JP3640696B2 - 管腔臓器治療具 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、管腔臓器内に挿入し径方向に拡張することにより管腔臓器の治療を行う管腔臓器治療具に関する。さらに詳しくは、血管狭窄部の拡張、および血管壁損傷部の保護、血液流出路の遮断等の目的で使用する管腔臓器治療具に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明の管腔臓器内に挿入し径方向に拡張することにより管腔臓器の治療を行う管腔臓器治療具は一般にステントと呼ばれている。ステントには種々の製品が存在するが、通常、管腔臓器内へ経カテーテル的に挿入し、被療部位で自己拡張させるか拡張させるための装置により拡張せしめることでその目的を達する。ステントを用いる治療の対象となる病例としては、血管狭窄、胆管狭窄、食道狭窄等がある。
【0003】
従来のステントは拡張後の形態保持特性などの物性面の要求から、そのほとんどが金属ワイヤーや、金属ワイヤーを編、織、組等の処理をすることにより得られる金属メッシュ等で構成されている。ステントは機能上、使用前は小さく収納し、使用する際に拡張させる必要があるが、拡張後被療部位では金属ワイヤー間の隙間、メッシュの目が大きくならざるを得ない。このため場合によっては、拡張させたステントの金属ワイヤーが管腔臓器内管壁に食い込み、炎症が起きるため求める効果が得られないことがある。さらに拡張後隙間やメッシュの目が大きくなり過ぎると血液などの管腔臓器内液が漏れて、解離性動脈瘤を始めとする血管壁損傷症状、あるいは種々の目的で血管側枝の血流を遮断する場合などの用途には使用できない。
【0004】
この問題の解決には、強度保持用の金属ステントにポリエステルメッシュ等による管状のカバー部材を複合させることも実験的に検討されているが、拡張後の大きさに合わせたカバー材を複合するため収納が困難になる。同様の目的でポリウレタン等のエラストマー材料の管状体をカバー部材に用いることも検討されているが、拡張後も収縮方向への力が常に働くため、形状保持に余分な力を要する。また、一般にポリウレタンをはじめ伸びの大きなエラストマーは、材料選択の範囲が狭いことに加え、生体内での炎症性が高く生体内劣化を起こしやすい欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明はステントの様な管腔臓器治療具の生体組織への食い込みを防ぎ、管腔臓器治療具に対して不必要に大きな収縮力を与えず、また挿入する管腔臓器内での留置安定性に優れたカバー部材を有する管腔臓器治療具を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、管腔臓器治療具に関して鋭意検討した結果、管腔臓器治療具が拡張する力もしくは拡張させられる力により塑性変形を生じる材質からなるカバー部材を管腔臓器治療具に設けることにより上記課題を解決できることを見いだした。
【0007】
つまり本発明は、筒状体からなり管腔臓器内に挿入し径方向に拡張することにより該管腔臓器の治療を行う管腔臓器治療具において、該筒状体の外面の少なくとも一部に、該筒状体が拡張する力もしくは該筒状体を拡張させる力により塑性変形を生じる材質からなるカバー部材を設けたことを特徴とする管腔臓器治療具である。
【0008】
具体的に図1を参照しながら説明する。図1は本発明の管腔臓器治療具1の斜視図である。本発明のカバー部材2は、管腔臓器治療具の本体である筒状体3の拡張操作開始から終了までの間にに永久ひずみを生じるものであれば良く、拡張初期に完全弾性変形を示すことは、なんら問題ではない。また、管腔臓器治療具1を留置部位に搬送するカテーテルなどの搬送器具に収納する等の操作中にカバー部材2を誤って変形させてしまうことを防ぐために、変形初期に完全弾性変形領域を持つことが望ましい。
【0009】
また、誤操作により管腔臓器治療具1の過拡張を防ぐために、目的拡張サイズ以上で完全弾性変形特性をしめすことも、用途によっては有用である。具体的には、後述する拡張操作によって生じた全ひずみ量の30%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上が永久ひずみであるように材料を選択することで、目的を達することができる。
【0010】
上記の拡張操作に関して、管腔臓器治療具の本体である筒状体3の自己拡張力にて拡張せしめる方法とバルーンカテーテル等の用具を用いて拡張せしめる方法とがある。
【0011】
カバー部材2を筒状体3の自己拡張力のみで拡張するよう設定する場合、具体的には100kgf/cm2以内、より好ましくは50kgf/cm2以内で拡張可能な材料、厚みであることが望ましい。バルーンカテーテル等により拡張させる場合、具体的には30kgf/cm2以内、より好ましくは10kgf/cm2以内の圧力で拡張可能であれば目的を達することができる。カバー部材2は上述したの条件を満たしていれば、サイズ、構造の組み合わせにより、軟質なものから硬質のものまで広い範囲の樹脂が使用可能である。
【0012】
