壊され、有害な紫外線が多くなり、活性酸素を大量発生させている。一方、近年、国内における牛乳及びそれを原料とする乳製品の消費は伸び悩んでいる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、上記のような人間の体に悪影響を及ぼす活性酸素に対する抗酸化性を付与した高機能性牛乳を生産することができれば、伸び悩んでいる牛乳及びそれを原料とする乳製品の消費の増大が期待できるとの着想を得た。即ち、本発明の目的とするところは、活性酸素に対する抗酸化性を有し、活性酸素による人体への悪影響を抑制し、老化、糖尿病、心臓病、ガン、老人性痴呆症等を予防する効果を有する高機能性牛乳を提供せんとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明者らは、抗酸化性、抗菌性、抗ガン性等の機能が注目されているハーブやスパイスに着目し、これらのハーブやスパイスを乳牛に給与することにより、ハーブやスパイスの有する抗酸化成分、抗菌成分、抗ガン成分等が牛乳へ移行し、抗酸化性、抗菌性、抗ガン性等の高機能性を有する牛乳を生産できるのではないか、との着想に基づき鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明に係る高機能性牛乳の生産方法は、乳牛にペパーミント、レモングラス及びクローブからなる群から選択される少なくとも一種のハーブを給与して飼養することで、該乳牛から搾乳される牛乳に抗菌性及び抗酸化性を付与することを特徴とするというものである。本発明によれば、牛乳にハーブの有する抗菌性や抗酸化性等の機能を付与することができ、かつ牛乳臭を除去して風味も改善することで、牛乳の消費を拡大できる。また、この高機能性牛乳を原料として、風味を向上させたチーズ、クリーム、ヨーグルト、バター等の乳加工製品を製造することができ、更に、牛乳やそれを乾燥させたミルクパウダーは、多くの食品の重要な素材であり、抗酸化性を利用した老化防止食品や滋養食品等への用途も期待され、これによる牛乳や乳製品の消費量の拡大が期待できる。
【0006】
本発明において、乳牛に対するハーブの給与方法としては、ハーブを野山や牧場で生育させ、これを放牧している乳牛に自然に摂取させることで、ハーブをそのままの形で乳牛に給与したり、生育させたハーブを刈り取って乾燥し、粉砕したものを飼料に添加して乳牛に給与してもよい。また、ハーブを刈り取った後、若干乾燥させ、嫌気性発酵させたサイレージを用いてもよい。乳牛には嗜好性があることから、一般の飼料や濃厚飼料(トウモロコシ、大豆粕、ミネラル類等)を乳牛に給与する際にハーブやサイレージを添加しておくとよい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明におけるハーブとは、地中海を原産とする香草類及び熱帯、亜熱帯原産のスパイス類の両者を含むものである。これらのハーブに含まれる精油成分及び脂溶成分は、不快臭に対するマスキング、芳香による香り付け等の機能、抗菌性、更には油脂に対する抗酸化性等の機能を有するのみでなく、ハーブの中には、ポリフェノール等の活性酸素に対する抗酸化性を示す成分を有するものがある。本発明では、このようなハーブのもつ機能を牛乳生産に活用したものであり、乳牛に給与されたハーブの精油成分、脂溶成分、抗菌成分及びポリフェノール等の抗酸化成分が乳牛の消化管から吸収され、血液によって乳腺まで運搬され、そこで合成される乳脂肪分に溶け込み牛乳中に分泌されるものと考えられる。従って、ハーブを乳牛に給与することで、ハーブの精油成分、脂溶成分、抗菌成分、抗酸化成分等が牛乳に移行し、牛乳の風味改善、不快臭(牛乳臭)のマスキング効果が現れると同時に、抗菌性や活性酸素に対する抗酸化性が付与されるものと考えられる。なお、本発明により牛乳に付与される抗酸化性は、活性酸素に対する抗酸化性を含めたトータル抗酸化性であり、牛乳が、それ自体に含まれる乳脂肪の酸化による腐敗を防止するために本来有している油脂に対する抗酸化性とは異なる。
【0008】
本発明で使用されるハーブは、牛乳に前記のような各種機能、特に前記のようなトータル抗酸化性を付与しうるものであり、本発明で使用するハーブとしては、シソ科のペパーミント、イネ科のレモングラス、フトモモ科のクローブが抗酸化性付与効果の点で好ましい。これらのハーブは、1種を単独で乳牛に給与してもよいし、2種以上を混合して給与してもよい。
