JP3617326B2 - 吸音材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は吸音材に関する。
【0002】
【従来の技術】
1, 近年、車両による車外加速騒音及びアイドル車外音で社会問題化し規制の動きがある。この対応として、エンジンやトランスミッション回りを吸音材のついた遮蔽カバーで覆っていた。
2, この吸音材としては、ガラスウール、フェルト、ウレタンフォーム、メラミンフォーム、ポリエステル繊維等種々の材料が用いられている。
3, しかし、使用するに当たっては、環境が車両の室内とは異なり、100℃以上の高温環境や、水、あるいはエンジンオイル・ギヤオイル、軽油・ガソリン等の油に晒される厳しい環境にある。
4, この為、吸音材として単体では使用されず、吸音材表面に補強、あるいは防水等の処置を施している。
5, フェルト材は吸音特性に優れており、吸音材として有力な材料であるが、吸水性が大であるため、配設個所を特定されていた。
6, そこで、エンジン回りに配設する吸音材としてのフェルトには、水やエンジンオイル・ギヤオイル・軽油・ガソリン等に対して、表面に撥水・撥油処理したポリエステル不織布を配設して対応していた。
【0003】
7, しかしながら、撥水・撥油処理した不織布で吸音材(フェルト)を被覆するだけでは、車検や定期点検時での高圧洗車による水の浸入や、エンジンオイルや軽油の浸透を完全に防ぐことができなく、この種吸音材の使用部位が限定されてしまった。
8, この対策として、図4に示すような、フェルト3の上面にアルミ箔7を配設して吸音材1とし、防水、防油処置を施している。
9, このように構成されている吸音材の音の周波数による吸音率を図5に示すグラフによりみると、アルミ箔を付けた吸音材の吸音率(実線)は低い吸音率を示している。
10, また、破線で示す撥水・撥油処理不織布付のフェルト材の吸音率は、1250Hz以上の吸音率は0.8以上と高吸音率を示すが、車両として必要な800〜1000Hzの吸音率が低くなっている。
【0004】
11, そこで、吸音材の表面層に孔を開けたシ−トを配設して、低周波数の帯域の音の吸音率を高める構成が、特開昭60−135997号公報、特開平4−9899号公報に開示されている。
12, しかし、この吸音材は、孔から水や油が吸音材に浸透するので、自動車のエンジン回りには配設することが出来なかった。
13, その他、ボ−ド基材に孔開きのレジンペ−パ−を配設して、補強と共に熱処理時に発生する反応ガス抜きを行わせる内装材が実開平5−56429号公報に記載されている。
しかし、この内装材のガス抜き孔の口径は5mm〜8mmと大きく、水やオイルの内部への侵入を防止する個所に使用するものではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題点を解決するために、本発明の吸音材は、撥水・撥油処理ポリエステル不織布とフェルト吸音材の間に孔の開いた熱可塑性樹脂フィルムを配設し、高吸音率の周波数帯を低周波へ移動させると共に、熱処理時に発生する反応ガスを抜き、かつ水やエンジンオイル、ギヤオイル、軽油、ガソリン等のフェルトへの水・油の浸透を防止できる吸音材を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の吸音材は、吸音部材と撥水、撥油処理が施されている合成樹脂不織布との間に合成樹脂フイルム層を配設してなり、合成樹脂フイルム層は全面に小孔を穿孔する構成を具備する。
また、合成樹脂フイルム層に穿孔される小孔は、孔径0.1mm以下として、空気抜き、および吸音周波数を低周波数とすると共に、小孔として水の浸入を防止する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の吸音材の断面図である。
吸音材10は吸音効果を有するフェルト等よりなる吸音部11と、吸音部11の上面を被覆する合成樹脂フイルム13、および、合成樹脂フイルム13を上面に被覆した吸音部11全体を被覆する合成樹脂不織布15よりなる。
吸音材11は天然綿、化学繊維、麻等を混合したフェルト材よりなる。
【0008】
合成樹脂フイルム13は、例えば熱可塑性のポリエステルフイルム、あるいはナイロンフィルムよりなり、ほぼ25μmの厚さのフイルムである。合成樹脂フイルム13は、その全面に極微小な孔130が穿孔されている。孔130はその孔径を0.1mm以下としている。
