JP3619292B2 - 内燃機関の動弁装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機関弁に固定されたアーマチュアと、該アーマチュアの一側に対向配置されるとともに通電時に機関弁を閉弁方向に作動せしめる電磁力を前記アーマチュアに及ぼす閉弁側電磁石と、前記アーマチュアの他側に対向配置されるとともに通電時に機関弁を開弁方向に作動せしめる電磁力を前記アーマチュアに及ぼす開弁側電磁石と、前記アーマチュアを閉弁方向に付勢する第1ばねと、前記アーマチュアを開弁方向に付勢するばね力を発揮するとともに前記両電磁石の非通電時には第1ばねと共働してアーマチュアを中立位置に保持する第2ばねとを備える内燃機関の動弁装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、かかる装置は、たとえば米国特許公報3882833号および国際出願国際公開公報WO95/00959号等により既に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のものでは、閉弁側および開弁側電磁石がアーマチュアの両側に対向して固定配置されており、機関弁の確実な閉弁着座状態を得るためには、該機関弁の閉弁時に閉弁側電磁石およびアーマチュア間にクリアランスを設定する必要があり、機関弁すなわちアーマチュアを閉弁位置に保持すべく閉弁側電磁石で発揮する吸引電磁力を比較的大きくするために閉弁側電磁石への通電電流を比較的大きくせざるを得ない。また機関弁着座時の速度制御は閉弁側電磁石への通電電流を調整することにより行なわれるが、閉弁側電磁石およびアーマチュア間のギャップが微小である領域では、電流の変化により電磁力が敏感に変化するものであり、閉弁側電磁石の吸引電磁力を精密に制御することが困難である。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、機関弁閉弁時の保持電流減少を図るとともに着座速度制御を容易とし、しかも着座音の減少を図った内燃機関の動弁装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、機関弁に固定されたアーマチュアと、該アーマチュアの一側に対向配置されるとともに通電時に機関弁を閉弁方向に作動せしめる電磁力を前記アーマチュアに及ぼす閉弁側電磁石と、前記アーマチュアの他側に対向配置されるとともに通電時に機関弁を開弁方向に作動せしめる電磁力を前記アーマチュアに及ぼす開弁側電磁石と、前記アーマチュアを閉弁方向に付勢する第1ばねと、前記アーマチュアを開弁方向に付勢するばね力を発揮するとともに前記両電磁石の非通電時には第1ばねと共働してアーマチュアを中立位置に保持する第2ばねとを備える内燃機関の動弁装置において、第2ばねのばね力でアーマチュアから離反する方向に付勢された閉弁側電磁石が固定のハウジング内に移動可能に収納され、ハウジングには、閉弁側電磁石および開弁側電磁石の非通電時に閉弁側電磁石に当接して該閉弁側電磁石のハウジング内での位置を進退可能とする調整部材が設けられることを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明の構成に加えて、ハウジング内に移動可能に収納される開弁側電磁石とアーマチュアとの間に第1ばねが縮設され、第1ばねのばね力による開弁側電磁石の移動を規制すべくハウジング内に設けられた固定の規制部と開弁側電磁石との間にシムが挟まれることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、上記請求項1または2記載の発明の構成に加えて、ハウジングには、機関弁の閉弁着座状態で調整部材および閉弁側電磁石間に生じる間隙を調整する調整孔が設けられることを特徴とする。
【0008】
さらに請求項4記載の発明は、上記請求項1または2記載の発明の構成に加えて、コイル状に形成された複数の第2ばねが同心状に並列配置されることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1および図2は本発明の一実施例を示すものであり、図1は機関弁が中立位置に在る状態での動弁装置の縦断面図、図2は閉弁着座状態での図1に対応する縦断面図である。
【0011】
先ず図1において、シリンダヘッド1には、弁口2を中央部に開口させた弁座3が燃焼室4に臨んで設けられ、弁座3に着座可能な吸気弁あるいは排気弁としての機関弁5が本発明に従う動弁装置により開閉駆動される。
