JP3636529B2 - 自転車用変速操作装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
変速ケーブルを介して変速装置を操作するため、前記変速ケーブルを巻き取るために軸芯回りに回転可能な巻取体と、前記巻取体を一方方向に回転させる第1操作機構と、前記巻取体を他方方向に回転させる第2操作機構を備えた自転車用変速操作装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上述した形態に類似する自転車用変速操作装置としては、例えば特開平2ー270693号公報に示されたような巻取体の回転軸芯回りに回転操作される操作レバーによって巻取体を回転させる構造をもつものがある。この装置では、増速・減速の両変速操作は揺動式の操作レバーで行われるが、その際操作レバーの変位は巻取体の外周面に形成された歯に噛み合うラチェット爪を介して巻取体に伝達される。さらに巻取体の位置保持のためにも巻取体の外周面に形成された歯に噛み合うラチェット爪が設けられている。
【0003】
これとは異なり、巻取体の回転軸芯に沿ってスライド操作される操作体によって巻取体を一方方向に回転させる構造を採用しているものもある。このような構造をもつ変速操作装置は、特開昭61ー222889号公報から知られており、これによれば、リング体として形成された巻取体の両端面の外縁領域にはそれぞれ変速位置を決定するラチェット歯と一時的に巻取体の位置保持を行う切り欠き部が形成されており、このラチェット歯と切り欠き部の一部を挟み込むように配置された上側ラチェットと下側ラチェットを設けた操作体が巻取体の回転軸芯に沿ってスライド可能に備えられている。この巻取体の変速時の一方方向の回転は従来通りの揺動式の操作レバーによって行われ、その際ここでも、操作レバーの変位は巻取体の外周面に形成された歯に噛み合うラチェット爪を介して巻取体に伝達される。巻取体の変速時の他方方向への回転は、操作体を押し下げることによりこの操作体に設けられた上側ラチェットを切り欠き部内に侵入させるとともにこの操作体に設けられた下側ラチェットを変速位置決め用ラチェットから外し、リターンバネによる作用により上側ラチェットが切り欠き部のストッパ壁に接当するまで巻取体を戻し回転させ、その後操作手段の上昇移動により下側ラチェットを変速位置決め用ラチェット歯に侵入させるとともに上側ラチェットを切り欠き部内から退避させることで実現する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の変速操作装置の前者の方は、ラチェット爪が巻取体の側方から突き出すため、これをさらに覆うカバー体が必要となり、変速操作装置全体の構造が大がかりなものとなる。同様に後者の方も、その操作体の上側ラチェットと下側ラチェットとが巻取体の径方向外方から挟み込むような形態を採用しているため、変速操作装置全体の構造は、巻取体の回転軸芯から局部的に側方に突き出すような形となり、同様な不都合が生じる。
【0005】
本発明の目的は、巻取体の一方方向の回転を行う揺動操作式の第1操作機構及び巻取体の他方方向の回転を行スライド操作式の第2操作機構が外側に突出した揺動式のラチェット爪や巻取体の径方向外方から挟み込むようなラチェット体を不必要とする自転車用操作装置の構造を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による変速操作装置では、第1操作機構は、軸芯回りで操作始端と操作終端との間で回転可能で、前記巻取体に対して相対変位可能な第1操作体と、前記第1操作体と一体回転するとともに前記軸芯方向に第1位置と第2位置との間で変位可能なクラッチ部材とを備え、前記第1位置において前記クラッチ部材が前記巻取体との係合が解除され、前記第2位置においてクラッチ部材が前記巻取体と係合し、前記第1操作体による前記クラッチ部材の回転変位によって前記クラッチ部材が前記第2位置へ変位し、前記巻取体の一方方向の回転のため前記操作体の回転変位が前記巻取体へ伝達され、かつ
