JP3612722B2 - 衝動水車 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は衝動水車に関し、基本的な構造を改良したものである。
【0002】
【従来の技術】
衝動水車のひとつにターゴインパルス水車がある。ターゴインパルス水車は図4に示すように構成される。水平方向へ伸びるとともに軸受2を介して回転自在に支持された回転軸1の右端が発電機3に連動連結され、左端には放射方向へ伸びるブレードを複数設けたランナ4が取り付けられている。
【0003】
そして、水を高所から低所へ向かって流す鉄管5aには水を分岐させて水平方向へ流すための鉄管5b,5cが接続され、鉄管5b,5cはケース7内まで導かれている。鉄管5bの先端には水をランナ4の上部へ向かって噴射するためのノズル6aが設けられ、鉄管5cの先端には水をランナ4の下部へ向かって噴射するためのノズル6bが設けられている。そして、ノズル6a,6bの内部には、コーン形状のニードルを軸心に沿って移動させることによりノズル6a,6bの先端の孔の断面積を増減し、これによって単位時間当たりの水の吐出量を制御する手段が設けられている。
【0004】
斯かる衝動水車では、2つのノズル6a,6bからランナ4へ向かって水を噴射することから、より多くの水をエネルギー変換でき、しかもノズル6a,6bは回転軸1に対して対称な位置にあることから、回転軸1に偏荷重が加わるようなことはない。
【0005】
図4のようにノズルを2組設けた場合に噴射される水の断面積の最大値は、ノズル6a,6bの内部断面形状が円形であるため、ノズルの内径寸法をdとするとS=(1/4)πd×2となる。2本のノズル6a,6bから噴射される水の量Qは、水の流速をVとすると、
=(1/4)πdV×2
となり、ランナの平均直径をDとするときにD/dは4.5程度しかとれないことから、d=D/4.5を代入すると、
Figure 0003612722
となる。ここで、水の有効落差をhとすると水の流速Vは、V=√(2gh)と表すことができる。
【0006】
なお、図4ではノズルが2本の場合を示したが、ノズルが1本のものもある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ランナのうちの水が当たる部分は回転軸の上方と下方の2ケ所のみであり、ランナの円周に沿って全体が有効に利用されているわけではないので無駄がある。また、ランナの両側からランナに対して水を噴射するため鉄管の配置に多くのスペースを使用し、図4にWで示すように衝動水車の占める面積が大きい。たとえノズルの数を単一にしても鉄管が大きく水平方向へ突出するために、やはり占有面積が大きい。
【0008】
そこで本発明は、斯る課題を解決した衝動水車を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
斯る目的を達成するための本発明の構成は、鉛直方向に沿う回転軸にランナを固着し、落下する水が前記回転軸のまわりを回って流れるための円周流路を形成し、円周流路を流れる水を前記ランナへ向かって斜め下方へ落下させるための放出流路を、前記回転軸のまわりに略等間隔に複数形成し、前記円周流路の断面積を前記円周流路の水が流れる方向に沿って徐々に小さくしたことを特徴とする。
【0010】
【作用】
高所から流れる水は、円周流路を流れることにより回転軸のまわりをまわり、まわりながら放出流路より噴射され、斜め下方へ落下してランナに衝突する。円周全体からランナへ水が噴射されることから、多量の水がランナに衝突し、衝動水車の効率を上げることができる。
【0011】
【実施例】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
【0012】
本発明による衝動水車の構成を、図1〜図2に示す。鉛直方向へ伸びる回転軸11が軸受12を介して回転自在に支持され、回転軸11の下端には放射方向へ伸びる複数のブレード13aを有するランナ13が固着される一方、回転軸11の上端は図示しない発電機に連動連結されている。
【0013】
そして、高所から落下する水を誘導して回転軸11のまわりを水が回りながらランナ13のブレード13aに噴射されるようにするため、円周流路14を形成するケーシング15が設けられる。ケーシング15は、図2に示すように入口フランジ15aから流入した水が徐々に断面積の小さくなる円周流路14を通って回転軸11のまわりを回るようにフランシス水車と同様な渦巻状に形成される。ケーシング15はボルト16を介して軸受12に結合され、ケーシング15に結合した中間シールリング17及びシール18を介して回転自在に、回転軸11がケーシング15を貫通している。
【0014】
円周流路14を流れる水を円周流路14の内側からブレード13aへ向かって斜め下方へ落下させるための放出流路が円周に沿って等間隔に4本形成される。即ち、ケーシング15の内側が下方へ向かって円周全体に亘って開口しており、円周に沿って開口する部分には略リング状のガイドベーン19が回動可能に設けられるとともにベーン押え20により抜け止めされ、ガイドベーン19と円周流路14との間にはステーベーン21がケーシング15と一体に形成されている。ガイドベーン19には放射方向へ向かって1本の操作レバー22が形成され、操作レバー22は図示しないサーボモータに連動連結されている。23は排出案内筒、24はケーシングボスである。
