JP3639067B2 - オルガノシルセスキオキサン樹脂粒子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なオルガノシルセスキオキサン樹脂粒子に関し、詳しくはジメチルポリシロキサン鎖含有シロキシ単位を有する該樹脂粒子に関し、特に有機樹脂フィルムの表面滑り性付与剤として有用な該樹脂粒子、ならびに該樹脂粒子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をフィルム状に加工した樹脂が、包装用材料、テープ材などに汎用されている。該フィルム樹脂の取り扱いやすさ、巻き取り性、耐摩耗性などが工程全体の生産性に影響するため、該フィルム樹脂には表面滑り性が要求される。
また、熱、紫外線または電子線により硬化するエポキシ樹脂、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートなどをベース成分とする樹脂組成物は、家具、電気器具、電子部品、自動車部品などの各種基材の塗料またはコーティング材として用いられる。これらの組成物を塗布した後、硬化させて得られる被膜は、被膜同士で接触することがあるので、これらの被膜にも、取り扱いの容易さ、耐摩耗性などの点から表面滑り性が要求される。
そこで、上記のフィルム樹脂または被膜に表面滑り性を付与する方法として、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミドのような有機高級脂肪酸アミドなどの滑剤を添加する方法;ならびにシリカ(特開平4-348147号公報)、カオリナイトおよびゼオライト(特公昭52-16134号公報)、タルク粉末などの無機微粒子を添加する方法が有効とされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記滑剤は、フィルム樹脂の表面からブリードアウトしたり、また、フィルム樹脂の種類によっては表面滑り性が得られないという問題がある。
また、前記無機微粒子は、配合する樹脂と本質的に相溶せず、添加量の多い場合には、樹脂の透明性が失われる。また、無機微粒子の密度は、一般に、有機樹脂の密度に比べて大きいので、低粘度の樹脂組成物を長期間貯蔵すると、該無機微粒子が沈降するという問題が生じる。
そこで、本発明の課題は、このような欠点を改善し、有機樹脂フィルムなどの表面滑り性付与剤として有用な新規オルガノシルセスキオキサン樹脂粒子およびその製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意検討の結果、直鎖状ジメチルポリシロキサンを有するオルガノシルセスキオキサン樹脂粒子により、上記の課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、実質的に、式(1) :
R1SiO3/2 (1)
(式中、 R1 はアルケニル基を含有する一価の有機基である)
で表されるオルガノシロキシ単位と、式(2) :
【0005】
【化5】
【0006】
(式中、 R2 は一価の炭化水素基であり、 R3 は二価の有機基であり、nは3〜1,000 の整数である)
で表されるジメチルポリシロキサン鎖含有シロキシ単位と、場合により、さらに式(3) :
CH3SiO3/2 (3)
で表されるメチルシロキシ単位
とからなるオルガノシルセスキオキサン樹脂粒子およびその製造方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のオルガノシルセスキオキサン樹脂粒子およびその製造方法を詳細に説明する。
オルガノシルセスキオキサン樹脂粒子
本発明のオルガノシルセスキオキサン樹脂粒子(以下、「本発明の樹脂粒子」という)は、実質的に、前記式(1) で示されるオルガノシロキシ単位と、前記式(2) で表されるジメチルポリシロキサン鎖(すなわち、直鎖状のジメチルポリシロキサン)含有シロキシ単位とからなるゲルの樹脂粒子である。
【0008】
〔オルガノシロキシ単位〕
前記式(1) で示されるオルガノシロキシ単位において、R1のアルケニル基含有有機基の例としては、ビニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基などの炭素原子数が、通常、2〜10 、好ましくは2〜4のアルケニル基;アクリロキシプロピル基、メタクリロキシプロピル基などの(メタ)アクリロキシアルキル基;ならびにα−メチルスチリル基などのアリールアルケニル基が挙げられ、これらの中では、ビニル基、アリル基およびメタクリロキシプロピル基が好ましく、特に好ましくは合成のしやすさの点でビニル基およびメタクリロキシプロピル基である。