【0012】
この動弁装置は、シリンダヘッド1上に固設される非磁性材料製のハウジング7と、機関弁5のステム5aに固定されてハウジング7内に移動可能に収納されるアーマチュア8と、該アーマチュア8を吸引して機関弁5を閉弁作動せしめる電磁力を発揮可能としてハウジング7内に配置される閉弁側電磁石9と、前記アーマチュア8を吸引して機関弁5を開弁作動せしめる電磁力を発揮可能としてハウジング7内に配置される開弁側電磁石10と、機関弁5の閉弁方向に向けてアーマチュア8を付勢する第1ばね11と、機関弁5の開弁方向に向けてアーマチュア8を付勢する一対の第2ばね121 ,122 とを備える。
【0013】
ハウジング7は、下端を開放するとともに上端を閉じた円筒状に形成されるものであり、シリンダヘッド1の上面との間に作動室14を形成するようにしてシリンダヘッド1の上面に結合される。機関弁5のステム5aは、シリンダヘッド1に固設されるガイド筒15に摺動可能に嵌合されて、作動室14内に突入されており、該作動室14内でステム5aに円盤状のアーマチュア8が固定される。すなわち、ステム5aの端部には環状の係合溝5bが設けられており、該係合溝5bに係合する二つ割りのコッタ13によりアーマチュア8がステム5aに固定される。而してコッタ13は、強磁性材料から成るステム5a側にアーマチュア8から磁束が漏洩することを防止するために非磁性材料により形成される。
【0014】
閉弁側電磁石9は、アーマチュア8の上面側に開放した略U字状の横断面形状を有するとともにステム5aと同軸のリング状に形成されたヨーク16内にコイル17が収納されて成るものであり、ヨーク16の上端内縁には円板状の連結板部16aが一体に設けられ、ヨーク16の外周面をハウジング7の内周面に摺接させるようにして閉弁側電磁石9がハウジング7の上部に摺動可能に嵌合される。また開弁側電磁石10は、アーマチュア8の下面側に開放した略U字状の横断面形状を有するとともにステム5aを同軸に囲繞するリング状に形成されたヨーク18内にコイル19が収納されて成るものであり、ヨーク18には、その下端内縁に連なる受け部18aが一体に設けられ、ヨーク18の外周面をハウジング7の内周面に摺接させるようにして開弁側電磁石10がハウジング7の下部に摺動可能に嵌合される。しかも作動室14内において、シリンダヘッド1の上面は、開弁側電磁石10のアーマチュア8から離反する側の移動を規制する規制部1aとして機能するものであり、この規制部1aと開弁側電磁石10との間にシム24が挟まれる。
【0015】
第1ばね11および一対の第2ばね121 ,122 はそれぞれコイル状に形成されるものであり、第1ばね11は、作動室14内で開弁側電磁石10の受け部18aとアーマチュア8との間に縮設され、同心状に配置される第2ばね121 ,122 が、ステム5aの端部に装着されたキャップ20と閉弁側電磁石9の連結板部16aとの間に並列に縮設される。
【0016】
閉弁側電磁石9における連結板部16aの中央部には、耐摩耗性材料から成る当接部材21が固設されており、ハウジング7における上端閉塞部の中央には、当接部材21に当接可能な調整部材としてのタペットねじ22が進退可能に螺合され、該タペットねじ22のハウジング7からの突出部には、ハウジング7の上端閉塞部に当接してタペットねじ22の進退位置を保持するナット23が螺合される。而してタペットねじ22は、図1で示すように、閉弁側電磁石9および開弁側電磁石10の非通電時には閉弁側電磁石9の前記当接部材21に当接して閉弁側電磁石9のハウジング7内での位置を進退可能に調整するものである。また機関弁5の閉弁着座時には、図2で示すように、当接部材21およびタペットねじ22間には間隙(タペットクリアランス)26が生じるものであり、ハウジング7の上部には、機関弁5の閉弁着座状態で当接部材21およびタペットねじ22間に図示しないシムを挿入して前記間隙26を調整するための調整孔25が設けられる。
【0017】
次にこの実施例の作用について説明すると、アーマチュア8が中立位置に在る状態で閉弁側電磁石9への通電を開始すると、アーマチュア8は閉弁側電磁石9で吸引されることにより第2ばね121 ,122 を圧縮しながら閉弁方向に作動するが、その吸引反力により、閉弁側電磁石9は、第2ばね121 ,122 のばね力に抗してアーマチュア8側に移動し、アーマチュア8に閉弁側電磁石9が当接する。而して閉弁側電磁石9およびアーマチュア8の接触後は、第1ばね11の比較的弱いばね力で機関弁5が閉弁方向に移動して弁座3に着座することになる。したがって、機関弁5の閉弁着座直前の閉弁方向の荷重は、第1ばね11のばね力設定により定められることになり、機械的な荷重制御により閉弁着座直前の作動速度を制御することができるので、閉弁側電磁石9の通電電流制御に比べて容易かつ信頼性の高い着座速度制御が可能となる。しかも閉弁側電磁石9がアーマチュア8にクリアランス無く接触するので、機関弁5を閉弁状態に保持するための閉弁側電磁石9の通電電流を比較的低く設定することが可能となる。
