JP3644729B2 - 耐衝撃性電子式遅延電気雷管 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
破壊対象に複数の爆薬体を装薬し、これらを順次起爆する発破作業において、起爆遅延時間を高精度に制御する耐衝撃性電子式遅延電気雷管に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、発破器から供給された電気信号を受け、電気エネルギーをエネルギー蓄積回路に蓄積し、該蓄積エネルギーにより動作し、所望の遅延時間の後にスイッチングを行う電子式遅延電気雷管が知られている。
これらの技術が開示されている公報として、例えばUSP4445435、DE3942842、特開平5−79797号公報等がある。これらの公報には、水晶振動子を用いた極めて起爆時間精度の高いものが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述の公報には電子式遅延電気雷管の耐衝撃性については記載されておらず、孔間が接近するような発破パターンでは、電子式遅延部が破損し不発が生じる問題がある。
即ち、トンネル掘削のため発破作業を行う場合などにおいて、爆薬装填孔の穿孔角度等を精密に制御することは極めて困難であるため、穿孔の底部においては爆薬が互いに極めて近接する場合が想定される。特に、心抜き部分のV字カットと呼ばれる破砕工法などにおいては、起砕効果を上げるため、隣接孔の孔底は近接するように穿孔される。例えば、工業火薬協会編「発破ハンドブック」によると、「カットの孔底を形成する4辺形の地山側の1辺の長さは20〜30cmになるように穿孔される。」と記載されているが、実際には、その距離は、20cm以下になることも少なくない。このような場合等においては、雷管が極めて大きな爆発衝撃を受ける。
【0004】
このような場合、水晶振動子は、一般的に衝撃強度に乏しく、従って、隣接する爆薬の爆発による極めて激烈な衝撃に電子式遅延電気雷管が耐えられない場合が懸念される。即ち、高精度の電子式遅延電気雷管の場合には、爆発衝撃によって、電子式遅延雷管が変位加速度を受け、該加速度によって電子式遅延電気雷管の電子遅延部を構成する素子の中で衝撃強度に乏しい水晶振動子が破損する。
【0005】
従って、このような耐衝撃性を要求される電子式遅延電気雷管では、水晶振動子の選定が特に重要である。
本発明は起爆遅延時間を高精度に制御し、耐衝撃性のある電子式遅延電気雷管を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、爆発衝撃下で電子式遅延電気雷管の耐衝撃性実験を繰り返し検討した結果、ある特定の形状を有した水晶振動子を用いる事により岩盤中の孔間20cm前後の爆発衝撃に耐え得ることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、発破器から供給された電気エネルギーを受ける第一及び第二の入力端子と、前記発破器から供給された電気エネルギーを蓄積するエネルギー蓄積回路と、該エネルギー蓄積回路に蓄積された電気エネルギーにより動作し、水晶振動子を基準とする発振回路と、該発振回路の出力パルスを設定された個数計数し、トリガ信号を出力するトリガ信号生成回路と、該トリガ信号に応答し、前記エネルギー蓄積回路に蓄積された電気エネルギーを放電する放電回路とを有する電子式遅延電気雷管において、前記水晶振動子の水晶片の長さTが、2.0mm〜3.5mmであって、且つ水晶片の長さT/幅A=2.0〜3.5である耐衝撃性電子式遅延電気雷管である。
【0008】
更には、前記水晶振動子の水晶片の長さTが、2.0mm〜3.0mmであって、且つ水晶片の長さT/幅A=2.0〜3.0であることが、最も好ましい。
水晶片の長さT/幅Aが3.5より大きいと、砂中15cmの距離(約10万G、岩盤中約20cmに相当)で破損しタイマーとして作動し得ない。また2.0より小さいと電気特性上の問題(インピーダンス)や製造上の問題が生じ好ましくない。
【0009】
水晶片の厚みは、100〜200μmが適当である。また、水晶片の長さが2mm以下になると、回路的にインピーダンスが高くIC設計が難しくなり、また製造性も困難でコストも高くなるので好ましくない。
本発明によれば、水晶振動子を用いる電子式遅延電気雷管において、耐衝撃性が高い水晶振動子を選択することが可能となり、特に変位加速度に対する耐性が著しく向上し、総合的に耐衝撃性能を高くすることが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明の電子式遅延部の一実施態様を示す回路ブロック図である。
発破器(図示せず)から供給された電気エネルギーを受ける第1の入力端子20、第2の入力端子21に、入力の極性を内部回路と整合させるように整流器2が接続される。
【0011】
整流器2の出力側には、エネルギー蓄積回路としてエネルギーコンデンサ3が接続され、コンデンサ3に迷走電流等のノイズが充電されないように、整流器2の入力側に、バイパス抵抗1がコンデンサ3と並列に接続される。
コンデンサ3には並列に定電圧回路5の入力端子が接続され、タイマー回路40に対して、一定の電圧を出力するように構成される。
【0012】
トリガ信号生成回路であるタイマーIC30は、発振回路の基準パルスを1msの基準信号に分周し、リセット保持回路からのリセット解除信号を受けてから既定の秒時まで該基準信号をカウントした後、放電回路としてのサイリスタ13にトリガ信号を出力する機能を有する。