【0009】
〔ジメチルポリシロキサン鎖含有シロキシ単位〕
前記式(2) で示されるジメチルポリシロキサン鎖含有シロキシ単位おいて、R2の一価の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素原子数が、通常、1〜10、好ましくは1〜4のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などの炭素原子数が、通常、6〜15、好ましくは6〜10のアリール基;ならびにフェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基などの炭素原子数が、通常、7〜15、好ましくは7〜10のアラルキル基が挙げられ、これらの中では、アルキル基が好ましく、特に好ましくはメチル基およびブチル基である。
また、R3で示される二価の有機基は、R1で示される基に水素原子が付加して開裂したものであり、具体的にはエチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基などの炭素原子数が、通常、2〜4のアルキレン基;下記式:
【0010】
【化6】
【0011】
で示される基などのエステル性酸素を有するアルキレン基;下記式:
【0012】
【化7】
【0013】
で示される基などの芳香環を有するアルキレン基が挙げられ、好ましくは合成のしやすさの点で、下記式:
−CH2CH2-(CH2)a -
〔ここで、aは0または1である〕
で示されるエチレン基またはプロピレン基、および下記式:
【0014】
【化8】
〔ここで、Xは水素原子またはメチル基である〕
で示される基である。
【0015】
式(2) 中のnの値は、3〜1,000 の整数であり、好ましくは6〜500 の整数、特に好ましくは30〜300 の整数である。nが3未満では、得られる樹脂粒子の滑り性付与剤としての効果が充分でなくなり、逆に1,000 を超えると、製法上、困難となる。
【0016】
本発明の樹脂粒子において、式(2) のジメチルポリシロキサン鎖含有シロキシ単位の含有量は、ジメチルポリシロキサン鎖〔すなわち、(CH3)2SiO2/2単位〕換算で、通常、樹脂粒子全体の0.1 〜10重量%、好ましくは0.5 〜5重量%に相当する量である。ジメチルポリシロキサン鎖含有シロキシ単位が少なすぎると、得られる樹脂粒子の滑り性付与剤としての効果が充分でなくなる場合がある。逆に多すぎると、分散性が悪くなる場合がある。
【0017】
〔メチルシロキシ単位〕
本発明の樹脂粒子は、場合により必要に応じて、前記式(3) で示されるメチルシロキシ単位を含有してもよい。
【0018】
〔その他の構成単位〕
本発明の樹脂粒子は、さらに下記式(4-1) 〜(4-8) :
R1SiO2/2(OH) (4-1)
R1SiO1/2(OH)2 (4-2)
CH3SiO2/2(OH) (4-3)
CH3SiO1/2(OH)2 (4-4)
R1SiO1/2(OR4)2 (4-5)
CH3SiO2/2(OR4) (4ー6)
CH3SiO1/2(OR4)2 (4-7)
R1SiO2/2(OR4) (4-8)
(ここで、R1は前記と同じ意味であり、R4は一価の炭化水素基である)
で示される単位からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。
R4で示される一価の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素原子数が、通常、1〜10、好ましくは1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0019】
本発明の樹脂粒子を滑り性付与剤として使用する際には、該樹脂粒子は、球状であることが好ましい。該樹脂粒子が球状でないと、滑り性が得らない場合がある。
また、該樹脂粒子の平均粒子径は、通常、0.1 〜50μm、好ましくは0.1 〜5μm、特に好ましくは0.2 〜5μmである。平均粒子径が小さすぎても、十分な滑り性が得られない場合がある。逆に、平均粒子径が大きすぎると、ゲル樹脂粒子の添加された硬化フィルムの表面性状が悪化する場合がある。
【0020】
樹脂粒子の製造方法
本発明の樹脂粒子は、例えば実質的に、式(1) :
R1SiO3/2 (1)