【0007】
前記第2操作機構は、前記軸芯方向に操作始端と操作終端との間で直線移動可能な第2操作体と、前記巻取体と一体回転するとともに前記軸芯方向に第1位置と第2位置との間で変位可能なアイドラーとを備え、前記第2位置における前記アイドラーに前記軸芯回りの回転変位を許すことより前記巻取体を前記他方方向に回転させる。
【0008】
上記構成によれば、第1操作体による揺動操作変位は、この揺動変位によって第1操作体と巻取体との動力伝達可能な位置に切り換わるクラッチ部材を介して巻取体に、巻取体の一方方向、例えば巻き上げ方向の回転のために伝達される。さらに第2操作体による直線的なスライド操作変位は、巻取体と連結しているアイドラーをまずスライド変位させて固定側から離脱させ、その後アイドラーを所定方向に回転させて、結果的に巻取体を他方方向、例えば巻き戻し方向に回転させる。
【0009】
これにより、巻取体の両方向の操作は、スライドと揺動で行われるが、従来のような巻取体の外側に配置されるような揺動ラチェット爪や摺動ラチェット体をなくすことができる。
【0010】
本発明による好適な実施形態により、クラッチ部材と前記アイドラーをリング状に形成するとともに、巻取体より径方向内側で前記軸芯に対して同芯配置するなら、巻取体の内側に変速操作装置の主要部材を配置することができ、変速操作装置のコンパクト化が可能になるだけではなく、その外観も非常にすっきりしたものとなる。
【0011】
前記第1操作体による前記クラッチ部材の回転変位によって前記クラッチ部材と前記巻取体を係合するための好適な実施形態として、前記軸芯に固定されたガイド部材に形成されたカム面と前記クラッチ部材に形成されたカムフォロア面とからなるカム機構が備えられることが提案される。これにより、クラッチ部材が回転するとともに軸方向に移動して巻取体に連結するという機能が簡単にしかも確実に得られる。またカムフォロア面を周方向に複数個形成すれば、力の分散も可能となり、プラスチック等で製作した場合の強度的な問題も解決される。
【0012】
同様に、第2操作体とアイドラーとの間に第2位置におけるアイドラーの変位を規制するための好適な実施形態として、それぞれに設けられた傾斜面からなる傾斜ガイド機構を備えることが提案される。これにより、アイドラーの変位の規制が簡単にしかも確実に得られるだけではなく、やはりその傾斜面を周方向に複数個形成すれば、力の分散も可能となり、プラスチック等で製作した場合の強度的な問題も解決される。さらに、ガイド部材と第1操作体をリング状に形成するとともに前記軸芯に対して同芯状に配置し、このガイド部材と第1操作体と巻取体によって形成される環状空間内にクラッチ部材を配置することにより、クラッチ部材の係合部にごみなどが入り込むことが抑制される。
【0013】
さらに、本発明の好適な実施形態では、第1位置におけるアイドラーの軸芯回りの回転を禁止するために、前記アイドラーと前記軸芯に固定されたベース部材との間に保持係合機構が設けることが提案されるが、この場合もベース部材をリング状に形成するとともに軸芯に対して同芯状に配置し、ベース部材と巻取体によって形成される環状空間内にアイドラーを配置することにより、アイドラーの係合部にごみなどが入り込むことが抑制される。
【0014】
本発明によるその他の特徴と利点は以下図面を用いた発明の実施の形態の説明により明らかになるだろう。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1と図2に、自転車のハンドルバー100にバンド体2とブラケット3を用いて取り付けられている本発明による自転車用変速操作装置1が示されている。この変速操作装置1は、基本的には、軸芯Xをもつ筒軸10と、回転揺動操作される第1操作体20と、クラッチ部材30と、前記筒軸10に固定される固定ガイド部材40と、変速ケーブル4を巻き取るための巻取体50と、アイドラー60と、ベース部材70と、第2操作体80とから構成されている。