JP3641739B2 - トルクセンサ及び電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の操舵輪に加わる操舵トルクを検出するトルクセンサ及びトルクセンサの検出結果に基づいて電動モータを駆動し、操舵補助力を発生させる電動パワーステアリング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4は、従来の電動パワーステアリング装置の構成を示す縦断面図である。この電動パワーステアリング装置は、上部軸の上部2(アッパシャフト)の上端部に操舵輪20が取付けられ、上部軸の下部1(中間シャフト)の下端部には、第1ダウエルピン3を介して筒状の入力軸4及びこれの内側に挿入される連結軸5の上端部が連結され、連結軸5の下端部に第2ダウエルピン6を介して筒状の出力軸7が連結されている。出力軸7の上端部は入力軸4の下端部に挿嵌されており、上部軸の上部2及び出力軸7がころがり軸受8,9a,9bを介して、また、入力軸4がニードル軸受10を介してハウジング11内にそれぞれ支持されている。
【0003】
上部軸の上部2と下部1とは、連結部21において、下部1の上端部を上部2の下端部に所定長内嵌し、両者をスプライン結合させると共に、上部2の周面に形成された小径の貫通孔を経て、下部1の外周の対応位置に形成された凹所内に樹脂15を充填し、樹脂15により軸方向に、前記スプライン結合により周方向に拘束した状態で連結されている。
【0004】
ハウジング11内には、連結軸5を介して連結される入力軸4及び出力軸7の相対変位量により、操舵トルクを検出するトルクセンサ12と、トルクセンサ12の検出結果に基づいて駆動される操舵補助用の電動モータ13の回転を減速して、出力軸7に伝達する減速機構14とを備え、操舵輪20の回転に応じた舵取機構の動作を、電動モータ13の回転により補助し、舵取りの為の運転者の労力負担を軽減するように構成されている。また、出力軸7の下端部は、ユニバーサルジョイントを介してラックピニオン式の舵取機構に連結されている。
【0005】
トルクセンサ12には、例えば特公平07−021433号公報に開示されているような非接触式センサが用いられている。トルクセンサ12では、入力軸4及び出力軸7にそれぞれ固定された磁性体製リング12a,12bが、連結軸5の周囲のハウジング11内に固着されているトルク検出コイル12cの内側に配置されている。磁性体製リング12a,12bの対向する端面には、複数の矩形状の歯部がそれぞれ同一ピッチで全周に亘って形成されており、連結軸5の捩れに対応して、入力軸4側の磁性体製リング12aと出力軸7側の磁性体製リング12bとが相対回転したときに、前記歯部の対向面積が変化して、トルク検出コイル12cのインピーダンスが変化し、このインピーダンスの変化によって前記操舵トルクを検出する。
【0006】
以上のように構成された電動パワーステアリング装置では、操舵輪20の回転に応じて、トルクセンサ12が操舵トルクを検出し、その検出結果に基づいて、電動モータ13を駆動させる。駆動させる電動モータ13の回転は、減速機構14により減速されて出力軸7に伝達され、伝達された回転動作は、ラックピニオン式の舵取機構により直線動作に変換されて舵取が行われる。これにより、運転者の舵取りの為の労力負担を軽減する。
【0007】
車両の衝突等により操舵輪20に過大な外力が軸方向に加わった場合、上述したように、上部軸の上部2と下部1とを連結した樹脂15が、両者の界面において剪断され、上部軸の上部2が上部軸の下部1に対して軸方向に相対移動可能な状態となる。これにより、操舵輪20に加わる外力のエネルギーは、上部軸の上部2と下部1との嵌合部での摺動抵抗と、上部軸の上部2内に設けられた図示しない緩衝バネの変形抵抗とにより吸収され、衝突等によるショックを和らげ、運転者を保護する。
【0008】
図5は、操舵輪20に設けられた警笛のスイッチがオンされたときの電流の流れ方を示す回路図である。この回路図では、警笛(ホーン)HのスイッチSWがオンされると、バッテリBからの電流IH(ホーン電流)が、ホーンHに流れて鳴動させると共に、スイッチSWを経て分岐し、分岐した一方の電流I1は、アッパ側のボールベアリング(ころがり軸受8)の接触抵抗R1を通じて、接地電位を有する電動パワーステアリング装置のアッパブラケットへ流れる。分岐した他方の電流I2は、連結部21のスプライン結合された上部軸の上部2及び下部1の接触抵抗R2と、トルクセンサ12付近とを通じて流れ、トルクセンサ12付近を流れた電流I2は、ボールベアリング(ころがり軸受9a)の接触抵抗R3及びボールベアリング(ころがり軸受9b)の接触抵抗R4に分かれて、接地電位を有する電動パワーステアリング装置のロアブラケットへ流れる。