(ここで、 R1 は前記と同じ意味である)
で示されるオルガノシロキシ単位と、必要に応じて式(3) :
CH3SiO3/2 (3)
で表されるメチルシロキシ単位とからなるオルガノシルセスキオキサン樹脂粒子(以下、「樹脂粒子前駆体」という)に、式(5) :
【0021】
【化9】
【0022】
(ここで、R2およびnは前記と同じ意味である)
で示され、ケイ素原子に直結した水素原子を片末端に有するジメチルポリシロキサン(以下、「ヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサン」という)を、白金族金属系触媒の存在下で反応(ヒドロシリル付加)させることにより製造することができる。
ヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサンの使用量は、ジメチルポリシロキサン鎖含有シロキシ単位の所望量に応じて適宜決めればよいが、実質的にはアルケニル基を含有する樹脂粒子前駆体の粒子表面層に存在するアルケニル基のみと付加反応すると推定されるため、樹脂粒子前駆体のアルケニル基に対する等モル量より少量でよく、具体的には、樹脂粒子前駆体に対して、通常、0.1 〜50重量%である。
【0023】
前記白金族金属系触媒としては、白金系、ロジウム系、パラジウム系およびニッケル系の触媒が挙げられ、好ましくは白金系のものである。該白金系触媒としては、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィンとの錯塩、およびこれらをアルコール系、ケトン系、エーテル系もしくは炭化水素系の溶剤またはオルガノポリシロキサンに溶解したものが挙げられ、これらの中では、前記溶剤またはオルガノポリシロキサンに溶解したものが好ましい。
前記白金族金属系触媒の量は、通常、いわゆる触媒量でよく、好ましくは樹脂粒子前駆体およびヒドロシリル基含有ジオルガノポリシロキサンの合計重量に対して、白金金属換算で、0.1 〜1,000ppm、特に好ましくは1 〜200ppmの範囲である。
【0024】
前記ヒドロシリル付加反応は、樹脂粒子前駆体を適当な溶媒に分散させて行うことが望ましい。該溶媒には、ヒドロシリル付加反応を阻害しないものであれば特に制限なく使用でき、例えばトルエン、キシレン、ヘキサンなどの炭化水素類;エタノール、プロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類;プロピルエーテル、ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ならびにアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類が挙げられる。これらの中では、炭化水素類が好ましく、特に好ましくはトルエンおよびキシレンである。
該溶媒の量は、樹脂粒子前駆体を効率的に分散することができる限り特に限定されず、具体的には、樹脂粒子前駆体100 重量部に対して、通常、50〜1,000 重量部でよく、好ましくは100 〜500 重量部である。
【0025】
前記のヒドロシリル付加反応において、反応温度は使用する溶媒によって異なるが、通常、50〜150 ℃でよく、好ましくは70〜120 ℃であり、反応時間は4〜16時間でよい。反応後、前記分散溶媒の沸点以上の温度に加熱して、あるいは減圧して、分散溶媒を蒸発除去することにより、本発明の樹脂粒子が粉末として得られる。さらに必要であれば、溶剤洗浄により、未反応のヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサンを除去してもよい。
【0026】
なお、上記反応の原料である樹脂粒子前駆体およびヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサンは、以下のようにして得ることができる。
〔樹脂粒子前駆体〕
該樹脂粒子前駆体は、公知の方法、例えばゾルゲル法に従って合成でき、すなわち、式(6) :
R1SiX3 (6)
〔ここで、R1は前記と同じ意味であり、Xは塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子または−OR4(R4は前記のとおり)で表される基である〕
で表される加水分解性オルガノシラン化合物、 および必要に応じて式(7):
CH3SiX3 (7)
〔ここで、Xは前記と同じ意味である〕