第1操作体20、クラッチ部材30、固定ガイド部材40、巻取体50、アイドラー60、ベース部材70、第2操作体80は全て軸芯Xに対して同芯状に配置されており、このことからこれらの全ての部材は、筒軸10に対して軸芯Xの方向に挿入していくことで組み付けることができる。このことがよく理解できるように、図3には変速操作装置1の主要部材を軸芯X方向に分離させた分解図が示されており、さらに図3における矢視IVから見た平面図が図4に、図3における矢視V から見た平面図が図5に、図3における矢視VIから見た平面図が図6に、図3における矢視VII から見た平面図が図7に、図3における矢視VIIIから見た平面図が図8に、図3における矢視XIから見た平面図が図9に示されている。
【0016】
筒軸10はブラケット3に差し込まれた固定ボルト15に外嵌装着され、ナット16によって締め付け固定される。筒軸10の外周には軸芯Xに平行に延びたアウタースプライン11が形成されている。
【0017】
第1操作体20は揺動レバー式に構成されており、ボス部22とこのボス部22の底部24の軸芯Xから偏芯した位置に取り付けられたレバー部21を備えている。このレバー部21は、この変速操作装置1がバンド体2とブラケット3を介してハンドル100の上面に取り付けられた状態で、ハンドル100の上面から下面に至るまで延びており、さらに下面と同レベルのところで軸芯Xの径方向外方に屈曲して指当て部21aが形成されており、サイクリストがハンドルバーのグリップを握った手の親指などで操作しやすくなっている。なお、後で詳しく述べられるが、第2操作体80もサイクリストがハンドルバーのグリップを握った手の親指で操作しやすいようにハンドルバーの上面からそれほど高くない位置にくる。ボス部22は、外周壁23と中心孔25を設けた底部24とからなり、外周壁23は、この変速操作装置1の外周側壁の大部分を形成している。さらに、底部24には軸芯X方向に延びた環状突起26が立設している。この環状突起26の内周には軸芯Xに平行に延びたインナースプライン26aが形成されている。
【0018】
環状突起26の内周側で底部24上にリング状のクラッチ部材30が装着されている。図9から明きらかなように、クラッチ部材30の外周には環状突起26のインナースプライン26aに係合するようにアウタースプライン30aが形成されている。これにより、クラッチ部材30は第1操作体20と一体的に軸芯X周りに回転するとともに第1操作体20に対して軸芯X方向に摺動可能である。さらにクラッチ部材30には、その上面に18個の係合歯部30bが周方向に分布配置されているとともに、その内周には周方向に傾斜面をもった径方向突起部として形成された6個のカムフォロア30cが周方向に分布配置されている。なお、第1操作体20のボス部22とクラッチ部材30との間には第1バネ35が介装されており、クラッチ部材30を上方に押し上げ付勢している。
【0019】
第1操作体20の中心孔25と筒軸10の間に筒状の固定ガイド部材40の下部が差し込まれている。固定ガイド部材40の内周には、筒軸20のアウタースプライン11と係合するようにインナースプライン40aが形成されており、これにより固定ガイド部材40は軸芯X周りの回転が不能となっている。固定ガイド部材40の上部には鍔部41が設けられており、図8から明らかなように、この鍔部41の下面には周方向に傾斜面をもった6個のカム41aが周方向に分布配置されている。カムフォロア30cとカム41aが対向してそれぞれの傾斜面の先端領域で接当する固定ガイド部材40とクラッチ部材30との相対回転位置では、クラッチ部材30は第1バネの付勢力にもかかわらず第1操作体2の底部24から離れないが、カムフォロア30cとカム41aが対向しない固定ガイド部材40とクラッチ部材30との相対回転位置では、クラッチ部材30は第1バネの付勢力により軸芯X方向に変位して第1操作体2の底部24から離れる。つまりカムフォロア30cとカム41aは、クラッチ部材30を第1操作体2の底部24に接当又は近接した第1位置と底部24から離れた第2位置との間で変位させるカム機構5を作り出している。
