JP3615850B2 - 空気圧作動型液体式制振装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、船舶の上部構造や建築物等の大型の構造物の防振装置として使用するのに好適な空気圧作動型液体式制振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば図3および図4に示されるように、船舶の上部構造等のような構造物08上にU字型連通管式タンク01を設置し、構造物08の振動を、構造物08の振動の向きに逆らう方向への液体質量の周期的な移動により、抑制して防振をするようにした、液体式制振装置が考えられていた。図3において、液体02を収容するU字型連通管式タンク01の左右には、それぞれ縦型タンク01aおよび01bが配設されている。各縦型タンク01a、01b内の上部には、それぞれ液面02a、02bに接する、空気室03a、03bが形成されており、液体02の質量と、空気室03a,03b内の空気ばね作用を持つ空気とにより、ばね質量系の動吸振器が形成されている。この動吸振器の固有振動数fc は各空気室03a,03b内の空気の圧力を変えることにより調整することができるので、構造物08の振動の振動数に合致させるように動吸振器の固有振動数fc を調整することにより、能率的に構造物08の振動を抑制し、制振することができる。また、構造物08の振動を計測して分析することにより構造物08の振動数を検知し、構造物08の振動数に応じてU字型連通管式タンク01により構成される動吸振器の周波数を自動的に調整することも考えられている(例えば、特願平1−168718号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような従来の液体式制振装置は、動吸振器として作用するため、制振器として有効なものであるが、制振器に、より十分な効果を発揮させようとすると、その制振器を非常に大形のものとせざるをえず、制振器を大形のものとすると、それだけ構造物への搭載が困難になる、という問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、空気のばね作用を利用した液体式制振装置において、空気室内の空気の圧力を効果的に制御することによって、振動の吸収能力を十分に高めることができるような空気圧作動型液圧式制振装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明の空気圧作動型液体式制振装置は、互いに独立した複数の空気室を備え、同各空気室内においてのみ空気に接する液面を有する液体が上記各空気室間を自由に移動することができる構造の空気圧作動型液体式制振装置において、上記各空気室に比較的低圧の正圧空気を供給するための低圧空気供給手段と、上記各空気室に比較的高圧の空気を供給するための高圧ガスボンベと、上記空気圧作動型液体式制振装置が受ける振動を検出する振動検出部と、上記各空気室を上記低圧空気供給手段および上記高圧ガスボンベのうちのいずれか一方と選択的に連通させるように開閉作動する1つまたはそれ以上の制御弁と、上記振動検出部が検出した振動の振幅が設定値よりも小さいときには、上記低圧空気供給手段から比較的低圧の正圧空気を上記各空気室内へ供給し、上記振動検出部が検出した振動の振幅が設定値よりも大きいときには、上記高圧ガスボンベから比較的高圧の空気を上記各空気室ごとに順に供給することによって上記各空気室間の空気圧差を大きくして、上記各空気室間の液体質量の移動量が大きくなるように上記制御弁の作動を制御する制御装置とを備えたことを特徴としている。
また、本発明の空気圧作動型液体式制振装置は、上記振動検出部により検出された検出値に基づいて上記各空気室内の空気の基準圧力を設定する圧力設定部と、上記各空気室内の空気の圧力を検出する空気圧検出部、上記各空気室内の液面により計測される液位を検出する液位検出部、上記各空気室内の液体の液圧を検出する液圧検出部においてそれぞれ検出された各検出値に基づいて補正された各空気室内の空気の圧力を上記圧力設定部により設定された空気の基準圧力に一致させるように上記制御弁の作動を制御する制御装置とを備えたことを特徴としている。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、図面により本発明の実施の形態について説明する。