で示される加水分解性メチルシラン化合物を、酸またはアルカリ触媒の存在下で加水分解する方法が挙げられる。
酸触媒としては、例えば塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸およびトリフルオロ酢酸が挙げられ、また、アルカリ触媒としては、例えばアンモニア、またはトリエチルアミンなどの有機アミンが挙げられる。
【0027】
上記の加水分解反応の際、該X基が−OR4 基である式(8) :
R1Si(OR4)3 (8)
で示される加水分解性オルガノシラン化合物、および必要に応じて式(9) :
CH3Si(OR4)3 (9)
で示される加水分解性メチルシラン化合物を選択し、アルカリ触媒、好ましくはアンモニア水を用いると、Si-OR4結合の大部分は加水分解されてSi-OH (シラノール基)となり、さらにこのシラノール基同士の縮合によりSiOSi 結合が形成されるが、一部はSi-OR4の状態またはSi-OH の状態で残存することがある。その結果、得られるオルガノシルセスキオキサン微粒子中に、前記式(4-1) 〜(4-8) で示される構成単位が含有されることがある。なお、Xが−OR4 基であると、得られる樹脂粒子前駆体は球状となりやすく、本発明の樹脂粒子の前駆体として好適である。
【0028】
〔ヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサン〕
該ヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサンは、公知の方法、例えば、
(i) ヘキサメチルシクロトリシロキサンと、下記式:
R1Li
(ここでR1は前記と同じ意味である)
で示されるアルキルリチウムとを開環重合し、次いで、式:
【0029】
【化10】
で示されるジメチルクロルシランで重合を停止する方法、または、
(ii) ヘキサメチルシクロトリシロキサン、式:
(R1)3SiOH
(ここでR1は前記と同じ意味である)
で示されるトリアルキルシラノール、および下記式:
【0030】
【化11】
【0031】
で示される5配位けい素化合物を重合させて、分子鎖の片末端が水酸基で封鎖されたポリシロキサンとし、次いで、アミンなどの塩素トラップ剤の存在下で、ジメチルクロルシランを用いて該ポリシロキサンを脱塩酸する方法
によって得ることができる。
【0032】
〔用途〕
本発明の樹脂粒子は、塗料、有機樹脂、化粧品などの添加剤または充填剤として有用であり、特に塗料、合成樹脂などの滑り性付与剤として好適である。さらに、有機樹脂フィルムの表面滑り性付与剤として用いると、その添加量が従来量より少なくても、優れた表面滑り性を発揮するので、より透明な有機樹脂が得られる点で特に有用である。
該有機樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂;ポリエステル、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂;ならびにポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートなどの紫外線硬化性樹脂が挙げられる。
表面滑り性付与剤としての添加量は、有機樹脂100 重量部あたり、通常、0.01〜10重量部でよく、好ましくは0.1 〜5重量部である。
【0033】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明の樹脂粒子を具体的に説明する。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味する。
樹脂粒子前駆体の合成
〔合成例1〕
攪拌機を備えた5リットルのガラス容器に、pH6.8 の水3,660g およびアンモニア水(濃度28%)90gを添加攪拌して、pH11.0の混合液を得た。該混合液の温度を5〜10℃に保ち、回転数200rpmで攪拌しながら、ビニルトリメトキシシラン750gを3時間かけて滴下した。さらに、液温を5〜10℃に保って4時間攪拌した後、液温が40〜50℃になるまで加熱し、その温度で1時間攪拌した。こうして、オルガノポリシロキサンゲルスラリーを得た。
次に、該オルガノポリシロキサンゲルスラリーを加圧濾過して、水分約30%のケーキ状物とした後、100 ℃の温度で減圧乾燥した。この乾燥物をジェットミルで解砕し、得られた微粒子を電子顕微鏡で観察した。該微粒子は、平均粒子径
