JP3611232B2 - ヌクレオチド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は遺伝子工学の分野で有用なヌクレオチド及び該ヌクレオチドの利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゲノム解析プロジェクトの進展により急速に遺伝情報の蓄積がなされてきたが、個々の遺伝子の機能を知る上で遺伝子の発現様式(profile )を調べる研究がますます求められている。
例えば癌遺伝子であるC−erB2遺伝子の過剰発現が乳癌、卵巣癌、胃癌、子宮癌等において確認されている[ライトC.(Wright,C.)ら、キャンサー リサーチ(Cancer Research)、第49巻、第2087〜2090頁(1989)、サファリB.(Saffari,B.)ら、キャンサー リサーチ、第55巻、第5693〜5698頁(1995)]。このような場合、mRNAを指標とした解析が有用である。例えば、病変細胞とそれに対応する正常細胞よりそれぞれmRNAを調製し細胞当り存在量の異なるmRNA分子が病因となる遺伝子より転写されたmRNA分子であると推定できる。この際様々なRNA解析手法が用いられる。
遺伝子あるいはmRNAに相補的なDNA(以下、cDNAと称する)の塩基配列が既知で、疾患との因果関係が指摘されている場合、該mRNAに特異的なプローブあるいはプライマーを作成し、in situ ハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、ドットあるいはスロットブロット、及びヌクレアーゼプロテクションアッセイや目的cDNAのみを特異的に増幅させることが可能なプライマーを用いたRT−PCR法等を利用できる。
しかし病因遺伝子の塩基配列情報が得られていない場合、あるいは発現量の異なる遺伝子から病因遺伝子を同定する場合については上記方法を利用することができない。このような場合サブトラクティブ ハイブリダイゼーション(Subtractive Hybridization )法[ツィムメルマンC.R.(Zimmermann, C.R.)ら、セル(Cell)、第21巻、第709〜715頁(1989)]、リプレゼンテーショナル ディファレンス アナリシス(Representational Difference Analysis)(RDA)法[リシツィンN.(Lisitsyn, N.)ら、サイエンス(Science )、第259巻、第946〜951頁(1993)]、分子インデックス法[特開平8−322598号公報]、RAP−PCR(RNA fingerprinting by Arbitrarily primedPCR)法[ウェルシュJ.(Welsh, J. )ら、ヌクレイック アシッズ リサーチ(Nucleic Acids Research)、第20巻、第4965〜4970頁(1992)]及びディファレンシャル ディスプレイ RT−PCR(Differential Display RT−PCR :DDRT−PCR)法[ライアンP.(Liang, P. )、及びパーディA.B.(Pardee, A.B.)、サイエンス、第257巻、第967〜971頁(1992)]等が好適に使用できる。このうち逆転写反応及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)からなるRT−PCR法を利用した方法は▲1▼操作的に極めて簡便、▲2▼少量のRNAさえ入手できれば実行することができる、▲3▼多サンプル間の遺伝子発現の差異を同時に比較することが可能である、等の長所を有し、また様々な改良法も提案されている。
すなわち遺伝子発現を比較したい組織の細胞から調製したmRNAを各々鋳型としたRT−PCRにより得られる各組織由来細胞のフィンガープリントのバンドを比較し、異なるシグナル強度を示すバンドを与えるPCR産物がディファレンシャルな発現をする遺伝子に由来するPCR産物であると推定される。一般的なRT−PCRのプライミング(priming)法には(T)n で表される構造(Tはチミン、nはTの繰り返し数を意味し、通常12〜18に設定される)のヌクレオチドをプライマー(以下、オリゴTプライマーと称する)として使用するが、オリゴTプライマーを用いた場合すべてのmRNA由来のcDNAが得られるためゲル電気泳動などを利用して得られたフィンガープリント解析することは困難である。更にmRNAのポリA配列(Aはアデニンを意味する)にオリゴTプライマーがハイブリダイズする位置が一定しておらず、同一mRNA由来でも様々なサイズのPCR産物が生じるためフィンガープリントによる解析が更に困難になる。したがってフィンガープリントで解析可能な程度にmRNA由来のPCR産物をグループ化する必要がある。
【0003】
この問題を解決するためにDDRT−PCR法ではmRNAのポリA配列の第1Aすぐ上流の塩基配列を利用しmRNA由来のPCR産物を分類できるように、(T)n の3’端にT以外の塩基を付加したヌクレオチドを第1プライマーとして利用する。この付加したヌクレオチドよりなる塩基配列はアンカー配列と呼ばれる。
なお本明細書における第1プライマーとは、RT−PCRにおいてmRNAを鋳型とし逆転写反応によるcDNAの第1鎖の合成及びPCRによるcDNAの増幅に使用するプライマーを意味する。また本明細書における第2プライマーとはRT−PCRにおいて第1プライマーと共にcDNAの増幅に使用するプライマーを意味する。
