JP3610146B2 - マルチフィルム - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、農作物の栽培効率を向上させるために畝等に敷くマルチフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から農作物の栽培効率を向上させるために、様々な機能を有するマルチフィルムが提案されている。例えば、畝の地温が外気によって低下することを防止する透明のマルチフィルム、逆に太陽光線をカットして地温の上昇を抑制するシルバーや乳白色のマルチフィルム、太陽光線を吸収して雑草の繁茂を防止する黒色マルチフィルムなどである。
【0003】
また、我々は先に特願平06−194096号として、雑草防止機能と作物の生育促進効果に優れ、加えて耐候性に優れたマルチフィルムを提案した。該フィルムは、太陽光線の中の可視光線及び紫外線を吸収して遠赤外線を放射する特性を持つ(FeOX・Fe2O3、0<X≦1)なる化学式で表される粒状マグネタイト粒子を含有しており、このとき放射される遠赤外線の効果で作物の生育が促進される。また、該フィルムは、粒状マグネタイト粒子の強い酸化作用によって引き起こされる熱可塑性樹脂の劣化を抑えるカーボンブラックも含有しており、耐候性に優れ、又光線透過率も低く、雑草防止効果も兼備している。
【0004】
しかしながら、該フィルムは粒状マグネタイト粒子、及びカーボンブラックの影響で黒に近い色をしており、光線透過率はフィルム全域に渡って非常に低く、透明のマルチフィルムのように地温を十分に上昇させることができなかった。そのため、該マルチフィルムは作物によっては外気温の高い短時期にしか利用することができず、また作物によっては全く利用できなかった。さらに、シルバーのマルチフィルムのように害虫の飛来を忌避することができず、しばしば、防虫剤の散布を行う必要があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、作物の生育促進機能、雑草防止機能、及び耐候性に優れ、さらに作柄や作付け時期、あるいは地域に応じた地温のコントロールをより細かく行うことのできるマルチフィルムを提供することである。
また、害虫忌避効果のあるマルチフィルムを提供することも同時に課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段として、基材層aが、フィルムの長手方向に平行に三分割されており、中央が全光線透過率が10〜40%となり、両側が全光線透過率が5%以下となるように、それぞれ粒状マグネタイト粒子とカーボンブラックが添加されていることを特徴とするマルチフィルム1が提供され、
さらに、基材層aが、フィルムの長手方向に平行に三分割されており、中央が全光線透過率が5%以下となり、両側が全光線透過率が10〜40%となるように、それぞれ粒状マグネタイト粒子とカーボンブラックが添加されていることを特徴とするマルチフィルム1が提供され、
さらにまた、少なくとも一方の最外層が、害虫忌避剤を含有する樹脂層bであることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載のマルチフィルム1が提供される。
【0007】
播種直後の作物は、根の張り出しが小さいため、作物の根元の部分の地温が大きく影響し、逆に収穫期の作物は根が大きく張り出しているため、根元よりも少し離れた位置の地温が大きく影響する。よって、マルチフィルムを長さ方向に平行に三分割して、播種直後の作物に必要な機能を根元部分を覆っている部位、即ち三分割された中央部分に付与し、逆に収穫前後の作物に必要な機能を両側に付与することで、地温のコントロールをより細かく行い、作物の播種直後から収穫期に渡って効率よく、しかも長期間使用できるマルチフィルムを提供する。
【0008】
以下、図面に基づいて詳細に説明する。
図1、及び図2は、本発明によるマルチフィルム1の一実施例を表す断面図(A)(B)、及び平面図(C)である。本発明のマルチフィルム1に用いられる熱可塑性樹脂としては、通常の押出成型法やカレンダー成型法に適する熱可塑性樹脂であれば特に限定なく使用でき、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のポリエチレン系樹脂を使用することが好ましく、特に直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。また、従来の透明マルチフィルムや黒色用マルチフィルムなどに使用されていた再生原料も、もちろん使用可能である。