2.1 μmの球状の粒子であった。この球状粒子を前駆体Iと称する。この粒子の元素分析、IRおよびNMR分析の結果を以下に示す。
元素分析;
C量(%):27.8 (理論値30.4)
H量(%): 4.1 (理論値3.8)
IR スペクトルの特性吸収;
・3064、3023、1603、1410、966 、543 cm-1(Si−CH=CH2 )
・1200〜1000cm-1(SiOSi )(1128cm-1と1045cm-1にピークトップを有する二股のブロードピーク)
固体29Si−NMR スペクトル(MAS −ゲート付ハイパワーデカップリング法);
・−64.1ppm [CH2=CHSi(OH)2O1/2] 微量
・−70.7ppm [CH2=CHSi(OH)O2/2] 少量
・−80.1ppm [CH2=CHSiO3/2] 主成分(80mol %以上)
【0034】
〔合成例2〕
攪拌機を備えた5リットルのガラス容器に、pH6.8 の水3660gおよびアンモニア水(濃度28%)90g を添加して攪拌し、pH11.0の混合液を得た。該混合液の温度を5〜10℃に保ち、回転数200rpmで攪拌しながら、メチルトリメトキシシラン650gを160 分間かけて滴下した。次いで、メチルトリメトキシシラン41.6g とメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン30.7g との混合溶液を20分間かけて滴下した。次いで、液温を5〜10℃に保って4時間攪拌した後、40〜50℃に加熱し、その温度で1時間攪拌し、オルガノポリシロキサンゲルスラリーを得た。
次に、該オルガノポリシロキサンゲルスラリーを加圧濾過して、水分約30%のケーキ状物とした後、100 ℃の温度で減圧乾燥した。この乾燥物をジェットミルで解砕し、得られた微粒子を電子顕微鏡で観察した。該微粒子は、平均粒子径
2.3 μmの球状の粒子であった。この球状粒子を前駆体IIと称する。この粒子の分析結果は以下であった。
元素分析;
C量%=18.5(理論値19.7)
H量%= 4.7(理論値 4.6)
IR スペクトルの特性吸収;
・2973、1274、782 cm-1(Si−CH3 )
・1729、1714cm-1(−COO −)
・1200〜1000cm -1 (SiOSi )(1124cm-1と1034cm-1にピークトップを有する二股のブロードピーク)
固体 29 Si − NMR スペクトル(MAS −ゲート付ハイパワーデカップリング法);
・−48.1ppm [CH3Si(OH)2O1/2] 微量
・−55.3ppm [CH3Si(OH)O2/2] 少量
・−65.5ppm [CH3SiO3/2] 主成分(70mol%以上)
【0035】
〔実施例1〕
(1) 樹脂粒子の合成
前駆体Iを30g、トルエン150g中に混合分散させ、110 〜120 ℃で2時間加熱して、共沸脱水した。次に、70℃まで冷却し、下記式:
【0036】
【化12】
【0037】
で示される、ヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサン(a) を 1.5g 添加して、30分間攪拌した。次いで、塩化白金酸の2−エチル−n−ヘキシルアルコール溶液(白金金属として2重量%)を0.03g 添加し、70〜80℃で4時間加熱し、さらに110〜120 ℃で4時間加熱した後、分散溶媒のトルエンを蒸留除去した。次いで、100℃で24時間、加熱減圧乾燥し、粉末状の樹脂粒子を得た。
該粉末をトルエン100mL中に分散させ、15分間攪拌した後、遠心分離操作を用いた洗浄操作を5回繰り返した。次いで、温度100 ℃で4時間減圧乾燥した。こうして、ジメチルポリシロキサン鎖を表層に有する樹脂粒子(以下、樹脂粒子Aという)を得た。粒子Aの平均粒子径は2.1 μmであった。樹脂粒子AのIR、NMRおよびエトキシシラン化法による分析結果を以下に示す。
IR スペクトル特性吸収;
・2960cm-1(−CH3 )
・3062、3026、1603、1412、 966、 543cm-1(SiCH=CH2 )
・1200〜1000cm-1(SiOSi )(1128cm-1と1043cm-1にピークトップを有する二股のブロードピーク)
IRスペクトル添付:図1
固体 29 Si − NMR スペクトル( MAS −ゲート付ハイパワーデカップリング法);
・−22.0ppm [(CH3)2SiO2/2] 微量
・−64.2ppm [CH2=CHSi(OH)2O1/2] 微量
・−70.9ppm [CH2=CHSi(OH)O2/2] 少量