【0009】
一般に乳牛の飼養の仕方としては、野山への放牧、柵で囲った牧場、畜舎での飼養等があるが、本発明はいずれの方法でも実施できる。乳牛の種類としては、ホルスタイン種、ジャージー種、ガーンジー種、エアーシャー種、ショートホーン種、デボン種、シンメンタール種、ブラウン・スイス種等に適用できるが、勿論これらの混合種にも適用できる。乳牛へのハーブの給与方法としては、放牧や牧場での飼養の場合は、選択したハーブを予め乳牛を放牧する野山や牧場等に生育させておき、自然に摂取させたり、牧場や畜舎での飼養の場合は、刈り取った生のハーブや、それを乾燥、粉砕したもの、またはサイレージを、そのまま給与してもよいし、また一般の飼料や濃厚飼料に添加させてもよい。
【0010】
また、上記のようにハーブを給与して飼養した乳牛から搾乳した高機能性牛乳を原料とする以外は、常法どおりに生産することで、風味を向上させたチーズ、ヨーグルト、バター等の各種乳加工製品を得ることもでき、それらの乳加工製品に対しても抗菌性や活性酸素に対する抗酸化性等の高機能を付与することができる。更に、この高機能性牛乳やこれを乾燥させたミルクパウダーを原料として老化防止食品や滋養食品を製造することもできる。
【0011】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0012】
[ハーブ成分の牛乳への移行の確認試験]
1.試験の内容
シソ科のペパーミント、バジル、オレガノ、イネ科のレモングラス、フトモモ科のクローブ及びオールスパイスの7種類のハーブを用い、表1に示すようなハーブを添加した配合の飼料(実施例)を給与した乳牛から搾乳した牛乳と、ハーブを添加しない飼料(比較例)を給与した乳牛から搾乳した牛乳について、泌乳成績、及び精油成分、脂溶成分を測定し、乳牛へのハーブの給与による牛乳への影響及び牛乳へのハーブ成分の移行を確認した。
【0013】
【表1】
Figure 0003646637
【0014】
2.乳牛
実施例および比較例で使用した乳牛は、ホルスタイン種乳牛、1〜5産、分娩1〜10月の牛である。
【0015】
3.飼養条件
飼料給与時期:朝、夕の1日2回
搾乳時期:朝、夕の1日2回
【0016】
4.試験用サンプル
ハーブ給与開始後13日目の夕及び14日目の朝に搾乳した牛乳を混合したものを使用した。
【0017】
5.精油成分、脂溶成分の分析方法
GC/MS SIM法により、実施例(ハーブ給与)、比較例(ハーブ無給与)の牛乳について、ペパーミントではメントール、バジルではリナロール、オレガノではチモール、レモングラスではシトラール、クローブ及びオールスパイスではオイゲノールを指標として分析した。
【0018】
6.試験の結果
泌乳成績の結果を表2に、精油成分及び脂溶成分分析結果を表3に示す。
【0019】
【表2】
Figure 0003646637
【0020】
【表3】
Figure 0003646637
【0021】
表2に示すように、ハーブを添加した飼料を給与して飼養した乳牛から搾乳した各実施例の牛乳も、乳量や乳成分については、一般の乳牛にみられる成績と同等であり、乳量、乳成分に対するハーブ添加の影響は認められなかった。
【0022】
また、表3に示すように、ハーブを添加した飼料を給与して飼養した乳牛から搾乳した牛乳には、それぞれのハーブの精油成分が移行していることが確認された。クローブ及びオールスパイスを給与した乳牛から搾乳した牛乳には、活性酸素に対する抗酸化性を有するとされるポリフェノールの1種であるオイゲノールが多量に移行しており、乳牛にこれらハーブを給与して飼養することで抗酸化性を有する牛乳を生産できることが分かった。
【0023】
[ハーブ給与による牛乳の風味改善、抗酸化力及び抗菌性向上の確認試験]
1.試験の内容
下記表4に示すラテン方格の給与方法により、4頭の乳牛(牛番号;32号、33号、38号及び40号)を表1に示す配合の飼料を給与して飼養し、ペパーミント、バジル又はレモングラスを給与して飼養した乳牛から搾乳した牛乳とハーブを給与せず飼養した乳牛から搾乳した牛乳について、食味検査(官能試験)、抗酸化力及び抗菌性の測定を行った。なお、抗菌性については、1期のみ、中生菌について測定した。また、クローブ又はオールスパイスを給与して飼養した乳牛から搾乳した牛乳について官能試験を行った。