【0009】
電流IH及び分岐した電流I1,I2の関係は下式のようになる。
IH=I1+I2
I1=IH・[{R2+(R3//R4)}/R1//{R2+(R3//R4)}]
I2=IH・[R1/R1//{R2+(R3//R4)}]
但し、アッパブラケットの接地電位、ロアブラケットの接地電位及びバッテリBの接地電位を共通とした場合。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の電動パワーステアリング装置では、ホーン電流の一部がトルクセンサ12付近を通じて流れる場合がある。その為、大きなホーン電流を必要とするホーンHを取り付けた場合、トルクセンサ12付近にも大電流が流れて、トルクセンサ12の検出値に影響を与える可能性がある。また、大電流が流れることにより、ころがり軸受9a,9bに電食が生じる可能性もある。
【0011】
このような問題を解決する技術として、ホーンスイッチの近辺に、1対の導電性のスリップ片及びホーン駆動回路を構成する1対のブラシにより、ホーン駆動電流を接地電位に逃がす回路を設けた「パワーステアリング車両のホーン駆動装置」が、実開平4−67148号公報に開示されている。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、第1〜3発明では、ホーンに流れる電流による影響を受けないトルクセンサを提供することを目的とする。
第4発明では、トルクセンサがホーンに流れる電流による影響を受けず、また、ホーンに流れる電流によるころがり軸受の電食が少ない電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係るトルクセンサは、外部から加わるトルクを伝達すべく、その入力軸に連結された上部軸を備え、該入力軸に伝達されたトルクを、該入力軸と出力軸とを連結した連結軸の外周に生じた磁界の変化に基づき検出するトルクセンサにおいて、前記上部軸は、上部及び下部に分割されて連結され、該上部及び下部の連結部の何れか一方は、その他方との接触面が非導電性の被覆材料により被覆されていることを特徴とする。
【0014】
このトルクセンサでは、入力軸に連結された上部軸が、外部から加わるトルクを入力軸に伝達する。入力軸に伝達されたトルクは、入力軸と出力軸とを連結した連結軸の外周に生じた磁界の変化に基づき検出される。上部軸の上部及び下部の連結部の何れか一方は、その他方との接触面が非導電性の被覆材料により被覆されており、上部軸の上部及び下部は、電気的に絶縁され、ホーン電流が流れないので、その電流による影響を受けない。
【0015】
第2発明に係るトルクセンサは、前記上部をそのハウジングに軸支する軸受を備え、該軸受は、内輪及び外輪の間に導電部材を介在させた導電軸受であることを特徴とする。
【0016】
このトルクセンサでは、軸受が、上部軸の上部をそのハウジングに軸支し、その軸受は、内輪及び外輪の間に導電部材を介在させた導電軸受であるので、ホーン電流はハウジングへ流れ易くなり、ホーン電流による影響を受けない。また、軸受は、ホーン電流による電食を防止することができる。
【0017】
第3発明に係るトルクセンサは、前記上部及び下部の連結部は、前記上部軸の軸方向に加えられた衝撃を緩和すべくなしてあることを特徴とする。
【0018】
このトルクセンサでは、上部軸の上部及び下部の連結部は、上部軸の軸方向に加えられた衝撃を緩和すべくなしてあるので、この連結部を利用して、上部軸の上部及び下部を電気的に絶縁することができる。
【0019】
第4発明に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1〜3の何れかに記載されたトルクセンサと、該トルクセンサが検出した操舵トルクに基づいて駆動制御される操舵補助用の電動モータと、該電動モータに連動する出力軸とを備えてなることを特徴とする。
【0020】