まず図1において、U字型連通管式タンク1は、その左右両端部において、縦型タンク1aおよび縦型タンク1bを有し、U字型連通管式タンク1内の、例えば水である液体2が、縦型タンク1a内の上部に空気室3aを形成するとともに、縦型タンク1b内の上部に空気室3aとは独立した空気室3bを形成している。各空気室3a、3b内においてのみ空気に接する液面を有する液体2は、各空気室3a、3b間をU字型連通管式タンク1の連通管部を通して自由に移動することができる。コンプレッサー14により加圧された空気は比較的低圧の空気を供給するための低圧空気供給手段を構成する低圧空気源10に送られ、この低圧空気源10により貯蔵された空気は、空気配管4および開閉制御される制御弁51aを介して空気室3aへ送られるとともに、空気配管4および開閉制御される制御弁51bを介して空気室3bへ送られるようになっている。また、例えば非常用として使用することができる使い切りの高圧ガスボンベ等よりなる高圧空気供給手段を構成する高圧空気源15内の空気は、空気配管4、調圧弁17、リザーブタンク18および開閉制御される制御弁52aを介して、空気室3aへ送られるとともに、空気配管4、調圧弁17、リザーブタンク18および開閉制御される制御弁52bを介して空気室3bへ送られるようになっている。さらに、空気室3a内の空気は、開閉制御される制御弁53aを介して外部へ排出することができるようになっているとともに、空気室3b内の空気は、開閉制御される制御弁53bを介して外部へ排出することができるようになっている。
【0007】
縦型タンク1a内には、空気室3a内の空気の圧力を検出する空気圧検出部61aと、空気室3a内の液面2aにより計測される、液位を検出する液位検出部16aと、空気室3a内の液体の液圧を検出する液圧検出部62aとが配設されているとともに、縦型タンク1b内には、空気室3b内の空気の圧力を検出する空気圧検出部61bと、空気室3b内の液面2bの液位を検出する液位検出部16bと、空気室3b内の液体の液圧を検出する液圧検出部62bとが配設されている。また、構造物8上には、構造物8の振動、すなわち図1に示された空気圧作動型液体式制振装置が構造物8上に設置された状態において同空気圧作動型液体式制振装置が受ける振動を検出する振動検出部7が配設されている。 空気圧検出部61a、61b、液位検出部16a、16b、液圧検出部62a、62bおよび振動検出部7により検出された各検出値は、それぞれ検出値信号の形で制御装置9へ送られる。
【0008】
図1および図2において、制御装置9は、振動検出部7の出力信号の符号と大きさとに基づいて、各空気室3a、3b内の望ましい空気の圧力を基準圧力として設定する圧力設定部11を備えている。この圧力設定部11は、例えば、構造物8が左へ揺動しようとするときは左側の空気室3a内の空気の基準圧力を高く設定し、構造物8が右へ揺動しようとするときは右側の空気室3b内の空気の基準圧力を高く設定し、また構造物8の揺動振幅が大きなときは、左側の空気室3aと右側の空気室3bとの間の空気の基準圧力の圧力差が相応して大きくなるように各空気室3a、3b内の空気の基準圧力を設定する。
【0009】
制御装置9において、各空気室3a,3b毎に各空気室3a、3b内の空気の検出圧力と、圧力設定部11により設定された空気の基準圧力とが比較される。その際、空気圧検出部61a、61b、液位検出部16a,16bおよび液圧検出部62a、62bにより検出された各検出値に基づいて得られた各空気室3a、3b内の空気の圧力値は、制御系におけるフィードバック信号としてフィードバックされる。このようにして得られた各空気室3a,3b内の空気の検出圧力と基準圧力との圧力差に基づいて、演算処理部12が演算処理を行ない、その出力信号を各制御弁51a、51b、52a,52b、53a、53bを個別に開閉駆動するための駆動信号として、各制御弁51a,51b、52a、52b、53a、53bに付設された各弁駆動部13へ送ることにより、制御弁51a,51b,52a,52b、53a,53bの開閉制御を行なう。したがって、フィードバックされた各空気室3a,3b内の空気の検出圧力値と基準圧力値との差を示す差信号、すなわち誤差信号が0であれば、演算処理部12が弁駆動部13へ駆動信号を送らず、各弁51a,51b、52a,52b,53a,53bは空気通路を閉じたままであり、各空気室3a、3b内へ制御用空気が送られることがない。
【0010】
誤差信号が生じた場合で、各空気室3a、3b内の空気の検出圧力が基準圧力よりも低いときは、空気室3aについては制御弁51aまたは52aを開いて低圧空気供給手段である低圧空気源10あるいは高圧空気供給手段である高圧空気源15から空気室3aへ空気を供給し、また空気室3bについては制御弁51bまたは52bを開いて低圧空気供給手段である低圧空気源10、あるいは高圧空気供給手段である高圧空気源15から空気室3bへ空気を供給する。これに対し、誤差信号が生じた場合で、各空気室3a,3b内の空気の検出圧力が基準圧力よりも高いときは、各制御弁53a、53bを開いて各空気室3a,3b内の空気を排出して各空気室3a,3b内の空気の圧力を低下させる。