例えば適当な第2プライマーと共に、5’(T)11V3’(VはA、G、Cのいずれか、Gはグアニン、Cはシトシンを意味する)で表される構造の3種類のヌクレオチドを個別に第1プライマーとしたRT−PCRを実施することによりmRNA由来のPCR産物を3種にグループ化することができる。あるいは第1プライマーとして、VN配列(NはA,G,C,Tのいずれか)を配置した5’(T)11VN3’で表される構造の12種類のヌクレオチドを個別に使用したRT−PCRにより、mRNA由来のPCR産物を12種類にグループ化することができる。このようなmRNAをグループ化するために、このPCRの際、例えば基質として[α−32P]dCTP又は[α−35S]dATPを用いるとRI標識されたPCR産物を得ることができる。次いで得られたRI標識PCR産物を熱変性した後、ポリアクリルアミド変性ゲル電気泳動後オートラジオグラフィーによるフィンガープリントが得られる。
【0004】
一方、DDRT−PCR法の短所は、フィンガープリント上で擬陽性のバンドが多いなど再現性が低いことにある。これはPCRに採用されている反応条件が至適条件より外れていることが挙げられる。上記問題は、例えば5’(T)12VN3’の5’側にGCGCAAGCを付加した22merの12種類のDNA[米国特許第5580726号]や、5’(T)15VN3’の5’側に5’リン酸基をフルオレセイン標識したデオキシグアノシン−5’−3リン酸(5’−GTP)を付加した18merの12種類の蛍光標識したDNA[イトウT.(Ito,T.)、FEBSレターズ(FEBES Letters)、第351巻、第231〜236頁(1994)]を、第1プライマーとして使用することにより改善されつつある。
一方、PCRでは2種類のヌクレオチドを増幅用プライマー対として用いるが、使用するヌクレオチドのプライミング効率が同等でないと目的のPCR産物の合成効率が低下するだけでなく、増幅用プライマー対のいずれかのプライマーに偏ったDNA合成が起こり目的物以外のPCR産物が生じることが報告されている[グラフ D.(Graf,D.)ら、ヌクレイック アシッズ リサーチ、第25巻、第2239〜2240頁(1997)]。なお本明細書におけるプライミング効率とは、プライマーと鋳型核酸の複合体形成の安定性に基づく核酸伸長反応開始効率を意味する。DDRT−PCR法及びその改良法にプライマーとして使用されるヌクレオチドにおいて、第2プライマーはGC含量50%程度の10mer程度の長さであるランダムな塩基配列を有するヌクレオチドで、各々のプライミング効率が近似しているヌクレオチドが用いられる。しかしながら第1プライマーとして用いるヌクレオチドは同一構造のヌクレオチドにアンカー配列を付加した構造のヌクレオチドであり、各ヌクレオチドのプライミング効率が同等であるとは言えない。したがってDDRT−PCR法の上記改良方法は、ディファレンシャルな発現を行う遺伝子のmRNA由来のPCR産物を効率的に得ているとは言い難かった。
【0005】
一方、ディファレンシャルな発現をする遺伝子のmRNA由来のPCR産物が得られれば、更に詳細に解析するために塩基配列を決定する場合が多い。塩基配列決定法にはDNAポリメラーゼ反応を利用したダイデオキシ法[サンガーF.(Sanger,F.)ら、プロシーディングズ オブ ザ ナショナル アカデミー オブ ザ サイエンシーズ オブ ザ USA(Proceedingsof the National Academy of the Sciences of the United States of America)、第74巻、第5463〜5467頁(1977)]を基本としたシークエンス方法が繁用されている。しかしDNAポリメラーゼ反応は、同一塩基が連続した領域が存在するとその配列の繰り返し数を間違い、その部分で2〜3塩基長さの異なったDNAを生じることが知られている。鋳型DNAを大量に使用したシークエンス方法の場合、DNAポリメラーゼによる反応は1回で済み、上記配列の繰り返し数が異なったDNAはバックグラウンドとして現れるが比較的問題となりにくい。
一方、少量のPCR産物を鋳型に用い、DNAポリメラーゼによる反応を繰り返すサイクルシークエンス方法[キャロザース A.M.(Carothers,A.M.)ら、バイオテクニクス(Bio Techniques)、第7巻、第494〜499頁(1989)]等は配列の繰り返し数が異なったDNAが蓄積され塩基配列の解読が不可能になることが報告されている[斉藤ら、蛋白質核酸酵素、第41巻、第522〜530頁(1996)]。したがって例えばDDRT−PCR法で得られたPCR産物の3’末端の様にAが連続した領域に隣接した領域の塩基配列をDNAポリメラーゼを用いた方法で解析する場合、サブクローン等を行い十分な鋳型DNAを調製する段階が必須であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的はディファレンシャルな発現をする遺伝子をRT−PCRを用いて解析する方法において、ディファレンシャルな発現を行う遺伝子のmRNA由来のPCR産物を効率的に得ることができるヌクレオチドを提供することにある。また本発明の目的はDNAポリメラーゼを用いた塩基配列決定方法において、Aが連続した領域周辺の塩基配列を少量の鋳型DNAで決定するために使用するヌクレオチドを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は、下記から選択されるヌクレオチドに関する。
【0008】
(1)5’端がROX(カルボキシ−X−ローダミン)、TexasRed[9−〔4(若しくは2)−スルホフェニル−2,3,6,7,12,13,16,17−オクタヒドロ−1H,5H,11H,15H−キサンテノ〔2,3,4−ij:5,6,7−i’j’〕ジキノリジン]、又はCy3.5[3−(e−カルボキシペンテニル)−1’−エチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−(1,3−ジスルホネート)ジベンゾ−カルボキシシアニン]のいずれか1種により標識された配列番号1〜10のいずれかに示す塩基配列で表されるヌクレオチド、
【0009】