【0020】
巻取体50は、中心孔52を設けた底部51と外周壁53に鍋状の形態を採用しており、図7から明らかなように、その底部51の下面にはクラッチ部材30の係合歯部30bと係合可能な18個の被係合歯部51aが周方向に分布配置されている。つまり、係合歯部30bと被係合歯部51aは、クラッチ部材30が第1位置の時互いに離脱し、クラッチ部材30が第2位置の時互いに係合する噛み合い機構6を作り出している。巻取体50の外周壁53の外周には変速ケーブル4を固定し巻き取るのためのケーブル溝53aが設けられており、外周壁53の内周には軸芯X方向に延びたインナースプライン53bが形成されている。第1図から明らかなようにクラッチ部材30は、第1操作体20のボス部22と固定ガイド部材40と巻取体50によって形成される環状空間内に配置されている。
【0021】
リング状の形態をもつアイドラー60は、その外周に巻取体50のインナースプライン53bに係合するアウタースプライン60aが形成されている。これにより、アイドラー60は、巻取体50と一体的に軸芯X周りに回転するとともに巻取体50に対して軸芯X方向に摺動可能である。図6から明らかなように、巻取体50の内周は2段に形成されており、大径の方の内周面には18個の係合歯部60bが周方向に分布配置されており、その小径の方の内周面には傾斜面をもつ9個の被ガイド部60cが周方向に分布配置されている。なお、巻取体50の底部51とアイドラー60との間には第2バネ65が介装されており、アイドラー60を軸芯X方向に沿って上方に押し上げ付勢している。
【0022】
ベース部材70は、円筒部71とこの円筒部71から径方向外方に延びた円板部72とから構成され、円板部72の円筒部71との境界領域に4個の貫通孔73が周方向に分布するように設けられている。図5から明らかなように、円板部72の下面には、アイドラー60の係合歯部60bに係合可能な18個の被係合歯部72aが周方向に分布配置されている。アイドラー60は第2バネ65によって上方に付勢されているため、通常被係合歯部72aに係合歯部60bが係合した状態となる。円板部72の上面はアーチ屋根状に形成されており、変速操作装置1の上部外形を形成している。円筒部71の内周には、筒軸10のアウタースプライン11と係合するように軸芯X方向に延びたインナースプライン71aが形成されており、この係合とナット16の締め付けによりベース部材70は筒軸10に固定されている。
【0023】
軸芯X方向の直線スライド変位操作体としての形態をもつ第2操作体80は、リング部81とこのリング部81の上面から軸芯X方向に沿って延びた4個の脚部82とから構成され、この脚部82はベース部材70の貫通孔73に下面側から差し込まれれ、貫通孔73を往復摺動する。図4から明らかなように、リング部81の下面には、アイドラー60の被ガイド部60cの傾斜面と接当可能な傾斜面をもつ6個のガイド部81aが周方向に分布配置されている。第2操作体80を押し下げることによって、アイドラー60の被ガイド部60cと第2操作体80のガイド部81aが接当し、さらにアイドラー60を第2バネ65に抗して押し下げることで、ベース部材70の被係合歯部72aとアイドラー60の係合歯部60bとを離脱させることができる。アイドラー60とベース部材70との係合が外れると、巻取体50と連動回転するアイドラー60は、操作ケーブル4の引張力、これは一般には変速装置のリターンバネに基づくものであるが、この引張力によって回転するが、第2バネ65とガイド部81aの傾斜面の傾斜方向によりアイドラー60の係合歯部60bは次のベース部材70の被係合歯部72aに係合するように移動する。つまり、アイドラー60の係合歯部60bとベース部材70の被係合歯部72aは、巻取体50を所定の回転位置に保持する保持係合機構7を作り出している。また、第2操作体80のガイド部81aとアイドラー60の被ガイド部60cは、巻取体50の回転位置の変更のためアイドラー60の係合歯部60bを次のベース部材70の被係合歯部72aに係合させる傾斜ガイド機構8を作り出している。
