JP3616265B2 - イオン交換膜電解槽 - Google Patents

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  • Electrolytic Production Of Non-Metals, Compounds, Apparatuses Therefor (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、陽イオン交換膜を隔膜として用いるアルカリ金属塩、特に塩化ナトリウム等の電解に用いられるイオン交換膜電解槽に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルカリ金属塩水溶液の電解による水酸化アルカリ金属の製造、特に塩化ナトリウム水溶液の電解により、水酸化ナトリウム及び塩素を製造する方法として、陽イオン交換膜により、陽極室と陰極室とを区分し、陽極室には陽極を、陰極室には陰極をそれぞれ存在させ、陽極室にアルカリ金属塩水溶液を、また陰極室にアルカリ金属水酸化物水溶液を満たして、両電極間に直流電流を通し、電解を行う方法及びそれに用いられるイオン交換膜電解槽は、周知である。
【0003】
アルカリ金属塩(以下塩化ナトリウムを代表として説明するが、その他のアルカリ金属塩に対しても、当業者は、容易に適用し得るものである)の電解にあっては、理論上、理論電解電圧をかけることにより、所謂ファラデーの法則に従って、消費した電力に相当する水酸化ナトリウム、塩素及び水素が得られる。しかしながら、一般に電極の過電圧、イオン交換膜の電気抵抗、電極間に存在する塩素ナトリウム水溶液や水酸化ナトリウム水溶液の電気抵抗等により、電極間電圧の上昇を来たし、電力の損失を生ずる。
【0004】
そこで、電極やイオン交換膜の改良が種々行われているが、併せて電極間距離を小さくする試みも種々なされており、陽・陰両電極で薄い固体電解質膜を実質的に挟持させた形の電解槽、所謂ゼロ・ギャップ電解槽も提案されている。本発明も、ゼロ・ギャップ電解槽の改良に係わる発明である。
【0005】
ゼロ・ギャップ電解槽にあっては、固体電解質である陽イオン交換膜が、金属である電極間に挟まれている態様、或いは、電極活物質を陽イオン交換膜表面にコートし、これを集電体で挟持する態様などがあるが、いずれにしても有機物である陽イオン交換膜と金属とが接触する構造であり、電解槽運転時の圧力変動等による振動等により陽イオン交換膜に部分的に破壊強度を超える力が加わったり、或いは表面摩擦による陽イオン交換膜の摩耗損傷を生じたりするトラブルが発生する。
【0006】
また、工業的規模の大型電解槽として、陽・陰両電極を、大面積に亘って陽イオン交換膜1枚の厚さに相当する極めて僅かな間隙、例えば200μm程度の間隙をあけて、平坦で且つ平行に保持することは相当に困難でもある。
【0007】
このため、陽イオン交換膜を挟持する少なくとも一方の部材に弾力を持た せ、陽イオン交換膜の破損につながる応力を吸収しようとする試みもなされ、特公昭63−53272号、特公平5−34434号等が提案されている。これらの提案のうち、例えば特公昭63−53272号による発明にあっては、イオン交換膜の両表面に陽・陰電気触媒粒子をそれぞれ貼着してイオン交換膜と陽・陰両電極とを一体化し、その一方の電極層側には比較的剛性の粗目スクリーンを、他方の電極槽には圧縮時の1.5倍以上の体積を有する弾力的圧縮性マットをそれぞれ集電体として設け、該マットは金属ワイヤからなる一連の螺旋状コイルの織物を用いるアルカリ金属塩化物水溶液の電解槽及びイオン交換膜とこれを挟んで一方の表面に比較的剛性の粗目スクリーン電極と他方の表面に可撓性或いは柔軟性の薄いスクリーン電極とを設け、該薄いスクリーン電極の裏側に圧縮時の1.5倍以上の体積を有する弾力的圧縮性マットを集電体として設け、該マットは金属ワイヤからなる一連の螺旋状コイルの織物であるアルカリ金属塩化物水溶液の電解槽を提案している。
【0008】
これらのうち、前者の構造は陽イオン交換膜自体に電極活物質を貼着するため、製造が難しく、しかも、活物質の脱落や劣化と陽イオン交換膜の寿命とが必ずしも一致せず、不経済でもある。