【0009】
本発明のマルチフィルム1は粒状マグネタイト粒子とカーボンブラックを含有する基材層aを有している。該基材層aはフィルムの長手方向に平行に三分割され、全光線透過率が10〜40%の部分と、全光線透過率が5%以下の部分となるように、粒状マグネタイト粒子とカーボンブラックが添加されている。全光線透過率が10〜40%の部分(以下、淡色部と称す。)2は、全光線透過率が5%以下の部分(以下、濃色部と称す。)3よりも、太陽光線が多く入射され、雑草防止機能が若干劣るが地温をより上昇させることができる。
【0010】
よって、例えば春先に播種して夏頃に収穫する作物は、播種直後に地温を上昇させ収穫期にはこれを抑制する目的で、中央が淡色部2からなり両側が濃色部3からなるマルチフィルム1を用いるとよい。このようなフィルムとしては、基材層aが、中央部分が淡色部2からなり両側が濃色部3からなるマルチフィルム1(図1−(A))、基材層aが、中央部分が透明部4で両側が濃色部3からなる層と、淡色部2からなる層の2層からなるマルチフィルム(図1−(B))を例示することができる。これらのフィルムは、上方から見るといずれも図1−(C)に示すように、中央部分が淡色部2で両側が濃色部3のマルチフィルム1に見える。
【0011】
また、該フィルムとは逆に夏頃に播種して秋に収穫する作物は、播種直後に地温の上昇を抑制し、収穫時に地温を上昇させることが好ましい。このような生育環境を作り出すには、図2に示すように中央の全光線透過率が低く、両側が高いマルチフィルム1を用いることが好ましい。このようなフィルムとしては、基材層aが、中央部分が濃色部3からなり両側が淡色部2からなるマルチフィルム1(図2−(A))、基材層aが中央部分が濃色部3で両側が透明部4からなる層と淡色部2からなる層の2層からなるマルチフィルム(図2−(B))を例示することができる。これらのフィルムは、上方から見るといずれも図2−(C)に示すように、中央部分が濃色部3で両側が淡色部2のマルチフィルム1に見える。
【0012】
次に、基材層aを形成する樹脂組成について説明する。まず、基材層2の淡色部2、及び濃色部3はいずれも熱可塑性樹脂に、粒状マグネタイト粒子とカーボンブラックを含有した組成物からなる。粒状マグネタイト粒子は光半導体としての特性を有しており、紫外線、及び可視光線領域の光線を吸収すると励起されて導体となり、その状態から基底状態に戻るときに電磁波である遠赤外線を放射する。この遠赤外線が作物の生育を促進させる。尚、該粒状マグネタイト粒子は、球形、八面体、多面体、不定形等の、ほぼ等方形状を呈するいわゆる粒状マグネタイト粒子でありBET比表面積が2〜30m2/g、平均粒子径が0.03〜1.00μmのものが好ましい。BET比表面積が30m2/gより大きいか、平均粒子径が0.03μm未満では熱可塑性樹脂との混練性が悪くなる。一方、BET比表面積が2m2/g未満か、平均粒子径が1.00μmより大きい場合は、遠赤外線の放射効率が低下する。
【0013】
さらに、該粒状マグネタイト粒子は淡色部2、及び濃色部3を形成する熱可塑性樹脂中に0.3〜10%程度含有させることが好ましく、特に0.5〜5.0wt%程度が好ましい。0.3wt%未満では遠赤外線放射量が少なく作物の生育促進効果が不十分であり、10wt%を越えると樹脂の劣化が進みフィルムの強度が弱くなってマルチフィルムとしての使用に耐えられなくなってしまう。
【0014】
一方、粒状マグネタイト粒子と共に添加するカーボンブラックとは、従来公知の農業用マルチフィルムに用いられているカーボンブラック、例えばファーネスブラックやチャンネルブラック、アセチレンブラックであり、その平均粒径は0.01〜5.00μmのものが好ましい。また、カーボンブラックは淡色部2を形成する樹脂中には0.4〜2.0wt%添加することが好ましく、0.4wt%未満の場合は、粒状マグネタイト粒子によって促進される熱可塑性樹脂の劣化、即ちフィルムの耐候性の悪化を抑える効果が乏しくなるのに対し、カーボンブラックの含有量が2.0を越えると光線透過率が10%を下回る。また、濃色部3を形成する樹脂中には1.0〜4.0wt%程度含有させることが好ましく、1.0wt%未満の場合は光線透過率が5%を越えてしまい、カーボンブラックの含有量が4.0wt%を越えるとフィルム中への紫外光、可視光の入射量が極めて少なくなるため、粒状マグネタイト粒子の遠赤外線の放射量が少なくなり、作物の生育促進効果が乏しくなる。
【0015】