カバー部材2を構成する塑性変形を生じる材質は、数多くの樹脂の中から炎症反応を起こしにくく、生体内で比較的安定に存在するものを選択して使用することが可能である。具体的には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)に代表されるフッ素系樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)を始めとするポリエステル樹脂、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)その他のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。しかし、これらに限定するものではない。
【0013】
本発明のカバー部材2は、その一部に上述した条件を満たす合成樹脂材料が用いられていれば良く、また、拡張操作によって塑性変形を生じない材料との複合して用いてもよい。
【0014】
本発明のカバー部材2の形状は、拡張時に与える力により自由に変形できれば何ら限定されないが、特に円筒形状が好ましい。しかしながら必ずしもこれに限るものではなく、円錐台の側面の様なテーパーのかかった形状や、円筒の両端の膨らんだヒョウタン形、さらに、筒状体3を完全に覆わず、パッチ状のカバー片を筒状体3の一部に固定する形状でも良い。
【0015】
本発明のカバー部材2の構造は、その用途により無孔質構造体、多孔質構造体のいずれでも良く、無孔質部分と多孔質部分とからなる複合構造体でも良い。無孔質構造体は液体、気体の漏れを防ぐ目的等に適しており、多孔質構造体は完全な遮断を必要としない用途に向いている。また多孔質構造体は長期間の留置において構造体中に細胞が侵入し、周辺組織と一体化することが期待できる。細胞侵入を可能とする孔のサイズは、直径2μm〜2mm、より望ましくは直径40μm〜400μm程度である。なお、この時の孔は円形である必要はなく、大きさがばらついていてもかまわない。また独立気泡タイプの構造体であっても良いが、組織と一体化する目的からは、連通孔タイプがより好ましい。連通孔タイプの多孔質構造体としては、スポンジ形状のように連続した材料中に孔が存在するものと、線維形態の材料を織り、編み、組みなどの方法で加工したもの、また、これらの複合体でも良い。
【0016】
本発明のカバー部材2の厚さは、カテーテルなどの搬送器具に容易に収納され、留置位置においての拡張が良好である上述したの塑性変形を生じる範囲においては、どの厚みでも良い。収納性を高めるにはできるだけ薄いことが望ましいが、実際には、選択した樹脂の性質により、拡張限界が定まる。具体的には、厚みが1mm以下、好ましくは400μm以下、より好ましくは100μm以下になるように、材料、サイズの設定を行うのが望ましい。
【0017】
本発明において、カバー部材2は管腔臓器治療具の本体である筒状体3に対して、必ずしも接着されていなくとも良い。つまり、拡張・留置後に再回収可能なタイプの管腔臓器治療具に対し、弱く接着するか全く接着せずに使用し、一定期間留置後筒状体3を取り出すことで、カバー部材2のみを留置することができる。この際に、カバー部材2が多孔質であると、組織侵入により、安定して存在することができる。
【0018】
また本発明において管腔臓器治療具の本体である筒状体3は何ら限定されない。機能的には、形状記憶合金や弾性金属等からなる自己拡張性を有するものや、特に自己拡張性を持たずに内腔よりバルーンカテーテルなどの拡張装置によって拡張させるものでも良い。
【0019】
本発明の筒状体3の形状としては、円筒体、シートを丸めて筒状体としたもの、コイルスプリング状のものなどが挙げられる。構造としては、無孔質構造体、多孔質構造体のいずれでも良く、無孔質部分と多孔質部分とからなる複合構造体でも良い。多孔質構造体としては、スポンジ形状のように連続した材料中に孔が存在するものと、線維形態の材料を織り、編み、組みなどの方法で加工したもの、またこれらの複合体でも良い。
【0020】
本発明の筒状体3の材質としては、ステンレス、ニッケル−チタン合金、アモルファス金属等の金属材料、また、ポリアセタール、ポリプロピレン等の有機材料などが挙げられる。
【0021】
本発明の管腔臓器治療具は、主に血管狭窄部の拡張、および血管壁損傷部の保護、血液流出路の遮断等に用いられ、その使用例を以下に示す。まず、管腔臓器治療具の本体である筒状体とカバー部材を必要に応じて収縮させる。次に管腔臓器治療具をカテーテルなど搬送器具の先端部に詰め込み、公知の方法により血管などの管腔臓器内に挿入し、患部に誘導する。最後にプッシングカテーテルなどの用いて管腔臓器治療具を搬送器具から押し出し患部に留置させ、搬送器具を撤去する。その際、管腔臓器治療具が自己拡張性を有するものである場合は自己拡張させるが、自己拡張性を持たない場合はバルーンカテーテルなどを管腔臓器治療具内腔に挿入し、拡張させる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例を示し本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0023】
