JP3619137B2 - オイルボディ様またはシェル状ナノカプセルおよびその製造方法 - Google Patents

オイルボディ様またはシェル状ナノカプセルおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業の属する技術分野】
本発明は、オイルボディ様またはシェル状ナノカプセルおよびその製造方法、より詳細には、オイルボディ様ナノカプセル画分、または、菜種油、脂溶性ビタミン、魚油などの疎水性物質を包括(充填)することができるオレオシンリッチオイルボディの乾燥シェル状ナノカプセルおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
大豆は蛋白質に富むだけでなく、多量の油を含んでいる。わが国では、古来ダイズを重要な蛋白質給源として利用してきたが、近年は油糧種子として用いられ、主要な植物油原料となっている。
伝統的なダイズ利用食品である味噌、醤油、納豆、豆腐はわれわれの食生活に欠かせない食品である。味噌、醤油は豆の蛋白質、脂質が分解されペプチド、アミノ酸、脂肪酸、グリセリンおよびそれらの誘導体となり、風味を醸し出している。納豆においても蛋白質の60%が分解されているといわれている。一方、豆腐はダイズを水に入れて磨砕し加熱後、おからを除き、にがりやグルコノデルタラクトン(GDL)により凝固させて作る。この中にはダイズ中のほとんどの蛋白質と脂質が移行する。使用するダイズにもよるが、ほとんどの場合、乾物重で蛋白質55%、脂質35%を含んでいる。凍豆腐はそれを凍結後乾燥したものであり、正にこの含量である。肉や魚では加熱により油は遊離してくるが、豆腐、凍豆腐では油が遊離することはない。食感として多量の油が含まれているとはとても思えない食品である。
【0003】
ところで、大豆種子中で脂質は小胞体で形成されるスフェロゾームに蓄積しオイルボディを形成する。オイルボディは、リン脂質に囲まれた中性脂肪塊に蛋白質の鋲が打ち込まれた構造をもち、その構造により油滴球を安定に保つことができる。蛋白質はオレオシンと呼ばれ、多くの油糧種子で15〜26Kのものが見いだされ、たがいに類似のアミノ酸配列を持つことが明らかにされている。オレオシンは3つのドメインからなり、両親媒性のN端末部分と疎水性で逆平行β−シートとαヘリックスよりなる中央部分、そして両親媒性でαヘリックスよりなるC末端部分からなっている。大豆の場合は24Kと18Kのオレオシンが見つかっている。中央部は70残基前後の疎水性アミノ酸よりなり、この部分の大きさはほとんどのオレオシンで同じであり、分子量の違いはN端末、C端末部分の長さの違いによることが知られている。中央部の疎水性部分は針状となり脂質塊に突き刺さっていて、N,C末端部は表面のリン脂質層に半分は埋まり、半分は水中に面していると考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
未加熱の生豆乳では、オイルボディの周囲に7S・11S蛋白質やアレルゲン蛋白質が多量に付着している。このため、オイルボディは油脂を多量に含むにもかかわらず比重が重く、生豆乳を超遠心分離(156000×g、30分間)してもオイルボディはほとんど浮上しない。
また、多量の塩類(食塩等)や還元剤、アルカリ等を加えて7S・11S蛋白質を分離する方法はあるが、これらの方法ではオイルボディの回収率が非常に悪いか、もしくは純度が非常に低く、乾燥ナノカプセルシェル本体原料の製造方法としては実用的でなかった。
【0005】
オイルボディ製法の現状は以上の通りであり、従来技術では、オイルボディを効率的に分離・回収することは非常に困難であった。
そこで、本発明は、オイルボディを分離・回収した形態で提供すること、乾燥ナノカプセルシェル本体の原料を提供すること、さらにそれを油脂等の疎水性物質の安定化に利用することを目的とする。