また本発明のマルチフィルム1は、少なくとも一方の最外層に害虫忌避剤を含有する層(以下、忌避層と称す。)bが形成されていることが好ましく、特に両外層に忌避層bが形成されている場合(図1−(A)、図2−(A))はフィルムの表裏を区別する必要がなく、フィルムを畝に張る作業か簡単になる。該忌避層bは前述した熱可塑性樹脂に、ピレトリン、アレスリン等のピレスロイド系や、ホキシム、ピリダフェンチオン、テトラクロルビンホス等の有機リン系の殺虫剤、また天然樹皮等から抽出されたオバクノン、ノミリン、リモニン、デオキシリモニン、更には3,6−ジクロロピリタジンとパラクロロメタキシレノールの混合剤等の害虫忌避剤を混入した組成物からなる。但し、該忌避層bは基材層aに入射する光線を遮らないように、なるべく透明に近づけることが好ましい。
【0016】
次に、マルチフィルム1の製造方法について説明する。本発明のマルチフィルム1の製造方法は特に限定されず、例えば二つの押出機を用いて淡色部2用樹脂と、濃色部3用の樹脂を一つのダイスに供給して、インフレーション押出法もしくはTダイ押出法にて、単層でフィルムの長手方向に平行に三分割されたマルチフィルム1を成形するとよい。また、例えば忌避層b用樹脂、淡色部2用樹脂、濃色部3用樹脂を一つのダイスに供給し、淡色部2、及び濃色部3が一つの層となって基材層aを形成し、該基材層aを忌避層bが上下から挟むように押出成形してもよい。このように基材層aを忌避層bで挟んだ場合、基材層aの淡色部2と濃色部3の繋ぎ目の部分の強度がアップする。
【0017】
さらに、本発明においては粒状マグネタイト粒子、カーボンブラック、害虫忌避剤の他に、従来公知の界面活性剤、カップリング材、滑材、ブロッキング防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、安定剤等を添加することももちろん可能である。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実施例を基にさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明において行った物性の測定方法及び評価方法は以下の通りである。
【0019】
(1)作物の生育度(単位:cm)
熊本県鹿本地区の圃場で、たばこの栽培テストを行い評価した。作期は2月25日定植、4月6日にたばこの苗丈を測定して生育度の判定基準とした。
(2)雑草防止効果
上記テストにおいて、雑草の繁茂が見られなかったものを○、雑草が若干繁茂したものを□、雑草が多少繁茂したが雑草防止効果の認められたものを△、雑草防止効果の認められなかったもの×とした。なお、フィルムによっては中央と両側で効果が異なるので、それぞれ別に評価した。
(3)害虫忌避効果
上記テストにおいて、作物の害虫による被害を目視により観察した。被害がほとんど見られなかったものを○、見られたものを×とした。
【0020】
実施例1〜2、比較例1〜3
表1に示す樹脂を押出機に供給し、インフレーション押出法にてマルチフィルムを製造した。実施例1、2、及び比較例2、3はフィルムの中央と両側では異なった原料樹脂を用いており、いわゆる配色マルチフィルムの構造をとる。また実施例1、2、比較例2は基材層aの両表面に、害虫忌避剤を混入した忌避層bを設けた。
【0021】
尚、実施例、及び比較例で使用した粒状マグネタイト粒子はBET比表面積が5.4m2/g、平均粒子径0.28mmのものである。また、表中ののLDPEとは低密度ポリエチレンを意味し、マグネタイトとは前述した粒状マグネタイト粒子を表す。さらにまた、害虫忌避剤としては、3,6−ジクロロピリタジンとパラクロロメタキシレノ−ルを重量比で1:1の割合で混合したものを用いた。
【0022】
【表1】
【0023】
このような組成の樹脂から製造されたフィルムの、作物の生育度、雑草防止効果、害虫忌避効果について測定した結果を表2に示す。
【0024】
【表2】
【0025】
比較例3に用いられたマルチフィルムは、粒状マグネタイト粒子を添加した樹脂中にカーボンブラックを添加していなかったので、フィルムの劣化が激しく、測定を最後まで続けることができなかった。また、比較例2に用いたマルチフィルムも、粒状マグネタイト粒子を添加した樹脂中にカーボンブラックを添加していなかったが、両外層に忌避層を有していたため、かろうじて最後まで測定できた。しかしながら、フィルムの劣化を見ることはでき、所々破れていた。
【0026】
