JP3639385B2 - レーダ映像処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、船舶等に用いられるレーダ装置における映像信号の強調(拡大)表示を可能とするレーダ映像処理装置に関し、一層詳細には、レーダ映像の角度方向における強調(拡大)表示を可能とするレーダ映像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶等に搭載されるレーダ装置の受信信号(レーダ信号)中に含まれる目標信号が、レーダ装置表示部(レーダ画面)にレーダ映像として表示される時、一般に、そのレーダ映像の大きさは、目標自体の大きさはもとより、レーダ送信パルス幅τや、レーダ装置から送信される空中線輻射部水平ビーム幅θH などの各種パラメータにも依存する。
【0003】
表示されるレーダ映像の大きさを目標までの距離方向および角度方向に分解して考察すると、主として、映像の距離方向の大きさはレーダ送信パルス幅τによって、また、角度方向の大きさは、空中線輻射部水平ビーム幅θH によって決定される。
【0004】
この時、当該レーダ装置から見た目標の見込み角が、空中線輻射部水平ビーム幅θH に比較して小さい場合(目標が小型船舶のように小さい場合、あるいは、大型船舶でも距離が遠く離れている場合)には、レーダ装置表示部におけるレーダ映像の角度方向の表示サイズは、ほぼθH となることから、当該レーダ装置の位置を原点として極座標表示されるレーダ画面においては、同じ空中線輻射部水平ビーム幅θH であっても、原点に近いレーダ映像ほど、その角度方向の表示サイズは小さくなるため、観測しずらくなる傾向がある。
【0005】
この様子を理解し易く図示すると図6の如くなる。すなわち、図6は、レーダ画面上に表示される目標の映像を示す模式図であり、図6Aは原点付近の小目標の映像を示す図、図6Bは原点から離れた位置にある小目標の映像を示す図である。
【0006】
従って、原点に近い目標の映像をより見やすく観測するためには、レーダ装置の観測レンジを必要に応じて切り換える等の対応、操作が必要となる。
【0007】
上記観測レンジの切り換えのような操作の煩わしさを伴わずに、原点付近に表示される目標のレーダ映像をより見やすく、観測する他の方法として、従来から、レーダ画面に表示されるレーダ映像を拡大表示する処理方法を採用したレーダ装置が開発されている。このような拡大の処理方法としては、以下の(1)〜(3)の方法が知られている。
【0008】
(1) 図7Aに示すレーダ装置の受信信号中に含まれる目標信号a〜dを、図7Bに示すように、レーダ画面上における原点からの距離(距離情報)rに応じて、その増幅率を可変制御できる増幅器を通して増幅し、原点に近いレーダ映像の映像信号ほど、信号振幅レベルを大きくし、強調して表示する処理方法。
【0009】
(2) 図8Aに示すレーダ装置のスイープ毎の受信信号中に含まれる目標信号a、bを、ローパスフィルタを通して当該目標信号の裾を伸ばす強調(拡大)処理を行い、図8Bのレーダ画面に示すように、レーダ画面上における原点からの距離情報rに関係なく、距離方向のレーダ映像の表示サイズを、一定の拡大率で拡大する処理方法。
【0010】
(3) レーダ装置の受信信号中に含まれる目標信号を、レーダ画面上に表示するための画素メモリ上に書き込む際に、図9に示すように、レーダ画面の距離方向に拡大して書き込み、画素単位でレーダ映像の表示サイズを拡大する処理方法。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の処理方法(1)〜(3)による映像の拡大処理は、いずれも、原点からの距離方向の拡大処理を行うものであり、レーダ画面の原点からの角度方向の拡大を行うことができない。このため、原点付近に表示される小さな目標のレーダ映像の角度方向の大きさは、依然として水平ビーム幅θH により決まる大きさとなり(距離方向の拡大処理では、原点付近のレーダ映像の表示は線状になってしまう)、依然として原点に近いレーダ映像ほど、観測しずらいという不都合が存在していた。
【0012】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたものであり、船舶等に用いられるレーダ装置における受信信号からレーダ映像を表示処理するに際し、レーダ映像の角度方向における強調(拡大)表示を可能とするレーダ映像処理装置を提供し、レーダ画面の原点付近の小さな目標に対するレーダ映像の観測を容易にすることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、例えば、図1に示すように、レーダ映像処理装置における処理対象とする目標信号について、レーダ画面上における原点からの距離情報rを出力する距離認識手段12と、距離情報rに基づいたローパスフィルタ係数αr (0<αr ≦1)を出力するフィルタ係数算出手段16と、前記ローパスフィルタ係数αr により、fr,i =αr r,i +(1−αr )fr,i-1 