JP3641467B2 - 瓦接着バッグ及び瓦葺き工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、屋根の瓦葺き工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、さん瓦を屋根に葺く工法として、野地板上に屋根の勾配方向へ瓦の登り足寸法間隔で瓦桟を配設し、当該瓦残へ瓦の上部裏面に設けられた爪を掛けて葺いていく所謂引っ掛け桟工法が用いられているが、更に、強風雨時等において防水性を高めるべく、前記瓦桟の下に屋根の流れ方向に沿った流し桟を適宜間隔で配設する形で(所謂流し桟工法)用いられている場合も多い。
【0003】
しかしながら、前記従来の工法によって葺かれた瓦は、瓦の側方へのズレやがたつきが生じ易く、震災や強風等によってもずれが生じ易く、いったんずれた際には、瓦下方へ風が吹き込み、極少数の瓦のズレだけでは止まらず、最悪の場合には瓦が飛散する場合もあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みて成されたものであって、極めて簡単な作業で、強風や震災等による瓦のズレや落下、或いは飛散を防止し得る瓦接着バッグ及び瓦葺き工法の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された本発明による接着バッグは、人為的になし得る加圧により破裂可能なバッグ、或いは人為的になし得る加圧により破裂可能な脆弱部を具備したバッグに、コーキング材又は接着剤(以下、コーキング材等と記す。)を封入して成ることを特徴とする。
【0006】
尚、前記人為的になし得る加圧とは、人一人の力によって十分に与えられる圧力を加える事を言う。前記バッグは、封入されたコーキング材等の漏出や硬化を防止し得る素材であれば良く、軟質であるか硬質であるか、或いは、合成樹脂、紙等どのような素材を用いるかは問わないが、薄いフィルム状とすることが可能であるものが望ましく、また当該バッグの残存により敷設箇所において瓦の座りが著しく害されない軟質なものや、前記加圧によって扁平化し得るもので形成されていることが望ましい。また、バッグに前記脆弱部を設ける場合、その構造としては、部分的に面状或いは線状(+状、−状、或いはV状等)の肉薄の部分を設けたり、封止部に切り込みを設ける等すればよい。
【0007】
また、前記バッグの構成としては、複数室に仕切られ、また、それが折り重ねられたり、個々に重合されたり等して複層室に仕切られ、各室にコーキング材等を封入して成る構成を採用しても良い。また、それらの瓦接着バッグを複数連結して成る瓦接着バッグを形成する場合もある。コーキング材等としては、引っ張り強さが約15kgf/平方cm以上のものが望ましく、シリコン系樹脂等の様に硬化した際に弾性を備えていれば更に好ましい。
【0008】
上記課題を解決する為になされた本発明による瓦葺き工法は、屋根面の勾配方向及び横方向に並べて葺く瓦葺き工法において、屋根面に葺かれた上下瓦間、又は瓦と下地間の少なくとも一方に、前記瓦接着バッグのうちのいずれかを装填し、当該瓦接着バッグ上にある瓦を上方から加圧し、前記コーキング材又は接着剤を当該瓦接着バッグから漏出させ硬化させる接着工程を含むことを特徴とする。尚、前記下地とは、瓦が葺かれる屋根面、及び葺かれた瓦を固定すべく当該屋根面に固定された瓦桟等の部材を指す。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による瓦接着バッグ、及び当該瓦接着バッグを用いた瓦葺き工法の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0010】
図1乃至図6に示す瓦接着バッグの実施の形態は、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂製フィルムや、気密加工を施した紙フィルムを袋状に成形し、その中に、硬化後の引っ張り強さが16kgf/平方cm(カタログ値)のシリコン系樹脂のコーキング材等を充填し、熱融着や超音波融着等によって封することにより、各々に前記コーキング材等が分包された単数又は複数の包室3を、個々に或いは複数一括して形成し、前記合成樹脂製のバッグ1にコーキング材等を封入して成る瓦接着バッグとしたものである。
【0011】
前記バッグ1の構成としては、図1に示す単一包室の構成と、図2乃至図6に示す複数包室の構成とが挙げられる。複数包室の配置には、一列に複数の包室3が配置された構成(図2参照)と、縦横或いは千鳥状に複数の包室が配置された構成(図示省略)と、包室3が二重以上に積み重ねられた複層室として配置された構造(図3参照)が挙げられる。
【0012】