また、実施例1、2と比較例1を比較すると分かるように、マルチフィルムに濃淡を設けた方が、設けないものよりも生育度が良好であった。比較例1のマルチフィルムを用いて育てた苗は、実施例のフィルムを用いたものよりも、播種直後の生育が遅かった。
【0027】
尚、実施例、及び比較例を参照すると明らかなように、粒状マグネタイト粒子は、作物の生育を促進する効果があること、光線透過率の低いフィルムは雑草防止機能に優れることが分かる。
【0028】
【効果】
本発明のマルチフィルムは、特定量の粒状マグネタイト粒子とカーボンブラックを含有しているため、雑草防止効果に優れるほか、作物の生育促進効果を有している。また、フィルムの長手方向に平行に三分割され、淡色部と濃色部に分かれているため、地温のコントロールをより細かく行うことができ、作物の播種から収穫期に渡って長い間使用することができる。
【0029】
また、外層に害虫忌避剤を混入した忌避層を有していると、害虫忌避効果もえられ、減農薬栽培が可能となる。特に、フィルムの両外層に忌避層を設けると、マルチフィルムを畝に張るときに、フィルムの表裏を確かめる必要がない。また、マルチフィルムを多層フィルムとすることで、フィルム自身の強度アップにもつながる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるマルチフィルムの一実施例を表す断面図(A)(B)、及び平面図(C)である。
【図2】本発明によるマルチフィルムの一実施例を表す断面図(A)(B)、及び平面図(C)である。
【符号の説明】
a 基材層
b 忌避層
1 マルチフィルム
2 淡色部
3 濃色部
4 透明部
【産業上の利用分野】
本発明は、農作物の栽培効率を向上させるために畝等に敷くマルチフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から農作物の栽培効率を向上させるために、様々な機能を有するマルチフィルムが提案されている。例えば、畝の地温が外気によって低下することを防止する透明のマルチフィルム、逆に太陽光線をカットして地温の上昇を抑制するシルバーや乳白色のマルチフィルム、太陽光線を吸収して雑草の繁茂を防止する黒色マルチフィルムなどである。
【0003】
また、我々は先に特願平06−194096号として、雑草防止機能と作物の生育促進効果に優れ、加えて耐候性に優れたマルチフィルムを提案した。該フィルムは、太陽光線の中の可視光線及び紫外線を吸収して遠赤外線を放射する特性を持つ(FeOX・Fe2O3、0<X≦1)なる化学式で表される粒状マグネタイト粒子を含有しており、このとき放射される遠赤外線の効果で作物の生育が促進される。また、該フィルムは、粒状マグネタイト粒子の強い酸化作用によって引き起こされる熱可塑性樹脂の劣化を抑えるカーボンブラックも含有しており、耐候性に優れ、又光線透過率も低く、雑草防止効果も兼備している。
【0004】
しかしながら、該フィルムは粒状マグネタイト粒子、及びカーボンブラックの影響で黒に近い色をしており、光線透過率はフィルム全域に渡って非常に低く、透明のマルチフィルムのように地温を十分に上昇させることができなかった。そのため、該マルチフィルムは作物によっては外気温の高い短時期にしか利用することができず、また作物によっては全く利用できなかった。さらに、シルバーのマルチフィルムのように害虫の飛来を忌避することができず、しばしば、防虫剤の散布を行う必要があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、作物の生育促進機能、雑草防止機能、及び耐候性に優れ、さらに作柄や作付け時期、あるいは地域に応じた地温のコントロールをより細かく行うことのできるマルチフィルムを提供することである。
また、害虫忌避効果のあるマルチフィルムを提供することも同時に課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段として、基材層aが、フィルムの長手方向に平行に三分割されており、中央が全光線透過率が10〜40%となり、両側が全光線透過率が5%以下となるように、それぞれ粒状マグネタイト粒子とカーボンブラックが添加されていることを特徴とするマルチフィルム1が提供され、
さらに、基材層aが、フィルムの長手方向に平行に三分割されており、中央が全光線透過率が5%以下となり、両側が全光線透過率が10〜40%となるように、それぞれ粒状マグネタイト粒子とカーボンブラックが添加されていることを特徴とするマルチフィルム1が提供され、