【0015】
次に、ステーベーン21とガイドベーン19とランナ4との関係をこれらの部材を円周に沿って展開した図3に基づいて説明する。ステーベーン21には案内羽根21aが形成されて水を流す放出流路21bと水を流さない閉塞部21cとが夫々4ケ所形成される一方、ガイドベーン19には案内羽根19aが形成されて水を流す放出流路19bと水を流さない閉塞部19cとが夫々4ケ所形成されている。案内羽根19aは案内羽根21aと略平行に設けられ、案内羽根19aと水平面とのなす角度である吐水角θは、θ=10°〜30°の範囲内で設定されるが、一般的には15°〜25°の範囲で設定すると最も効率が良くかつ構成上で有利になる。
【0016】
次に、斯かる衝動水車の作用を説明する。図2の入口フランジ15aからケーシング15内へ流入した水は、円周流路14内を流れ、図2に示すように回転軸11をとりまくように一周しながら、4本の放出流路21b,19bよりランナ13のブレード13aへ向かって放出される。つまり、ランナ13の全周にわたって4ケ所から均等に水が放出されることになる。そして、ランナ13へ向かって放出される水の量は、以下のようにして制御される。
【0017】
図示しないサーボモータにより操作レバー22を操作すると、ガイドベーン19が回転軸11を中心として回動する。図3においてステーベーン21が固定されていることから、ステーベーン21の放出流路21bにガイドベーン19の閉塞部19cが重なると放出流路は閉じた状態になり、ランナ13へ向かって水が流れなくなる。ステーベーン21の放出流路21bにガイドベーン19の放出流路19bが完全に重なると放出流路は全開の状態となり、ランナ13は最高の回転数になる。放出流路21bの幅Lだけガイトベーン19を回動させることにより、ランナ13へ向かって流れる水の量を0から最大値まで変化させることができる。
【0018】
図1に示すようにガイドベーン19の放出流路19bの幅をBとすると、図3に示すように放出流路19bと閉塞部19cとの占める部分は略半々であることから、水の流れる部分の面積Sは、
S=B×πD×(1/2)
となり、水の流速をVとするとランナ13へ流れる水の流量Qは、
=B×πD×(1/2)×V
となる。ここでB=dとおくと、前記の式からB=D/4.5と置き換えることができる。また、流量Qはθ=90°のときに最大となりQはsinθに比例することから、例えばθ=25°とすると、
=(D/4.5)×πD×(1/2)×V×sin25°
≒0.14DV…(2)
になる。(2)式を前記の(1)式と比較すればわかるように従来の衝動水車における水の流量に対して流量が1.8倍になる。同一の大きさのランナを用いた場合に、従来のノズルの内径寸法dに比べて本発明による衝動水車ではガイドベーン19の放出流路19bの幅Bを大きくとることができ、B=1.1〜1.2dにすることができることから、
Figure 0003612722
となる。つまり、本発明による衝動水車では従来の衝動水車に比べて2倍以上の量の水をランナへ流すことができ、その分だけ効率が向上する。
【0019】
なお、本実施例では放出流路を円周に沿って4本形成したが、本数はこれに限らず任意に選択できる。
【0020】
【発明の効果】
以上の説明からわかるように、本発明による衝動水車によれば円周流路と放出流路を介して噴射された水が斜め下方へ落下してランナに衝突するので、ランナの円周全体に水を噴射することになり、従来の衝動水車に比べて2倍以上の流量の水をランナに噴射することができる。従って、大出力の衝動水車を得ることができる。
【0021】
また、出力が大きくなるということは換言すれば出力を同一にすれば衝動水車を小形化できるということであり、衝動水車の据付面積が小さくて済む。しかも小形化できるということはより高速回転が可能ということでもあり、発電機の極数を少なくできて発電機も低コストの小形のもので足りることになる。
【0022】
更に、ランナの円周の略全体に亘って水を噴射するので、ランナの軸心に対して均等に荷重が加わり、回転軸を支持するための軸受等の強度が小さくて済む。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による衝動水車の実施例を示す断面図。
【図2】本発明による衝動水車の実施例を示す平面図。
【図3】本発明による衝動水車の実施例に係り、ケーシング等の展開図。
【図4】従来の衝動水車の平面図。
【符号の説明】
11…回転軸
12…軸受
13…ランナ
14…円周流路
19…ガイドベーン
21…ステーベーン
19b,21b…放出流路

Claims (1)

  1. 鉛直方向に沿う回転軸にランナを固着し、落下する水が前記回転軸のまわりを回って流れるための円周流路を形成し、円周流路を流れる水を前記ランナへ向かって斜め下方へ落下させるための放出流路を、前記回転軸のまわりに略等間隔に複数形成し、前記円周流路の断面積を前記円周流路の水が流れる方向に沿って徐々に小さくしたことを特徴とする衝動水車。
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