この電動パワーステアリング装置では、請求項1〜3の何れかに記載されたトルクセンサと、このトルクセンサが検出した操舵トルクに基づいて駆動制御される操舵補助用の電動モータと、電動モータに連動する出力軸とを備えているので、トルクセンサが電流による影響を受けず、また、ホーン電流によるころがり軸受の電食が少ない。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るトルクセンサ及び電動パワーステアリング装置の実施の形態の要部構成を示す縦断面図である。この電動パワーステアリング装置は、上部軸の上部2(アッパシャフト)の上端部に操舵輪20が取付けられ、上部軸の下部1(中間シャフト)の下端部には、第1ダウエルピン3を介して筒状の入力軸4及びこれの内側に挿入される連結軸5の上端部が連結され、連結軸5の下端部に第2ダウエルピン6を介して筒状の出力軸7が連結されている。
【0022】
出力軸7の上端部は入力軸4の下端部に挿嵌されており、上部軸の上部2及び出力軸7がころがり軸受8,9a,9bを介して、また、入力軸4がニードル軸受10を介してハウジング11内にそれぞれ支持されている。
尚、ころがり軸受8は、図3の断面図(a)及び平面図(b)に示すように、内輪8b及び外輪8aの間に導電部材8cを介在させた導電軸受である。
【0023】
上部軸の上部2と下部1とは、連結部21aにおいて、下部1の上端部を上部2の下端部に所定長内嵌し、両者をスプライン結合させると共に、上部2の周面に形成された小径の貫通孔を経て、下部1の外周の対応位置に形成された凹所内に樹脂15を充填し、樹脂15により軸方向に、前記スプライン結合により周方向に拘束した状態で連結されている。
上部軸の下部1の、上部2と接触する連結部21aの外周面は、非導電性の合成樹脂(非導電性の被覆材料)により被覆され、上部軸の下部1と上部2とは、電気的に絶縁されている。
尚、上部軸の下部1の連結部21aの外周面に代えて、上部軸の上部2の、下部1と接触する連結部21aの内周面を、非導電性の合成樹脂により被覆しても良い。
【0024】
ハウジング11内には、連結軸5を介して連結される入力軸4及び出力軸7の相対変位量により、操舵トルクを検出するトルクセンサ12と、トルクセンサ12の検出結果に基づいて駆動される操舵補助用の電動モータ13の回転を減速して、出力軸7に伝達する減速機構14とを備え、操舵輪20の回転に応じた舵取機構の動作を、電動モータ13の回転により補助し、舵取りの為の運転者の労力負担を軽減するように構成されている。また、出力軸7の下端部は、ユニバーサルジョイントを介してラックピニオン式の舵取機構に連結されている。
【0025】
トルクセンサ12は、入力軸4及び出力軸7にそれぞれ固定された磁性体製リング12a,12bが、連結軸5の周囲のハウジング11内に固着されているトルク検出コイル12cの内側に配置されている。磁性体製リング12a,12bの対向する端面には、複数の矩形状の歯部がそれぞれ同一ピッチで全周に亘って形成されており、連結軸5の捩れに対応して、入力軸4側の磁性体製リング12aと出力軸7側の磁性体製リング12bとが相対回転したときに、前記歯部の対向面積が変化して、トルク検出コイル12cのインピーダンスが変化し、このインピーダンスの変化によって前記操舵トルクを検出する。
【0026】
以上のように構成された電動パワーステアリング装置では、操舵輪20の回転に応じて、トルクセンサ12が操舵トルクを検出し、その検出結果に基づいて、電動モータ13を駆動させる。駆動させる電動モータ13の回転は、減速機構14により減速されて出力軸7に伝達され、伝達された回転動作は、ラックピニオン式の舵取機構により直線動作に変換されて舵取が行われる。これにより、運転者の舵取りの為の労力負担を軽減する。
【0027】
車両の衝突等により操舵輪20に過大な外力が軸方向に加わった場合、上述したように、上部軸の上部2と下部1とを連結した樹脂15が、両者の界面において剪断され、上部軸の上部2が上部軸の下部1に対して軸方向に相対移動可能な状態となる。これにより、操舵輪20に加わる外力のエネルギーは、上部軸の上部2と下部1との嵌合部での摺動抵抗と、上部軸の上部2内に設けられた図示しない緩衝バネの変形抵抗とにより吸収され、衝突等によるショックを和らげ、運転者を保護する。
【0028】