(2)5’端がFITC又はFAMのいずれか1種により標識された、配列表の配列番号1〜10、13、14のいずれかに示す塩基配列で表されるヌクレオチド、
【0010】
本発明の第2の発明は、第1の発明のヌクレオチドをプライマーとして使用することを特徴とする核酸の合成方法に関する。
【0011】
本発明の第3の発明は、第1の発明のヌクレオチドを構成の必須要件としてなる第2の発明の核酸の合成方法に使用するキットに関する。
【0012】
本発明者らは鋭意検討した結果、下記一般式(化1):
(X)m 5’ (α)nβN 3’ (化1)
で表される構造(Xは標識化合物及び/又は任意配列からなるヌクレオチド、mはXの存在の有無を示す0又は1、αはチミン、nはαの繰り返し数を示す自然数、βはV又はNのいずれか、Vはアデニン、グアニン、シトシンのいずれか、Nはアデニン、グアニン、シトシン、チミンのいずれかを示す)の2種類以上のヌクレオチドにおいて、各ヌクレオチドが同等のプライミング効率を示すように一般式(化1)のnを各ヌクレオチドごとに設定することによりヌクレオチドのプライミング効率を均一化させることが可能であり、ディファレンシャルな発現を行う遺伝子をRT−PCRを用いて解析する方法において、プライミング効率が均一化されたヌクレオチドを第1プライマーとして用いることによりディファレンシャルな発現を行う遺伝子のmRNA由来のPCR産物を効率的に得ることができることを見出した。
更に本発明者らは塩基配列を決定したいDNA中に存在する同一塩基繰り返し領域中の任意の塩基を異なる塩基に変異させ、該変異DNAを用いることにより、同一塩基が連続して存在する領域に隣接する領域の塩基配列をサイクル シークエンス法を用いたDNA塩基配列決定法で解析できることを見出し、該方法に有用なヌクレオチドを開発した。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明において、プライミング効率の決定は、例えばヌクレオチドをPCRのプライマーとして用いることにより実施することができる。PCRにおいて、例えば第2プライマーを固定して、該プライマーが一端に結合したPCR産物数及び量が最大となるよう対となる第1プライマーを設計していけばプライミング効率が同等の第1プライマーとして使用可能なヌクレオチドを得ることができる。なお本発明のヌクレオチドは本発明の塩基配列を有していればデオキシリボヌクレオチド(DNA)に特に限定されず、リボヌクレオチド(RNA)等目的に応じ適宜選択すればよい。また本発明のヌクレオチドは5’端が標識されている。標識方法としては蛍光標識、ラジオアイソトープ(RI)標識、ビオチン標識等が挙げられる。例えば蛍光標識の場合、蛍光標識化合物としてはフルオレセイン系のフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、カルボキシフルオレセイン(FAM)、ローダミン系のカルボキシローダミン(ROX)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、テキサスレッド(Texas Red )、CyDye系のCy3.5,Cy5等が挙げられる。なおヌクレオチドのプライミング効率への影響は、塩基配列のみに依存するものではなく標識化合物にも依存する。したがって第1の発明のヌクレオチドにおいて、βN配列が同一であっても一般式(化1)のnが異なるヌクレオチドが存在する場合がある。
【0014】
第1の発明のヌクレオチドは、該ヌクレオチドの塩基配列に相補的な塩基配列を有する核酸を検出するためのプローブのほか、核酸合成反応におけるプライマーとして使用できる。なお本明細書における核酸の合成方法とはプライマーを用いた酵素反応による合成方法を意味し、例えばDNAポリメラーゼによる逆転写反応、DNA複製反応等が挙げられる。第1の発明のヌクレオチドは、Tの繰り返し配列を有するため、mRNAを鋳型とした逆転写反応やcDNAを鋳型としたPCRによる増幅反応のプライマーとして特に有用である。該ヌクレオチドはRT−PCRの第1プライマーとして使用できるが、ディファレンシャルな発現をする未知遺伝子の解析ではmRNAの3’末端に存在するポリA配列の5’側上流に存在する塩基によりPCR産物をグループ化することが有利であり、上記目的の場合第1プライマーとして例えば一般式(化1)においてβNがTA、TG、TCであるヌクレオチドを用いることができる。
しかしPCR産物のグループ化の点では、上記のβNがTA、TG、TCのいずれかであるヌクレオチドのような1塩基のハイブリダイズより2塩基のハイブリダイズでグループ化する方がより確実である。したがって第1の発明のヌクレオチドをディファレンシャルな発現をする未知遺伝子の解析を目的としたRT−PCRの第1プライマーとして使用する場合には、一般式(化1)のβNがVNで表される12種類のヌクレオチドから選択することが更に好ましい。本法においてGC含量50%前後の10merの非標識DNAを第2プライマーとして用いた場合、第1プライマーとして使用できる本発明のヌクレオチドとして5’端がROX又はTexas Red又はCy3.5のいずれか1種により標識された配列番号1〜10の塩基配列を有する30種のDNA、及び5’端がFITC又はFAMのいずれか1種により標識された配列表の配列番号1〜10、13、14で表される塩基配列を有する24種のDNAを例示することができる。
【0015】