・−80.1ppm [CH2=CHSiO3/2] 主成分(80mol %以上)
NMR スペクトル:図2
エトキシシラン化法によるジメチルポリシロキサン単位の定量;
樹脂粒子Aの表層に存在するジメチルポリシロキサン単位〔すなわち、[(CH3)2SiO 2/2] 単位〕の定性および定量分析を、引用文献〔 M.G. Voronkov, Zur. Obshchei Khim., 29, 907(1959)〕に準じて行った。すなわち、下記式:
【0038】
【化13】
【0039】
で示されるように、粒子AとテトラエトキシシランとをKOH の存在下で反応させ、表層に存在する直鎖状ジメチルポリシロキサン単位をジメチルジエトキシシランとした。生成した各シランをGC(ガスクロマトグラフィー)にて分析し、その量から[(CH3)2SiO 2/2] 単位の含有量を求めたところ、2.0 重量%であった。
【0040】
(2) 表面滑り性付与剤としての使用
以下に示す手順で、紫外線硬化型樹脂組成物の調製、硬化フィルムの作製、ならびに硬化フィルムの表面滑り性および透明性の評価を行った。
(i) ベース組成物の調製
数平均分子量2,000 のポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土ヶ谷化学社製、商品名:PTG-2000) 201g、2,4−トリレンジイソシアネート52.5g を反応容器に仕込み、この混合物を60〜70℃の温度で6時間反応させた。次に、この反応混合物に、数平均分子量650 のポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土ヶ谷化学社製、商品名:PTG-650) 153g 、2,4−トリレンジイソシアネート92.9gを加え、さらに60〜70℃の温度で6時間反応を行った。これに、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシルトルエン0.15g、ジブチルスズジラウレート0.08gおよび2−ヒドロキシルエチルアクリレート118.4gを添加し、温度60〜70℃で3時間反応を行い、ウレタンアリレートオリゴマーを得た。
上記のウレタンアクリレートオリゴマー55部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(三菱化成工業社製、SA-1002) 15 部、ビスフェノールAEO 変性ジアクリレート(東亜合成社製、M-210) 10 部、N−ビニルピロリドン10部、イソボルニルアクリレート10部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3部を混合し、ベース組成物を調製した。該ベース組成物の粘度は25℃で8,000 cPであった。
(ii) 紫外線硬化型樹脂組成物の調製
上記のベース組成物に、樹脂粒子Aを表1の配合量(重量%)で混合して、紫外線硬化型樹脂組成物を調製した。
【0041】
(iii) 硬化フィルムの作製およびその評価
得られた紫外線硬化型樹脂組成物を、ガラス板上に200 〜300 μmの膜厚に塗布した。次いで、500mJ/cm2 (波長350nm)の紫外線を照射し、硬化フィルムを得た。該フィルムのフィルムの表面滑り性および透明性を、以下の方法に従って評価した。
〔滑り性〕
前記硬化フィルムを、温度25℃、相対湿度50%で24時間状態調整した後、荷重200g、テーブルスピード150mm/min(ASTM D1894) の条件で、硬化フィルム同士の摩擦係数を測定した。その結果を表1に示す。なお、表1中のμs は静摩擦係数を表し、μk は動摩擦係数を表す。
〔透明性〕
透明性は、硬化フィルムを肉眼で透かして見たときに、硬化フィルムの向こう側が透けて見えるかどうかを基準に評価した。
○:透けて見える。
×:透けて見えない。
その結果を表1に示す。
【0042】
〔実施例2〕
(1) 樹脂粒子の合成
実施例1−(1) において、ヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサン(a) の代りに、下記式:
【0043】
【化14】
【0044】
で示されるヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサン(b) を1.5g用いた以外は、実施例1−(1) と同様の操作を行い、ジメチルポリシロキサン鎖を表層に有する樹脂粒子(以下、樹脂粒子Bという)を得た。この粒子の平均粒子径は2.1 μmであった。樹脂粒子BのIR、NMRおよびエトキシシラン化法による分析結果を以下に示す。