また、本発明は、オイルボディ中心の中性脂質を他の疎水性物質と入れ替えることによる疎水性物質包括ナノカプセルの調製に用いることができるオレオシンリッチオイルボディの乾燥シェル状ナノカプセルの提供を目的とする。
従来技術として知られているマイクロカプセルは、粒子直径がマイクロメートル単位以上であり、粒子の存在を目で確認できる程に大きい。また、疎水性物質を内部に閉じこめる場合、その周りを固形油脂や多糖類などで覆うため、内容物に対する被服物質の比率が大きくなる。これらの問題を解決する手段として、疎水性物質をリン脂質で覆ったリポソームが開発された。リポソームは、直径数十から数百マイクロメートルであり、被服膜も非常に薄いため、上記問題を解決できたかに見えたが、リポソームは熱に非常に不安定であり、しかも、保存中に徐々に合一化し大きな粒子になっていくため、乳化安定性の面でも問題を抱えている。本発明は、熱安定性と乳化安定性に優れた微粒子カプセルを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
オイルボディとは、油糧種子中の中性脂質の貯蔵形態で中性脂質のまわりをリン脂質ならびにオレオシン等の蛋白質で取り囲まれた細胞内構造物である。本発明は、大豆本体で知られているような、蛋白質が油脂を取り囲んだ組織「オイルボディ」が食品加工後の油脂の安定性にも寄与していることを確認し、また、それを容易に分画・回収する方法を見出したことを基とするものである。
なお、本発明において、「オイルボディ様」とは、オイルボディの構造が抽出等の操作により一部変化を受けた可能性のあるものをいう。
【0007】
本発明は、オレオシン蛋白質を含んだ油糧種子、好ましくは大豆由来の、好ましくはオレオシン蛋白質を全蛋白質の10%以上含んだオイルボディ様ナノカプセル画分、またはその乾燥物を要旨としている。
【0008】
本発明は、オレオシン蛋白質を含んだ油糧種子、好ましくは大豆由来の、好ましくはオレオシン蛋白質を全蛋白質の10%以上含んだオイルボディ様ナノカプセル画分、またはその乾燥物であるオイルボディ様ナノカプセル画分から中性脂質が取り除かれたシェル状ナノカプセル、好ましくは疎水性物質包括用シェル状ナノカプセル、より具体的には菜種油、脂溶性ビタミン及び魚油などから任意に選ばれる1種以上の油脂包括用シェル状ナノカプセルを要旨としている。
【0009】
大豆のアレルゲン蛋白質には表1に示すようなものが知られている。それらアレルゲン蛋白質の中で少なくともGly m Bd 30Kを含まないものであり、その場合、本発明は、アレルゲン蛋白質(Gly m Bd 30K)を含まないオレオシン蛋白質を含んだ油糧種子、好ましくは大豆由来の、好ましくはオレオシン蛋白質を全蛋白質の10%以上含んだオイルボディ様ナノカプセル画分、またはその乾燥物であるオイルボディ様ナノカプセル画分から中性脂質が取り除かれたシェル状ナノカプセル、好ましくは疎水性物質包括用シェル状ナノカプセル、より具体的には菜種油、脂溶性ビタミン及び魚油などから任意に選ばれる1種以上の油脂包括用シェル状ナノカプセルである。
【0010】
【表1】
Figure 0003619137
【0011】
また、本発明は、原材料としてオレオシン蛋白質を含んだ油糧種子を用い、該原料を水に浸漬後、磨砕し、或いは粉砕後水に浸漬し、不溶物を分離して懸濁液を調製後これを60℃以上で加熱し、或いは60℃以上で加熱後に不溶物を分離して懸濁液を得、オレオシンの純度の高いオイルボディ様ナノカプセル画分を得ることを特徴とするオイルボディ様ナノカプセル画分の製造方法を要旨としている。
【0012】