【0011】
このようにして、本発明の空気圧作動型液体式制振装置によれば、各空気室3a,3b内の空気の圧力の基準圧力が常時設定され、設定された基準圧力を基準値として圧力差が0となるように各空気室3a,3b内の圧力が制御されるので、時間経過とともに各空気室3a、3b内の空気の平均圧力が漸次変化して、場合によっては供給空気圧や外部の空気圧に近付き、その結果各空気室3a,3b内の空気の加圧および減圧制御が十分にできなくなり、制振効果が下がってしまう、というようなことがなくなる。また、フィードバック制御が行なわれるので、構造物8の振動を計測して周波数分析を行ない、その分析結果から構造物8の振動数を検知し、検知した振動数に合わせるように動吸振器としての本発明の空気圧作動型液体式制振装置の周波数を自動的に調整することが可能となる。
【0012】
また、制御装置9は、低圧空気源10あるいは高圧空気源15から各空気室3a、3bへ空気を供給する際には、振動検出部7が検出した振動の振幅が設定値よりも小さいときには低圧空気源10から各空気室3a、3b内へ空気を供給し、振動検出部7が検出した振動の振幅が設定値よりも大きいときには高圧空気源15から各空気室3a、3b内へ空気を供給するように各制御弁51a,51b、52a、52bの作動を制御する。このようにすることにより、振動検出部7が検出した振動の振幅の大きさに対応して、各空気室3a、3b間の空気圧差の大きさの調整幅を大きくし、U字型連通管式タンク1内における液体質量の移動量の調整幅、したがって振動による構造物の揺動運動を打ち消す向きの液体質量の運動量の大きさの調整幅を大きくすることができ、空気圧作動型液体式制振装置の制振能力を大幅に向上させることが可能となる。
【0013】
本発明の空気圧作動型液体式制振装置において、空気圧制御系は、フィードバック制御系を構成しているので、環境の温度変化や使用されている機器の経年変化があっても、制御すべき各空気室3a,3b内の空気の圧力を常に基準圧力に保つことができる。また、本発明の空気圧作動型液体式制振装置において、空気圧作動型液体式制振装置が設置される構造物によっては、1対またはそれ以上の空気室を配設し各空気室を放射状の連通管によって連通することにより、相異なる複数方向の振動に対して制振効果を発揮するように構成することもできる。
【0014】
【発明の効果】
以上のように、本発明の空気圧作動型液体式制振装置によれば、以下のような効果が得られる。
(1)請求項1に記載の空気圧作動型液体式制振装置によれば、互いに独立した複数の空気室を備え、同各空気室内においてのみ空気に接する液面を有する液体が上記各空気室間を自由に移動することができる構造の空気圧作動型液体式制振装置において、上記各空気室に比較的低圧の正圧空気を供給するための低圧空気供給手段と、上記各空気室に比較的高圧の空気を供給するための高圧ガスボンベと、上記空気圧作動型液体式制振装置が受ける振動を検出する振動検出部と、上記各空気室を上記低圧空気供給手段および上記高圧ガスボンベのうちのいずれか一方と選択的に連通させるように開閉作動する1つまたはそれ以上の制御弁と、上記振動検出部が検出した振動の振幅が設定値よりも小さいときには、上記低圧空気供給手段から比較的低圧の正圧空気を上記各空気室内へ供給し、上記振動検出部が検出した振動の振幅が設定値よりも大きいときには、上記高圧ガスボンベから比較的高圧の空気を上記各空気室ごとに順に供給することによって上記各空気室間の空気圧差を大きくして、上記各空気室間の液体質量の移動量が大きくなるように上記制御弁の作動を制御する制御装置とを備えているので、例えば、強風による構造物の振動に対しては低圧空気供給手段からの比較的低圧の正圧空気の供給で対処し、地震時等の非常時には高圧ガスボンベにより比較的高圧の空気を供給して、振動の振幅の大きさに対応して、各空気室間の空気圧差の大きさを調整する際の調整幅を大きくし、連通管式タンク内における液体質量の移動量についての調整幅、したがって振動による構造物の揺動運動を打ち消す向きの液体質量の運動量の大きさについての調整幅を大きくすることができ、空気圧作動型液体式制振装置の制振能力を大幅に向上させることが可能となる。