例示した上記60種の第1の発明のヌクレオチドは蛍光標識されているため、該ヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRではDNA検出のためのインナーラベリングが不要でありdNTP濃度を至適条件に設定することができる。例示したヌクレオチドはプライミング効率が同等のため、RT−PCRにおいて該ヌクレオチドを第1プライマーとし、第1プライマーとプライミング効率が同等で適当な塩基配列を有するヌクレオチドを第2プライマーとして用いると再現性のある結果を得ることができる。第2プライマーには配列表の配列番号15〜24で表される塩基配列を有する非標識DNAが好適に使用できる。またRT−PCR法における逆転写反応やPCRにおいて1反応当り第1プライマーとして使用する第1の発明のヌクレオチドの種類は特に限定されず、必要に応じ数種類を組合せて使用してもよい。上記第1プライマーから選択されるヌクレオチド及び第2プライマーから選択されるヌクレオチドを用いたRT−PCRにより得られるフィンガープリントはシグナル強度、バンドの多様性及び鮮明度等が増し、ディファレンシャルな発現を行う遺伝子mRNA由来のPCR産物を得る効率が上がる。
なお第1の発明のヌクレオチドにおいて非標識のヌクレオチドであってもエチジウムブロマイド(Ethidium Bromide)のような核酸染色剤、あるいは化学発光系[ガング A.(Gang, A.)ら、バイオ テクニクス、第20巻、第342〜346頁(1996)]等を用いたDNA検出法を採用すればPCRにおけるdNTP濃度を至適条件に設定することが可能である。
【0016】
本発明の第1の発明のヌクレオチド、例えば例示した上記60種の蛍光標識DNAから選択されるヌクレオチドを第1プライマーとし配列表の配列番号15〜24で表される塩基配列を有する非標識DNAから選択されるヌクレオチドを第2プライマーとして使用するRT−PCRにおいて、PCRにLA−PCR[バーンズ(Barnes)ら、プロシーディングズ オブ ザ ナショナル アカデミー オブ ザ サイエンシーズ オブ ザ USA 、第91巻、第2216〜2220頁(1994)]を採用すると更に次のような特徴が付加される。すなわち1種のみの耐熱性DNAポリメラーゼを使用した通常のPCRに比べ▲1▼増幅産物量の増加、▲2▼耐熱性ポリメラーゼのみでは増幅不能のフラグメントの増幅、▲3▼長鎖のDNA増幅、▲4▼スメアなバンドの消失、が挙げられる。
上記RT−PCRでPCR産物をベクターへのサブクローニングを介さず単離する際、核酸塩基特異的なリガンドを核酸電気泳動用ゲルに添加することにより分子量の似通ったPCR産物であっても核酸塩基組成によりゲル電気泳動で分離することができる。このようなリガンドとしてdA及びdTに結合するH.A.−Yellow(ハンス アナリティックGmbH社製)あるいはdG及びdCに結合するH.A.−Red(ハンス アナリティックGmbH社製)が例示される。
【0018】
本発明の第2の発明のDNA合成反応にはPCRやサイクルシークエンス法等も包含される。第1の発明のヌクレオチドをプライマーとして用いる核酸合成反応としては逆転写反応又はPCR等が例示される。
本合成方法に使用する酵素は特に限定されず、目的に応じ選択すればよい。DNAポリメラーゼではAMVリバース トランスクリプターゼ(ReverseTranscriptase)XL、クレノウフラグメント(Klenow Fragment)、TaKaRa Ex Taq(以上、宝酒造社製)等が例示される。
【0019】
本発明の第3の発明のキットには第1の発明のヌクレオチドのほか、必要に応じ核酸合成に使用する酵素、緩衝液、基質となるdNTP等が組込まれていてもよい。
第1の発明のヌクレオチド及び逆転写反応に必要な試薬から構成されるキットは、mRNAを対象とした解析に好適に使用できる。上記のキットに核酸増幅反応に必要な試薬を加えたキットは、RT−PCRに好適に使用できる。更に上記のキットにサイクルシークエンス法に必要な試薬を加えたキットは、ディファレンシャルな発現を行う未知遺伝子の解析に特に好適に使用できる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例をもって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0021】
実施例1 ヌクレオチドの調製
配列表の配列番号25〜33で表される塩基配列を有する蛍光標識DNA、又は非標識DNAをDNA合成機(アプライドパイオシステムズ/パーキンエルマー社製)を用いて合成した。ヌクレオチドの標識はROX、Texas Red、Cx3.5、FITC、FAMの蛍光標識化合物5種より選択されるいずれか1種を用いた。
配列表の配列番号15〜24で表される塩基配列を有する非標識DNAはDifferential DisplayTM kit(ディスプレイシステムス社製)中のDNAを用いた。
【0022】
参考例1 同等のプライミング効率を示さないヌクレオチドを用いたRT−PCRによるディファレンシャルな発現を行う遺伝子の解析
(1)RNA試料の調製
RNAはヒト低分化腺癌の進行胃癌患者より摘出された胃の癌化病変部と対照正常部の組織細胞より個別に抽出した。
まず、TRIzolTM試薬(ギブコBRL社製)を用い、それぞれの摘出組織より個々にRNAを抽出した。次に得られたRNAそれぞれ50μg を、最終5m M MgCl2 と20単位のRNase阻害剤(宝酒造社製)存在下で10単位のDNaseI(宝酒造社製)と37℃、30分間反応し、ゲノムDNAを除去した。上記方法により病化病変部組織細胞より調製されたRNA試料をRNA試料1、対照正常部組織細胞より調製されたRNA試料をRNA試料2とした。
【0023】
(2)RT−PCRの実施
(1)で調製した2種のRNA及びTaKaRa RNA LA PCRTM
Kit(AMV)Ver.1.1(宝酒造社製)を用いてRT−PCRを実施した。但し、第1プライマーとして5’端をROX標識した配列表の配列番号29で表される塩基配列を有する12種類の蛍光標識DNAを、第2プライマーとして配列番号15〜20で表される塩基配列を有する6種類の非標識DNAを用いた。