加熱後、その溶液を遠心分離によって分画することによりオレオシン純度を上げることを特徴としており、その場合、本発明は、原材料としてオレオシン蛋白質を含んだ油糧種子を用い、該原料を水に浸漬後、磨砕し、或いは粉砕後水に浸漬し、不溶物を分離して懸濁液を調製後これを60℃以上で加熱し、或いは60℃以上で加熱後に不溶物を分離して懸濁液を得、その後その溶液を遠心分離によって分画することによりオレオシン純度を上げてオレオシンの純度の高いオイルボディ様ナノカプセル画分を得ることを特徴とするオイルボディ様ナノカプセル画分の製造方法である。
【0013】
また、本発明は、上記の方法により得られたオイルボディ様ナノカプセル画分から中性脂質を取り除くことを特徴とするシェル状ナノカプセルの製造方法を要旨としている。
【0014】
さらにまた、本発明は、上記の方法により得られたシェル状ナノカプセルから中性脂質を取り除くことを特徴とする、またはオイルボディ様ナノカプセル画分を乾燥し、その後中性脂質を取り除くシェル状ナノカプセルの製造方法を要旨としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
原材料は、オレオシン蛋白質を含んだ油糧種子であれば何でもよく、好ましくは大豆である。
【0016】
オイルボディは大豆中における形態であり、豆乳になった場合、どのようになるかはわかっていなかった。大豆を磨砕し水抽出した場合、オイルボディの大部分は蛋白質と結合し、脂質・蛋白質複合体粒子(直径380nm程度)を形成する。一方、1M NaCl存在下では一部のオイルボディが分離できる。分離されたオイルボディの大きさは直径100〜400nm程度の球状体であり、大豆中のものと一致している。
豆乳は大豆の水抽出物を加熱して調製する。65〜80℃での加熱により、脂質・蛋白質複合体粒子の破壊が起こり、80〜90℃での加熱によりオイルボディ様成分の遊離が起こる。65〜80℃はβ−コングリシニンの変性温度であり、この蛋白質の変性が脂質・蛋白質複合体粒子の破壊を引き起こし、グリシニンの変性温度である80〜90℃でオイルボディ様成分の遊離が起こった。このことは、オイルボディ様成分がグリシニンと結合し、さらにβ−コングリシンが仲立ちして脂質・蛋白質複合体粒子粒子を形成していることを示すと考えられる。加熱後遊離したオイルボディ様成分は、脂質、リン脂質およびオレオシン蛋白質を含んでいる。この変化の様子を図1に模式的に示した。
【0017】
また、DSC熱分析装置(米国パーキンエルマー社 Pyris−1型装置)を用い、オレオシン蛋白質の熱変性特性を調べた結果、変性点は130℃付近にあることが確認された。したがって、100℃以下の加熱によって調製される豆乳では、変性が起こっていない。豆乳の調製でオイルボディに大きな変化が起こっているとは考えにくく、加熱前とほぼ同様の形態をとっていると考えられる。そのため、豆乳中の脂質はオイルボディ様成分のシェル内部においてきわめて安定に存在し、長期保存や再加熱などによって分離浮上することはない。しかも、オイルボディー様成分自体、長期間安定して水に分散し、合一化して浮上することはない。
このことは、次の実験で確認した。すなわち、タッチミキサーを用い、オイルボディー様成分が豆乳中に存在していた時の同じ濃度になるように0.02%アジ化ナトリウム溶液(防腐剤)に分散させ、吸光光度計を用いて波長600nmで濁度変化を調べた。オイルボディーが合一化して浮上すれば濁度は低下するが、1ヶ月経過後でも、濁度の低下は全く見られなかった。
【0018】
《オイルボディ様成分の製造方法》
生豆乳を加熱していくと75℃付近で、豆乳中に比重の軽い巨大粒子が形成された。この巨大粒子を調べたところ、それはオレオシン蛋白質を主体とするオイルボディ様成分であり、しかもこの巨大粒子は、緩やかな遠心分離(6200×g、30分間)で浮上し、7S・11S蛋白質並びにアレルゲン蛋白質をあまり含まない画分として回収された。