【0018】
またアーマチュア8が中立位置に在る状態で開弁側電磁石10への通電を開始すると、アーマチュア8は開弁側電磁石10で吸引されることにより第1ばね11を圧縮しながら開弁方向に作動するが、その吸引反力により、開弁側電磁石10は、第1ばね11のばね力に抗してアーマチュア8側に移動し、アーマチュア8に開弁側電磁石10が当接する。而して閉弁側電磁石10およびアーマチュア8の接触後は、第2ばね121 ,122 の比較的弱いばね力で機関弁5が全開位置まで開弁方向に移動することになる。
【0019】
このように、機関弁5の全閉直前および全開直前の作動がばねの自由振動によるものであるときには、両電磁石9,10の非通電時のアーマチュア8の中立位置に応じて機関弁5の作動速度が変化し、また両電磁石9,10にアーマチュア8を保持するための電流量が変化する。しかるに、タペットねじ22により両電磁石9,10が非通電状態に在るときの閉弁側電磁石9のハウジング7内での位置を調整可能であり、それにより第1および第2ばね11,121 ,122 のばね力を調整し、アーマチュア8の中立位置を調整することができる。したがってタペットねじ22により、閉弁着座直前の機関弁5の移動速度、閉弁側電磁石9およびアーマチュア8の相対移動速度、ならびに開弁側電磁石10およびアーマチュア8の相対移動速度が極力小さくなるように調整して着座音ならびに両電磁石9,10およびアーマチュア8の接触音低減を図るとともに、閉弁および開弁状態を保持するための電流量が極力少なくなるように制御することが可能となる。しかもタペットねじ22は、各ばね11,121 ,122 の荷重公差を補償してアーマチュア8の中立位置にばらつきが生じることを防止する上でも効果的に利用され得るものである。
【0020】
また規制部1aと開弁側電磁石10との間に挟まれるシム24は、動弁装置の各構成部品の寸法誤差を吸収して機関弁5の実リフト量を略一定に保つ働きをする。すなわち動弁装置の組付時に、開弁側電磁石10および規制部1a間にシム24を介在させ、ステム5aに結合されたアーマチュア8とシリンダヘッド1との間に第1ばね11を介在させると、機関弁5は弁座3に着座した閉弁状態となる。そこで、機関弁5を上方から押してその全開状態までのストロークすなわち弁リフト量を計り、基準リフト量との差に応じてシム24を交換すればよい。この際、シム24をその周方向に複数に分割可能なものとすれば、ステム5aからアーマチュア8を取外すことなくシム24を交換することができる。
【0021】
さらにシム24の取付け終了後には、機関弁5を上方から押圧して中立位置に対応する位置まで移動せしめ、そのときの第1ばね11のばね荷重に対応した荷重特性を有する第2ばね121 ,122 を選択し、さらに閉弁側電磁石9およびハウジング7を順次組み付けていく。而して閉弁側電磁石9の通電により機関弁5を閉弁着座せしめた状態で、タペットねじ22および当接部材21間の間隙26を設定値に応じて調整すればよく、その際、ハウジング7に調整孔25が設けられているので調整が容易である。
【0022】
このような動弁装置において、閉弁側電磁石9と、キャップ20すなわちアーマチュア8との間には、一対の第2ばね121 ,122 が並列で設けられるので、ハウジング7すなわち動弁装置の全高を比較的低くしてコンパクトな構成が可能となる。
【0023】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0024】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の発明によれば、第2ばねのばね力でアーマチュアから離反する方向に付勢された閉弁側電磁石が固定のハウジング内に移動可能に収納され、ハウジングには、閉弁側電磁石および開弁側電磁石の非通電時に閉弁側電磁石に当接して該閉弁側電磁石のハウジング内での位置を進退可能とする調整部材が設けられるので、機関弁の閉弁着座前に閉弁側電磁石をアーマチュアに当接させ、その後、着座するまではばね力により機関弁を機械的に閉弁作動せしめることにより、容易かつ信頼性の高い着座速度制御が可能となり、しかも閉弁側電磁石をアーマチュアにクリアランス無く接触せしめることにより機関弁を閉弁状態に保持するための閉弁側電磁石の通電電流を比較的低く設定することができ、さらに調整部材によるばね力の調整により着座音の減少を図ることができる。