逆転写反応は以下のように実施した。まずPCRチューブ(宝酒造社製)にRNA試料200ng、第1プライマーから選択された1種の蛍光標識DNA50pmolを分注し、更にRNase非含水を加え合計10μlとした。該混合液を70℃で10分間加熱処理後、氷中で5分間急冷した。次に該混合液に1×RNA PCR Buffer,5mM MgCl2 ,1mM dATP、dGTP、dCTP、dTTPの等量混合物、20単位のRNase阻害剤、5単位のAMV逆転写酵素から成るRT反応液を加え20μlとし55℃、30分間の酵素反応後、95℃、5分間加熱により酵素を失活させた。
反応終了後TE緩衝液80μlを加え希釈し、1本鎖cDNA試料を作製した。第1プライマーとして用いる蛍光標識DNAを他種に変更した同様の逆転写反応を実施し、RNA試料1種当たり12種類の1本鎖cDNA試料を得た。
続くPCRによる核酸増幅反応は、個々の1本鎖cDNAを鋳型とし、逆転写反応時にプライマーとして用いたヌクレオチドと第2プライマーから選択された非標識DNA1種をプライマー対として実施した。
PCR時の反応液20μl中の組成は1×LA PCR Buffer II(Mg2+Free)、1.35mM MgCl2 、100μM dATP、dGTP、dCTP、dTTPの等量混合物、0.5単位LA Taqポリメラーゼ、0.3μM 第1プライマー、0.5μM第2プライマー及び2μl一本鎖cDNA試料溶液から成る。増幅は94℃で2分,40℃で5分,72℃で5分からなる工程を1サイクル,次に94℃で30秒,40℃で2分,72℃で1分からなる工程を34サイクル行った後最終的に72℃で5分間反応させた。
反応終了後、等量の95%ホルムアミドを添加し、ゲル電気泳動用試料とした。
第2プライマーとして用いるヌクレオチドを変更した同様のPCRを実施し、cDNA試料1種当り6種類の電気泳動用試料を得た。
【0024】
(3)フィンガープリントの比較
第1プライマー及び第2プライマーとして使用したヌクレオチドの組合せが同一のRNA試料1及びRNA試料2由来電気泳動用試料を対とし、更に第1プライマーとして使用したヌクレオチドが同一の6対の電気泳動用試料を1群として、以下の方法によりフィンガープリント画像を得た。
まず電気泳動用試料は熱変性にて一本鎖に解離させ、各検体につき3μlを7M尿素変性4%ポリアクリルアミドゲルに通した。40W定電圧で約3時間泳動後、ゲル板を泳動槽からはずし、ガラス面を洗浄し蛍光バイオイメージアナライザーFMBIO II Multi View(宝酒造社販売)にセットしスキャニングを行った。
図1〜図3に第1プライマーとして各々VNがGG、AG、AAである蛍光標識DNAを用いた場合のフィンガープリント画像を写真として示す。図中N、Tはそれぞれ対照正常部、癌病変部を、15〜20の数字は第2プライマーに使用した非標識DNAの塩基配列を示した配列表の配列番号を示し、またMはDNA分子量マーカーを示す。図1、図2共第2プライマーとして使用した非標識DNAの組合せを変えているにもかかわらず得られるフィンガープリントのパターンはわずかにしか変化していない。一方図3のフィンガープリントのパターンは多様性に富みディファレンシャルな発現を示唆するバンドが多数見られる。
これは第1プライマーとして使用したVNがAAである蛍光標識DNAは第2プライマーとして使用した非標識DNAとプライミング効率が近似しているため蛍光標識DNAと非標識DNAがが増幅用プライマー対として機能した結果と考えられた。一方、第1プライマーとして使用したVNがGG又はAGである蛍光標識DNAは第2プライマーとして使用した非標識DNAとプライミング効率がかけ離れているため、主として蛍光標識DNAのみが増幅用プライマー対として機能した結果であると考えられた。この結果得られたPCR産物は両端に蛍光を有するためシグナル強度が高くフィンガープリント画像上強調されてみえる。
【0025】
一方、第1プライマーとしてTの繰り返し数が14である配列表の配列番号28で表される塩基配列を有する12種類のROX標識したDNA、第2プライマーとして配列番号15〜20に示す配列を有する6種類の非標識DNAを用いた上記RT−PCRによるフィンガープリントも得た。図には示さないが、VN配列がAA、ATの蛍光標識DNAを第1プライマーとして用いるとフィンガープリントのシグナル強度が弱く好ましくなかった。また標識を他の蛍光物質すなわちTexas Red、FAM、FITC、Cy3. 5に変えても同様の結果を示した。
【0026】
実施例2 プライミング効率が同等なヌクレオチドを第1プライマーとして用いたRT−PCRとプライミング効率が同等でないヌリレオチドを第1プライマーとして用いたRT−PCRの比較
(1)プライミング効率が同等なヌクレオチドの選択
配列表の配列番号26〜31で表される塩基配列を有する蛍光標識DNA72種よりプライミング効率が同等なヌクレオチドの選択を行った。なお標識に用いた蛍光標識化合物はROX、Texas Red、FAM、FITC、Cy3. 5の5種である。プライミング効率の決定は、参考例1で実施したRT−PCRにおける第1プライマーを72種の蛍光標識DNAから選択された1種、及び第2プライマーを配列番号15〜24に示す塩基配列を有する非標識DNAから選択された1種に変更したRT−PCRにより得られるフィンガープリントを用い実施した。また参考のため非標識DNAを加えずに反応し蛍光標識DNA1種のみをプライマーとして機能させたフィンガープリントも得た。フィンガープリントのシグナル強度、バンドの多様性、及び鮮明度、差のあるバンドの見付けやすさ等の観点からプライマー効率が同等のヌクレオチドを選択した。図4〜図6に膨大な実験結果のうちの一例を示す。なお図中nは該フィンガープリントを得るために使用した蛍光標識DNAの塩基配列におけるTの繰り返し数を示し、15〜17の数字は配列表の該配列番号の塩基配列を有する非標識DNAを用いて得られたフィンガープリントであることを示す。また−は非標識DNA無添加により得られたフィンガープリント、Mは分子量マーカーにより得られたバンドパターンであることを示す。またN,Tはそれぞれ対照正常部と癌病変部のバンドであることを示す。