図2は、操舵輪20に設けられた警笛のスイッチがオンされたときの電流の流れ方を示す回路図である。この回路図では、警笛(ホーン)HのスイッチSWがオンされると、バッテリBからの電流IH(ホーン電流)が、ホーンHに流れて鳴動させると共に、スイッチSWを経て、アッパ側のボールベアリング(ころがり軸受8)の接触抵抗R1を通じて、接地電位を有する電動パワーステアリング装置のアッパブラケットへ流れる。
【0029】
この場合、上述したように、上部軸の上部2と下部1との連結部21aにおいて、上部軸の下部1の、上部2と接触する外周面は、非導電性の合成樹脂により被覆され、上部軸の下部1と上部2とは、電気的に絶縁されているので、ホーンHに流れた電流IHは、トルクセンサ12付近へは分岐されず、全てアッパ側のボールベアリングの接触抵抗R1を通じて、接地電位を有する電動パワーステアリングへ流れる。
【0030】
従って、トルクセンサ12は、その検出値に、ホーンHに流れた電流IHの影響を受けず、また、大電流によりトルクセンサ12及びその周辺が磁化されることもなく、その検出値に影響を受けることもない。また、大電流が流れることにより、ころがり軸受9a,9bに電食が生じることもない。
【0031】
【発明の効果】
第1発明に係るトルクセンサによれば、上部軸の上部及び下部は、電気的に絶縁され、ホーン電流が流れないので、その電流による影響を受けない。
【0032】
第2発明に係るトルクセンサによれば、ホーン電流はハウジングへ流れ易くなり、ホーン電流による影響を受けない。また、軸受は、ホーン電流による電食を防止することができる。
【0033】
第3発明に係るトルクセンサによれば、上部軸の上部及び下部の連結部は、上部軸の軸方向に加えられた衝撃を緩和すべくなしてあるので、この連結部を利用して、上部軸の上部及び下部を電気的に絶縁することができる。
【0034】
第4発明に係る電動パワーステアリング装置によれば、トルクセンサが電流による影響を受けず、また、ホーン電流によるころがり軸受の電食が少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るトルクセンサ及び電動パワーステアリング装置の実施の形態の要部構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明に係るトルクセンサ及び電動パワーステアリング装置の、警笛のスイッチがオンされたときの電流の流れ方を示す回路図である。
【図3】導電軸受の構成を示す断面図(a)及び平面図(b)である。
【図4】従来の電動パワーステアリング装置の要部構成例を示す縦断面図である。
【図5】従来の電動パワーステアリング装置の、警笛のスイッチがオンされたときの電流の流れ方を示す回路図である。
【符号の説明】
1 上部軸の下部
2 上部軸の上部
4 入力軸
5 連結軸
7 出力軸
8 ころがり軸受(導電軸受)
9a,9b ころがり軸受
12 トルクセンサ
13 電動モータ
15 樹脂
20 操舵輪
Claims (4)
- 外部から加わるトルクを伝達すべく、その入力軸に連結された上部軸を備え、該入力軸に伝達されたトルクを、該入力軸と出力軸とを連結した連結軸の外周に生じた磁界の変化に基づき検出するトルクセンサにおいて、
前記上部軸は、上部及び下部に分割されて連結され、該上部及び下部の連結部の何れか一方は、その他方との接触面が非導電性の被覆材料により被覆されていることを特徴とするトルクセンサ。 - 前記上部をそのハウジングに軸支する軸受を備え、該軸受は、内輪及び外輪の間に導電部材を介在させた導電軸受である請求項1記載のトルクセンサ。
- 前記上部及び下部の連結部は、前記上部軸の軸方向に加えられた衝撃を緩和すべくなしてある請求項1又は2記載のトルクセンサ。
- 請求項1〜3の何れかに記載されたトルクセンサと、該トルクセンサが検出した操舵トルクに基づいて駆動制御される操舵補助用の電動モータと、該電動モータに連動する出力軸とを備えてなることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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JP37472198A JP3641739B2 (ja) | 1998-12-28 | 1998-12-28 | トルクセンサ及び電動パワーステアリング装置 |
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