【0009】
また、後者は、原理的には興味のもたれる構造であるが、工業的電解槽としては、各電極と集電体との電気的接続の問題、即ち、給電体と弾力的圧縮性マット間及び該マットと電極スクリーン間の各接触電気抵抗や電極全面へ均一に電流が流れるかなどの問題があり、実用上、具体的に用いる構造については今後更に開発されなければならなかった。その具体的提案の一つとして、特公平5−34434号において少なくとも一方の電極は、0.3mm以下の厚みであり、1ヶ所の孔の面積が0.05mm〜1.0mmの多数の孔を有し、且つ開孔率が20%以上の多孔体電極面が、0.1〜1mmのワイヤーの集合体よりなり空隙率30%以上の集電体によって裏打ちされたイオン交換膜法アルカリ金属塩電解の電解槽が示されている。
【0010】
以上のような技術的状況下で、現実の工業装置の残された問題は、長期間の運転においてイオン交換膜が機械的に劣化し、電流効率の低下やブリスター(イオン交換膜面に生ずる水泡)の発生を見ることであり、著しい場合にはイオン交換膜表面が摩耗し、破損することさえ起こることもあった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、ゼロ・ギャップ電解槽におけるイオン交換膜の耐久性に付いて種々検討を行った。その結果、まず、イオン交換膜を挟持する圧力の影響が大きいことを確認した。しかしながら、単に挟持圧力を変化させるだけでは、抜本的な解決策は得られず、その解決は容易ではなかった。種々検討の結果、大型の電解槽にあっては、電解時に剛体である一方の電極(通常陽極)がリブ間で、僅かながら落ち込むこと、及び他方の電極(通常陰極)が、その落ち込みに十分に追従できないため、電極リブが存在する部分のみが強く当たり、逆に陽極側のリブとリブとの間では、むしろ電極間に隙間を生ずるという知見を得た。このため両電極で強く挟持されている部分ではイオン交換膜面に電解液が十分に供給されず、部分的発熱等による膜の劣化が生じるものと考えられた。
【0012】
このような陽極の落ち込みに対する陰極の追従性の悪さは、従来の軟剛多孔板陰極等においては、ほとんど見られなかった現象であり、陽極の僅かな落ち込みに柔軟であり、且つ弾力マットで押し付けられている陰極が、この落ち込みに追従しきれないという知見は、まさに驚くべきことであった。
【0013】
その原因を更に検討した結果、従来陰極として用いられていた軟鋼、又はニッケル製多孔板(主として金網)に比べ、これに陰極活物質である含硫黄ニッケルメッキや錫、コバルト等とニッケルとの合金メッキ等の水素過電圧低減のための陰極活物質を軟鋼やニッケルにコートした金属多孔板陰極は、軟鋼陰極等に比べて剛性が増し、前記追従性を減殺するものであることがわかった。
【0014】
そこで、剛体電極の落ち込みに陰極を十分追従させるべく、弾力的圧縮性マットの弾力を大きくし、陰極の押し付け圧力を強くしたところ、予想に反して弾力的圧縮性マットの該電極へ接触する部分のみがイオン交換膜へ強く押し付けられる結果、当該部分においてイオン交換膜にブリスターが生じるのである。
【0015】
そこで、本発明はゼロ・ギャップ電解槽において、電極好ましくは陰極として、軟鋼、ニッケル、チタン、又は、これらの合金等の電極基材上に電極活物質を一部又は全体にコートした電極を用いるゼロ・ギャップ電解槽において、イオン交換膜の性能を維持することを目的とし、特に、柔軟な電極の性質と弾力的圧縮マット(以下弾性マットという)集電体とのバランスを図ることを課題として更に検討を繰り返した結果、本発明を完成するに至った。
【0016】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は陽イオン交換膜で区分された陽極室と陰極室とよりなり、陽極室には陽極が、陰極室には陰極がそれぞれ存在し且つ両電極は、イオン交換膜を介して近接対峙する構造であって、一方の電極は一つの孔の面積が0.05〜1.0mmである多数の孔を有する開孔率が20%以上の多孔体で、その曲げ柔さが0.05mm/g以上の柔軟な多孔板であり、他方の電極は剛体多孔板であり、前記柔軟な多孔板電極は、線径0.02〜0.09mmの金属線2〜8本からなる線束を用いて織成しクリンプした金属網を複数枚重ねたことにより得られる、50%圧縮変形時の反発力が30〜50g/cmであり且つ20%圧縮変形時の反発力が10〜30g/cmの弾性を有する金属線集合体よりなる弾性マットにより、他方の電極へ20〜60g/cm の圧力で押し付けられていることを特徴とするイオン交換膜電解槽である。
