JP3621994B2 - 光干渉計における外乱の測定装置および高精度光干渉計測装置 - Google Patents

光干渉計における外乱の測定装置および高精度光干渉計測装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光干渉測定装置において外部振動、空気ゆらぎ等の外乱が測定値に与える誤差を定量的に評価する装置に関するもので、レンズ、ミラー、レンズ成型用型などの鏡面表面を持つ物体の表面形状を高精度に測定するための光干渉計、及びガラス基盤、フィルム、光学素子、液晶層などを透過した光の波面を高精度に測定するための光干渉計に利用できる。
【0002】
【従来の技術】
光干渉計における測定において測定中に外乱が発生すると、干渉縞が乱れ、縞のコントラスト(ビジビリテイ)の低下が起こるので測定精度が低下する。特に外乱が大きく、干渉縞が1本以上揺らぐ場合には、測定不能になる。外乱のある測定環境においても測定が可能な光干渉計には、非特許文献1に示されるように、ただ1枚の干渉縞画像から形状等を測定するものと、非特許文献2及び3の例に示されるように、外乱を別途測定し、それを補償するシステムを有するものがある。また、特許文献1に示されるように、振動数の異なる光を用いる2色法によるものがある。
非特許文献1の光干渉計システムでは、外乱により干渉縞が乱れるよりも十分に早い露光時間で干渉縞画像を取り込み、外乱による干渉縞のコントラスト低下を抑えている。通常1枚の干渉縞画像から得られる光の波面の位相測定精度はπ程度であるが、干渉縞解析アルゴリズムの工夫により高精度化を図っている。非特許文献2及び3のシステムでは、波面検出器により外乱を測定し、光源であるレーザーの波長(非特許文献2)、あるいは参照光の光路長(非特許文献3)にフイードバックをかけることで、外乱による干渉縞の乱れを生じさせないようになっている。
また、特許文献1の2色法では、光路長を幾何学的長さに変換するものであることから2点間の光路にある空気すべての屈折率を補正するようにしている。
【0003】
【非特許文献1】
M.Melozzi,L.Pezzati,and A.Mazzoni,“Vibration−insensitive interferomet er for on−line measurements,”Applied Optics 34,5595−5601(1995).
【非特許文献2】
0.Sasaki,K.Takahashi,and T.Suzuki,“Sinusoidal phase modulating laser diode interferometer with a feedback control system to eliminate external disturbance,” Optical Engineering 29,1511−1515(1990).
【非特許文献3】
I.Yamaguchi,J.Liu,andJ.Kato,“Active phase−Shifting interferometers for Shape and deformation measurements,”Optical Engineering 35,2930−2937(1996).
【特許文献1】
特開平10−19508号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ただ1枚の干渉縞画像から光の波面の位相を測定する方法では、上記のようにある程度の測定精度向上が望めるものの、通常光干渉計において測定精度向上のために行われる位相シフト法(あるいは位相変調干渉法、縞走査法、ヘテロダイン法)と比較して測定精度の向上度合いが小さい。また、フイードバックシステムを備えた干渉計測方法においても、外乱のある場合の測定精度は外乱のない場合に比較して多少なりとも低下しており、その低下度合いがどの程度であるか定量的に見積もることができない。また、2色法においては全光路にわたって屈折率の補正ができるものの精度が落ちるという問題がある。