図2に、75℃加熱で観察された豆乳中の脂質・蛋白質複合体粒子の粒度分布を光散乱型レーザー光粒度分布測定装置(米国コールター社 LS−230型装置)で測定した結果を示した。すなわち、75℃、10分加熱で、直径6〜10マイクロメートルの巨大な粒子が形成された。
図3は、65〜90℃でそれぞれ5分間加熱した時の粒度分布の変化を示したものである。未加熱豆乳で見られた0.38と1.6マイクロメートルの粒子が温度上昇と共に巨大粒子に移行し、90℃加熱では0.38マイクロメートルの脂質・蛋白質複合体粒子と0.07マイクロメートルの7Sβサブユニット・11S塩基性サブユニット複合体粒子に変化したことが確認された。
豆乳の加熱温度を上げる(もしくは長時間加熱する)と、巨大粒子は消失したが、7S・11S蛋白質やアレルゲン蛋白質をほとんど含まないオレオシン蛋白質主体のオイルボディ様成分が、12000×g、30分間の遠心分離で浮上画分に回収できた。
すなわち、高温加熱処理は、オイルボディ様成分の純度を高める為には有効であるが、回収に要する遠心分離条件が多少悪化する。一方、低温加熱処理はオイルボディ様成分の純度は多少低下するが、緩やかな遠心分離条件で回収できる。また、いずれの場合も、豆乳中オイルボディのほぼ100%が浮上画分として回収された。
巨大粒子が形成される条件は、加熱温度と時間との関係で変化するが、最適条件は70〜80℃、2〜15分間加熱であった。より低温であれば長時間加熱で、また、より高温であれば短時間加熱で巨大粒子が形成される。ただし、前述のように、オイルボディ様成分を浮上画分として回収するためには、必ずしも巨大粒子を形成させる必要はなく、豆乳を60℃以上で加熱することでこれらを浮上画分に回収できる。
【0019】
オレオシンリッチオイルボディの乾燥シェル状ナノカプセルの製造方法について説明する。
▲1▼生豆乳を60℃以上で加熱、好ましくは5分以上加熱することで、オイルボディ様成分は脂質・蛋白質複合体粒子から遊離する。
▲2▼95℃、5分で7S、11Sは変性する。その溶液を遠心分離によって分画することで、アレルゲン蛋白質、7S蛋白質、11S蛋白質などがついていないオレオシン純度の高いオイルボディを得ることができる(図4、レーン4)。粒径は1マイクロメートル以下であり、粒度分布の中心値はおよそ380nmである。オレオシンの変性温度は130℃付近である。
▲3▼得られたオイルボディにはオレオシン以外の蛋白質がほとんど含まれず、結果としてアレルゲン蛋白質として知られるGly m Bd30kを除くことができた。
▲4▼75〜80℃、5分では7S、11Sはほぼ未変性のまま、オイルボディを分離することができる。
▲5▼得られたオイルボディから油脂を取り除き、その後シェル状のものはナノカプセルとして菜種油、脂溶性ビタミン、魚油などの疎水性物質を包括することができる。疎水性物質の入れ替えは可逆的に行える。
【0020】
《オイルボディ製造副産物の用途拡大》
オイルボディ様成分調製の際の副産物として大豆分離蛋白質が出る。これは、加熱豆乳を遠心分離して得られる浮上画分以外(上澄画分と沈殿画分)であり、このようにして得られた分離大豆蛋白質には、油脂はほとんど含まれていない。
豆乳を高温加熱処理した場合、7S・11S蛋白質は熱変性を起こし、用途の制限(利用価値の低下)をもたらす。一方、低温加熱処理の場合、これらの大豆蛋白質は大きな変成を受けていないため、オイルボディ様成分の分離後は、大豆分離蛋白質として種々の用途に利用できる。
この際いずれの場合でも、大豆に含まれる各種不快味成分はオイルボディ様成分と共に浮上画分に移るため、分離された大豆蛋白質の風味は格段に改善された。
【0021】
【実施例】
本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0022】
実施例1
(オイルボディ様成分の調製、その1)
