JP3613605B2 - キラル化合物の絶対配置決定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、キラル化合物の絶対配置の決定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、キラル化合物の絶対配置を決定する方法として、キラル化合物と特定の化合物との複合体(例えば錯体)について、円二色性(CD)分光光度分析を行い、コットン効果の符号とキラル化合物の絶対配置との相関関係を利用してキラル化合物の絶対配置を決定する方法が用いられている。例えば、以下に述べる井上らの文献を例示することができる。
(1) J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 4403−4407, V. V. Borovkov, J. M. Linituluoto, M. Fujiki and Y. Inoue.
(2) Org. Lett., 2000, 2, 1565−1568, V. V. Borovkov, J. M. Linituluoto and Y. Inoue.
(3) J. Phys. Chem. A, 2000, 104, 9213−9219, V. V. Borovkov, J. M. Linituluoto and Y. Inoue.
(4) J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 2379−2989, V. V. Borovkov, J. M. Linituluoto, and Y. Inoue.
(5) Chirality, 2001, 13, 329−335, V. V. Borovkov, N. Yamamoto, J. M. Linituluoto and Y. Inoue.
しかしながら、上記文献は、いずれも溶液状態におけるキラル化合物の絶対配置の決定方法しか開示しておらず、溶液中では不安定なキラル化合物などの絶対配置の決定には適用できない。また、上記文献では、溶媒として無極性溶媒を用いるので、無極性溶媒に溶解しないキラル化合物の絶対配置を決定することができない。
【0003】
このように、溶液中において不安定なキラル化合物、難溶性のキラル化合物、極性溶媒にしか溶解しない化合物などにも適用できるキラル化合物の絶対配置決定方法の開発が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の問題点を鑑み成されたものであって、溶媒を使用せずにキラル化合物の絶対配置を決定する方法を提供することを主な目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究の結果、特定の構造を有する金属ポルフィリン2量体を用いることなどにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、下記のキラル化合物の絶対配置決定方法に係るものである。1.キラル化合物、金属ポルフィリン2量体およびハロゲン化アルカリを含む成形体について円二色性分光光度分析を行うことによって、当該キラル化合物の絶対配置を決定する方法であり、
(1) 当該金属ポルフィリン2量体が、炭素鎖で架橋された金属ポルフィリン2量体であり、前記2量体の少なくとも一方のポルフィリン環において、架橋炭素鎖に結合した炭素からポルフィリン環の外周に沿って二つめの炭素の少なくとも一方に、エチル基以上にバルキーな置換基を有し、
(2) 当該キラル化合物が、(i)前記金属ポルフィリン2量体に配位可能なキラル化合物であり、且つ
(ii)前記金属ポルフィリン2量体に配位可能な基と不斉炭素が直接結合しているか、または前記配位可能な基と不斉炭素との間に炭素原子が1原子介在している、
ことを特徴とするキラル化合物の不斉炭素の絶対配置決定方法。
2.キラル化合物が、1)一級アミン、2)二級アミン、3)一級ジアミンおよび4)二級ジアミンからなる群から選択される1種である上記1に記載の方法。3.炭素鎖で架橋された金属ポルフィリン2量体が、以下の式(1)に示す金属ポルフィリン2量体である上記1または2に記載のキラル化合物の絶対配置決定方法。
【0007】
【化3】
【0008】
[式中、M2+およびM’2+は、同一または相異なって、Zn2+、Fe2+、Mn2+、Mg2+およびRu2+からなる群から選択される少なくとも1種を示し、
Ra〜RdおよびR1〜R12は、同一または相異なって、水素原子またはメチル基以上にバルキーな置換基を示す。ただし、Ra〜Rdのうち少なくとも一つは、エチル基以上にバルキーな置換基を示す。]