さらに、いずれの方法によっても、外乱による測定誤差がどのような空間的分布を持っているかを把握することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するため、光干渉計による測定と同等の光学系を用いて、外乱の大きさを時間的、及び空間的な関数として測定する方法を提供することで、外乱による測定誤差を見積もることが可能な高精度光干渉計測装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明の光干渉計における外乱の測定装置は、物体光と参照光との間に鋸波状に変化する位相差を与え、その結果干渉光強度が正弦波的に変化することを利用して、得られた正弦波の位相と最初に与えた鋸波状信号との位相差から物体光と参照光の位相差を測定する光干渉計において、物体光と参照光の位相差を異なるサンプリング周波数においてそれぞれ複数回サンプリングするとともに、得られたサンプリング値から外乱が測定値に与える誤差量の周波数特性を評価する手段を設けることを特徴とする。
また、本発明の光干渉計における外乱の測定装置は、物体光と参照光とからなる干渉光を複数の光束に分け、それぞれの光束が測定物の異なる部分に対応するような位置に複数の開口を設け、該開口を通過した干渉光同士の位相差を測定し、測定値に与える誤差量の空間的分布を評価する手段を設けることを特徴とする。
また、本発明の高精度光干渉計測装置は、物体光と参照光との間に鋸波状に変化する位相差を与え、その結果干渉光強度が正弦波的に変化することを利用して、得られた正弦波の位相と最初に与えた鋸波状信号との位相差から物体光と参照光の位相差を測定する光干渉計において、外乱がある時の計測精度が外乱がない時の計測精度と同程度になるように物体光と参照光との間に与える鋸波状位相差の周波数を設定する手段を設け、高速度カメラを介して得られた干渉縞を取り込むようにしたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による実施の形態を図面に基づき説明する。
〔実施の形態1〕
図1を用いて、干渉光の位相を検出するために本発明で利用する高速位相変調法の原理を説明する。この原理は、例えば、文献M.Yamauchi,A.Marquez,J.A.Davis,and D.J.Franich,“Interferometric phase measurements for polarization eigenvectors in twisted nematic liquid crystal spatial light modulators,”Optics Communications 181,1−6(2000)においてマッハツェンダー型の干渉計に対して用いられている。レーザー光源1を出射した光線は、高速位相変調素子2を透過した後、拡大され、平行光となって偏光マイケルソン型干渉計へと入射する。干渉計中の偏光ビームスプリッタ3により、紙面に垂直な方向の偏光成分(以後S偏光と呼ぶ)は上方へ反射される。反射したS偏光は、4分の1波長板4により円偏光となり、参照平面5で反射された後、再び4分の1波長板4を透過し、今度は紙面に平行な方向の直線偏光(以後P偏光と呼ぶ)となって偏光ビームスプリッタ3を透過し、下方へ出射する。この光線が干渉計の参照光となる。一方干渉計へ入射したP偏光は、最初に偏光ビームスプリッタ3を透過し左方向へ進んで物体光となる。物体光も参照光と同様、4分の1波長板6を透過して円偏光となり、測定面7で反射され、再び4分の1波長板6を透過して直線偏光に戻る。ただしこの時の直線偏光はS偏光となっているので、今度は偏光ビームスプリッタ3で反射されて下方へ進む。物体光と参照光は共に検光子8を透過して干渉縞を形成し、開口9を透過後、光検出器10へと到達する。
【0008】
高速位相変調素子2では、入射したレーザー光線のS偏光成分とP偏光成分との間に、鋸波状の位相差を設ける。こうすれば、光検出器10に到達した干渉光の強度Iは、
【数1】
Figure 0003621994
のように正弦的に変化する。ここでAは干渉光強度の直流成分、B は交流成分の振幅、fは与えた鋸波状の位相差の変調周波数、φは物体光と参照光との位相差である。この位相差は、例えば形状測定においては測定面7の高さを表しており、測定面上のある基準点の高さをhとすると、測定点の高さhは、
【数2】
Figure 0003621994
と求めることができる。ここで、λは使用するレーザー光の波長、φは基準点での物体光と参照光との位相差である。数式2において、右辺第2項は、往復光路のため、基準点と測定点での片道光路長差の2倍となっている。形状測定においては通常、図1において開口9の位置を走査するか、あるいは開口9を設けず、CCDカメラ等、面で光量を検出できる装置を用いて測定面7の高さの分布を求めている。