(比較例1)
強度に2軸延伸を施したポリスチレンフィルム(20μm厚)を長さ20mm、内径10mmの筒形状のカバー部材に加工した。0.4mmφのステンレス線材を曲げ、長さ20mm、径変化2〜12mmのジアンターコ氏ステント(最大拡張力約150gf/cm2)を作製し、管腔臓器治療具の本体とした。管腔臓器治療具の本体にカバー部材をシアレ系接着剤により接着しカバー付管腔臓器治療具を作製した。
【0024】
このカバー付管腔臓器治療具を畳み込み、3mm径のカテーテルシースへの装填を試みたが、カバー部材がかさばるためできなかった。4mm径カテーテルシースに装填し、内径8mmのシリコーンゴム製パイプ内で押し出し、留置を試みた。管腔臓器治療具の本体は拡張したが、カバー部材のしわになった部分が内腔面に突き出た形となり、スムーズな内腔面の確保ができなかった。
【0025】
さらに、このカバー付管腔臓器治療具を内径12mmのシリコーンゴム製パイプ内で押し出したところ、約10mm径まで自己拡張して止まった。さらに、この内側にバルーンカテーテルを挿入して30kgf/cm2の圧力を加え拡張を試みたがほとんど拡張できなかった。さらに、圧力を加えたところカバー部材に裂けを生じた。
【0026】
(比較例2)
セグメント化ポリウレタンをテトラヒドロフラン溶液にし、比較例1と同じ大きさのジアンターコ氏ステントを4mm径に固定したうえで、この溶液に浸漬、乾燥させて、約30μm厚のポリウレタンカバー部材を持つカバー付管腔臓器治療具を得た。当該カバー付管腔臓器治療具は3mm径のカテーテルシースへの装填が可能であった。これを内径8mmのシリコーンゴム製パイプ内で押し出したところ、約6mm径まで自己拡張して止まった。さらに、この内側にバルーンカテーテルを挿入して強制的に拡張させたところ約1kgf/cm2以下の圧力で8mm径まで拡張できたが、バルーンを収縮させると6mm径に戻った。
【0027】
(比較例3)
比較例2と同様にセグメント化ポリウレタンのテトラヒドロフラン溶液に、比較例1,2と同じ大きさのジアンターコ氏ステントを8mm径に固定したうえで、浸漬、乾燥させてカバー付管腔臓器治療具を得た。3mm径のカテーテルシースへの装填を試みたがカバー部材がかさばるためできなかった。4mm径のカテーテルシースには装填できたが非常に困難であった。内径8mmのシリコーンゴム製パイプ内で押し出したところ、自己拡張により留置されたが、押し出しの抵抗が大きく、カバー部材の一部に破れを生じた。
【0028】
(実施例1)
ポリエチレンフィルムとして、家庭用ポリ袋(ヨーポリ袋;大洋社)を切り開いて30μm厚のフィルムを得た。これを加熱溶融接着により長さ20mm、内径4mmの筒形状のカバー部材に加工し、比較例1、2、3と同じ大きさのジアンターコ氏ステントに接着させた。このカバー付管腔臓器治療具は3mm径のカテーテルシースへの装填が可能であった。内径8mmのシリコーンゴム製パイプ内で押し出したところ、4mm径まで自己拡張して止まった。この内側にバルーンカテーテルを挿入して強制的に拡張させたところ約5kgf/cm2以下の圧力で8mm径まで拡張した。その後、バルーンを収縮させると管腔臓器治療具は隙間無く、シリコーンチューブに密着した形で留置された。
【0029】
(実施例2)
オレフィン系コポリマーであるタフマーA4090(三井石油化学)の0.1mmφ糸を丸編みし、加熱処理を施して、内径3mmの無延伸状態に近い多孔質管状体を得た。これに比較例および実施例1と同じ大きさのジアンターコ氏ステントを加熱溶融接着し、3mm径カテーテルシースへ装填した。内径8mmのシリコーンゴム製パイプ内で押し出したところ、3mm径まで自己拡張して止まった。この内側にバルーンカテーテルを挿入して強制的に拡張させたところ約10kgf/cm2以下の圧力で8mm径まで拡張した。その後、バルーンを収縮させると隙間無く、シリコーンチューブに密着した形で留置された。
【0030】
【発明の効果】
本発明の管腔臓器治療具は塑性変形を生じる材質からなるカバー部材を設けることで、生体組織への食い込みを防ぎ、管腔臓器治療具に対して不必要に大きな収縮力を与えず、また挿入する管腔臓器内腔面及び管腔臓器治療具の表面と同じ形状で塑性変形することにより留置安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の管腔臓器治療具の斜傾図。
【符号の説明】
管腔臓器治療具 ・・・ 1
カバー部材 ・・・ 2
径方向に拡張する筒状体 ・・・ 3

Claims (2)

  1. 筒状体からなり管腔臓器内に挿入し径方向に拡張することにより該管腔臓器の治療を行う管腔臓器治療具において、該筒状体の外面の少なくとも一部に、該筒状体が拡張する力もしくは該筒状体を拡張させる力により塑性変形を生じる材質からなるカバー部材を有し、該カバー部材は、無孔質部分と多孔質部分とからなる複合構造体のフィルムであることを特徴とする管腔臓器治療具。
  2. 前記カバー部材は、無延伸状態であることを特徴とする請求項1に記載の管腔臓器治療具。
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