4.式(1)におけるRa〜Rdのうち少なくとも一つが、1)炭素数2以上の炭化水素基、2)含酸素置換基、3)含窒素置換基、4)ハロゲン原子および5)ハロゲン化炭化水素基からなる群から選択される1種である上記2に記載の方法。
5.炭素鎖で架橋された金属ポルフィリン2量体が、以下の式(2)に示す金属ポルフィリン2量体である上記1または2に記載のキラル化合物の絶対配置の決定方法。
【0009】
【化4】
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のキラル化合物の絶対配置の決定方法は、キラル化合物、金属ポルフィリン2量体およびハロゲン化アルカリを含む成形体について円二色性分光光度分析を行うことによって、当該キラル化合物の絶対配置を決定する方法であって、(1) 当該金属ポルフィリン2量体が、炭素鎖で架橋された金属ポルフィリン2量体であり、前記2量体の少なくとも一方のポルフィリン環において、架橋炭素鎖に結合した炭素からポルフィリン環の外周に沿って二つめの炭素の少なくとも一方に、エチル基以上にバルキーな置換基を有し、
(2) 当該キラル化合物が、(i)前記金属ポルフィリン2量体に配位可能なキラル化合物であり、且つ
(ii)前記金属ポルフィリン2量体に配位可能な基と不斉炭素が直接結合しているか、または前記配位可能な基と不斉炭素との間に炭素原子が1原子介在している、
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の方法に用いることができる金属ポルフィリン2量体は、上記の条件を満たす限り特に制限されないが、例えば、以下の式(1)で示される化合物を例示することができる。
【0012】
【化5】
【0013】
式(1)において、M2+およびM’2+は、金属中心を示す。M2+およびM’2+として、例えば、Zn2+、Fe2+、Mn2+、Mg2+、Ru2+などを例示することができ、これらの中ではZn2+が好ましい。M2+およびM’2+は、同一であっても、相異なっていてもよい。
【0014】
金属ポルフィリン2量体は、−CH2−CH2−などの炭素鎖により架橋されている。炭素鎖に含まれる炭素数は特に制限されない。例えば、式(1)では、炭素鎖に含まれる炭素数は、2である。
【0015】
本発明において用いる金属ポルフィリン2量体は、架橋炭素鎖に結合した炭素からポルフィリン環の外周に沿って二つめの炭素の少なくとも一つに、エチル基以上にバルキーな置換基を有する。例えば、式(1)においてRa〜Rdは、いずれも架橋炭素鎖に結合した炭素からポルフィリン環の外周に沿って二つめの炭素に結合した置換基である。式(1)において、Ra〜Rdは、同一または相異なって、水素原子またはメチル基以上にバルキーな置換基を示す。但し、Ra〜Rdのうち少なくとも一つは、エチル基以上にバルキーな置換基である。
【0016】
メチル基以上にバルキーな置換基とは、メチル基と同等もしくはそれ以上に嵩の大きな置換基であることを意味する。メチル基以上にバルキーな置換基としては、例えば、1)炭化水素基、2)含酸素置換基、3)含窒素置換基、4)ハロゲン原子、5)ハロゲン化炭化水素基などを例示することができる。
【0017】
1)メチル基以上にバルキーな炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などを例示することができる。メチル基以上にバルキーな置換基としての炭化水素基の炭素数は、特に制限されないが、通常1〜10程度であり、好ましくは1〜5程度である。
【0018】
2)含酸素置換基としては、例えば、エステル基、カルボキシルアルキル基などを例示することができる。エステル基としては、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基などのアルキルエステル基を例示することができる。カルボキシアルキル基としては、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基などを例示することができる。アルキルエステル基のアルキル部分およびカルボキシルアルキル基のアルキル部分としては、例えば炭素数1〜10程度、好ましくは炭素数1〜5程度のアルキルを例示することができる。
【0019】
3)含窒素置換基としては、例えば、アミノ基、アミド基、2−アミノエチル基などを例示することができる。
【0020】
4)ハロゲン原子としては、例えば、Cl、Br、Fなどを例示することができる。
【0021】
5)ハロゲン化炭化水素基としては、例えば、塩化メチル基、塩化エチル基、塩化プロピル基、塩化ブチル基などの炭素数1〜10程度、好ましくは炭素数1〜5程度のハロゲン化炭化水素基を例示することができる。