【0025】
また請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の構成に加えて、ハウジング内に移動可能に収納される開弁側電磁石とアーマチュアとの間に第1ばねが縮設され、第1ばねのばね力による開弁側電磁石の移動を規制すべくハウジング内に設けられた固定の規制部と開弁側電磁石との間にシムが挟まれるので、機関弁の全開直前に開弁側電磁石にアーマチュアを緩やかに当接させて接触音を減少させるとともに機関弁の実リフト量を略一定に調整可能となる。
【0026】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1または2記載の発明の構成に加えて、ハウジングには、機関弁の閉弁着座状態で調整部材および閉弁側電磁石間に生じる間隙を調整する調整孔が設けられるので、動弁装置組付時に間隙の調整が容易となる。
【0027】
さらに請求項4記載の発明によれば、上記請求項1または2記載の発明の構成に加えて、コイル状に形成された複数の第2ばねが同心状に並列配置されるので、ハウジングすなわち動弁装置の全高を比較的低くしてコンパクトな構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】機関弁が中立位置に在る状態での動弁装置の縦断面図である。
【図2】閉弁着座状態での図1に対応する縦断面図である。
【符号の説明】
1a・・・規制部
5・・・機関弁
7・・・ハウジング
8・・・アーマチュア
9・・・閉弁側電磁石
10・・・開弁側電磁石
11・・・第1ばね
121 ,122 ・・・第2ばね
22・・・調整部材としてのタペットねじ
24・・・シム
25・・・調整孔
26・・・間隙
Claims (4)
- 機関弁(5)に固定されたアーマチュア(8)と、該アーマチュア(8)の一側に対向配置されるとともに通電時に機関弁(5)を閉弁方向に作動せしめる電磁力を前記アーマチュア(8)に及ぼす閉弁側電磁石(9)と、前記アーマチュア(8)の他側に対向配置されるとともに通電時に機関弁(5)を開弁方向に作動せしめる電磁力を前記アーマチュア(8)に及ぼす開弁側電磁石(10)と、前記アーマチュア(8)を閉弁方向に付勢する第1ばね(11)と、前記アーマチュア(8)を開弁方向に付勢するばね力を発揮するとともに前記両電磁石(9,10)の非通電時には第1ばね(11)と共働してアーマチュア(8)を中立位置に保持する第2ばね(121 ,122 )とを備える内燃機関の動弁装置において、第2ばね(121 ,122 )のばね力でアーマチュア(8)から離反する方向に付勢された閉弁側電磁石(9)が固定のハウジング(7)内に移動可能に収納され、ハウジング(7)には、閉弁側電磁石(9)および開弁側電磁石(10)の非通電時に閉弁側電磁石(9)に当接して該閉弁側電磁石(9)のハウジング(7)内での位置を進退可能とする調整部材(22)が設けられることを特徴とする内燃機関の動弁装置。
- ハウジング(7)内に移動可能に収納される開弁側電磁石(10)とアーマチュア(8)との間に第1ばね(11)が縮設され、第1ばね(11)のばね力による開弁側電磁石(10)の移動を規制すべくハウジング(7)内に設けられた固定の規制部(1a)と開弁側電磁石(10)との間にシム(24)が挟まれることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の動弁装置。
- ハウジング(7)には、機関弁(5)の閉弁着座状態で調整部材(22)および閉弁側電磁石(9)間に生じる間隙(26)を調整する調整孔(25)が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の動弁装置。
- コイル状に形成された複数の第2ばね(121 ,122 )が、同心状に並列配置されることを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の動弁装置。
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