【0027】
図4は、蛍光標識DNAとしてVNがGCであるROX標識された配列表の配列番号27〜29で表される塩基配列を有するROX標識されたDNAを用い得られたフィンガープリントを示す写真である。nが15では400bp以上のバンドの多くは蛍光標識DNAのみがプライマーとして機能した結果得られたバンドであり、nが13の場合でも蛍光標識DNAのみがプライマーとして機能した結果得られたバンドが強いシグナルを示した。よってVNがGCであるROX標識されたDNAを第1プライマーとして用いる場合、nが14であるDNAを選択した。
図5は、蛍光標識DNAとしてVNがAAであるROX標識された配列表の配列番号29〜31で表される塩基配列を有するROX標識されたDNAを用い得られたフィンガープリントを示す写真である。nが16、17と増すとフィンガープリント全体のシグナル強度は増すが蛍光標識DNAのみがプライマーとして機能したバンドが目立ち、またバンドがスメアーになった。よってVNがAAであるROX標識されたDNAを第1プライマーとして用いる場合、nが15であるDNAを選択した。
図6は、蛍光標識DNAとしてVNがGGであるCy3.5標識された配列表の配列番号27〜29で表される塩基配列を有するROX標識されたDNAを用い得られたフィンガープリントを示す写真である。この図6においてもnが14、15に設定するとフィンガープリント全体のシグナル強度は増すが蛍光標識DNAのみがプライマーとして機能したバンドが目立ち、またバンドがスメアーになった。よってVNがGGであるCy3.5標識されたDNAを第1プライマーとして用いる場合、最もバンドの多様性が高いnが13であるDNAを選択した。
【0028】
このようにして選択されたプライミング効率が同等なヌクレオチドは、5’端に有する蛍光標識化合物がROX、Texas Red、Cy3.5、FITC、FAMのいずれかである配列表の配列番号1〜10に示した塩基配列を有する蛍光標識DNA、及び5’端に有する蛍光色素がFITC、FAMのいずれかである配列表の配列番号13又は14に示した塩基配列を有する蛍光標識DNAであった。
【0029】
(2)再現性の実証
第1プライマーとして配列表の配列番号6で表される塩基配列を有し5’端がROX標識されたDNAを、第2プライマーとして配列表の配列番号15〜17に示す塩基配列を有する非標識DNAから選択される1種を用いた。参考例1と同様のRT−PCRを各々同一試薬,同一サーマルサイクラーを用い3回繰り返し行った。これら3回の反応液を同一ゲル上に通し、電気泳動して得られたフィンガープリントの写真を図7中1〜3の数字は実験の実施順序回数、15〜17は第2プライマーとして用いたヌクレオチドの塩基配列を示す配列表の配列番号を示し、MはDNA分子量マーカーであることを示す。
いずれのヌクレオチドの組み合わせにおいても非常によく反応が再現されていた。
【0030】
(3)LA PCRテクノロジー導入効果
(1)及び(2)ではLA PCRテクノロジーを導入して反応を行っているが、PCRにおいて1種のみの耐熱性DNAポリメラーゼを用い得られた結果との比較を行った。すなわち参考例1記載の方法に従って一本鎖cDNAサンプルを作製し、PCRを1種のみの耐熱性DNAポリメラーゼで増幅した場合とLATaqポリメラーゼで増幅した場合とでそれぞれ得られるフィンガープリントを比較した。1種のみの耐熱性DNAポリメラーゼで増幅する場合はTaKaRa RNA PCRTM Kit(AMV)Ver.2.1中のTaqポリメラーゼと緩衝液を使用し、参考例1と同様にRT−PCRを行った。図8及び図9にその結果を写真として示す。
図8の(a)及び(b)はTaqポリメラーゼを用いて得られたフィンガープリントを、図9の(c)及び(d)はLA−Taqポリメラーゼを用いて得られたフィンガープリントを示す。なお、図8(a)、図9(c)は第1プライマーとしてVNがGAである配列表の配列番号29記載の塩基配列を有し5’末端がROX標識されたDNA、及び第2プライマーとして配列番号15〜17に示す配列の非標識のDNAの1種を用い、図8(b)、図9(d)に第1プライマーとして配列表の配列番号7記載の塩基配列を有し5’末端がROX標識されたDNA、及び第2プライマーとして配列番号15〜17に示す配列の非標識DNAから選択された1種を用いた。各図中15〜17の数字は第2プライマーとして用いたヌクレオチドの塩基配列を示す配列表の配列番号を示し、またMはDNA分子量マーカーであることを示す。N、Tはそれぞれ対照正常部、癌病変部のフィンガープリントであることを示す。
図8の(a)と図9(c)並びに図8の(b)と図9の(d)のフィンガープリントを比較すれば、LA PCRテクノロジーを導入により▲1▼通常のTaqポリメラーゼによる反応より得られるフラグメントのシグナル強度が全体的に強い。▲2▼Taqポリメラーゼでは合成されなかったフラグメントが合成される。▲3▼長鎖のフラグメントの合成が可能。 ▲4▼明りょうなフィンガープリントが得られることが判明した。
【0031】
実施例3 ディファレンシャルな発現を行う遺伝子の解析