また、図7に示す瓦接着バッグの実施の形態は、ポリエチレンフィルム等の合成樹脂膜を内側にコーティングする等で気密加工を施した紙フィルムを素材としたバッグ1に前記コーキング材等を封入したものであり、図8に示す瓦接着バッグは、前記コーキング材等の封入により比較的平たい直方体状(以下、キャラメル状と記す。)に成形される前記合成樹脂製フィルムや紙フィルムから成るバッグ1を採用したものである。
【0013】
上記の如く構成された瓦接着バッグは、所定の箇所に設置した後に体重をかける等、人為的になし得る加圧により破裂可能な構成となっている。
【0014】
例えば、図1に示す実施の形態は、一方向に長い単一包室のバッグ1一つからなる瓦接着バッグがその縁部を溶着することによって形成され、当該溶着によって形成された仕切部7の長辺に沿って、当該長辺のほぼ全域に亘る横線状の薄肉部8と、当該薄肉部8の中央部を横切る縦線状の薄肉部8とで脆弱部2が形成されている。
【0015】
また、図2に示す実施の形態は、前記図1のバッグをその包室の中間部を帯状に溶着することで二つの包室3,3に仕切った例として構成され、各包室3を形作る仕切部(当該例においては溶着部)7の一辺にミシン目状の切り込み6を入れることによって、当該仕切部7の切断強度を弱くして間接的に脆弱部2が形成されている。
【0016】
図3に示す実施の形態は、図1に示す実施の形態の表面同士を重ね合わせて接着したものであるが、当該例の脆弱部2は、両包室3,3の接着部を挟む縁部に面状の薄肉部9が連続して形成されたもので、加圧による一方の包室3の脆弱部2の破裂がもう一方の包室3の脆弱部2にまで波及しやすい状態を造ったものである。
【0017】
図8に示す実施の形態の脆弱部2は、上面の中央から下面の中央に亘って、一側面の中央を経るミシン目状の薄肉部10から成る脆弱部2を設けることによって、当該瓦接着バッグの上下に圧力が加わった際に、当該瓦接着バッグが設置された個所の表裏に亘る裂け目の発生を促し表裏双方へのコーキング材等の漏出を起こせしめる構造とされている。
【0018】
これら瓦接着バッグ4を、図9(イ)の如く上下に隣接する瓦5同士において、上位に存在する上位瓦5aの下縁部と、下位に存在する下位瓦5bの上縁部との間に装填し、足で踏む等して加圧する(接着工程)と、図9(ロ)の如くバッグ1が潰されて、内部のコーキング材等が漏出し、それが硬化して当該コーキング材等を挟んで上下に存在する上位瓦5aの下縁部と、下位瓦5bの上縁部とが接着される。
【0019】
前記シリコン系樹脂の様に硬化した際に一定の弾力性を持つコーキング材等は、瓦同士の干渉で生じる衝撃や、落下物による衝撃を軽減することとなる他、寒冷地における瓦割れ防止にもなる。たとえ、瓦が割れた際でも、その上下に隣接する瓦とコーキング材等で接合されていることから、当該割れ瓦の落下防止ともなる。
【0020】
前記バッグを具備した瓦接着バッグ4の構成としては、上記図1乃至図3及び図8の如く単一のバッグ1のみで構成する場合もあるし、図4乃至図7の如く、瓦接着バッグ4を複数連結して構成する場合もある。
【0021】
図4に示す実施の形態は、前記図1に示す実施の形態のバッグ1を二つ連結し、隣り合うバッグ1の間に存在する仕切部7を長くとることによって連結部12を形成し、図10に示すように、上下に隣接する瓦5,5の下位に存在する下位瓦5bの上縁部と瓦桟11との間、及び上位に存在する上位瓦5aの下縁部と下位に存在する下位瓦5bの上縁部との間に、連結部12を介した一連の瓦接着バッグ4,4を装填できる構成としたものである。従って、前記連結部12の長さは、当該屋根に用いられる瓦5の掛け爪13を迂回できる長さとすることが必要となる。
【0022】
図10(イ)の如く装填された瓦接着バッグの各バッグ1,1は、前記の如く瓦の上方から加圧されることによって、図10(ロ)に示す様に押しつぶされて破裂し、内部から漏出したコーキング等が硬化することによって、当該コーキング材等を挟む瓦5と瓦桟11、又は瓦5同士を接着することとなる。
【0023】
図5に示す実施の形態は、前記図4に示す実施の形態のバッグ1,1を二つの包室3,3に仕切ったものである。この例では、一つのバッグ1を構成する各包室3,3から漏出したコーキング材等を一定の領域に集中させるべく、各包室3,3の脆弱部2,2が相互に近づいた形で設けてある。
【0024】
図6に示す実施の形態は、図4に示す実施の形態のバッグ1の平面的形状を正方形に近づけて、多数(3つ以上)連結したものである。隣接するバッグ1,1間の連結部14は、隣り合うバッグ1の間に存在する仕切部7を長くとることによって形成されると共に、当該屋根に用いられる瓦5の掛け爪13を迂回できる長さに設定され、当該連結部14には、当該連結部14の幅を横切る形でミシン目状に切り込まれた切取線15が設けられ、隣接するバッグ1間を必要に応じて分離できる構造が採られている。尚、当該例の脆弱部2は、図2の実施の形態と同様である。