さらにまた、少なくとも一方の最外層が、害虫忌避剤を含有する樹脂層bであることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載のマルチフィルム1が提供される。
【0007】
播種直後の作物は、根の張り出しが小さいため、作物の根元の部分の地温が大きく影響し、逆に収穫期の作物は根が大きく張り出しているため、根元よりも少し離れた位置の地温が大きく影響する。よって、マルチフィルムを長さ方向に平行に三分割して、播種直後の作物に必要な機能を根元部分を覆っている部位、即ち三分割された中央部分に付与し、逆に収穫前後の作物に必要な機能を両側に付与することで、地温のコントロールをより細かく行い、作物の播種直後から収穫期に渡って効率よく、しかも長期間使用できるマルチフィルムを提供する。
【0008】
以下、図面に基づいて詳細に説明する。
図1、及び図2は、本発明によるマルチフィルム1の一実施例を表す断面図(A)(B)、及び平面図(C)である。本発明のマルチフィルム1に用いられる熱可塑性樹脂としては、通常の押出成型法やカレンダー成型法に適する熱可塑性樹脂であれば特に限定なく使用でき、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のポリエチレン系樹脂を使用することが好ましく、特に直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。また、従来の透明マルチフィルムや黒色用マルチフィルムなどに使用されていた再生原料も、もちろん使用可能である。
【0009】
本発明のマルチフィルム1は粒状マグネタイト粒子とカーボンブラックを含有する基材層aを有している。該基材層aはフィルムの長手方向に平行に三分割され、全光線透過率が10〜40%の部分と、全光線透過率が5%以下の部分となるように、粒状マグネタイト粒子とカーボンブラックが添加されている。全光線透過率が10〜40%の部分(以下、淡色部と称す。)2は、全光線透過率が5%以下の部分(以下、濃色部と称す。)3よりも、太陽光線が多く入射され、雑草防止機能が若干劣るが地温をより上昇させることができる。
【0010】
よって、例えば春先に播種して夏頃に収穫する作物は、播種直後に地温を上昇させ収穫期にはこれを抑制する目的で、中央が淡色部2からなり両側が濃色部3からなるマルチフィルム1を用いるとよい。このようなフィルムとしては、基材層aが、中央部分が淡色部2からなり両側が濃色部3からなるマルチフィルム1(図1−(A))、基材層aが、中央部分が透明部4で両側が濃色部3からなる層と、淡色部2からなる層の2層からなるマルチフィルム(図1−(B))を例示することができる。これらのフィルムは、上方から見るといずれも図1−(C)に示すように、中央部分が淡色部2で両側が濃色部3のマルチフィルム1に見える。
【0011】
また、該フィルムとは逆に夏頃に播種して秋に収穫する作物は、播種直後に地温の上昇を抑制し、収穫時に地温を上昇させることが好ましい。このような生育環境を作り出すには、図2に示すように中央の全光線透過率が低く、両側が高いマルチフィルム1を用いることが好ましい。このようなフィルムとしては、基材層aが、中央部分が濃色部3からなり両側が淡色部2からなるマルチフィルム1(図2−(A))、基材層aが中央部分が濃色部3で両側が透明部4からなる層と淡色部2からなる層の2層からなるマルチフィルム(図2−(B))を例示することができる。これらのフィルムは、上方から見るといずれも図2−(C)に示すように、中央部分が濃色部3で両側が淡色部2のマルチフィルム1に見える。
【0012】
次に、基材層aを形成する樹脂組成について説明する。まず、基材層2の淡色部2、及び濃色部3はいずれも熱可塑性樹脂に、粒状マグネタイト粒子とカーボンブラックを含有した組成物からなる。粒状マグネタイト粒子は光半導体としての特性を有しており、紫外線、及び可視光線領域の光線を吸収すると励起されて導体となり、その状態から基底状態に戻るときに電磁波である遠赤外線を放射する。この遠赤外線が作物の生育を促進させる。尚、該粒状マグネタイト粒子は、球形、八面体、多面体、不定形等の、ほぼ等方形状を呈するいわゆる粒状マグネタイト粒子でありBET比表面積が2〜30m2/g、平均粒子径が0.03〜1.00μmのものが好ましい。BET比表面積が30m2/gより大きいか、平均粒子径が0.03μm未満では熱可塑性樹脂との混練性が悪くなる。一方、BET比表面積が2m2/g未満か、平均粒子径が1.00μmより大きい場合は、遠赤外線の放射効率が低下する。
【0013】
