JP3611364B2 - 単結晶の直径制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、チョクラルスキー法(以下、CZ法という。)による半導体用シリコンなどの単結晶を製造する際の単結晶の直径制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
IC、LSIなどの製造に用いるシリコンなどの単結晶は、通常、CZ法により製造されている。CZ法は、図14に例示するように高純度の石英坩堝2の中にシリコン多結晶を入れて、回転軸7により石英坩堝2を回転させながら外部からヒータ4により加熱溶融し、このシリコン多結晶の溶融液9中に引上げワイヤー6の先端部に支持されたシリコン単結晶(種結晶)を浸漬して、次いで引上げワイヤー6をゆっくりと引上げながら徐冷し、シリコンの多結晶を単結晶10に転化することによりシリコン単結晶を製造するものである。
【0003】
この場合、シリコン単結晶の直径を精確に制御することは、生産ロスを防止して製品歩留りを高めるために極めて重要であり、信頼性の高い単結晶引上げ時の炉内監視システムの構築が必要とされている。
【0004】
従来、CZ炉内で成長中の単結晶の監視および制御には、一次元ラインセンサー、工業用CCDカメラなどを用いて単結晶の成長部、すなわち単結晶凝固部と溶融液との境界のメニスカス近傍に発現するブライトリングを利用して行われている。このブライトリングは、単結晶ロッドと側面ヒータからの熱反射像が重畳して形成されるものであり、ブライトリングの内径あるいは外径を単結晶直径と近似するものとして直径を制御している。
【0005】
例えば、特開昭63−100097号公報には、単結晶の成長部周囲にフュージョンリング(ブライトリング)として発現する2本の光輝環のうち、内側の光輝環の直径を単結晶成長部の直径として光学測定することにより単結晶の直径を測定する方法が提案されている。この方法は、一次元ラインセンサーを使用し、CCDカメラまたはアレイセンサーなどの光学検出素子を用いて内側の光輝環について得られるピーク間の実長を検出し、単結晶の直径として測定することにより、より高精度に直径の検出を可能としている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この測定方法では単結晶ロッドに揺れが生じ、偏芯が起こると固定された一次元ラインセンサーを使用しているために測定される光輝環の幅が変化して、実際の直径より小さく測定される欠点がある。この揺れに対応するためには二つ以上の検出器を設置するか、あるいは揺れに対応する移動機構をセンサーに取り付ける必要があり構造が複雑化し、またCCDカメラを用いる場合では水平方向の画素数が一次元ラインセンサーの画素数2000〜4000に対して1/5程度であるため空間分解能に劣る欠点がある。
【0007】
本発明者等は、この難点を解消し、単結晶の直径を精確に制御する方法について研究を重ねた結果、凝固点の位置を特定できれば高精度の直径制御を行えること、ならびに測定領域を限定し、映像を拡大することにより精確な直径制御を可能とする単結晶の直径制御方法を開発したものである。すなわち、本発明の目的は、CZ法により単結晶を製造する際に引上げ単結晶の直径を精確に制御し、よって製品歩留りの向上を図ることができる単結晶の直径制御方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明による単結晶の直径制御方法は、チョクラルスキー法により単結晶を製造する方法において、単結晶ロッドと溶融液との境界部に発現するブライトリングを、二光束レンズを備えた近赤外までの感度を有する二次元CCD赤外線カメラ装置を用いて観測し、ブライトリングの輝度温度分布のピーク位置を凝固点として、該凝固点位置上の2カ所の変位ベクトルの軌跡を制御することを構成上の特徴とする。
【0009】
一般に光学的な測定においては、外乱光の要因を除去する必要があり、特にシリコンのように放射率が0.3〜0.6と低く、かつ大きく変化する場合には黒鉛ヒータなどの反射光による影響を無視できない。外乱光は可視光領域にあるので、外乱光の影響を排除してメニスカスの大きさの変化やブライトリングの光量変化などの影響に左右されずに結晶の温度情報を正しく捉えるために、本発明においては近赤外までの感度を有するCCD素子を取り付けた赤外線カメラが用いられ、700〜1100nmの限られた波長帯域の近赤外線を測定対象とする。また、狭い覗き窓から単結晶引上げ装置内のメニスカスのブライトリング近傍のみの熱画像を測定できる二光束レンズを使用して、CCD素子上に2ヶ所の熱画像を結像させる。この二光束レンズの倍率を4〜8倍に設定することにより、CCD素子の空間分解能を一次元ラインセンサーの空間分解能と同等以上とすることが可能となる。