【0019】
本発明の特徴は、上記の各構成が組合せられることにより、イオン交換膜の劣化を生ずることなく、長期間運転し続けることが可能となる。更に具体的には、電解槽の運転時に剛体電極が、例えば2〜3mm程度の落ち込みを生じた場合であっても、他方の電極がそれに十分追従し、電解槽通電面の実質的全域に亘ってゼロ・ギャップが保たれていること、それにもかかわらず、イオン交換膜表面の摩耗損傷がほとんどなく、しかもイオン交換膜の全面に亘ってほぼ均一に電気を流すことができること、及び電極とイオン交換膜との接触面に部分的に電解液の供給が滞ることがないため、イオン交換膜のローカルヒートやブリスターの発生もないのである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を更に具体的に説明する。
【0021】
本発明は、所謂ゼロ・ギャップ電解槽に関する発明であって、一般的に構造を概説すると、一方の電極は剛体多孔板であり、陽イオン交換膜を挟んで他方の電極は、特定の柔軟な多孔板電極であって、該柔軟な多孔板電極は更に特定の金属集合体よりなる弾性マット集電体によってイオン交換膜と共に剛体多孔板電極側へ押し付けられている。
【0022】
図1に本発明の電解槽の構成を示す。図1は、複極式電解槽の一つのセルを開いて示したものであるが、単極式電解槽についても同様に適用することが可能である。
【0023】
図中1、1’は単位セル枠であり、一般に軟鋼等の金属製であるが電解液に耐久性の強化プラスチック等であってもよい。各単位セルは、背面隔壁2、2’によって隣のセルと区画される。背面隔壁も一般に金属製であり、塩化ナトリウム水溶液の電解にあっては、塩素ガスが発生するため、通常はチタン材等で、セル枠部分と共に内張されている。複極電解槽にあっては、各隣のセルより電気が供給され、背面隔壁を通して陽極室リブ3から陽極4に導かれる。本図にあっては説明上陽極を剛体多孔板として示すが、勿論陰極であってもよい。陽極多孔板は通常チタン基材上に陽極活物質として白金属酸化物又は、これに他の金属酸化物を混合又は混晶としてコートしたエキスパンドメタル又は網状物であり、当業者間によく知られた、所謂普通の形状安定陽極である。5は陽イオン交換膜であり、バーフルオロカーボン骨格を有し、側鎖に陽イオン交換基、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、りん酸基等或いはこれらの混合基が存在するナフィオン(商品名)等と呼ばれるものである。陽イオン交換膜5.単位セル枠1及び背面隔壁2によって区画され、中に陽極4が存在する空間が陽極室である。陽イオン交換膜を介して陽極室の反対側には、柔軟な陰極6.次いで弾性マット7があり、更に必要に応じて剛体多孔板である陰極集電板8が存在していてもよい。この陰極集電板を用いないで、背面隔壁に至るまでの間を弾性マットで埋めることも可能である。特に陰極室の厚さの薄い、即ちイオン交換膜と背面隔壁との間隔が20mm以下の如く薄い場合には有効である。しかし、一般的に液や気泡の流路を十分確保する上から、或いは陰極全面に亘って均一に電流を分布させる意味からは該集電板を用いるのが好ましい。
【0024】
なお、単位セル枠1’、背面隔壁2’及び陽イオン交換膜で区画され、中に陰極6、弾性マット集電体7等が存在する空間が陰極室である。陽極室、陰極室には、それぞれ電解液の給排管や電解に伴い発生するガスの排出口等が設けられているが、当業者が容易に理解し得るものであるから図示しない。
【0025】