、但しi=1,2,3,…n(スイープ番号)なる信号を出力するローパスフィルタ18と、前記ローパスフィルタ18に、スイープ毎の目標信号の距離情報rに着目して得られる時系列の受信信号Xr,i (i=1,2,3,…n;スイープ番号)を入力する手段と、前記ローパスフィルタ18の出力fr,i と、前記時系列の受信信号Xr,i のレベルを比較するレベル比較手段20と、前記レベル比較手段20の比較結果により、ローパスフィルタ18の出力fr,i と、前記時系列の受信信号Xr,i からレベルの大きい信号を選択する選択手段22を備え、当該選択手段22の出力からレーダ画面に映像を表示することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明は、前記のレーダ映像処理装置において、前記目標信号を処理し、レーダ画面上における原点からの距離に応じて、当該距離方向の映像信号を強調する距離方向強調手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
原信号である入力信号Xr,i をローパスフィルタ18に通すことで、受信信号Xr,0 、Xr,1 、Xr,2 、Xr,3 に対して、信号の裾が伸び、本来原信号にはない、例えばスイープ番号4〜6(図3参照)に所定の振幅を持った信号を作りだすことができ、レーダ画面の角度方向に拡大した映像として表示することができる。
【0016】
さらに、距離方向の映像信号を強調する距離方向強調手段と併用することにより、レーダ画面上の原点に近い目標の映像ほど、角度方向、距離方向ともに拡大された映像として表示することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に係るレーダ映像処理装置の一実施の形態について、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係るレーダ映像処理装置の構成を示す回路ブロック図である。レーダ映像処理装置10は、距離認識回路12、レベル演算回路14、フィルタ係数算出回路16、ローパスフィルタ回路18、レベル比較回路20、選択回路22、演算回路24、遅延回路26から構成されている。
【0019】
レーダ装置から発射された信号は、目標にて反射し、レーダ装置に受信される。図2は各スイープ毎(i=0,1,…n;スイープ番号)のレーダ信号と目標までの距離の関係を示す模式図であり、目標までの距離がrの時、各スイープ毎の受信信号は、Xr,0 、Xr,1 …Xr,n となり、距離がr’の時、各スイープ毎の受信信号は、Xr',0、Xr',1…Xr',nとなる。
【0020】
目標からの受信信号はレーダ映像処理装置10のレベル演算回路14に、入力信号Xr,i (i=0,1,…n;スイープ番号)として入力される。この時、距離認識回路12は、レベル演算回路14、フィルタ係数算出回路16に対して、処理対象とする目標からの受信信号Xr,i (i=0,1,…n;スイープ番号)のレーダ画面上における原点からの距離情報rを供給する。
【0021】
レベル演算回路14は、距離認識回路12からの距離情報rをもとに受信信号のレベルの増幅を行う。このレベル演算回路14における受信信号レベルの増幅は、例えば、前述の従来例(1)(図7A、図7B参照)のように、レーダ画面の原点に近い距離にある目標からの受信信号ほど増幅度を上げることにより、距離方向の映像強調を行うためのものである。ここで、距離方向の映像強調を行わない場合はレベル演算回路14を省略することが可能であり、また、このレベル演算回路14の代わりに、前述の従来例(2)(図8A、図8B参照)の方法を実現する回路構成(ローパスフィルタおよびその制御回路等)を距離方向拡大手段としてレーダ映像処理装置10中の適切な位置に設けることができる。
【0022】
フィルタ係数算出回路16は、距離認識回路12からの距離情報rに基づいて、距離情報rに応じたローパスフィルタ係数αr を算出し、ローパスフィルタ回路18にその値を供給する。ローパスフィルタ回路18は、レベル演算回路14で増幅された入力信号Xr,i と後述する前処理結果fr,i-1 が入力され、ローパスフィルタ係数αr で定まる所定のフィルタ処理を行う。
【0023】
レベル比較回路20は、ローパスフィルタ回路18の出力fr,i と入力信号Xr,i とのレベル比較を行い、その比較判定結果を選択回路22に出力する。選択回路22は、レベル比較の結果に基づいて大きい方の信号を選択出力し、演算回路24に入力する。演算回路24は、選択回路22の出力信号に基づいて、レーダ画面に目標の映像を表示するための通常の各種演算処理を行い、レーダ映像処理装置10の出力信号とする。
【0024】
ここで、遅延回路26は、次のスイープ番号の入力信号Xr,i+1 のフィルタ処理を行う前処理、すなわち、遅延を補償するための回路であり、この遅延回路26の出力信号fr,i-1 が前処理結果としてローパスフィルタ回路18に入力される。
【0025】