合成樹脂不織布15は、例えば低融点樹脂成分を含浸させたポリエステル不織布よりなり、通気性を有している。
不織布15には撥水・撥油処理を施している。
【0009】
次に、上記素材により吸音材10の形成方法を、図3を参照して説明する。
(1) 面密度800g/m2の天然綿、化学繊維、麻等の混合フェルト材から指定の大きさのフェルト材11を切り出す。
(2) 目付量130g/m2の低融点樹脂成分を含浸させ、表面に撥水・撥油処理したポリエステル不織布を、フェルト材11の下面を被覆する大きさの第1の不織布15Aと、フェルト材11の上面を被覆する大きさの第2の不織布15Bを切り出す。ポリエステル不織布15A,15Bに含浸する低融点樹脂は130℃で溶解する特性を有するものである。
さらに、径0.1mmの孔130を全面に穿孔した25μ厚さの熱可塑性ポリエステルフィルム13を指定の寸法に切り出す。
(3) 下型20の上に第1の不織布15Aを介してフェルト材11を載置する。フェルト材11の上(表)面に熱可塑性ポリエステルフィルム13を載置し、熱可塑性ポリエステルフィルム13の上に第2の不織布15Bを積層する。
(4) 積層体を挾んで上型30を閉め、金型温度200℃で1.5〜2分間、加熱圧縮成形を行う。
(5) 外周面を打ち抜き加工して図1に示す成形吸音材10を形成する。
ここで、ポリエステル不織布15A,15Bに含浸する低融点成分は加熱圧縮成形工程時に溶融して、不織布と熱可塑性ポリエステルフィルム13との接着剤となる。
【0010】
また、ポリエステルフィルム13に穿孔する孔130は、フェルト材11を熱成形するときに、フェルト材に混入してあるフェノール樹脂粉末が熱により反応硬化してホルムアルデヒド等のガスを発生するが、この発生ガスを抜いて逃す。この孔がないと、発生したガスがフェルト材11とポリエステルフイルム13間に溜り、成形表面が波打ってしまう。
ポリエステルフイルム13の小孔130から抜け出たガスは通気性を有する不織布15を通って外気に放出される。
孔130は、孔径が0.1mmと小さいので、水や油が侵入する危惧がない。また、熱可塑性ポリエステルフィルム13の孔130は不織布15の組織間隙を通ってフェルト材11に連通し、吸音率のピークを低周波数に移動させる。
【0011】
ここで、孔を穿孔したポリエステルフイルム13をフエルト11と不織布15との間に介在させた本発明に係る吸音材11と、フェルトに不織布を積層し、さらに上面を水、油の侵入を防止するアルミ箔で被覆した従来の吸音材との、吸音効果、吸音周波数と吸音率の関係を図2によりみる。このグラフで実線は本発明に係る吸音材、破線は従来の吸音材の吸音率を示している。このグラフが示すように、800から1250Hzの低周波数の範囲において、従来の吸音材に比較して本発明の吸音材は高い吸音率を示している。
以上説明したように、本実施の形態に示す吸音材10はポリエステルフイルム13に孔が穿孔されているので、熱成形時における反応ガスは効率良く抜け、成形歪を起こすことがない。さらに、この孔は小径であって、水、油が侵入出来ないので、水、油のフェルト11への侵入を確実に防止でき、さらに、穿孔による吸音率のピ−クを低周波数に移動させることが出来る。
【0012】
【発明の効果】
本発明は、撥水・撥油処理ポリエステル不織布とフェルト吸音材の間に孔開き合成樹脂フィルムを配設することで、車両として必要な800〜1000Hzの周波数で吸音効果を持つことができる。
また、フイルムの小孔は熱成形時に発生するガスを抜くと共に、微小孔のため水やエンジンオイル、ギヤオイル、軽油、ガソリン等が吸音材に浸透することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の吸音材の断面図
【図2】本発明の吸音材の吸音効果を示すグラフ
【図3】本発明の吸音材の成形方法の説明図
【図4】従来の吸音材の断面図
【図5】従来の吸音材の吸音効果を示すグラフ
【符号の説明】
10 吸音材
11 フェルト
13 合成樹脂フイルム
15 不織布
130 小孔
Claims (2)
- 吸音部材と合成樹脂不織布を積層した吸音材において、
吸音部材と合成樹脂不織布との間に合成樹脂フイルム層を配設し、
合成樹脂不織布は撥水、撥油処理が施されていると共に、合成樹脂フイルム層には全面に小孔を穿孔してなる吸音材。 - 合成樹脂フイルム層に穿孔される小孔は、孔径0.1mm以下である請求項1記載の吸音材。
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