発振回路は、水晶振動子素子12と負荷容量10、11と抵抗(図示せず)から構成され、また、リセット保持回路は、タイマーIC内部の比較器、分圧器(図示せず)及び抵抗8とコンデンサ7から構成されており、水晶発振が安定するまでカウント開始を阻止する。リセット保持時間は、抵抗8をトリミングすることにより任意に調整される。
【0013】
サイリスタ13は、タイマーIC30からトリガ信号を受けると閉じ、コンデンサ3の電気エネルギーを、出力端子22、23に対して放電する放電回路を形成する。
図2は、本発明の電子式遅延電気雷管の一実施態様を示す外観図である。
電子式遅延電気雷管は、電子式遅延部60と瞬発電気雷管50から構成されている。
【0014】
電子式遅延部60はプリント基板33上に配置され、電子式遅延部60の出力はリード線32を介して瞬発電気雷管50に印加される。プリント基板33は、その上にタイマーIC30、抵抗1、4及び8、コンデンサ6、水晶振動子12を有する。電気エネルギーを蓄えるコンデンサ3は、プリント基板33に取り付けられている。水晶振動子素子12は、両面接着テープ24でプリント基板33に貼り付けられている。さらに、整流器2、定電圧回路5、コンデンサ7、10及び11、サイリスタ13が裏面に取り付けられる。
【0015】
脚線31は、端子20、21に接続され、電気エネルギーが脚線31を介して、発破器(図示せず)よりコンデンサ3に供給される。
この場合、電子式遅延部60の大きさは、11mm以下の外形と50mm以下の長さを有する。
さらに、上記電子式遅延部60は、プリント基板の変形等による素子部品の脱落を防止するために樹脂でモールドされる。モールド樹脂には、可撓性のある遅硬性2液エポキシを使用し、モールド径は21mmとした。図3に一実施例を示す。水晶振動子素子12には、金属ケースの中に図4に示すような種々の形状の水晶片が収納されている。なお、水晶振動子は、振動モードによりAT型、E型、音さ型に分けられる。
【0016】
本発明者らは、上記電子式遅延電気雷管の耐衝撃性を評価検討するため、水晶振動子の寸法(T,A)を種々変え、砂中において、爆発衝撃試験を行った。
【0017】
【実施例1】
本衝撃試験は砂中80cm下で、衝撃の発生源は、含水爆薬100gを用い、受爆距離を変更して行い、受爆後においても上記電子式遅延電気雷管が正常に作動しえるかについて評価し、表1に示す結果を得た。また、本実施例において、水晶振動子以外の素子の破損は見られなかった。
【0018】
尚、受爆距離の設定は、岩盤中に発生する爆発衝撃加速度を計測し、該結果に基づき、これに相当する加速度が得られるよう決定したものである。
岩盤中における加速度の計測は、爆薬100gを装填・起爆して、距離を様々に変えて加速度センサを設置し、実施した。
前記実験により、岩盤中において発生する加速度は、受爆距離20cmにおいて約10万Gに達することを知り得た。
【0019】
砂中において同等の加速度を雷管に与えようとする場合の受爆距離についても、同様な実験によって、含水爆薬100gにおいて、約15cmであることを知り得たものである。なお、表1には、砂中における受爆距離が10cmとした場合の結果についても示したが、この場合の発生加速度は、約30万Gである。
本実施例の結果、水晶振動子中の水晶片の長さが3.5mm以下で、且つ水晶片の長さTと幅Aの比T/Aが3.5以下の水晶振動子しか、砂中15cmでの爆発衝撃にもたないことがわかった。さらに、好ましくは水晶片の長さが、3mm以下、且つT/Aが3.5以下の水晶振動子がよい。この形状の水晶片を有する水晶振動子は、受爆距離10cm、約30万Gの加速度発生下でも良好な性能を示す。
【0020】
【表1】
Figure 0003644729
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、耐衝撃性の高い水晶振動子を用いることにより、特に変位加速度に対する耐性が著しく向上し、総合的に耐衝撃性能が高く、起爆時間精度の高い電子式遅延電気雷管を提供することができ、安全且つ精度の高い制御発破が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子式遅延部の一実施態様を示す回路ブロック図である。
【図2】本発明の電子式遅延電気雷管一実施態様を示す外観図である。
【図3】本発明の電子式遅延電気雷管一実施態様を示す外観図である。
【図4】水晶振動子の水晶片形状を示す外観図
(a)AT型水晶振動子の水晶片形状
(b)E型水晶振動子の水晶片形状
(C)音叉型水晶振動子の水晶片形状
【符号の説明】
1 バイパス抵抗
2 整流器
3 コンデンサ
4 抵抗
5 定電圧回路
6 コンデンサ
7 コンデンサ
8 抵抗
10,11 コンデンサ
12 水晶振動子素子
13 サイリスタ
20 第1入力端子
21 第2入力端子
22,23 出力端子
30 タイマーIC
31 脚線
32 リード線
33 プリント基板
40 タイマー回路
50 瞬発電気雷管
60 電子式遅延部
70 モールド樹脂

Claims (1)

  1. 発破器から供給された電気エネルギーを受ける第一及び第二の入力端子と、前記発破器から供給された電気エネルギーを蓄積するエネルギー蓄積回路と、該エネルギー蓄積回路に蓄積された電気エネルギーにより動作し、水晶振動子を基準とする発振回路と、該発振回路の出力パルスを設定された個数計数し、トリガ信号を出力するトリガ信号生成回路と、該トリガ信号に応答し、前記エネルギー蓄積回路に蓄積された電気エネルギーを放電する放電回路とを有する電子式遅延電気雷管において、前記水晶振動子の水晶片の長さTが、2.0mm〜3.5mmであって、且つ水晶片の長さT/幅A=2.0〜3.5であることを特徴とする耐衝撃性電子式遅延電気雷管。
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