(1)ディファレンシャルな発現を行う遺伝子のmRNA由来PCR産物の取得参考例1で調製された2種のRNA試料を各々鋳型とし、第1プライマーとして配列表の配列番号6に示す塩基配列を有し5’端がROX標識されたDNA、第2プライマーとして配列表の配列番号21で表される塩基配列を有する非標識のDNAを用いたRT−PCRを参考例と同様の方法で実施し、フィンガープリントを得た。フィンガープリントの比較より癌病変部と対照正常部で差を示すバンドとしておよそ620bp付近に癌部に特異的に見られるバンドを選択した。次いでポリアクリルアミドゲル上癌部由来PCR産物を流したレーン(T)及び対照正常部由来PCR産物を流したレーン(N)よりフィンガープリント上およそ620bpに相当する位置のゲルを各々切り出した。各ゲル切片をそれぞれ50μlの水に浸し、100℃10分間加熱し含有するPCR産物を抽出した。それぞれの抽出液2μlを個々にPCRチューブに加えRT−PCRの増幅時と同一反応組成でPCRにて再増幅した。増幅は94℃で2分,40℃で5分,72℃で5分からなる行程を1サイクルの後、94℃で30秒,40℃で2分,72℃で1分からなる行程を9サイクル行った。各々反応液10μlを、H. A.−Yellow(ハンスアナリティックGmbH社製)を1mlに1単位含む3%NuSieve3:1アガロース(FMC社製)ゲルに隣り合って流しミニゲル電気泳動システム、ミューピッド−2(コスモバイオ社製)にて50Vで電気泳動を行った。泳動終了後ゲルを蛍光イメージアナライザーにてスキャニングした結果正常部由来増幅産物を流したレーン(N)は、うすいバンドが一本見えるのに対し、癌部由来増幅産物を流したレーン(T)は3本のバンドが見られた。癌部由来増幅産物を流したレーン(T)からレーン(N)より強いシグナルを有するバンドを再び切り出し、100μl水に加え熱抽出した。
【0032】
(2)塩基配列決定用DNAの調製
実施例3の(1)で得られたディファレンシャルな発現をする遺伝子由来のPCR産物を含む抽出液を配列表の配列番号21で表される塩基配列を有する非標識DNAを上流プライマーとし、配列表の配列番号25で表される非標識DNAを下流プライマーとしたPCRを行った。100μlの反応液中にH. A.−Yellow含有アガロースゲルよりの抽出液1μlと1×RNA PCR buffer、2mM MgCl2 、100μM dATP、dGTP、dCTP、dTTPの等量混合物、0.5単位Taqポリメラーゼ、0.4μM上流プライマー、0.2μM下流プライマーを含み、増幅は94℃、2分加熱後94℃で30秒、41℃で30秒、2分間かけて72℃にまで温度上昇、72℃で30秒からなる行程を40サイクル、さらに最終的に72℃,5分間反応して行った。
本反応液全量をH.A.− Red(ハンスアナリティックGmbH社製)を1mlにつき1単位含む3%NuSieve3:1アガロースゲルに流し、電気泳動した。泳動終了後エチジウムブロマイドにて染色し紫外線照射すると約640bpの位置に目的のフラグメントが見られ本バンドを切り出した。切り出したゲルに含まれるcDNAフラグメントは、フィルター付き遠心チューブSuprec−01(宝酒造社製)を用い溶出し、エタノール沈殿により回収した。
回収されたPCR産物をプローブとして用いたノーザンブロット解析によりこのフラグメントは胃の癌部に高く発現するmRNAに由来することが確かめられた。この回収されたPCR産物を塩基配列決定用DNAとした。
【0033】
(3)塩基配列の決定
塩基配列決定用DNAの塩基配列を得る為サイクルシークエンス法により解析した。
ABI PRISM Dye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(アプライドバイオシステムズ/パーキンエルマー社製)を用いたが、5’端側からの塩基配列決定は塩基配列決定用DNAを得るために実施例3の(2)で用いた上流プライマーが10merと短いためキット記載の方法と一部変更して行った。すなわち20μlの反応液中に約20ngの塩基配列決定用DNA、30μM上記上流プライマー、9.5μlターミネーションミックスを含み96℃で20秒、35℃で30秒、60℃で4分からなる行程を25サイクル反応を行った。反応生成物はダイデオキシンターミネータープロトコール(アプライドバイオシステムズ/パーキンエルマー社製)に述べられたフェノール/クロロホルム法にて精製後、373A自動シークエンサー(アプライドバイオシステムズ/パーキンエルマー社製)にて解析した。一方3’端側からの塩基配列解析は、配列表の配列番号32で表される塩基配列を有する非標識DNAをプライマーとしたキット記載の方法で行った。図10には5’側からの解析結果を、図11には3’側からの解析結果を示す。一方、実施例3の(2)において下流プライマーに15のT連続領域を有する配列表の配列番号33で表される塩基配列を有する非標識DNAを用いても塩基配列決定用DNAは得られ、該DNAを用い実施例3の(3)と同様の方法で塩基配列の解析を試みた。図12に該DNAの3’側からの解析結果を示す。図10及び図11は共に明りょうな波形パターンが得られており塩基配列を決定することが可能であった。しかし図12は波形パターンが乱れており塩基配列決定は不可能であった。
【0034】
実施例4 キット構築例
以下に示す構成成分を有する、RT−PCRを利用した遺伝子発現様式解析キットを構築した。
すなわち第1プライマー用試薬として5’端がROXで標識された配列表の配列番号1〜3、5〜7、9〜11で表される塩基配列を有するDNAから選択されるいずれか1種のヌクレオチドをTE緩衝液に20 pmol/μlとなるよう溶解した9種類の溶液、及び第2プライマー用試薬として配列表の配列番号15〜24で表される塩基配列を有する非標識のDNAから選択されるいずれか1種のヌクレオチドをTE緩衝液に50pmol/ μlとなるように溶解した10種類の溶液を含む。その他の試薬として、TaKaRa RNA LA PCRTMKit(AMV) Ver1.1(宝酒造社製)に含有される、AMV逆転写酵素、RNase阻害剤、10×RT−PCR緩衝液、25mM MgCl2 、各々2. 5mMのdATP、dGTP、dCTP、dTTPからなる混合物、LA Taqポリメラーゼ、LA Taqポリメラーゼ添付緩衝液を含む。
【0035】
【発明の効果】