このように、原信号である入力信号Xr,i をローパスフィルタ回路18に通すことで、図3に示すように、受信信号Xr,0 、Xr,1 、Xr,2 、Xr,3 に対して、信号の裾が伸び、本来原信号にはない、例えばスイープ番号4〜6に所定の振幅を持った信号を作りだすことができ、レーダ画面の角度方向を拡大した映像として表示することができる。
【0026】
なお、ローパスフィルタ回路18の出力信号fr,i をそのまま使用した場合、図4に示すように、フィルタ出力の立上がりがなまるため、原信号Xr,i の立上がりの振幅レベルが低下することとなる。これを回避するため、ローパスフィルタ回路18の出力信号と原信号の論理和を論理和回路21によりとる(大きい方の信号を選択する)ことにより原信号の振幅レベルを損なうことなく、かつ、原信号Xr,1 の裾を伸ばした信号fr,1 を得ることができる。すなわち、図1中、ローパスフィルタ回路18を図4に示すローパスフィルタ回路23に置換する。
【0027】
また、本発明のレーダ映像処理装置において、レーダ映像の拡大率は、レーダ画面の原点からの距離情報(目標までの距離情報)rに応じて変化させており、この拡大率の距離情報rに応じた変化は、ローパスフィルタ係数αr を変化させることにより実現している。
【0028】
この結果、レーダ画面上の目標の映像は、図5に示すように、レーダ画面の原点Oに近い目標(目標信号)aほど、角度方向に拡大された映像(斜線部が拡大部分)となり、目標(目標信号)bの如く、原点から遠くなるに従い、角度方向の拡大の度合いを小さくした映像となり、原点からさらに遠い位置の目標(目標信号)cでは角度方向の拡大のない映像になる。
【0029】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るレーダ映像処理装置によれば、レーダ映像の角度方向における拡大表示が可能となり、レーダ画面の原点に近い目標が角度方向に拡大された映像として表示され、レーダ画面の原点付近の小さな目標に対するレーダ映像の観測が容易になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るレーダ映像処理装置の構成を示す回路ブロック図である。
【図2】レーダ装置のスイープ毎(i=0,1,…n;スイープ番号)のレーダ信号と目標までの距離の関係を示す模式図である。
【図3】角度方向の受信信号拡大を説明するための信号レベルを示すグラフである。
【図4】ローパスフィルタ回路の入力信号(原信号)と出力信号の関係を説明するための模式図である。
【図5】本発明のレーダ映像処理装置による目標のレーダ画面上の目標映像を示す模式図である。
【図6】レーダ画面上に表示される目標の映像を示す模式図であり、図6Aは原点付近の小目標の映像を示す図、図6Bは原点から離れた位置にある小目標の映像を示す図である。
【図7】レーダ映像の強調、拡大表示を行う従来方法(1)の原理を説明する図であり、図7Aは増幅前の目標信号振幅レベルを示すグラフ、図7Bは増幅後の目標信号振幅レベルを示すグラフである。
【図8】レーダ映像の強調、拡大表示を行う従来方法(2)の原理を説明する図であり、図8Aはスイープ毎の目標信号a、bのローパスフィルタ出力を示す波形図、図8Bは図8Aにおける目標信号a、bのレーダ映像を示す模式図である。
【図9】レーダ映像の強調、拡大表示を行う従来方法(3)の原理を説明する原理図である。
【符号の説明】
10…レーダ映像処理装置 12…距離認識回路
14…レベル演算回路 16…フィルタ係数算出回路
18、23…ローパスフィルタ回路 20…レベル比較回路
21…論理和回路 22…選択回路
24…演算回路 26…遅延回路

Claims (2)

  1. レーダ映像処理装置における処理対象とする目標信号について、レーダ画面上における原点からの距離情報rを出力する距離認識手段と、
    距離情報rに基づいたローパスフィルタ係数αr (0<αr ≦1)を出力するフィルタ係数算出手段と、
    前記ローパスフィルタ係数αr により、fr,i =αr r,i +(1−αr )fr,i-1 、但しi=1,2,3,…n(スイープ番号)なる信号を出力するローパスフィルタと、
    前記ローパスフィルタに、スイープ毎の目標信号の距離情報rに着目して得られる時系列の受信信号Xr,i (i=1,2,3,…n;スイープ番号)を入力する手段と、
    前記ローパスフィルタの出力fr,i と、前記時系列の受信信号Xr,i のレベルを比較するレベル比較手段と、
    前記レベル比較手段の比較結果により、ローパスフィルタの出力fr,i と、前記時系列の受信信号Xr,i からレベルの大きい信号を選択する選択手段を備え、当該選択手段の出力からレーダ画面に映像を表示することを特徴とするレーダ映像処理装置。
  2. 請求項1記載のレーダ映像処理装置において、前記目標信号を処理し、レーダ画面上における原点からの距離に応じて、当該距離方向の映像信号を強調する距離方向強調手段を備えたことを特徴とするレーダ映像処理装置。
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