【0024】
【表4】
Figure 0003646637
【0025】
2.乳牛
飼養した4頭の乳牛は、ホルスタイン種乳牛、1〜5産 分娩1〜10月の牛である。
【0026】
3.飼養条件
飼料給与時期:朝、夕の1日2回
搾乳時期:朝、夕の1日2回
【0027】
4.試験用サンプルの採取
(1)食味検査用サンプル:ハーブ給与開始後13日目の夕及び14日目の朝に搾乳した牛乳を混合し、60℃で30分間殺菌したもの。
(2)抗酸化性測定用サンプル:ハーブ給与開始後13日目の夕及び14日目の朝の牛乳を混合したもの。
(3)抗菌性測定用サンプル:ハーブ給与開始後13日目の夕及び14日目の朝に搾乳した牛乳を混合し、60℃で30分間殺菌後10℃に静置したもの。
【0028】
5.食味検査方法
ハーブ無給与の乳牛から搾乳した牛乳(比較例)を対照として、ハーブ給与の乳牛から搾乳した牛乳(実施例)についてパネラー8人又は10人で乳臭さ、爽やかさ及びコクの各項目について、下記の基準で評価し、パネラー全員の平均値及び標準偏差で表した。更に、各ハーブの香り及び味の感じる度合いを、下記の基準で評価し、パネラー全員の平均値及び標準偏差で表した。また、クローブ又はオールスパイスを給与して飼養した乳牛から搾乳した牛乳と、ハーブ無給与の乳牛から搾乳した牛乳とを比較する官能評価(コメントのみ)を行った。
【0029】
6.官能評価基準
(1)乳臭さの評価基準
乳臭くない ;2点
やや乳臭くない;1点
同等 ;0点
やや乳臭い ;−1点
乳臭い ;−2点
(2)爽やかさ
ある ;2点
ややある ;1点
同等 ;0点
ややない ;−1点
ない ;−2点
(3)コク
ある ;2点
ややある ;1点
同等 ;0点
ややない ;−1点
ない ;−2点
(4)ハーブの香り
非常に強く感じる;2点
強く感じる ;1点
感じる ;0点
少し感じる ;−1点
感じない ;−2点
(5)ハーブの味
非常に強く感じる;2点
強く感じる ;1点
感じる ;0点
少し感じる ;−1点
感じない ;−2点
【0030】
7.抗酸化力測定法
食品の抗酸化力の評価方法として用いられているABTS(RANDOX社の登録商標、以下同じ)法により牛乳の抗酸化力を測定した。このABTS法による抗酸化力の測定原理は以下のとおりである。即ち、強力な酸化作用を有する過酸化水素はメトミオグロビンを酸化し、酸素と結合したフェリルミオグロビンに変える。ABTS(2,2'-Azino-di-[3-ethylbenzthiazoline sulphonate])は前記フェリルミオグロビンの作用によって酸化され有色の酸化型ABTSになる。このため、一定量の過酸化水素とメトミオグロビン、ABTSを反応させると、酸化型ABTSが一定量生成され、生成された酸化型ABTSの量は吸光度を測定することによって定量することができる。そして、前記過酸化水素とメトミオグロビン、ABTSの溶液に試料を加えて反応させた場合、その試料中に抗酸化物質があれば過酸化水素を消化してしまうのでフェリルミオグロビンの生成量が減少し、酸化型ABTSの生成量も低下する。従って、前記反応物中の酸化型ABTSの生成量を吸光度により測定することにより、試料中の抗酸化物質を測定することができる。以上がABTS法の測定原理である。このABTS法により、以下のようにして牛乳の抗酸化力を測定した。過酸化水素とメトミオグロビン、ABTSの混合物(RANDOX社製の抗酸化力測定用キットであるTOTAL ANTIOXIDANT STATUSを使用)200μlに、試料としての牛乳20μlを加えて反応させた後に、酸化型ABTSの最大吸光帯がある波長600nmで吸光度を測定した。同時に標準として6-hydroxy-2,5,7,8-tetramethylchroman-2-carboxylic acid(抗酸化作用を有する物質)20μlを過酸化水素とメトミオグロビン、ABTSの混合物(前記RANDOX社製測定用キット)200μlに加えて反応させたもの、及びブランクとして水20μlを過酸化水素とメトミオグロビン、ABTSの混合物(前記RANDOX社製測定用キット)200μlに加えて反応させたものの吸光度についても測定し、前記20μl中の6-hydroxy-2,5,7,8-tetramethylchroman-2-carboxylic acidのモル数を前記標準の吸光度とブランクの吸光度との差で割ったものを係数とした。前記測定した試料の吸光度とブランクの吸光度との差に前記係数を掛けることによって6-hydroxy-2,5,7,8-tetramethylchroman-2-carboxylic acid換算モル数という形で試料の抗酸化物質の量、即ち抗酸化力を測定した。