【0022】
エチル基以上にバルキーな置換基とは、エチル基と同等もしくはそれ以上に嵩の大きな置換基であることを意味する。エチル基以上にバルキーな置換基としては、例えば、1)炭素数2以上の炭化水素基、2)含酸素置換基、3)含窒素置換基、4)ハロゲン原子、5)ハロゲン化炭化水素基などを例示することができる。
【0023】
1)炭素数2以上の炭化水素基としては、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基などを例示することができる。エチル基以上にバルキーな置換基としての炭化水素基の炭素数は、特に制限されないが、通常2〜10程度であり、好ましくは2〜5程度である。
【0024】
エチル基以上にバルキーな置換基である2)含酸素置換基、3)含窒素置換基、4)ハロゲン原子および5)ハロゲン化炭化水素基については、「メチル基以上のバルキーな置換基」として例示した基と同様の置換基を例示することができる。
【0025】
式(1)において、R1〜R12は、同一または相異なって、水素原子、メチル基以上にバルキーな置換基を示す。メチル基以上にバルキーな置換基として、上述したような置換基を例示でき、R1〜R12としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜10程度(より好ましくは1〜5程度)の炭化水素基が好ましい。
【0026】
本発明で用いる金属ポルフィリン2量体として、例えば、以下の式(2)で示す化合物を好適に用いることができる。以下、式(2)の化合物を化合物1ということがある。
【0027】
【化6】
【0028】
本発明において用いる金属ポルフィリン2量体自体は、公知の製法(例えば特開平11−255790号公報など)に従って合成することができる。
【0029】
一方、本発明の方法によって絶対配置が決定されるキラル化合物は、以下の特性を有する。すなわち;
(i)前記金属ポルフィリン2量体に配位可能なキラル化合物であり、且つ
(ii)前記金属ポルフィリン2量体に配位可能な基と不斉炭素が直接結合しているキラル化合物、または前記配位可能な基と不斉炭素との間に炭素原子が1原子介在しているキラル化合物である。
【0030】
キラル化合物は、液体(油状を含む)または固体のいずれであってもよい。キラル化合物として、例えば、1)一級アミン、2)二級アミン、3)一級ジアミン、4)二級ジアミンなどのアミン化合物を好ましく例示することができる。一級アミンとしては、例えば、1−フェニルエチルアミン、1−シクロヘキシルエチルアミン、ボルニルアミン、イソピノカンフェイルアミンなどを例示することができる。一級ジアミン、二級ジアミンなどのように金属ポルフィリン2量体に配位可能な基が複数ある場合には、金属ポルフィリンの金属中心に配位している基が結合している不斉炭素、または配位している基と1原子の炭素原子を介して結合している不斉炭素について絶対配置を決定することができる。
【0031】
本発明の方法によると、金属ポルフィリン2量体に配位可能な基と不斉炭素が直接結合しているキラル化合物、または前記配位可能な基と不斉炭素との間に炭素原子が1原子介在しているキラル化合物について、絶対配置を決定することができる。
【0032】
不斉炭素が複数あり、金属ポルフィリン2量体に配位可能な基と不斉炭素が直接結合しているキラル化合物の場合には、金属ポルフィリンに配位した基に直接結合している不斉炭素について絶対配置を決定することができる。例えば、ボルニルアミンは、金属ポリフィリン2量体の中心金属に配位可能な基と不斉炭素が直接結合しているキラル化合物に相当し、3個の不斉炭素のうちアミノ基が結合している不斉炭素の絶対配置を決定することができる。
【0033】
不斉炭素が複数あり、金属ポルフィリン2量体に配位可能な基と不斉炭素との間に炭素原子が1原子介在しているキラル化合物の場合には、金属ポルフィリンに配位した基と1原子の炭素原子を介して結合している不斉炭素について絶対配置を決定することができる。
【0034】
本発明の方法に用いる成形体は、上記金属ポルフィリン2量体とキラル化合物とハロゲン化アルカリとを含んでいる。ハロゲン化アルカリとしては、例えばKBr、NaBr、NaCl、CsIなどを例示することができ、これらの中ではKBrが好ましい。成形体には、所望の効果が得られる範囲内において、添加成分が含まれていてもよい。
【0035】