【0025】
図7に示す実施の形態は、前記の如く紙面に合成樹脂等から成る気密コート(図示省略)を形成する等の手法により、前記の如く気密加工を施した紙フィルムを素材とし、気密コートを内側に向けて折り畳むと共に、綴じ代に当たる前記気密コートを溶着することで袋状に成形した一対のバッグに、前記コーキング材等を封入したものであって、両バッグ1,1の連結部16が前記両バッグ1,1の仕切部7を延長することによって形成されているものである。当該例においては、各バッグ1,1の連結部16に面した部分に、ミシン目状に薄肉とした十字状の脆弱部2が設けられている。
【0026】
先に示した実施の形態のうち、バッグ1を形成する際に、溶着等により接合された仕切部が生じる場合には、当該仕切部が、バッグ1から漏出したコーキング材等の接合箇所への回り込みを阻害する場合も考えられるので、当該仕切部のうち、その表裏へコーキング材等が行き渡る必要がある領域(例えば、脆弱部周辺、若しくは仕切部全体)には、当該コーキング材等の流通を促す孔17を設けておくことが望ましい。
【0027】
【発明の効果】
以上の如く本発明による瓦接着バッグ及び瓦葺き工法によれば、前記従来の工法の様に瓦の側方へのズレやがたつきが生じる事がなく、震災や強風等によるずれや落下も生じ難い。また、瓦同士の干渉で生じる衝撃や、落下物による衝撃を軽減することとなる他、寒冷地で瓦を固定すべく用いた際にもその弾性によって瓦割れが防止出来ることとなる。たとえ、瓦が割れた際でも、その上下に隣接する瓦とコーキング材等で接合されていることから、当該割れ瓦の破片の落下が防止される。更に、施工面でも、新築工事における作業性が高いのみならず、既存住宅の保守・修繕作業にあっても、瓦の隙間に装填し加圧するという極めて容易な作業に終始するので、防災、施工という両観点で極めて高い実用効果を奏することとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による瓦接着バッグの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明による瓦接着バッグの一例を示す斜視図である。
【図3】本発明による瓦接着バッグの一例を示す斜視図である。
【図4】本発明による瓦接着バッグの一例を示す斜視図である。
【図5】本発明による瓦接着バッグの一例を示す斜視図である。
【図6】本発明による瓦接着バッグの一例を示す斜視図である。
【図7】本発明による瓦接着バッグの一例を示す斜視図である。
【図8】本発明による瓦接着バッグの一例を示す斜視図である。
【図9】(イ)(ロ)本発明による瓦葺き工法の要部を示す側断面図である。
【図10】(イ)(ロ)本発明による瓦葺き工法の要部を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 バッグ,2 脆弱部,3 包室,4 瓦接着バッグ,5 瓦,
6 切り込み,7 仕切部,8,9,10 薄肉部,11 瓦桟,
12 連結部,13 掛け爪,14 連結部,15 切取線,
16 連結部,17 孔,
Claims (4)
- 人為的になし得る加圧により破裂可能なバッグ(1)にコーキング材又は接着剤を封入して成る瓦接着バッグ(4)を連結部を介して複数連結して成り、
前記連結部の長さを、
屋根面の勾配方向及び横方向に並べて葺く瓦葺き工法において屋根面に葺かれた上下に隣接する瓦(5,5)の、下位に存在する下位瓦(5b)の上縁部と瓦桟(11)との間、及び上位に存在する上位瓦(5a)の下縁部と下位に存在する下位瓦(5b)の上縁部との間に、連結部(12)を介した一連の瓦接着バッグ(4,4)を装填する際に、当該屋根に用いられる瓦(5)の掛け爪(13)を迂回できる長さとした瓦接着バッグ。 - 前記連結部に、当該連結部の幅を横切る形で切取線(15)を設けた前記請求項1に記載の瓦接着バッグ。
- 前記バッグ(1)の包室(3)を形作る仕切部(7)に、前記コーキング材又は接着剤の流通を促す孔(17)を設けた前記請求項1又は2に記載の瓦接着バッグ。
- 屋根面の勾配方向及び横方向に並べて葺く瓦葺き工法において、
屋根面に葺かれた上下瓦(5,5)間、又は瓦(5)と下地間の少なくとも一方に、前記請求項1、2又は3に記載の瓦接着バッグのうちのいずれかを装填し、当該瓦接着バッグ上にある瓦(5)を上方から加圧し、前記コーキング材又は接着剤を当該瓦接着バッグから漏出させ硬化させる接着工程を含む瓦葺き工法。
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