【0009】
本発明では、例えば物体光中の4分の1波長板6と測定面7との間に空気揺らぎがあるなど、ランダムに変動する外乱11がある状況で上記干渉計を用いて形状測定することを考える。この場合、外乱11により発生する物体光と参照光との間の位相差をεとすれば、光検出器10で測定される干渉光強度Iは、数式1の代わりに
【数3】
Figure 0003621994
となる。干渉光強度から、物体光と参照光の位相差を一定の周期でn回測定する。その測定値をξ(i=1,2,3,,,n)とすれば
【数4】
Figure 0003621994
となる。また測定値の平均値は
【数5】
Figure 0003621994
となる。ここで、平均値を<>で表した。
【0010】
外乱の発生はランダムであり、多数回の平均で0になると考えると、<ξ>=φであり、測定値の標準偏差σξ
【数6】
Figure 0003621994
となる。数式6は、測定値の標準偏差が外乱の標準偏差と等しいことを表している。したがって、このn回測定での測定値の標準偏差σξは、外乱11の大きさと考えることができる。このように、上記光学系を用いて、一定の周期で多数回の測定(サンプリング)を行い、その標準偏差を求めれば、その測定時間中に発生した外乱11の大きさを評価することが可能となる。またこのような測定を、サンプリング周期を変えて実施することにより、外乱11の大きさの周波数特性を測定することが可能となる。
【0011】
〔実施の形態2〕
次に、図2に示す光学系を考える。この光学系は図1とほば同様であるが、干渉光をビームスプリッタ12で2光束に分け、それぞれの光束中に開口13、14を設けることにより、それぞれの開口位置に応じて、測定面7での異なる部分から反射した光線の位相差を測定することが可能となる。片方の開口を移動ステージ上に置き、開口位置を走査すれば、測定面7上の位置により外乱11の大きさがどのように変化するかを測定することができる。すなわち、外乱11の大きさの空間的特性を測定することが可能である。
【0012】
干渉縞画像を取り込み、位相シフト法により形状測定等を行う干渉計において、このように測定された外乱11の大きさが、干渉光の位相測定にどのような影響を与えるかを考える。位相シフト法において一定量の位相シフトを行って多数枚の干渉縞画像を取り込むことは、鋸波状の位相変調を行うシステムにおいては、一定の時間間隔で干渉縞画像を取り込むことに対応している。そのとき、図1の光学系で測定された外乱11の大きさは、各画像における位相シフト量のランダムな誤差と考えることができる。位相シフト法には多くのアルゴリズムが考えられるが、文献K.Hibino,“Susceptibility of systematic error−compensating algorithms to random noise in phase−Shifting interferometry,” Applied Optics 36,2084−2093(1997)によれば、適当なアルゴリズムを選択することにより、ランダムな位相シフト量の誤差σεがある時、位相シフト法によって計算される位相の誤差δφは、
【数7】
Figure 0003621994
程度に抑えることが可能である。ただし、mは取り込む画像の枚数であり、通常3〜9程度の整数である。したがって、最終的に決定される位相の誤差は、本提案における装置で測定された外乱の大きさ程度以下であると評価することができる。
一方図2の光学系で測定された外乱の空間的分布は、位相シフト法等で得られた位相に、誤差として直接加算される。したがって、外乱の空間的分布により生じる測定誤差は、図2の光学系で測定された外乱の大きさ以下であると評価することができる。
【0013】
【実施例】
〔実施例1〕外乱の周波数特性の測定