さらに、該粒状マグネタイト粒子は淡色部2、及び濃色部3を形成する熱可塑性樹脂中に0.3〜10%程度含有させることが好ましく、特に0.5〜5.0wt%程度が好ましい。0.3wt%未満では遠赤外線放射量が少なく作物の生育促進効果が不十分であり、10wt%を越えると樹脂の劣化が進みフィルムの強度が弱くなってマルチフィルムとしての使用に耐えられなくなってしまう。
【0014】
一方、粒状マグネタイト粒子と共に添加するカーボンブラックとは、従来公知の農業用マルチフィルムに用いられているカーボンブラック、例えばファーネスブラックやチャンネルブラック、アセチレンブラックであり、その平均粒径は0.01〜5.00μmのものが好ましい。また、カーボンブラックは淡色部2を形成する樹脂中には0.4〜2.0wt%添加することが好ましく、0.4wt%未満の場合は、粒状マグネタイト粒子によって促進される熱可塑性樹脂の劣化、即ちフィルムの耐候性の悪化を抑える効果が乏しくなるのに対し、カーボンブラックの含有量が2.0を越えると光線透過率が10%を下回る。また、濃色部3を形成する樹脂中には1.0〜4.0wt%程度含有させることが好ましく、1.0wt%未満の場合は光線透過率が5%を越えてしまい、カーボンブラックの含有量が4.0wt%を越えるとフィルム中への紫外光、可視光の入射量が極めて少なくなるため、粒状マグネタイト粒子の遠赤外線の放射量が少なくなり、作物の生育促進効果が乏しくなる。
【0015】
また本発明のマルチフィルム1は、少なくとも一方の最外層に害虫忌避剤を含有する層(以下、忌避層と称す。)bが形成されていることが好ましく、特に両外層に忌避層bが形成されている場合(図1−(A)、図2−(A))はフィルムの表裏を区別する必要がなく、フィルムを畝に張る作業か簡単になる。該忌避層bは前述した熱可塑性樹脂に、ピレトリン、アレスリン等のピレスロイド系や、ホキシム、ピリダフェンチオン、テトラクロルビンホス等の有機リン系の殺虫剤、また天然樹皮等から抽出されたオバクノン、ノミリン、リモニン、デオキシリモニン、更には3,6−ジクロロピリタジンとパラクロロメタキシレノールの混合剤等の害虫忌避剤を混入した組成物からなる。但し、該忌避層bは基材層aに入射する光線を遮らないように、なるべく透明に近づけることが好ましい。
【0016】
次に、マルチフィルム1の製造方法について説明する。本発明のマルチフィルム1の製造方法は特に限定されず、例えば二つの押出機を用いて淡色部2用樹脂と、濃色部3用の樹脂を一つのダイスに供給して、インフレーション押出法もしくはTダイ押出法にて、単層でフィルムの長手方向に平行に三分割されたマルチフィルム1を成形するとよい。また、例えば忌避層b用樹脂、淡色部2用樹脂、濃色部3用樹脂を一つのダイスに供給し、淡色部2、及び濃色部3が一つの層となって基材層aを形成し、該基材層aを忌避層bが上下から挟むように押出成形してもよい。このように基材層aを忌避層bで挟んだ場合、基材層aの淡色部2と濃色部3の繋ぎ目の部分の強度がアップする。
【0017】
さらに、本発明においては粒状マグネタイト粒子、カーボンブラック、害虫忌避剤の他に、従来公知の界面活性剤、カップリング材、滑材、ブロッキング防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、安定剤等を添加することももちろん可能である。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実施例を基にさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明において行った物性の測定方法及び評価方法は以下の通りである。
【0019】
(1)作物の生育度(単位:cm)
熊本県鹿本地区の圃場で、たばこの栽培テストを行い評価した。作期は2月25日定植、4月6日にたばこの苗丈を測定して生育度の判定基準とした。
(2)雑草防止効果
上記テストにおいて、雑草の繁茂が見られなかったものを○、雑草が若干繁茂したものを□、雑草が多少繁茂したが雑草防止効果の認められたものを△、雑草防止効果の認められなかったもの×とした。なお、フィルムによっては中央と両側で効果が異なるので、それぞれ別に評価した。
(3)害虫忌避効果
上記テストにおいて、作物の害虫による被害を目視により観察した。被害がほとんど見られなかったものを○、見られたものを×とした。
【0020】
実施例1〜2、比較例1〜3