【0024】
第2操作体80は、上方から押し付け操作されるため、脚部82の先端にキャップ90が装着される。第2操作体80が第2バネ65によって上方位置に保持されている際このキャップ90の上面はベース部材70の円板部72の上面とほぼ同レベルになるように設計されており、このキャップ90が第2操作体80に操作ボタンのような外観を与えている。
【0025】
キャップ90とナット16との間には第3バネ85が介装されており、第2操作体80をホームポジションである操作始端位置に維持するように付勢している。
【0026】
この実施形態の変速操作装置1では、第1操作体20の操作始端から操作終端までの揺動変位によって巻取体50を巻き上げ操作し、第2操作体80の操作始端から操作終端までの直線スライド変位によって巻取体50を巻き戻し操作する。第2操作体80は第3バネ85によって操作終端から操作始端へ復帰させられ、第1操作体20はここでは図示されていない復帰バネにより操作終端から操作始端へ復帰させらる。
【0027】
以下図10と図11を用いてこの変速操作装置1の変速操作時の作用を説明する;
なお、図10は巻取体50の巻き上げ操作を示しており、その中で第1操作体20とクラッチ部材30と固定ガイド部材40と巻取体50とがその動きだけを理解することを目的として模式的に示されており、実際の構造を表しているわけではない。同様に、図11は巻取体50の巻き戻し操作を示しており、その中で巻取体50とアイドラー60とベース部材70と第2操作体80とがその動きだけを理解することを目的として模式的に示されており、実際の構造を表しているわけではない。
【0028】
まず第1操作体20を用いた巻き上げ操作から説明する。
図10(a)は変速操作前の状態を示しており、第1操作体20はホームポジションである操作始端に位置している。この状態では、カム機構5のカムフォロア30cの傾斜面はカム41aの傾斜面の頂部付近に接当しており、第1バネ35の付勢力にもかかわらずクラッチ部材30はこの位置で静止しており、その際噛み合い機構6の係合歯部30bと被係合歯部6とが離脱しており、巻き戻し方向に付勢されている巻取体50はアイドラー60を介して固定ベース部材70によって保持されている。この噛み合い機構6が離脱している位置をクラッチ部材30の第1位置と称する。この状態の変速操作装置1の部分断面図が図1に示されている。
【0029】
図10(b)は、第1操作体20を図示されていない復帰バネの付勢力に抗して巻き上げ方向に揺動し始めた状態を示している。この第1操作体20の揺動により、第1バネ35の付勢力でカムフォロア30cはカム41aの傾斜面を滑り下り始め、その結果噛み合い機構6の係合歯部30bと被係合歯部51aとが係合する位置に近づいていく。クラッチ部材30は、第1操作体20に対してはインナースプライン26aとアウタースプライン30aを用いて軸芯X方向に摺動する。
【0030】
図10(c)は、第1操作体20がさらに揺動し、クラッチ部材30が巻取体50に接近し、噛み合い機構6の係合歯部30bと被係合歯部6が完全に係合する状態を示している。噛み合い機構6が係合している位置をクラッチ部材30の第1位置と称する。さらなる第1操作体20の揺動は噛み合い機構6を介して巻取体50を巻き上げ方向に回転させていく。
【0031】
図10(d)は、第1操作体20が操作終端位置まで揺動された状態を示している。この状態では巻取体20は次の変速位置に対応する回転位置まで回転しており、これにより変速装置は次の変速位置に切り換わる。この状態の変速操作装置1の部分断面図が図12に示されている。
【0032】
図10(e)は、変速操作が終了した第1操作体20が図示されていない復帰ばねの作用で、あるいは手動により、ホームポジションに戻り始めた状態を示している。次の変速位置に対応する回転位置まで回転した巻取体20は、アイドラー60と固定ベース部材70の間に設けられている保持係合機構7により、その位置に保持される。つまり保持係合機構7は、アイドラー60、つまり巻取体50の巻き上げ方向の回転は許すが、巻取体50の巻き戻し方向の回転は禁止しているからである。このことから、クラッチ部材30は、係合歯部30bが被係合歯部51aの傾斜面を沿って摺動するにともなって巻取体50から離脱していく。