IR スペクトル特性吸収;
・2960cm-1(−CH3 )
・3062、3026、1603、1411、 966、 543cm-1 (SiCH=CH2 )
・1200〜1000cm-1 (SiOSi)(1128cm-1と1043cm-1にピークトップを有する二股のブロードピーク)
固体 29 Si − NMR スペクトル( MAS −ゲート付ハイパワーデカップリング法);
・−22.0ppm [(CH3)2SiO2/2] 微量
・−64.2ppm [CH2=CHSi(OH)2O1/2] 微量
・−70.9ppm [CH2=CHSi(OH)O1/2] 微量
・−80.1ppm [CH2=CHSiO3/2] 主成分(80mol %以上)
エトキシシラン化法によるジメチルポリシロキサン単位の定量;
[(CH3)2SiO2/2] 2.7重量%
【0045】
(2) 紫外線硬化型樹脂組成物の調製
実施例1−(2) において、樹脂粒子Aの代わりに、樹脂粒子Bを0.4重量%用いた以外は、実施例1−(2) と同様の操作で、紫外線硬化型樹脂組成物の調製、硬化フィルムの作製およびその評価を行った。その結果を表1に示す。
【0046】
〔実施例3〕
(1) 樹脂粒子の合成
実施例1-(1)において、前駆体Iの代わりに、前駆体IIを 30g用いた以外は、実施例1-(1)と同様の操作で、ジメチルポリシロキサン鎖を表層に有する樹脂粒子(以下、樹脂粒子Cという)を得た。この粒子Cの平均粒子径は2.3 μmであった。この樹脂粒子CのIR、NMR 、エトキシシラン化法による分析結果を以下に示す。
IR スペクトル特性吸収;
・2972、1274、 782cm-1(SiCH3 )
・1731、1713cm-1(-COO-)
・1200〜1000cm-1(SiOSi )(1126cm-1と1032cm-1にピークトップを有する二股のブロードピーク)
IRスペクトル:図3
固体 29 Si − NMR スペクトル( MAS −ゲート付ハイパワーデカップリング法);
・−22.0ppm [(CH3)2SiO2/2] 微量
・−55.2ppm [CH3Si(OH)O2/2] 少量
・−65.3ppm [CH3SiO3/2] 主成分(70mol %以上)
NMR スペクトル:図4
エトキシシラン化法によるジメチルポリシロキサン単位の定量;
[(CH3)2SiO2/2] 1.3重量%
【0047】
(2) 紫外線硬化型樹脂組成物の調製
実施例1−(2) において、樹脂粒子Aの代わりに、樹脂粒子Cを用いた以外は、実施例1−(2) と同様の操作で、紫外線硬化型樹脂組成物の調製、硬化フィルムの作製およびその評価を行った。その結果を表1に示す。
【0048】
〔比較例1〜4〕
各例において、実施例1−(2) の樹脂粒子Aを、表1に示す前駆体樹脂粒子および配合量に替えた以外は、実施例1−(2) と同様の操作で、紫外線硬化型樹脂組成物の調製、硬化フィルムの作製およびその評価を行った。その結果を表1に示す。ただし、比較例1、比較例3および比較例4において、硬化フィルムの摩擦係数が5を超えたため、摩擦係数を測定することができなかった。
【0049】
【表1】
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、ジメチルポリシロキサン鎖含有シロキシ単位を遍在的に有するオルガノシスセスキオキサン樹脂粒子が得られる。該樹脂粒子は、塗料、有機樹脂、化粧品などの添加剤または充填剤として、特に滑り性付与剤として有用である。有機樹脂フィルムの滑り性付与剤として用いると、その添加量が少なくとも、優れた滑り性を示すので、より透明なフィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた樹脂粒子AのIRスペクトルである。
【図2】実施例1で得られた樹脂粒子AのNMRスペクトルである。
【図3】実施例3で得られた樹脂粒子CのIRスペクトルである。
【図4】実施例3で得られた樹脂粒子CのNMRスペクトルである。
Claims (5)
- 請求項1に記載のオルガノシルセスキオキサン樹脂粒子であって、その形状が球状である該樹脂粒子。
- 請求項1に記載のオルガノシルセスキオキサン樹脂粒子であって、その平均粒子径が0.1 〜5μmである該樹脂粒子。
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