(2)請求項2に記載の空気圧作動型液体式制振装置によれば、振動検出部により検出された検出値に基づいて各空気室内の空気の基準圧力を設定する圧力設定部と、上記各空気室内の空気の圧力を検出する空気圧検出部、上記各空気室内の液面により計測される液位を検出する液位検出部、上記各空気室内の液体の液圧を検出する液圧検出部においてそれぞれ検出された各検出値に基づいて補正された各空気室内の空気の圧力を上記圧力設定部により設定された空気の基準圧力に一致させるように上記制御弁の作動を制御する制御装置とを備えているので、空気圧制御系は、フィードバック制御系を構成することとなり、本発明の空気圧作動型液体式制振装置は、従来の空気圧利用液体式制振装置におけるような受動的な動吸振器の作用に加えて、さらに能動的な作用を発揮し、たとえ環境の温度変化や使用されている機器の経年変化があった場合でも、制御すべき各空気室内の空気の圧力を、常に基準圧力を目標値としてこの基準圧力と等しいか、あるいは基準圧力に近い圧力に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る空気圧作動型液体式制振装置の全体構成概念図である。
【図2】図1の実施の形態に係る空気圧作動型液体式制振装置の制御系統図である。
【図3】従来の空気圧利用液体式制振装置の縦断面図である。
【図4】図3の空気圧利用液体式制振装置を構造物上に設置した状態を示す要部断面正面図である。
【符号の説明】
01 U字型連通管式タンク
01a,01b 縦型タンク
02 液体
02a,02b 液面
03a,03b 空気室
08 構造物
1 U字型連通管式タンク
1a,1b 縦型タンク
2 水等の液体
2a,2b 液面
3a,3b 空気室
4 空気配管
7 振動検出部
8 構造物
9 制御装置
10 低圧空気供給手段としての低圧空気源
11 圧力設定部
12 演算処理部
13 弁駆動部
14 コンプレッサー
15 高圧ガスボンベ
16a,16b 液位検出部
17 調圧弁
18 リザーブタンク
51a,51b,52a,52b,53a,53b 制御弁
61a,61b 空気圧検出部
62a,62b 液圧検出部
Claims (2)
- 互いに独立した複数の空気室を備え、同各空気室内においてのみ空気に接する液面を有する液体が上記各空気室間を自由に移動することができる構造の空気圧作動型液体式制振装置において、上記各空気室に比較的低圧の正圧空気を供給するための低圧空気供給手段と、上記各空気室に比較的高圧の空気を供給するための高圧ガスボンベと、上記空気圧作動型液体式制振装置が受ける振動を検出する振動検出部と、上記各空気室を上記低圧空気供給手段および上記高圧ガスボンベのうちのいずれか一方と選択的に連通させるように開閉作動する1つまたはそれ以上の制御弁と、上記振動検出部が検出した振動の振幅が設定値よりも小さいときには、上記低圧空気供給手段から比較的低圧の正圧空気を上記各空気室内へ供給し、上記振動検出部が検出した振動の振幅が設定値よりも大きいときには、上記高圧ガスボンベから比較的高圧の空気を上記各空気室ごとに順に供給することによって上記各空気室間の空気圧差を大きくして、上記各空気室間の液体質量の移動量が大きくなるように上記制御弁の作動を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする、空気圧作動型液体式制振装置。
- 請求項1に記載の空気圧作動型液体式制振装置において、上記振動検出部により検出された検出値に基づいて上記各空気室内の空気の基準圧力を設定する圧力設定部と、上記各空気室内の空気の圧力を検出する空気圧検出部、上記各空気室内の液面により計測される液位を検出する液位検出部、上記各空気室内の液体の液圧を検出する液圧検出部においてそれぞれ検出された各検出値に基づいて補正された各空気室内の空気の圧力を上記圧力設定部により設定された空気の基準圧力に一致させるように上記制御弁の作動を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする、空気圧作動型液体式制振装置。
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JP30648595A JP3615850B2 (ja) | 1995-10-31 | 1995-10-31 | 空気圧作動型液体式制振装置 |
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- 1995-10-31 JP JP30648595A patent/JP3615850B2/ja not_active Expired - Fee Related
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