JP3645005B2 - 粘着剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、セルロース系フィルムを保護層に持つ偏光フィルムまたは位相差フィルムと液晶セルとを接着させる等の光学用に特に有用な粘着剤に関する。更に詳しくは高温、高湿条件下での耐久性に優れた感圧接着型偏光板および感圧接着型位相差板用の粘着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
偏光板は液晶表示体の普及により工業的に大量に生産され、使用される様になって来た。ウオッチ、電卓等の小物の表示体から出発した液晶表示体もパソコン、ワ−ドプロセッサ−等のOA機器、液晶テレビ、液晶プロジェクタ−、車載用インスツルメントパネル、車載用ナビゲ−ションシステム等、高価格機器や高耐久機器に適用されるようになるにしたがい、益々その高い信頼性が要求される様になって来た。液晶表示体の信頼性の中で、従来より最も改善が望まれている部品の1つが偏光板である。この液晶用偏光板は、組立上の簡便さ及び表面での反射ロスを軽減させる為に製品形態の大部分は感圧性接着剤層を有する感圧性接着型偏光板であり、その偏光子自身の耐久性向上の他に実用上最も重要なポイントは偏光板に使用される感圧接着剤層の耐久性向上である。
【0003】
一般に感圧接着型偏光板は、ヨウ素または二色性染料を偏光子として配向させた延伸ポリビニルアルコ−ル(以下PVAと略す)フィルムの両面をトリアセチルセルロ−ス(以下TACと略す)フィルムで積層接着し、さらにTAC表面に感圧性接着剤層を設けることにより製造される。実際の製造に際してはこの感圧接着型偏光板を液晶セルのガラス板表面に感圧性接着剤層を介して貼り合わされる。この様にして作られた一般の偏光板付き液晶セルを高温、高湿の条件下に長時間暴露すると、偏光板の白濁、変色、物理的破壊へと劣化が進み、最終的には全く偏光板としての機能を消失するに至ることがある。
【0004】
一方、STN方式の液晶表示体による白黒表示法の一つとして、液晶セルと偏光板の間に位相差板を設ける方法が普及している。位相差板の一種であるPVA位相差板は、延伸されたPVAフィルムの片面または両面をTACフィルムで支持し、その表面に感圧性接着剤層を設けることにより製造される。この一層または複数層の位相差板を、感圧性接着剤層を介して、STNセルに貼り合わせ、最外層に偏光板を貼り合わせることにより、液晶表示体を構成するものであるが、この場合も偏光板単体を貼り合わせ場合と同様、高温、高湿条件下に長時間暴露されると白濁、物理的破壊へと至りそう長くない時間で全く機能を消失してしまうことがある。
【0005】
上記TACの劣化を防止する手段として、特開昭59−111114では感圧性接着剤のアクリル酸含量を少なくする方法が、また特開平4−254803では3級アミンを添加する方法などが提案されている。しかしながら上記手段ではTACの劣化防止には効果があるものの、ガラスとの密着性が低下することにより高温高湿下で剥離等を生じ耐久性が低下する傾向にある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は高温高湿の条件下で長時間暴露しても劣化のない高耐久の感圧接着型偏光板または感圧接着型位相差板等の光学素子製造に好適な光学用粘着剤を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討し、これらの原因を鋭意究明したところ、感圧性接着剤の共重合成分の一つであるアクリル酸の酸性により高温、高湿条件下接触しているTACのアセチル基を加水分解させ、その酢酸がさらに別のアセチル基を次々と加水分解させ、急激に破壊、劣化させるものであることを突きとめた。そして、その対策として、偏光板、位相差板等の光学素子に設けられる感圧性接着剤層を形成するアクリル系樹脂に、共重合成分として分子中にアミド基を有する重合性モノマ−を一定量含有させることにより、従来の欠点が改善されることを見い出した。すなわち本発明は、
(1)アクリル樹脂共重合体系粘着剤において、共重合体の1成分として分子中にアミド基を有する重合性モノマーを10〜20重量%使用することを特徴とする粘着剤、
(2)上記(1)の粘着剤の層を有する偏光板、
(3)上記(1)の粘着剤の層を有する位相差板、
に関するものである。
【0008】
本発明で使用するアクリル樹脂共重合体は、アクリル酸系アルキルエステルおよび分子中にアミド基を有する重合性モノマーを必須の成分としたもので、必要に応じて官能基含有及び/又は不含有のモノマー成分を使用する。アクリル酸系アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸(炭素数1〜12)アルキルエステルが挙げられる。分子中にアミド基を有する重合性モノマーとしては、例えばN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドなどのアクリルアミド系モノマーが挙げられる。官能基不含有のモノマーとしては、例えば酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンなどが挙げられる。