本発明のヌクレオチドをRT−PCR及び塩基配列決定に用いることにより、ディファレンシャルな発現を行う未知遺伝子の解析を再現性よく高効率に実施することができる。
【0036】
【配列表】
【0037】
配列番号:1
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配列の型:核酸
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配列の種類:他の核酸(合成DNA)
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【0038】
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【0039】
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【0040】
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【0058】
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【0059】
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【0060】
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【0061】
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【0062】
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【0063】
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【0064】
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【0065】
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配列:
【0066】
配列番号:30
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【0067】
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【0068】
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配列:
【0069】
配列番号:33
配列の長さ:41
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鎖の数:1本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸(合成DNA)
配列:
【図面の簡単な説明】
【図1】プライマー効率が同等でないヌクレオチドをプライマーとして用いたRT−PCRにより得られたフィンガープリントのパターンの1例を示す写真である。
【図2】プライマー効率が同等でないヌクレオチドをプライマーとして用いたRT−PCRにより得られたフィンガープリントのパターンの1例を示す写真である。
【図3】プライマー効率が同等でないヌクレオチドをプライマーとして用いたRT−PCRにより得られたフィンガープリントのパターンの1例を示す写真である。
【図4】プライマー効率が同等であるヌクレオチドをプライマーとして用いたRT−PCRにより得られたフィンガープリントのパターンの1例を示す写真である。
【図5】プライマー効率が同等であるヌクレオチドをプライマーとして用いたRT−PCRにより得られたフィンガープリントのパターンの1例を示す写真である。
【図6】プライマー効率が同等であるヌクレオチドをプライマーとして用いたRT−PCRにより得られたフィンガープリントのパターンの1例を示す写真である。
【図7】同一条件のRT−PCRを3回実施して得られたフィンガープリントのパターンを示す写真である。
【図8】RT−PCRにおいてTaqポリメラーゼを使用して得られたフィンガープリントのパターンを示す写真である。
【図9】RT−PCRにおいてLA−Taqポリメラーゼを使用して得られたフィンガープリントのパターンを示す写真である。
【図10】DNAポリメラーゼを用いた塩基配列決定法による解析結果の1例を示す図である。
【図11】DNAポリメラーゼを用いた塩基配列決定法による解析結果の1例を示す図である。
【図12】DNAポリメラーゼを用いた塩基配列決定法による解析結果の1例を示す図である。
Claims (3)
- 下記から選択されるヌクレオチド。
(1)5’端がROX(カルボキシ−X−ローダミン)、TexasRed[9−〔4(若しくは2)−スルホフェニル−2,3,6,7,12,13,16,17−オクタヒドロ−1H,5H,11H,15H−キサンテノ〔2,3,4−ij:5,6,7−i’j’〕ジキノリジン]、又はCy3.5[3−(e−カルボキシペンテニル)−1’−エチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−(1,3−ジスルホネート)ジベンゾ−カルボキシシアニン]のいずれか1種により標識された配列番号1〜10のいずれかに示す塩基配列で表されるヌクレオチド、
(2)5’端がFITC又はFAMのいずれか1種により標識された、配列番号1〜10、13、14のいずれかに示す塩基配列で表されるヌクレオチド。 - 請求項1記載のヌクレオチドをプライマーとして使用することを特徴とする核酸の合成方法。
- 請求項1記載のヌクレオチドを構成の必須要件としてなる請求項2記載の方法に使用するキット。
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