平面度の形状測定を例にとり、本発明にかかる光干渉測定装置の全体構成を図3に示す。光学系部分は、波長633nmの直線偏光レーザー光を出射するHe−Neレーザー光源1、物体光と参照光の光量を調整するための2分の1波長板17、レーザー光線のS偏光成分のみに鋸波状位相変調を与える高速位相変調素子2、集光レンズ18、ピンホール19、ピンホールから出射した光を平行光にするコリメーターレンズ20、物体光と参照光を分割する偏光ビームスプリッタ3、2個の4分の1波長板4、6、参照平面5、測定平面7、検光子8、開口9、及び光検出器10から構成される。光学系以外の部分は、鋸波を発生させるファンクションジェネレータ21、ファンクションジェネレータ21からの信号を、高速位相変調素子2において2πの位相変調が可能となるよう増幅するアンプ22、信号波形を確認するためのオシロスコープ23、干渉光の位相を検出するロックインアンプ24、及びロックインアンプ24で測定された位相差を一定周期でサンプリングを行い、データを保存するためのパーソナルコンピュータ25からなる。
【0014】
高速位相変調素子2としては、電気光学素子を用いることができる。電気光学素子は、ADP(NHPO)などの光学結晶を内蔵しており、内蔵した光学結晶には、電圧を印加することによりポッケルス効果などが生じ、結晶軸方向によって異なる屈折率変化を起こすので、結晶を透過する光線の特定の偏光成分のみに位相変調をかけることが可能である。S偏光成分に鋸波状の位相変調を行い、変調をかけないP偏光成分と干渉させる。このように直交した偏光を干渉させるため、検光子8が必要となる。干渉光を光検出器10に入射させると、数式1で表されるような、正弦的に変化する信号が検出される。
【0015】
ファンクションジェネレータ21で発生した信号と、光検出器10で検出された信号を、オシロスコープ23に映した例を図4に示す。図4(a)の信号がファンクションジェネレータ21からの鋸波状信号、図4(c)が光検出器10からの信号である。これらの信号をそれぞれロックインアンプ24の参照信号及び入力信号とすれば、入力信号である図4(c)の波形の位相を検出することができる。
検出された位相の値は、GP−IB(General Purpose Inteface Bus)を通して、一定の周期でパソコン25に取り込まれる。
【0016】
鋸波状の位相変調の周波数fを1kHzとし、パソコン25に取り込む位相値のサンプリング周波数を1Hz〜1kHzに変化させて、それぞれ10回ずつ測定を行った結果の例を図5(a)に示す。この実験は、図3の光学系部分を、空気除震装置付の光学定盤上に置いて行った。サンプリング周波数が10Hz以上のときはほとんど安定した測定が行われているが、1Hzのときは測定のたびに得られる値が変化しており、このように振動の影響をほとんど受けない実験室環境においても、測定値が外乱の影響を受けていることが分かる。
同様の実験を、強制的な空気揺らぎの外乱を起こした測定環境で行った結果を図5(b)に示す。具体的には、図3の光学系中、4分の1波長板6と測定平面7との間の光路の下に使い捨てカイロを置き、室温とカイロ表面との間に約20℃の温度差を設けて、空気の対流を発生させた。図5(b)を見て分かるとおり、このように大きな空気ゆらぎがある時は、100Hzの周波数でサンプリングを行っても測定値が変化する。図5の各グラフにおける10回測定での標準偏差を外乱の大きさの指標とすることが可能であり、以後外乱による位相誤差量と呼ぶ。強制的外乱のある場合とない場合において、外乱による位相誤差量をサンプリング周波数の関数として測定した結果を図6に示す。このように、本発明における方法及び装置により、外乱による位相誤差量の周波数特性を測定することができる。
【0017】
〔実施例2〕外乱の空間分布特性の測定
図7に示される装置を用いて、外乱11による位相誤差量の空間分布特性を測定する。上記実施例1と比較して、干渉光をビームスプリッタ12により2つの光線に分け、2つの光検出器15、16により各光線の光強度を検出している点、ロックインアンプ24ヘの参照信号の入力信号が、ファンクションジェネレータ21からではなく、片方の光検出器15からの信号となっている点、及びもう片方の光検出器16の前に配置された開口14が移動ステージ26上に載っており、開口14位置を移動可能にしている点が異なっている。ここでは、光検出器16の受光面の大きさは、開口14の移動範囲をカバーするものとしているが、開口14と光検出器16を同時に移動ステージ26により移動させることも可能である。
【0018】
検光子8は、図7のようにビームスプリッタ12と開口14の間に置くこともできるが、図2のように偏光ビームスプリッタ3とビームスプリッタ12との間に置いても差し支えない。またロックインアンプ24ヘの参照信号は、片方の光検出器15からの信号を直接入力することもできるが、信号波形が乱れる、あるいは信号が弱いなどの理由でロックインアンプ24のロックが安定しない場合には、図7にあるように、参照信号へ入力する前に、プログラマブルフィルタ27により適当なフィルタリングを行って波形を整え、あるいは適当な信号強度に増幅すると良い。