1.大豆種子40gを洗浄後,200mlビーカーに入れ,150mlの目盛りまで水を加え,冷蔵庫(4℃)にて一夜浸漬した。吸水大豆重量は81.8gであった。
2.吸水大豆に水を加え総重量300gとし,ミキサーで2分間磨砕し,少量の消泡剤を加え,更に2分間磨砕した。
3.ブフナーロートにカット棉を広げ,上記磨砕物を吸引ろ過し,未加熱豆乳を得た。豆乳量は230mlであった。
4.未加熱豆乳を500ml容三角フラスコに移し,沸騰水中で加熱した。75℃達温後、75℃に保ちながら10分間加熱し,冷水で室温(25℃程度)まで冷却し豆乳を得た。
5.豆乳(約230ml)を6200×g,30分間遠心分離し,浮上画分(クリーム)を回収した。大豆種子中大豆油の約85%がこの浮上画分に回収されたことから、この時のオイルボディー様成分の回収率は約85%であった。
【0023】
実施例2
(オイルボディー様成分の調製、その2)
実施例1の条件で、工程4の加熱を95℃、工程5の遠心分離を25,000×g、30分間とし、他は同様の方法によりオイルボディ様ナノカプセルを調製した。この時のオイルボディー様成分の回収率はほぼ100%であった。
この時、遠心分離により浮上画分(オイルボディ様成分)以外の上澄画分と沈殿画分が、油脂をほとんど含まない分離大豆蛋白質として得られる。大豆に含まれる各種不快味成分はオイルボディ様成分と共に浮上画分に移るため、分離された大豆蛋白質は風味の改善された大豆蛋白質であった。
【0024】
実施例3
(ナノカプセルシェルの調製)
1.実施例1もしくは実施例2で得たオイルボディー様成分(浮上画分)を水に分散し,液体窒素中に少量ずつ滴下して急速凍結させた後,真空凍結乾燥した。
2.n−ヘキサンで脱脂し、ナノカプセルシェルを得た。
【0025】
《SDSゲル電気泳動によるナノカプセルシェルの蛋白質組成解析》
各種条件で生成、分離した成分をSDSゲル電気泳動(分離ゲル濃度12.5%)にかけ、その結果を図4に示した。
図4のSDSゲル電気泳動の各レーンの成分は以下のとおりである。
1.95℃、5分間加熱豆乳を超遠心分離(156000×g、30分間)して得た上清画分
2.大豆種子から、0.1M NaCl、1% 2−メルカプトエタノール(還元剤)並びにアルカリ(pH9)で処理し、超遠心分離(156,000×g、30分間)して得たオイルボディー画分
3.未加熱豆乳を超遠心分離(156000×g、30分間)して得たオイルボディー様成分
4.95℃、5分間加熱豆乳を遠心分離(156000×g、30分間)して得たオイルボデー様成分
5.75℃、5分間加熱豆乳を遠心分離(6,200×g、30分間)して得た浮上画分
6.75℃、10分間加熱豆乳を遠心分離(6,200×g、30分間)して得た浮上画分
7.75℃、15分間加熱豆乳を遠心分離(25,000×g、30分間)して得た浮上画分
8.95℃、5分間加熱豆乳
図4中α’、α、β、Acidic、Basic、G30K、O24K、O18Kは以下のとおりのものを表している。
α’,α,β:βコングリシニンタンパク質の各サブユニット
Acidic,Basic:グリシニンタンパク質の酸性及び塩基性サブユニット
G30K:Gly m Bd 30Kタンパク質
O24K,O18K:オレオシンタンパク質
【0026】
図4に示す通り、浮上画分(クリーム)を脱脂して得られた物が、オレオシン蛋白質を含んだ大豆種子由来のオイルボディ様ナノカプセルシェル画分であることを確認した。また、レーン4並びにレーン5のオレオシン含量はそれぞれ、オイルボディ様ナノカプセルシェル全蛋白質の約94%と40%であった。
オレオシン含量94%のナノカプセルシェル10mgに大豆油300mgを加え水に分散させ、その乳化安定性を濁度変化で調べた結果、脱脂前のオイルボディー様成分と同様、一ヶ月経過後でも濁度低下は見られなかった。
【0027】
【発明の効果】