【0009】
官能基含有のモノマーの官能基としては、例えばカルボキシル基、水酸基等があげられる。カルボキシル基を有する重合性モノマ−としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などが挙げられる。水酸基を有する重合性モノマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ(炭素数1〜5)アルキル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート等のジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられ、さらにグリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0010】
これらのモノマーの使用割合は、アクリル酸系アルキルエステルが50〜90重量%、好ましくは70〜88重量%、分子中にアミド基を有する重合性モノマーが10〜20重量%、好ましくは11〜15重量%、官能基不含有のモノマーが0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%、官能基含有のモノマーが0〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。分子中にアミド基を有する重合性モノマーが10重量%以下では高温高湿条件下での耐久性が劣り、20重量%をこえると粘着力に乏しく耐久性が劣る。
【0011】
本発明に用いられるアクリル樹脂共重合体は、使用するモノマーを有機溶剤に溶解し、一般的な周知方法により有機溶剤中でラジカル共重合させることにより容易に製造することができる。前記重合に用いられる有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等が挙げられる。前記ラジカル重合に使用される重合触媒としては、通常の重合触媒であるアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0012】
かくして得られるアクリル樹脂共重合体は、ガラス転移温度(以下、Tgと略記する)が−20℃以下、好ましくは−30℃〜−60℃であり、又平均分子量は500,000以上、好ましくは700,000〜1,600,000である。Tgが−20℃をこえると粘着力に乏しく、耐久性が劣る。又、平均分子量は500,000以下であると耐熱性が不足する可能性があり、1,600,000をこえると密着性が不足してくる傾向にあり、剥離等を起こし易くなる。
【0013】
本発明に用いられるアクリル樹脂共重合体は、単独でも光学用粘着剤として勿論使用可能であるが、必要に応じて架橋剤を配合して架橋しうる組成で光学用粘着剤として用いてもよい。架橋剤には適宜なものを用いてよい。一般には例えば、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートの如きポリイソシアネート化合物、ブチルエーテル化スチロールメラミン、トリメチロールメラミンの如きメラミン化合物、ジアミン系化合物、エポキシ樹脂系化合物、尿素樹脂系化合物、金属塩等が用いられる。
【0014】
本発明に用いられる偏光板、位相差板は偏光フィルム、位相差フィルムの片面または両面にが通常セルロ−ス系保護層で被覆されてなるものである。上記偏光性フィルムとしては通常ポリビニルアルコ−ル、ポリビニルホルマ−ル、ポリビニルアセタ−ル、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等のポリビニルアルコ−ル系樹脂から製せられたフィルムにヨウ素、二色性染料等の偏光素子を含浸させ延伸させることにより偏光性が付与されたものが好適に用いられるが、その他の種類のものであってもよい。又上記位相差フィルムとしては通常ポリビニルアルコ−ル、ポリビニルホルマ−ル、ポリビニルアセタ−ル、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等のポリビニルアルコ−ル系樹脂から製せられたフィルムを延伸させることにより位相差性が付与されたものが好適に用いられるが、その他の種類のものであってもよい。上記偏光性フィルム、位相差フィルムを被覆するセルロ−ス系保護層としてはセルロ−ス系フィルム、特に三酢酸セルロ−スやその他の透明なアセチルセルロ−ス系フィルムが用いられる。
【0015】