【0019】
この時得られる信号をオシロスコープ上に映し出した例を図8に示す。図8の(a)はファンクションジェネレータ21からの信号、(b)は、プログラマブルフィルタ27を通した後の片方の光検出器15からの信号、(c)は、もう一方の光検出器16からの信号を表している。ロックインアンプ24では、(b)と(c)の信号の位相差を検出する。各光検出器15、16の前に置かれた開口13、14の位置が、測定平面7の同じ位置に対応しているときは、外乱の有無にかかわらず図8のようにこれらの信号は同位相となる。開口13と開口14の位置が測定平面7の異なる位置に対応しているときには、測定平面7と参照平面5との間に形状差がある場合、測定平面7と参照平面5からの光波面が完全には平行でない場合、あるいは外乱のある場合、図4のようにこれらの信号の間に位相差が生じる。
【0020】
実施例1と同様に、鋸波状の変調周波数を1kHzとし、サンプリング周波数を変えて各10回ずつの位相差測定を行った。使い捨てカイロを放置して強制的な空気揺らぎを発生させ、2つの開口13、14を、対応する測定平面7の同位置及び4mm離れた位置に置いたとき、測定値の標準偏差(外乱による位相誤差量)がサンプリング周波数に対してどのように変化するかを図9に示す。このような測定により、外乱による位相誤差量の空間的分布を知ることができる。
【0021】
〔実施例3〕平面形状の測定
実際に平面などの形状を測定するときは、図10に示す装置を用いて行う。光学系の配置は実施例1とほぼ同様であるが、開口を設置せず、光検出器の代わりに高速度カメラ28を設置して、干渉縞を2次元の画像として取り込む。その際、実施例1及び実施例2の測定結果から、外乱による位相誤差量がどれ程であったかを確実に推定し、外乱による位相誤差量が、外乱がない時の装置全体の計測精度と同じ程度になるよう、鋸波状の位相変調周波数を適当な値に設定する。
画像の取り込みは、鋸波状の位相変調と同期して行われ、例えば位相変調周波数の4倍の周波数で画像を取り込めば、位相シフト量π/2毎の干渉縞画像を連続的に得ることができる。干渉縞のコントラスト(ビジビリテイ)の低下をおこさせないよう、各画像の露光時間は、画像取り込み間隔よりも十分に短い時間で行う必要があるが、ゲート式イメージインテンシフアイア、マイクロチャンネルプレート等を用いれば、相当に高い周波数においてもそのような画像の取り込みは可能である。取り込まれた画像はパソコン25に送信され、位相シフト法など通常の干渉縞の解析を行って形状を測定する。高速度カメラの画像取り込みスピードが速く、送信が間に合わないときは、一旦メモリなどで画像の蓄積を行ってからパソコン25に転送する。表面が鏡面となっている反射物体であれば、球面等の形状も同様の装置で測定可能である。29はカメラコントローラである。
【0022】
〔実施例4〕透過物体の測定
本発明は、マイケルソン干渉計だけではなく、マッハツェンダー干渉計を用いた透過物体の波面測定にも用いることが可能である。図11に、レンズの集光性能を検査する例を示す。He−Neレーザーから出射した光線は、実施例1と同様に物体光と参照光の光量を調節用の2分の1波長板17を透過後、高速位相変調素子2により鋸波状の位相変調を受け、偏光ビームスプリッタ3により物体光と参照光に分けられる。物体光は集光レンズ18、被検レンズ30を透過後、ビームを拡大して平行光となった参照光と干渉する。ここで生じる干渉縞は、被検レンズ30によって生じる波面収差を表しており、干渉縮を解析して位相分布を求めることにより波面収差量が測定できる。
本実施例においても、実施例3と同様、実施例1及び実施例2の測定結果から、外乱による位相誤差量がどれ程であったかを確実に推定し、外乱による位相誤差量が、外乱がない時の装置全体の計測精度と同じ程度になるよう、鋸波状の位相変調周波数を適当な値に設定する。
なお、実施例1および実施例2の測定は、実施例3および実施例4の測定の前後、あるいは同時に行うことが可能である。
【0023】
【発明の効果】
本発明は以下の効果を奏する。
(1)請求項1記載の発明によれば、外乱が測定値に与える誤差量の周波数特性を評価することが可能となる。