成形体の調製方法は特に限定されず、例えば、金属ポルフィリン2量体とキラル化合物とハロゲン化アルカリとを摩砕混合し、加圧成型することにより透明なタブレットを調製する方法などを示すことができる。摩砕混合する順番は特に制限されず、例えば金属ポルフィリン2量体とキラル化合物とをまず摩砕混合し、その後ハロゲン化アルカリと摩砕混合する方法などを例示することができる。例示した順番は、より確実に金属ポルフィリン2量体の金属中心にキラル化合物が配位するので好ましい。加圧成型の方法は、特に限定されず、用いる円二色性測定装置などに応じて適宜選択することができ、例えば油圧プレス法などを例示することができる。
【0036】
円二色性分光光度分析を行う温度は、コットン効果を検知できる限り特に制限されない。低温であるほど高感度で分析を行うことができるが、成形体を冷却しなくとも通常0〜30℃程度において充分にコットン効果を検知することができる。
【0037】
金属ポルフィリン2量体とキラル化合物との混合比は、成形体のCDスペクトルにおいて第1コットン効果が検知できる限り特に制限されない。金属ポルフィリン2量体:キラル化合物(モル比)は、通常1:500〜1:3000程度、好ましくは1:1000〜1:2000程度である。
【0038】
ハロゲン化アルカリの混合量は、特に制限されないが、例えば、成形体の紫外−可視吸収スペクトルにおいて、ポルフィリンのB吸収帯(ソーレー帯)の吸光度が、通常0.5〜2程度、好ましくは1〜2程度となるよう設定すればよい。
【0039】
本発明において用いる成形体には、通常150〜160mg程度のハロゲン化アルカリが含まれている。また、この成形体には、通常1.5×10−4〜3×10−4mmol程度、好ましくは2×10−4〜2.4×10−4mmol程度のキラル化合物が含まれる。
【0040】
成形体の円偏光二色性スペクトルは、二つのピーク(一つの極大値と一つの極小値)を示す(図1参照)。以下、より長波長側のピークの示す符号を「第1コットン効果の符号」といい、より短波長側のピークの示す符号を「第2コットン効果の符号」ということがある。それぞれのピークの符号は、正の場合と負の場合があり、第1コットン効果の符号と第2コットン効果の符号とは相異なる。例えば、図1に示す(1R、2S)−(+)−ボルニルアミンのCDスペクトルを例にとると、第1コットン効果の符号は負(マイナス)であり、第2コットン効果の符号は正(プラス)である。また、光学異性体同士(例えばR体とS体)では、それぞれのコットン効果の符号が逆になる。例えば、(1S、2R)−(−)−ボルニルアミンを用いた場合には、図1とは符号が逆となり、第1コットン効果の符号は正となり、第2コットン効果の符号は負となる。絶対配置の決定には、いずれのピークの符号を用いてもよいが、第1コットン効果の方が検知しやすいので好適に用いることができる。
【0041】
成形体における各コットン効果の符号とキラル化合物の不斉炭素の絶対配置(R体かS体か)との間に一定の対応関係が成立することを明らかにするために、絶対配置が既知の様々なキラル化合物を用いてCDスペクトルを測定した。以下の表1に、様々なキラル化合物の絶対配置および符号と成形体における各コットン効果の符号とを示す。なお、金属ポルフィリン2量体としては、前記式(2)で示したZn2+を金属中心とする金属ポルフィリン(化合物1)を使用した。成形体の調製は、後述する実施例1と同様の方法により行った。なお、イソフェニルエチルアミン、イソピノカンフェイルアミンおよびシクロヘキシルエチルアミンは、液体であり、ボルニルアミンは固体である。参考までに、イソピノカンフェイルアミンの構造式を以下に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【化7】
【0044】
表1から明らかなように、アミノ基のα炭素まわりの立体配置と第1コットン効果の符号の間には、一定の対応関係が成立している。即ち、第1コットン効果の符号が正の場合には、キラル化合物中の不斉炭素の絶対配置は(R)となる。一方、第1コットン効果の符号が負の場合には、キラル化合物中の不斉炭素の絶対配置は(S)となる。この相関関係と未知試料のコットン効果の符号とを利用することによって、未知試料中のキラル化合物について、絶対配置を決定することができる。
【0045】
本発明の方法では、円二色性(CD)分光光度分析法を用いて、キラル化合物、金属ポルフィリン、ハロゲン化アルカリなどを含む成形体について分析する。即ち、本発明の方法では、金属ポルフィリン2量体に測定対象であるキラル化合物を配位させたときに得られる円二色性スペクトルのコットン効果の符号によって、前記キラル化合物の絶対配置を決定することができる。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、溶媒を用いることなくキラル化合物の絶対配置を決定することができる。従って、溶媒中において不安定なキラル化合物、難溶性のキラル化合物、極性溶媒にしか溶解しない化合物などについても、絶対配置を決定することができる。