通常ゼロ・ギャップ電解槽を用いる塩化ナトリウム水溶液の電解にあっては、陰極室内圧を陽極室内圧より10〜100cm水柱程度高く保ち、陽イオン交換膜が液圧により陽極面に押し付けられた状態で運転するのが電解電圧を低く保つ上で好ましい。この僅かな圧力差によって剛体多孔板である陽極が図1の点線で示すような落ち込みを生ずる場合があり、特に陰極活物質をコートした陰極を用いる従来のゼロ・ギャップ電解槽では、陰極がこれに追従できず、9で示す部分では、陽・陰極はイオン交換膜を挟持する状態とはならず、両電極間に間隙を生じていたのである。この状態にあっては、両電極間に存在する解質溶液分の電気抵抗が加算され電解電圧の上昇を来たす他、陽極側リブ3の存在する部分の陽極面で、陰極の押圧、延いては弾性マット7による押圧を全て受け止めることになり、当該部分の接触圧が過大となり、陽イオン交換膜の損傷や早期の劣化を招くのである。
【0026】
又、弾性マットとして、ニッケルワイヤ製のコイル状物等を用いることにより、材質の剛性と構造上からバネ定数を大きくすることにより常時柔軟な陰極をイオン交換膜を介して強く、例えば50g/cm以上の力で陽極に押しつけておくことも考えられるが、柔軟な陰極自体が陰極活物質でコート、例えば含硫黄ニッケルコートやニッケル合金メッキコートされている場合等は該コーティングの影響により、意外に柔軟性を失っておりやはり前期の追従性は十分ではない。勿論、弾性マットのバネ弾性圧力を更に高く、例えば200g/cm程度とすれば前期追従性は認められるけども、併せて陽極のリブが存在する部分でのイオン交換膜狭持圧が過度に大きくなり、当該部分でイオン交換膜への電解液の供給不足や、著しい場合にはイオン交換膜の摩耗、破損が生じる恐れがある。
【0027】
そこで、本発明は、柔軟な電極として、一つの孔の面積が0.05〜1.0mm、好ましくは0.1〜0.5mmである多数の孔を有する開孔率20%以上、好ましくは20〜40%の多孔体で曲げ柔さが0.05mm/g以上、好ましくは0.1mm/g〜0.8mm/gである多孔体を用いる。孔の面積が上記範囲より大きいと電流が電極面に均一に流れなくなるばかりか、裏面の弾性マットの圧力をも均一に受けられず、著しい場合は開口部に弾性マットを構成する金属繊維端が突出し、イオン交換膜を損傷する可能性もある。逆に0.05mmよりも小さいときは、電解により生ずる気泡を除去することが困難となる。
【0028】
また、開孔率が20%以下では、電解質液の供給が十分行われず、電解により生ずる水素等の気泡を電極面から後方へ移動させることが難しくなる。更に、曲げ剛性については特に後述する弾性マットの特性と相俟って特定されるものであり、該曲げ剛性が強すぎると陽極の落ち込みに追従しきれず陽極のリブの存在する部分のみが実質的にイオン交換膜を挟持する形態となる。そこで曲げ柔さは0.05mm/g以上とする必要がある。但し、あまりに低い剛性の場合、弾性マットを構成する金属繊維の当たり面だけが力を受けイオン交換膜へ突出することがあるので好ましくない場合もあるので、1.0mm/g以下とするのが一般的である。
【0029】
ここで、曲げ柔さとは一端を固定された10mm×10mmの試料の他端に一定の荷重をかけた時の該先端の撓み幅(mm)を荷重(g)で除した値である。即ち一般に言われる曲げ剛性の逆の性質を示すものである。
【0030】
陰極において、曲げ柔さを決定する因子は、多孔板を構成する材質、多孔板の厚さ、パンチドメタルにあっては、その金属の厚さ、金網にあっては、構成する金属繊維の太さ及び織り方(編み方)等から総合的に定まるため、各因子を夫々特定することは一般に不可能であり、当業者が陰極の選定に当たって前記試験等によりあらかじめ調べることができる。一般に金網の場合、直径0.3mm以下、好ましくは0.05〜0.15mmの軟鋼やニッケルなど陰極液に実質的に侵されない金属から選ぶことができる。但し、陰極活物質のコートにより曲げ剛さが増大することを考慮して選定すべきである。
【0031】
次に、金属集合体よりなる弾性マットとしては、金属ワイヤーを縦糸、横糸とする織物、メリヤス編金網等をクリンプしたものや、メタルウール集合体等が好適であるが、中でもメリヤス編金網が好ましい。これらの金網は一般に1〜10mm程度の目開きとするのが好ましい。又、クリンプは一般に山一谷の高さ2〜30mm程度とするのがよい。このようにクリンプされた金網は、通常複数枚重ね合わせて用いられる。