【0010】
本発明は二次元CCDカメラ装置を用いるので、ブライトリングの観測範囲は図2に示すように二次元で輝度を観測することができ、その一部を拡大して図3に、またY軸方向の輝度温度の分布を図4に示した。図4の輝度温度分布曲線のピーク位置が単結晶の凝固点位置と一致し、このピーク位置とブライトリングの接線方向(X軸)および法線方向(Y軸)の2つの座標軸のうちY軸との交点の変位ベクトルの軌跡、すなわち曲率半径の変位ベクトルを平面上にプロットすると、図5のように表され、この変位ベクトルの軌跡から直径および偏芯の大きさを計測することができる。
【0011】
直径制御は、製造する際の目標である目標直径と製造された単結晶ロッドの実際の直径との偏差を、より小さくすることであり、以下、本発明の単結晶の直径および偏芯を計測制御する方法について、詳しく説明する。
【0012】
目標とする単結晶の直径が決められた場合、監視画面上には「この位置に凝固点がくるはず」という位置が存在する。カメラを設置するときに位置決めをしておくことにより、図6に概念的に示すように、例えば目標直径が150mmのときは画面上のaの位置に、160mmの場合はbの位置に、輝度分布のピークラインがくることを予め予測することができる。このピークラインが、後述する曲率半径の変位ベクトルを制御するためのベクトルe、eを求めるときの基準となるものである。
【0013】
実際の監視画面上におけるブライトリングの画像は図1に模式的に示したように現れ、目標直径のピークラインおよび2つの基準軸(X軸、X’軸はピークラインの接線方向、Y軸、Y’軸は法線方向、すなわち単結晶ロッドの中心方向)は測定開始前に決定しておく。なお、A、B点は基準軸のY軸およびY’軸とブライトリングの輝度分布のピークラインとの交点である。
【0014】
図1において、e、eの2つのベクトルを(1) 式、(2) 式のように定義する。ベクトルe、eは目標直径と実際の直径との偏差である曲率半径の差を示すものであり、この変位ベクトルが小さい程、目標直径に近づけることができる。
【0015】
【数1】
Figure 0003611364
【0016】
【数2】
Figure 0003611364
【0017】
直径だけが変化する場合:
この場合e、eの大きさ、すなわちy、y’の値の変化量は同じである。このときの輝度分布曲線のピークラインは画面上に図7のように現れ、ベクトルの軌跡は、e、eがともに同じ量だけ変化することから図8に示すように原点を通る直線上を移動することになる。したがって、ベクトルの軌跡が図8の座標軸の原点にくるように単結晶ロッドの引上げ速度や坩堝の回転速度などを調節することにより、直径を制御することができる。
【0018】
偏芯だけが起こっている場合:
画面上に現れる輝度分布曲線のピークラインを図9に示した。この場合はe、eの変化量が等しくないために、偏芯による中心位置のずれを示すベクトルの軌跡は図10のように表される。偏芯の大きさは、図10において図形上の点と原点との距離で決まり、偏芯の中心はその図形を積分した位置に等しくなる。そのため図形の形と大きさは偏芯の種類と程度を示す指標となり、積分位置が原点であれば、その単結晶ロッドは偏芯だけを起こしていることが判る。したがって、ベクトルの軌跡が原点にくるように、また積分値が小さくなる方向に制御すればよいことになる。
【0019】
直径変化および偏芯が同時に起こっている場合:
このときのベクトルe、eの軌跡を図11に示した。この場合には、図形の面積を小さくする方向および図形の中心位置が原点に近づく方向に制御すればよいことになる。
【0020】
このようにして、単結晶の直径および偏芯を計測制御することが可能となる。
【0021】
【作用】
本発明は、二光束レンズを備えた近赤外までの感度を有する二次元CCD赤外線カメラを用いるので、ブライトリング近傍のみを観測することが可能であり、しかも1つのCCD素子上に2ヶ所の熱画像を結像できるので、効率的に画像処理することができる。更に、凝固点位置をブライトリング輝度のピーク位置としているため、外乱光やメニスカスの大きさの変化あるいは光量変化によるブライトリングの変化にも影響されずに対応することができる。
【0022】
したがって、ブライトリングの輝度を測定し、画像処理して得られる輝度分布曲線の画像から単結晶ロッドの凝固点位置および目標直径のピーク位置とY軸、Y’軸との交点である曲率半径の変位ベクトルの軌跡を求めることにより、単結晶ロッドの直径および偏芯を計測制御しながら、引上げ速度および坩堝回転数などを調節して、単結晶ロッドの直径を高精度に制御することが可能となる。
【0023】
【実施例】