本発明の上記粘着剤は、通常偏光板、位相差板のセルロース系保護層に塗布されるが、塗布方法としては、一般に剥離フィルムにコーターで乾燥後の膜厚が20〜30μmになるように塗布、乾燥され、ついで偏光板、位相差板の片面または両面に転写する方法がとられる。
【0016】
本発明の粘着剤は、光学用の粘着剤として、特にセルロース系保護層で被覆された偏光フィルムまたは位相差フィルムと液晶セルのガラス基板とを接着させる粘着剤として有用である。かかる粘着剤は、高温高湿の状態で長時間放置しても発泡、剥離、劣化等の外観異常をおこさない。かかる特性を利用して液晶表示体の用途に用いられ、特に車両用途、各種工業計器類、家庭用電化製品の表示等に有用である。
【0017】
【実施例】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
アクリル酸n−ブチル83g、2−ヒドロキシエチルアクリレート1g、アクリル酸3g、N,N−ジメチルアクリルアミド13gを酢酸エチル185gに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル0.05gを添加して、70℃で5時間重合してアクリル樹脂共重合体(平均分子量:1,200,000、Tg:−37℃)を得た。さらに酢酸エチルで樹脂分が20重量%になるように調製した該アクリル樹脂共重合体溶液(粘度2,000cps/25℃)100重量部にトリレンジイソシアネート(3モル)のトリメチロールプロパン(1モル)付加物0.5重量部、γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン0.5重量部を配合して本発明の光学用粘着剤組成物を得た。
【0018】
実施例2
実施例1の方法により得られた本発明の粘着剤組成物を剥離フィルム上に乾燥後の膜厚が20〜30μmになるように塗布し乾燥後、三酢酸セルロースフィルムを保護層とするポリビニルアルコール系偏光板(ポリビニルアルコール系偏光性フィルムの平均重合度1700、平均ケン化度99.5モル%、5倍延伸)の三酢酸セルロースフィルム側に積層し、ローラーで押圧して偏光板を作成した。かかる偏光板をガラス板に貼り合わせ耐久性試験(80℃/90%RH1000時間放置)を行い、発泡状態、剥離状態、劣化状態を観察した。結果を表1に示す。
【0019】
比較例1
アクリル樹脂共重合体のモノマー組成をアクリル酸n−ブチル/2−ヒドロキシエチルアクリレート/アクリル酸/N,N−ジメチルアクリルアミド=91/1/3/5(重量部)に変更した以外は実施例1に準じて粘着剤組成物を製造し、実施例2に準じて実験を行った。結果を表1に示す。
【0020】
比較例2
アクリル樹脂共重合体のモノマー組成をアクリル酸n−ブチル/2−ヒドロキシエチルアクリレート/アクリル酸=96/1/3(重量部)に変更した以外は実施例1に準じて粘着剤組成物を製造し、実施例2に準じて実験を行った。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
発泡状態 ◎:発泡認められない
剥離状態 ◎:剥離認められない
劣化状態 ◎:変化認められない
【0023】
実施例3
実施例1の方法により得られた本発明の粘着剤組成物を剥離フィルム上に乾燥後の膜厚が10〜20μmになるように塗布し乾燥後、三酢酸セルロースフィルムを保護層とするポリビニルアルコール系位相差板(ポリビニルアルコール系位相差フィルムの平均重合度1700、平均ケン化度99.5モル%、1.1倍延伸)の三酢酸セルロースフィルム側に積層し、ローラーで押圧して本発明の位相差板を作成した。
【0024】
【発明の効果】
本発明によると、アクリル樹脂共重合体系粘着剤において、共重合体の1成分として分子中にアミド基を有する重合性モノマーを10〜20重量%添加することを特徴とする光学用粘着剤を使用することにより、高温高湿条件下での耐久性に優れた感圧接着型偏光板および感圧接着型位相差板を得ることができる。
Claims (3)
- アクリル樹脂共重合体系粘着剤において、共重合体の1成分として分子中にアミド基を有する重合性モノマーを10〜20重量%使用することを特徴とする(ただし、アルキル(メタ)アクリレートを主体とし、アミド基及び該アミド基と反応しうる他の官能基を有さない重合体もしくは共重合体との併用を除く)粘着剤。
- 請求項1の粘着剤の層を有する偏光板。
- 請求項1の粘着剤の層を有する位相差板。
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- 1995-05-31 JP JP15563795A patent/JP3645005B2/ja not_active Expired - Fee Related
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