【0032】
本発明にあっては、上記弾性マットが示す特性即ち、厚さ方向に50%圧縮変形させた時の反発力が30〜50g/cm、好ましくは、35〜45g/cmであり、且つ20%圧縮変形させた時の反発力が10〜30g/cm、好ましくは15〜25g/cmであることが重要であり、該反発力、即ちバネ弾性について、そのバネ定数が一定値を示す変形幅が2〜20mmであるバネ特性を有する金属集合体とするのが好ましい。
【0033】
かかる弾性マットは、20〜70%、好ましくは40〜60%圧縮された状態で電解槽に組み込まれる。この場合の弾性マットの空隙率は30%以上とすることにより、気泡の上昇を容易にするので好ましい。
【0034】
弾性マットは、電解槽に組み込まれた時の状態ですでに30〜50g/cm、好ましくは35〜45g/cm程度の圧力で陰極をイオン交換膜を介して陽極に押し付けていることになるが、電解槽運転時の圧力変動を考慮し、一般に陽極への押圧は運転時であっても20〜60g/cmの範囲となるようにすべきである。
【0035】
斯上の如き各条件は、勿論前記陰極の剛性(柔軟性)と深く係わって定まるものであり、上記各物性範囲に保つことによって陽極落ち込みに対する陰極の追従性が保たれると共に、陽極リブの存在する部分におけるイオン交換膜の損傷を最小とすることが可能となるのである。
【0036】
つまり、本発明に用いられる弾性マットは、換言すれば比較的弱い反発弾性ではあるが、収縮時に長いストロークにおいて該反発弾性の変化が小さいという特性を示すものであるということができる。
【0037】
かかる特異な反発弾性体の構造は、0.1mmよりも細い線径の金属線を多数集めて一つの繊維とし、これを用いて金網を織る(編む)手段によりなされるものである。即ち、所謂モノフィラメント織ではなく、マルチフィラメント織とすることである。本発明においては、本発明の目的を達成するために、線径0.02〜0.09mm、好ましくは0.05〜0.08mmの金属線2〜8本、好ましくは3〜6本からなる線束を用いて織成することを主たる特徴とするものである。これらの各金属線は互いにより合わせられていてもよいし、又、単に寄せ集めて一本の繊維の如く用いてもよい。これらを総称して線束という。かくして得られた金網はクリンプし複数枚重ねて用いられる。
【0038】
一般にクリンプする場合の山〜山のピッチは5〜30mm、好ましくは10〜20mmで、山〜谷の深さは2〜30mm、好ましくは5〜20mm程度である。
【0039】
なお、本発明における弾性マットは集電体でもある。このために、陰極から背面隔壁に至る間の電気抵抗を可及的に小さくする必要がある。そこで、該弾性マットを構成する材質は、当然電気的良導体であることも重要である。更に用いられる環境下に耐え得る材質でなければならない。即ち、弾性マットを構成する材質は、靱性が大きく電気良導体で且つ強アルカリ性環境に耐え得るものが好ましい。金属は一般に電気良導体であり、且つ靱性も比較的大きい。そこで軟鋼やニッケル或いはニッケル合金が一応好適な材質ということができる。しかしながら、更に検討すると軟鋼は靱性に優れるが電気伝導性はあまり高くはない。又、ニッケルは電気伝導性は高いが、比較的靱性に劣る材料である。そこで最も好ましい態様は、前記線束を構成する各金属線として、軟鋼線やステンレス鋼線とニッケル線とを混合して用い、混織マットとすることである。或いは、軟鋼やステンレス鋼にニッケルメッキした複数本の線条を用いて弾性マットとする。この場合、弾性と伝導性と勘案して軟鋼線とニッケル線との混合割合を決めればよいが、一般に2対8程度とするのが好ましい。更に、軟鋼やステンレス鋼にニッケルメッキした線条を複数本まとめて用いることも好ましい。
【0040】
次に、弾性マットは背面隔壁に至るまで充填された状態とすることもでき るが、一般には背面隔壁との間に空間を形成するように陰極集電板を設ける。
【0041】
陰極集電板は、粗目の多孔板であり、一般にエキスパンドメタルやパンチドメタルで開孔率20%以上の剛体板であればよい。又、背面隔壁との間隔は、陰極室全体の厚さや、弾性マットの厚さによって適宜決められるが、一般に5〜20mm程度で十分である。該陰極集電板はリブにより背面隔壁に電気的及び物理的に固定されている。