図12はブライトリングを観測し、輝度温度分布を測定するための熱画像を結像させる装置を例示した全体構成図である。図12において1は単結晶引上げ装置であり、石英坩堝2の中に入れたシリコン多結晶をヒータ4により加熱溶融し、このシリコン溶融液9の中に引上げワイヤー6の先端部に支持されたシリコン種結晶を浸漬し、引上げワイヤー6を回転させながら徐々に引上げることにより単結晶を成長させて、シリコン単結晶ロッド10を製造する。シリコン単結晶ロッド10の直径を計測するため、覗き窓11、二光束レンズ12およびCCD赤外線カメラ13よりなる二次元CCD赤外線カメラ装置を用いて、単結晶引上げ装置1の斜め上方からシリコン単結晶ロッド10の成長部に発現するブライトリングを観測した。なお、二光束レンズの倍率は5倍に設定し、空間分解能を1ライン当たり3500とした。観測結果は画像処理装置14により画像処理して、監視画面15上に映像化した。
【0024】
監視画面15からブライトリングの輝度温度分布を測定し、凝固点は輝度温度分布のピーク位置と一致し、ブライトリング半値幅はメニスカス曲率半径と正確に対応することから、次の手順で測定を行った。
(1) 凝固点を輝度温度分布のピーク位置から求める。
(2) ピークが常に指定位置にくるように引上げ速度を制御する。
(3) 単結晶ロッドの直径(D)と偏芯距離(d)から偏芯(d/D)を測定する。
(4) Dが一定となるように融液温度を制御する。
【0025】
以上の手順により、CZ炉で引上げ時の基本条件を、シリコンの融液温度;1480℃、引上げ速度;80mm/hr 、坩堝回転数;10 rpm、引上げ軸回転数;10 rpmとしてシリコン単結晶の引上げ制御を行った。
計測されたシリコン単結晶ロッドの直径および偏芯の時間変化を図13に示した。
【0026】
図13の結果から、偏芯が大きくなってもシリコン単結晶ロッドの直径は変わらず、精確に制御されていることが判る。その結果、従来は150mmの製品を切り出す場合、シリコン単結晶ロッドは約165mmの直径が必要とされていたが、本発明の方法を適用することにより直径155mmで製品の切り出しが可能であった。
【0027】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の単結晶の直径制御方法によればメニスカスの大きさの変化や光量変化によるブライトリングの変化に対応することができ、また、精確な凝固点位置を計測できるので、より厳密な直径制御ならびに偏芯制御が可能となり、製品歩留りを大幅に向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ブライトリングの画像を例示した説明図である。
【図2】本発明によるブライトリングの観測範囲を示した模式図である。
【図3】本発明により観測されるブライトリングの輝度を二次元的に例示した模式図である。
【図4】本発明により観測されるブライトリングのY軸方向の輝度温度分布を例示したグラフである。
【図5】ブライトリングのピーク位置と2つの座標軸との交点の変位ベクトルの軌跡を例示したグラフである。
【図6】画面上の目標直径の位置を示した概念図である。
【図7】直径だけが変化する場合の輝度温度分布曲線のピークラインの画像を例示した説明図である。
【図8】直径だけが変化する場合のベクトルの軌跡を例示したグラフである。
【図9】偏芯だけが起こっている場合の輝度温度分布曲線のピークラインの画像を例示した説明図である。
【図10】偏芯だけが起こっている場合のベクトルの軌跡を例示したグラフである。
【図11】直径変化および偏芯が同時に起こっている場合のベクトルの軌跡を例示したグラフである。
【図12】本発明の輝度温度分布を計測し、熱画像を結像させる装置を示した全体構成図である。
【図13】単結晶ロッドの直径および偏芯の時間変化を例示したグラフである。
【図14】CZ法による単結晶の引上げ装置を示した断面図である。
【符号の説明】
1 単結晶引上げ装置
2 石英坩堝
3 炭素坩堝
4 ヒータ
5 熱遮断体
6 引上げワイヤー
7 回転軸
8 台座
9 シリコン溶融液
10 シリコン単結晶ロッド
11 覗き窓
12 二光束レンズ
13 CCD赤外線カメラ
14 画像処理装置
15 監視画面

Claims (2)

  1. チョクラルスキー法により単結晶を製造する方法において、単結晶ロッドと溶融液との境界部に発現するブライトリングを、二光束レンズを備えた近赤外までの感度を有する二次元CCD赤外線カメラ装置を用いて観測し、ブライトリングの輝度温度分布のピーク位置を凝固点として、該凝固点位置上の2カ所の変位ベクトルの軌跡を制御することを特徴とする単結晶の直径制御方法。
  2. 二光束レンズの倍率を4〜8倍とする、請求項1記載の単結晶の直径制御方法。
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