表1に示す樹脂を押出機に供給し、インフレーション押出法にてマルチフィルムを製造した。実施例1、2、及び比較例2、3はフィルムの中央と両側では異なった原料樹脂を用いており、いわゆる配色マルチフィルムの構造をとる。また実施例1、2、比較例2は基材層aの両表面に、害虫忌避剤を混入した忌避層bを設けた。
【0021】
尚、実施例、及び比較例で使用した粒状マグネタイト粒子はBET比表面積が5.4m2/g、平均粒子径0.28mmのものである。また、表中ののLDPEとは低密度ポリエチレンを意味し、マグネタイトとは前述した粒状マグネタイト粒子を表す。さらにまた、害虫忌避剤としては、3,6−ジクロロピリタジンとパラクロロメタキシレノ−ルを重量比で1:1の割合で混合したものを用いた。
【0022】
【表1】
【0023】
このような組成の樹脂から製造されたフィルムの、作物の生育度、雑草防止効果、害虫忌避効果について測定した結果を表2に示す。
【0024】
【表2】
【0025】
比較例3に用いられたマルチフィルムは、粒状マグネタイト粒子を添加した樹脂中にカーボンブラックを添加していなかったので、フィルムの劣化が激しく、測定を最後まで続けることができなかった。また、比較例2に用いたマルチフィルムも、粒状マグネタイト粒子を添加した樹脂中にカーボンブラックを添加していなかったが、両外層に忌避層を有していたため、かろうじて最後まで測定できた。しかしながら、フィルムの劣化を見ることはでき、所々破れていた。
【0026】
また、実施例1、2と比較例1を比較すると分かるように、マルチフィルムに濃淡を設けた方が、設けないものよりも生育度が良好であった。比較例1のマルチフィルムを用いて育てた苗は、実施例のフィルムを用いたものよりも、播種直後の生育が遅かった。
【0027】
尚、実施例、及び比較例を参照すると明らかなように、粒状マグネタイト粒子は、作物の生育を促進する効果があること、光線透過率の低いフィルムは雑草防止機能に優れることが分かる。
【0028】
【効果】
本発明のマルチフィルムは、特定量の粒状マグネタイト粒子とカーボンブラックを含有しているため、雑草防止効果に優れるほか、作物の生育促進効果を有している。また、フィルムの長手方向に平行に三分割され、淡色部と濃色部に分かれているため、地温のコントロールをより細かく行うことができ、作物の播種から収穫期に渡って長い間使用することができる。
【0029】
また、外層に害虫忌避剤を混入した忌避層を有していると、害虫忌避効果もえられ、減農薬栽培が可能となる。特に、フィルムの両外層に忌避層を設けると、マルチフィルムを畝に張るときに、フィルムの表裏を確かめる必要がない。また、マルチフィルムを多層フィルムとすることで、フィルム自身の強度アップにもつながる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるマルチフィルムの一実施例を表す断面図(A)(B)、及び平面図(C)である。
【図2】本発明によるマルチフィルムの一実施例を表す断面図(A)(B)、及び平面図(C)である。
【符号の説明】
a 基材層
b 忌避層
1 マルチフィルム
2 淡色部
3 濃色部
4 透明部
Claims (3)
- 基材層aが、フィルムの長手方向に平行に三分割されており、中央が全光線透過率が10〜40%となり、両側が全光線透過率が5%以下となるように、それぞれ粒状マグネタイト粒子とカーボンブラックが添加されていることを特徴とするマルチフィルム1。
- 基材層aが、フィルムの長手方向に平行に三分割されており、中央が全光線透過率が5%以下となり、両側が全光線透過率が10〜40%となるように、それぞれ粒状マグネタイト粒子とカーボンブラックが添加されていることを特徴とするマルチフィルム1。
- 少なくとも一方の最外層が、害虫忌避剤を含有する樹脂層bであることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載のマルチフィルム1。
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JP02285596A JP3610146B2 (ja) | 1996-02-08 | 1996-02-08 | マルチフィルム |
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- 1996-02-08 JP JP02285596A patent/JP3610146B2/ja not_active Expired - Fee Related
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