(2)請求項2記載の発明によれば、外乱が測定値に与える誤差量の空間的分布を評価することが可能となる。
(3)請求項1および請求項2記載の発明によれば、測定物体の大きさ及び測定誤差の許容値を設定すれば、位相シフト法により形状測定を行うとき、許容値以下の測定精度を達成するために必要な、鋸波状位相差の周波数を決定することが可能となる。
(4)請求項3記載の発明によれば、外乱による位相誤差量が、外乱がない時の装置全体の計測精度と同じ程度になるよう、鋸波状の位相変調周波数を適当な値に設定して測定を行うものであるから、測定誤差のない信頼性のある測定値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る高速位相変調法の原理を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る光学系を示す概略図である。
【図3】本発明の実施例1に係る外乱の周波数特性の測定のための光干渉測定装置の全体構成を示す図である。
【図4】実施例1および実施例2において、ファンクションジェネレータで発生した信号と、光検出器で検出された信号を、オシロスコープに映した例を示す図である。
【図5】鋸波状の位相変調の周波数fを1kHzとし、パソコンに取り込む位相値のサンプリング周波数を1Hz〜1kHzに変化させて、それぞれ10回ずつ測定を行った結果の例を示す図である。
【図6】強制的外乱のある場合とない場合において、外乱による位相誤差量をサンプリング周波数の関数として測定した結果を示す図である。
【図7】本発明の実施例2に係る外乱による位相誤差量の空間分布特性を測定するための装置を示す図である。
【図8】実施例2において、得られる信号をオシロスコープ上に映し出した例を示す図である。
【図9】実施例2において、使い捨てカイロを放置して強制的な空気揺らぎを発生させ、2つの開口を、対応する測定平面の同位置及び4mm離れた位置に置いたとき、測定の標準偏差(外乱による位相誤差量)がサンプリング周波数に対してどのように変化するかを示す図である。
【図10】本発明の実施例3に係る平面形状を測定するための装置を示す図である。
【図11】本発明の実施例4に係る透過物体を測定するための装置を示す図である。
【符号の説明】
1 レーザー光源
2 高速位相変調素子
3 偏光ビームスプリッタ
4 4分の1波長板
5 参照面
6 4分の1波長板
7 測定面(測定平面)
8 検光子
9 開口
10 光検出器
11 外乱
12 ビームスプリッタ
13 開口
14 開口
15 光検出器1
16 光検出器2
17 2分の1波長板
18 集光レンズ
19 ピンホール
20 コリメーターレンズ
21 ファンクションジェネレータ
22 アンプ
23 オシロスコープ
24 ロックインアンプ
25 パソコン
26 移動ステージ
27 プログラマブルフィルタ
28 高速度カメラ
29 カメラコントローラ

Claims (3)

  1. 物体光と参照光との間に鋸波状に変化する位相差を与え、その結果干渉光強度が正弦波的に変化することを利用して、得られた正弦波の位相と最初に与えた鋸波状信号との位相差から物体光と参照光の位相差を測定する光干渉計において、物体光と参照光の位相差を異なるサンプリング周波数においてそれぞれ複数回サンプリングするとともに、得られたサンプリング値から外乱が測定値に与える誤差量の周波数特性を評価する手段を設けることを特徴とする光干渉計における外乱の測定装置。
  2. 物体光と参照光とからなる干渉光を複数の光束に分け、それぞれの光束が測定物の異なる部分に対応するような位置に複数の開口を設け、該開口を通過した干渉光同士の位相差を測定し、測定値に与える誤差量の空間的分布を評価する手段を設けることを特徴とする請求項1記載の光干渉計における外乱の測定装置。
  3. 物体光と参照光との間に鋸波状に変化する位相差を与え、その結果干渉光強度が正弦波的に変化することを利用して、得られた正弦波の位相と最初に与えた鋸波状信号との位相差から物体光と参照光の位相差を測定する光干渉計において、外乱があるときの計測精度が外乱がない時の計測精度と同程度になるように物体光と参照光との間に与える鋸波状位相差の周波数を設定する手段を設け、高速度カメラを介して得られた干渉縞を取り込むようにしたことを特徴とする高精度光干渉計測装置。
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