【0033】
図10(f)は、第1操作体20が再びホームポジションに復帰した状態を示している。この状態では、図10(a)と同様、カム機構5のカムフォロア30cの傾斜面はカム41aの傾斜面の頂部付近に接当していることからクラッチ部材30は第1位置に戻り、噛み合い機構6の係合歯部30bと被係合歯部6はその係合を解いている。
【0034】
次に、第2操作体80を用いた巻き戻し操作を説明する。
図11(a)は変速操作前の状態を示しており、第2操作体80はホームポジションである操作始端に位置している。この状態では、保持係合機構7の係合歯部60bは被係合歯部72aに噛み合っており、アイドラー60、つまり巻取体50は操作ケーブル4による巻き戻し方向のトルクにもかかわらず、固定ベース部材70に保持されている。この係合歯部60bと被係合歯部72aの係合を確実なものとするため、アイドラー60は第2バネ65によって固定ベース部材70の方へ付勢されている。この係合歯部60bが被係合歯部72aに係合しているアイドラー60の位置を第1位置と称する。この状態の変速操作装置1の部分断面図が図1に示されている。
【0035】
図11(b)は、第2操作体80が第3バネ85の付勢力に抗して押し込まれ、第2操作体80の先端に設けられたガイド部81aの傾斜面とアイドラー60に設けられた被ガイド部60cの傾斜面とが接当し、第2操作体80がアイドラー60を第1位置から図面右方に移動させている状態を示している。このアイドラー60の右方への移動により保持係合機構7の係合歯部60bは被係合歯部72aから離脱し始める。
【0036】
図11(c)は、第2操作体80がさらに操作終端位置まで押し込まれ、その結果保持係合機構7の係合歯部60bが被係合歯部72aから離脱する第2位置までアイドラー60が移動した状態を示している。この状態の変速操作装置1の部分断面図が図13に示されている。
【0037】
図11(d)は、保持係合機構7の係合が外れ、アイドラー60が巻き戻し方向に回転し始めた状態を示している。係合歯部60bが被係合歯部72aから離脱すると、アイドラー60には、巻き戻し方向に回転しようとする力と第2バネにより固定ベース部材70の方に押しやる力が作用し、かつ傾斜ガイド機構8を構成するガイド部81aの傾斜面とアイドラー60に設けられた被ガイド部60cの傾斜面の傾斜方向とから、アイドラー60の係合歯部60bは固定ベース部材70の次の被係合歯部72aに係合するように移動する。
【0038】
図11(e)は、さらにアイドラー60が巻取体50とともに巻き戻し方向に回転している状態を示している。アイドラー60は、その回転にともなって、第2バネ65により固定ベース部材70の方に移動し、第1位置に戻っていく。同時に第2操作体80も第3バネ85により操作始端位置に戻っていく。
【0039】
図11(f)は、アイドラー60の係合歯部60bが固定ベース部材70の次の被係合歯部72aに係合して静止した状態を示している。この過程で、巻取体50はインナースプライン53bとアウタースプライン60aを介してアイドラー60と一体的に回転するため、この一連のアイドラー60の回転変位により変速ケーブルが1変速段に対応する長さだけ巻き戻される。これにより、変速装置の変速切り換えが完了する。
【0040】
上記の実施の形態において、カム機構5、噛み合い機構6、保持係合機構7、そして傾斜ガイド機構8の具体的構造として、傾斜突起形状が採用されていたが、本発明は、この形状に限定しているのではなく、公知の種々の幾何学的形状による係合構造や力学的係合構造を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による変速操作装置の実施形態を示す部分断面側面図