【0042】
以下比較例及び実施例により、本発明を更に具体的に説明する。
【0043】
比較例1
電極が図1に示す構造である電解槽を用いて、塩化ナトリウム水溶液の電解を行った。通電部となる室枠の中空部は、縦116cm、横238cmの大きさで、電極室の厚みは4.4cmであった。又、かかる電解槽の陽極室の電導リブは、14cm間隔で24枚設置した。使用する陽極はチタン製のパンチドメタルに活性物質を被服したものを用いた。陰極については、線径0.25mm、開孔率50%、孔の面積0.36mm、曲げ柔さ0.02mm/gのニッケルにNiSnの合金メッキしたものを使用した。弾性マットとしては、ニッケル製の線径0.2mm、本数1本をメリヤス編した金網2枚を重ねてクリンプしたもので、50%圧縮時の反発力200g/cm、20%圧縮時の反発力60g/cm、電槽組立時の圧縮率70%、反発力は110g/cmのものを用いた。イオン交換膜は、ナフィオンN−962(デュポン社製)を用いた。
【0044】
以上の構造の電解槽による電解は、電流密度40A/dm、電解温度85℃、陽極室内圧0.06kg/cm、陰極室内圧0.1kg/cmで、約1年実施した。この電解における電流効率は、初期96.5%が約1年で93%まで低下した。電解後のイオン交換膜については、陽極電導リブ付近にボイドの発生及び膜の削れによる破れが発生していた。又、電導リブ間は、膜が着色していなかった。これは、セル内差圧により陽極に撓みが発生し、この撓みに陰極が追従しなかったためである。
【0045】
実施例1
電解槽の構造、電解条件は、比較例1と同じであるが、使用する陰極は、線径0.15mm、開孔率68%、孔の面積0.49mm、曲げ柔さ0.2mm/gのニッケルにNiSnの合金メッキしたものを使用した。弾性マットとしては、ニッケル製の線径0.08mm、本数4本をメリヤス編した金網を2枚重ねてクリンプしたもので、50%圧縮時の反発力40g/cm、20%圧縮時の反発力20g/cm、電槽組立時の圧縮率50%、反発力40g/cmのものを用いた。イオン交換膜は、ナフィオンN−962(デュポン社製)を用いた。
【0046】
3年間の運転で初期96.5%が95.5%まで低下したが、取出した膜の検査では、異常がみられなかった。又、膜全体が着色しており、陰極と膜が完全に陽極に接触していることが確認された。
【0047】
【発明の効果】
本発明は、所謂ゼロ・ギャップ電解槽において長期間に亘って、イオン交換膜の劣化を生じることなく、アルカリ金属塩水溶液の電解が可能となる電解槽を提供する。特に陰極活物質をコートした軟鋼又はニッケル陰極に対して有効であり、係る陰極を用いた場合であっても1年以上、場合によっては2年以上も陽イオン交換膜の損傷なく運転することが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明を説明するための概略図である。
【符号の説明】
1、1’は 電解槽枠
2、2’は 背面隔壁
3、3’は リブ
4 は 陽極
5 は イオン交換膜
6 は 柔軟陰極
7 は 弾性マット
8 は 陰極集電板

Claims (1)

  1. 陽イオン交換膜で区分された陽極室と陰極室とよりなり、陽極室には陽極が、陰極室には陰極がそれぞれ存在し且つ両電極は、イオン交換膜を介して近接対峙する構造であって、一方の電極は一つの孔の面積が0.05〜1.0mmである多数の孔を有する開孔率が20%以上の多孔体で、その曲げ柔さが0.05mm/g以上の柔軟な多孔板であり、他方の電極は剛体多孔板であり、前記柔軟な多孔板電極は、線径0.02〜0.09mmの金属線2〜8本からなる線束を用いて織成しクリンプした金属網を複数枚重ねたことにより得られる、50%圧縮変形時の反発力が30〜50g/cmであり且つ20%圧縮変形時の反発力が10〜30g/cmの弾性を有する金属線集合体よりなる弾性マットにより、他方の電極へ20〜60g/cmの圧力で押し付けられていることを特徴とするイオン交換膜電解槽。
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