【0047】
従来から、固体状態におけるキラル化合物の絶対配置を決定する方法として、X線結晶構造解析を用いる方法が知られているが、この方法は、結晶性の化合物にしか適用できない。本発明の方法によると、キラル化合物が結晶性であるかどうかに拘わらず、絶対配置を決定することができる。
【0048】
本発明によると、迅速にキラル化合物の絶対配置を決定することができる。試料調製とCDスペクトルの測定に要する時間は、条件によっては20〜25分程度である。
【0049】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
【0050】
実施例1
式(2)に示した金属ポルフィリン2量体(約10−7mol)と(1R、2S)−(+)−ボルニルアミン(結晶性粉末、約1.5×10−4mol)とを瑪瑙製乳鉢を用いて約10分間摩砕することにより混合した。この混合物を少量採取しKBr(約150mg)に加え、瑪瑙製乳鉢を用いて更に約10分間摩砕し、この混合物を用いて常法に従ってタブレットを作成した。具体的には、以下の方法によりタブレットを作成した。前記混合物を金属製のシリンダー内に装着した金属製ディスクの上に移し厚みを均一とした後、更に別の金属製ディスクを粉末層の上に置き、その状態で二つのディスクが動かないようシリンダーに固定した。真空ポンプにてシリンダー内を減圧した後、減圧したままの状態で金属製ピストンを上部のディスクに載せ、油圧プレスにより6〜8t/cm2に加圧して成型し、透明なタブレットを作成した。前記混合物の添加量は、タブレットの紫外−可視吸収スペクトルにおいて、ポルフィリンのB吸収帯の吸光度が、1〜2の範囲となるように調整した。
【0051】
上記のようにして調製したタブレットについて、20℃においてCDスペクトルを測定した。図1にCDスペクトルを示す。図1から明らかなように、第1コットン効果の符号は「負」であった。
【0052】
実施例2
アミンとして(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン(油状物質、約1.5×10−4mol)を用いる以外は、実施例1と同様にしてCDスペクトルを測定した。結果を図2に示す。
【0053】
図2から明らかなように、第1コットン効果の符号は「正」であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において測定した(1R、2S)−(+)−ボルニルアミンのCDスペクトルを示す図である。横軸は、波長(nm)を示し、縦軸は、楕円率(mdeg)を示す。
【図2】実施例2において測定した(R)−(+)−1−フェニルエチルアミンのCDスペクトルを示す図である。横軸は、波長(nm)を示し、縦軸は、楕円率(mdeg)を示す。
Claims (5)
- キラル化合物、金属ポルフィリン2量体およびハロゲン化アルカリを含む成形体について円二色性分光光度分析を行うことによって、第1コットン効果の符号が正の場合には、キラル化合物の中の不斉炭素の絶対配置は(R)、第1コットン効果の符号が負の場合には、キラル化合物の中の不斉炭素の絶対配置は(S)とすることにより当該キラル化合物の絶対配置を決定する方法であり、
(1)当該金属ポルフィリン2量体が、炭素鎖で架橋された金属ポルフィリン2量体であり、前記2量体の少なくとも一方のポルフィリン環において、架橋炭素鎖に結合した炭素からポルフィリン環の外周に沿って二つめの炭素の少なくとも一方に、エチル基以上にバルキーな置換基を有し、
(2)当該キラル化合物が、(i)前記金属ポルフィリン2量体に配位可能なキラル化合物であり、且つ
(ii)前記金属ポルフィリン2量体に配位可能な基と不斉炭素が直接結合しているか、または前記配位可能な基と不斉炭素との間に炭素原子が1原子介在している、
ことを特徴とするキラル化合物の不斉炭素の絶対配置決定方法。 - キラル化合物が、1)一級アミン、2)二級アミン、3)一級ジアミンおよび4)二級ジアミンからなる群から選択される1種である請求項1に記載の方法。
- 式(1)におけるRa〜Rdのうち少なくとも一つが、1)炭素数2以上の炭化水素基、2)含酸素置換基、3)含窒素置換基、4)ハロゲン原子および5)ハロゲン化炭化水素基からなる群から選択される1種である請求項2に記載の方法。
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