【図2】図1による変速操作装置の平面図
【図3】図1による変速操作装置の主要構成要素の分解説明図
【図4】図2の矢視IVからみた平面図
【図5】図2の矢視V からみた平面図
【図6】図2の矢視VIからみた平面図
【図7】図2の矢視VII からみた平面図
【図8】図2の矢視VIIIからみた平面図
【図9】図2の矢視IXからみた平面図
【図10】図1による変速操作装置の巻き上げ動作を示す展開模式図
【図11】図1による変速操作装置の巻き戻し動作を示す展開模式図
【図12】図1による変速操作装置の主要部の拡大部分断面側面図
【図13】図1による変速操作装置の主要部の拡大部分断面側面図
【符号の説明】
1 変速操作装置
4 変速ケーブル
5 カム機構
6 噛み合い機構
7 保持係合機構
8 傾斜ガイド機構
20 第1操作体
30 クラッチ部材
40 固定ガイド部材
50 巻取体
60 アイドラー
70 ベース部材
80 第2操作体

Claims (7)

  1. 変速ケーブルを介して変速装置を操作するため、前記変速ケーブルを巻き取るために軸芯回りに回転可能な巻取体と、前記巻取体を一方方向に回転させる第1操作機構と、前記巻取体を他方方向に回転させる第2操作機構を備えた自転車用変速操作装置において、
    前記第1操作機構は、前記軸芯回りで操作始端と操作終端との間で回転可能で、前記巻取体に対して相対変位可能な第1操作体と、前記第1操作体と一体回転するとともに前記軸芯方向に第1位置と第2位置との間で変位可能なクラッチ部材とを備え、前記第1位置において前記クラッチ部材が前記巻取体との係合が解除され、前記第2位置においてクラッチ部材が前記巻取体と係合し、前記第1操作体による前記クラッチ部材の回転変位によって前記クラッチ部材が前記第2位置へ変位し、前記巻取体の一方方向の回転のため前記操作体の回転変位が前記巻取体へ伝達され、かつ
    前記第2操作機構は、前記軸芯方向に操作始端と操作終端との間で直線移動可能な第2操作体と、前記巻取体と一体回転するとともに前記軸芯方向に第1位置と第2位置との間で変位可能なアイドラーとを備え、前記第2位置における前記アイドラーに前記軸芯回りの回転変位を許すことより前記巻取体を前記他方方向に回転させることを特徴とする自転車用変速操作装置。
  2. 前記クラッチ部材と前記アイドラーはリング状に形成されているとともに、前記巻取体より径方向内側で前記軸芯に対して同芯配置されていることを特徴とする請求項1に記載の自転車用変速操作装置。
  3. 前記第1操作体による前記クラッチ部材の回転変位によって前記クラッチ部材と前記巻取体を係合するために、前記軸芯に固定されたガイド部材に形成されたカム面と前記クラッチ部材に形成されたカムフォロア面とからなるカム機構が備えられているはことを特徴とする請求項2に記載の自転車用変速操作装置。
  4. 前記第2操作体と前記アイドラーとの間に前記第2位置における前記アイドラーの変位を規制する傾斜ガイド機構が備えられていることを特徴とする請求項3に記載の自転車用変速操作装置。
  5. 前記第1位置における前記アイドラーを軸芯回りの回転を禁止するために、前記アイドラーと前記軸芯に固定されたベース部材との間に保持係合機構が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の自転車用変速操作装置。
  6. 前記ガイド部材と前記第1操作体はリング状に形成されているとともに前記軸芯に対して同芯状に配置されており、前記ガイド部材と前記第1操作体と巻取体によって形成される環状空間内に前記クラッチ部材が配置されていることを特徴とする請求項3に記載の自転車用変速操作装置。
  7. 前記ベース部はリング状に形成されているとともに前記軸芯に対して同芯状に配置されており、前記ベース部材と前記巻取体によって形成される環状空間内に前記アイドラーが配置されていることを特徴とする請求項5に記載の自転車用変速操作装置。
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