油糧種子由来のオイルボディ様ナノカプセルを提供することができる。
疎水性物質の安定化に利用するシェル状ナノカプセルを提供することができる。
オイルボディ中心の中性脂質を入れ替えることによる疎水性物質包括ナノカプセルを提供することができる。
アレルゲン蛋白質Gly m Bd30kを含まないオイルボディ様ナノカプセルを提供することができる。
オイルボディを効率的に分離・回収するオイルボディ様ナノカプセルの製造方法を提供することができる。風味の改善された油糧種子由来の蛋白質を副成するオイルボディ様ナノカプセルの製造方法を提供することができる。また、オイルボディ様ナノカプセルからのシェル状ナノカプセルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】大豆種子の水抽出液中の脂質・蛋白質複合体粒子が加熱されて豆乳になる過程での変化(模式図)を示す図面である。
【図2】75℃加熱における豆乳粒度分布の経時変化を示す図面である。
【図3】各温度5分間加熱時の豆乳粒度分布の変化を示す図面である。
【図4】各種条件下で生成、分離した成分のSDSゲル電気泳動図のデジタル写真を印刷した図面である。レーン1:95℃、5分間加熱豆乳を遠心分離(156000×g、30分間)して得た上清画分
2:大豆種子中のオイルボディー
3:未加熱豆乳を遠心分離(156000×g、30分間)して得た浮上画分4:95℃、5分間加熱豆乳を遠心分離(156000×g、30分間)して得た浮上画分
5,6,7:各種条件で調整した浮上画分に各種大豆タンパク質が混入した例。
8:95℃、5分間加熱豆乳
α’,α,β:βコングリシニンタンパク質の各サブユニット
Acidic,Basic:グリシニンタンパク質の酸性及び塩基性サブユニット
G30K:Gly m Bd 30Kタンパク質
O24K,O18K:オレオシンタンパク質

Claims (11)

  1. 実質的に7Sや11S蛋白質を含まない、オレオシン蛋白質を含んだ大豆由来のオイルボディ様ナノカプセル画分の乾燥物。
  2. オレオシン蛋白質を全蛋白質の10%以上含む請求項1のオイルボディ様ナノカプセル画分の乾燥物。
  3. 加熱処理と遠心分離処理のみにより得られる、オレオシン蛋白質を含んだ大豆由来のオイルボディ様ナノカプセル画分から中性脂質が取り除かれたシェル状ナノカプセル。
  4. オレオシン蛋白質を全蛋白質の10%以上含む請求項のシェル状ナノカプセル。
  5. 疎水性物質包括用に用いるためのものである請求項またはのシェル状ナノカプセル。
  6. 疎水性物質が菜種油、脂溶性ビタミン及び魚油などから任意に選ばれる1種以上の油脂である請求項のシェル状ナノカプセル。
  7. アレルゲン蛋白質(Gly m Bd 30K)を含まないものである請求項ないしいずれかのシェル状ナノカプセル。
  8. 原材料としてオレオシン蛋白質を含んだ大豆を用い、該原料を水に浸漬後、磨砕し、或いは粉砕後水に浸漬し、不溶物を分離して懸濁液を調製後これを85℃以上で加熱し、或いは80℃以上で加熱後に不溶物を分離して懸濁液を得、オレオシンの純度の高いオイルボディ様ナノカプセル画分を得ることを特徴とする、オイルボディ様ナノカプセル画分の製造方法。
  9. 加熱後、その溶液を遠心分離によって分画することによりオレオシン純度を上げることを特徴とする請求項のオイルボディ様ナノカプセル画分の製造方法。
  10. 請求項またはの方法により得られたオイルボディ様ナノカプセル画分から中性脂質を取り除くことを特徴とするシェル状ナノカプセルの製造方法。
  11. 請求項またはの方法により得られたオイルボディ様ナノカプセル画分を乾燥し、その後中性脂質を取り除くことを特徴とするシェル状ナノカプセルの製造方
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