【0031】
8.抗菌性測定法
サンプルをハートインフージョンブイヨン寒天培地で培養した。培養条件は37℃、好気、培養時間は36〜42時間とした。
【0032】
9.試験結果
(9−1)食味検査の結果
検査の結果を表5に示す。
【0033】
【表5】
Figure 0003646637
【0034】
この結果、供試した3種類のハーブ全てにおいて乳臭さが減少しており、統計学に基づきラテン方格法での分散分析表を作成したところ、危険率5%以下でで有意差が認められた。つまり、ハーブ無給与の乳牛から搾乳した牛乳に比べ、ハーブを給与した乳牛から搾乳した牛乳では、乳臭さが減少することが分かった。また、ハーブを給与した乳牛から搾乳した牛乳では爽やかさが増している。更に、ハーブを給与した乳牛から搾乳した牛乳には、それぞれのハーブの香りと味が付加されていた。また、クローブ及びオールスパイスを給与して飼養した乳牛から搾乳した牛乳の官能評価では、コクが増しているというコメントが多かった。
【0035】
(9−2)抗酸化力測定結果
ABTS法により測定した6-hydroxy-2,5,7,8-tetramethylchroman-2-carboxylic acid換算モル濃度を表6に、グラフを図1に示す。
【0036】
【表6】
Figure 0003646637
【0037】
また、この結果を統計学に基づきラテン方格法での分散分析表を作成したところ表7のようになった。
【0038】
【表7】
Figure 0003646637
【0039】
なお、表7の分散分析表の計算は以下の手順で行った。
(1)修正項CT
総和(32.20)と総数(16)から以下のとおり修正項CTを求めた。
CT=(32.20)2/16=64.8025
(2)全体の平方和SABC
個々のデータ及び修正項CTより以下のとおり全体の平方和SABCを求めた。SABC={(1.48)2+(1.85)2+(1.86)2+(0.74)2+(0.97)2+(1.85)2+(1.49)2+(2.18)2+(3.28)2+(2.45)2+(3.59)2+(2.50)2+(1.94)2+(2.73)2+(1.46)2+(1.83)2}−CT=73.5520−64.8025=8.7495
(3)乳牛間の平方和SA
乳牛ごとの和及び修正項CTより以下のとおり乳牛間の平方和SAを求めた。SA={(7.67)2+(8.88)2+(8.40)2+(7.25)2}/4−CT=65.2000−64.8025≒0.40
(4)乳期間の平方和SB
乳期ごとの和及び修正項CTより以下のとおり乳期間の平方和SBを求めた。SB={(5.93)2+(6.49)2+(11.82)2+(7.96)2}/4−CT=70.0875−64.8025≒5.29
(5)ハーブ間の平方和SC
ハーブごとの和及び修正項CTより以下のとおりハーブ間の平方和SCを求めた。
C={(5.62)2+(8.20)2+(9.56)2+(8.82)2}/4−CT=67.0000−64.8025≒2.20
(6)方格誤差SZ
全体の平方和及び各要因の平方和から以下のとおり方格誤差SZを求めた。
Z=SABC−SA−SB−SC=8.75−0.40−5.29−2.20=0.86
(7)自由度
A=fB=fC=4−1=3
Z=(4−1)2−fA−fB−fC=6
(8)分散MS
各要因の平方和と自由度から以下のとおり各要因ごとの分散MSを求めた。
MSA=SA/fA=0.40/3≒0.133
MSB=SB/fB=5.29/3≒1.763
MSC=SC/fC=2.20/3≒0.733
MSZ=SZ/fZ=0.86/6≒0.143
(9)F検定
各要因ごとの分散MSと方格誤差分散MCZから各要因ごとの分散比F0を以下のとおり求めた。
0A=MSA/MSZ=0.133/0.143≒0.930
0B=MSB/MSZ=1.763/0.143≒12.32
0C=MSC/MSZ=0.733/0.143≒5.126
得られた分散比F0をF表のF値と比較して有意差の有無を判定した。
【0040】
脂肪の過酸化物の重量法による抗酸化力の検定は、酸化されにくい長鎖の脂肪酸が多い場合などは抗酸化力の強弱にかかわらず重量差が出ず抗酸化力の測定結果に差が出ない場合がある。しかしながら、上記ABTS法による抗酸化力の測定は、過酸化物の重量法に比べ潜在的な抗酸化力も測定することができる。そのため、トータルとしての抗酸化力の検討に適している。そして、上記のように本発明では、このABTS法による抗酸化力測定の結果、乳期間の分散比F0Bは約12.32であり、F表のF(3,6,0.01)=9.78より大きく、乳期間では危険率1%以下で有意差が認められたものの、乳牛間の分散比F0Aは約0.930でありF表のF(3,6,0.05)=4.76より小さく、乳牛間での有意差は認められなかった。一方、ハーブ間の分散比F0Cは約5.126であり、F表のF(3,6,0.05)=4.76より大きく、ハーブ間では危険率5%以下で有意差が認められた。つまり、乳牛にハーブを給与することによりハーブの抗酸化成分が牛乳に移行し、ハーブ無給与の乳牛から搾乳した牛乳に比べて抗酸化力が大きくなっていることが示された。この結果から、上記3種類のハーブを給与して飼育した乳牛から搾乳した牛乳は、ハーブ無給与の乳牛から搾乳した牛乳に比べて活性酸素に対する抗酸化性が向上していることが分かる。即ち、上記ハーブを給与して乳牛を飼育することで、この乳牛から搾乳される牛乳に活性酸素に対する抗酸化性を付与することができることが明らかとなった。
【0041】
(9−3)抗菌性測定結果
測定結果を表8に示す。
【0042】
【表8】
Figure 0003646637
【0043】
表8から明らかなように、給与した3種類のハーブの全てにおいて、ハーブ無給与の場合に比べて抗菌性の向上効果が認められた。
【0044】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、乳牛にペパーミント、レモングラス及びクローブからなる群から選択される少なくとも一種のハーブを給与して飼養することで、ハーブの精油成分、脂溶成分が牛乳へ移行し、牛乳の生産段階で良好な風味を付与し、かつ独特の牛乳臭を除去することができ、成分無調整で牛乳臭のない高風味の牛乳を提供することができると同時に、抗菌性、更にはポリフェノール等の抗酸化成分を含有し、活性酸素に対する抗酸化性をも含めたトータル抗酸化性を有する牛乳を生産することができる。従って、この牛乳を飲用することで、老化防止や、糖尿病、ガン等、活性酸素が原因といわれる病気の予防効果が期待できる。また、抗菌性が付与されることで、牛乳の保存性が向上し、牛乳の品質向上が期待できる。更に、この牛乳を原料とすることで、チーズ、バター、ヨーグルト等の乳製品の風味を向上させるとともに、これらの乳製品に抗菌性、抗酸化性を付与することも可能である。また、この高機能性牛乳やこれを乾燥させたミルクパウダーを原料として老化防止食品や滋養食品を製造することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る高機能性牛乳の抗酸化力を示す、ABTS法により測定した6-hydroxy-2,5,7,8-tetramethylchroman-2-carboxylic acid換算モル濃度のグラフ。

Claims (4)

  1. 乳牛に、ペパーミント、レモングラス及びクローブからなる群から選択される少なくとも一種のハーブを給与して飼養することで、該乳牛から搾乳される牛乳に抗菌性及び抗酸化性を付与することを特徴とする高機能性牛乳の生産方法。
  2. 前記ハーブを飼料に添加して乳牛に給与する請求項1記載の高機能性牛乳の生産方法。
  3. ペパーミント、レモングラス及びクローブからなる群から選択される少なくとも1種のハーブを給与して飼養した乳牛から搾乳してなり、抗菌性及び抗酸化性を有する高機能性牛乳。
  4. 前記ハーブに含まれる精油成分、脂溶成分及びポリフェノールを含む請求項3記載の高機能性牛乳。
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