JP3609273B2 - アグルコンイソフラボンの豊富な植物タンパク質抽出物及び単離物並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶解性材料を植物タンパク質材料から抽出すること、及び大部分のグルコン(glucone) イソフラボンが、タンパク質単離物中に保持されるアグルコンイソフラボンに転化されるような条件下で1種以上のβ−グルコシダーゼ酵素を用いて処理することによる、アグルコンイソフラボンが豊富な抽出物及び単離物の製造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
イソフラボンは大豆などの植物タンパク質材料を含む種々のマメ科植物中に生じる。これらの化合物には、ダイジン、6’’−OAcダイジン、6’’−OMalダイジン、ダイゼイン、ゲニスチン、6’’−OAcゲニスチン、6’’−OMalゲニスチン、ゲニステイン、グリシチン(glycitin)、6’’−OMalグリシチン、グリシテイン(glycitein) 、ビオカニンA、ホルムオノネチン及びクメステロール(coumesterol) が含まれる。典型的に、これらの化合物は、大豆の本来の苦いフレーバーに関するものであり、また、単離物及び濃縮物などの商品の製造の際の焦点は、これらの材料を除去しなければならないことである。例えば、大豆フレークを水性アルカリ媒体で抽出する、従来の大豆タンパク質単離物製造方法では、多くのイソフラボンを、抽出剤に可溶化し、通常は、タンパク質の酸性沈降物に続いて廃棄されるホエー中に可溶化させたままで維持して、単離物を形成する。酸性沈降タンパク質単離物中の残存イソフラボンは、通常、該単離物を徹底的に洗浄することにより除去する。
【0003】
最近では、大豆などの植物タンパク質中に含有されるイソフラボンが、以下の文献に記載されたような、乳ガン細胞及び前立腺ガン細胞などのヒトガン細胞の増殖を抑制し得ると認識されている:Biochemical and Biophysical Research, Communications, Vol. 179, No.1, 第661−667 頁(1991年8月30日)のPetersonとBarnesによる“Genistein Inhibition of the Growth of Human Breast Cancer Cells, Independence from Estrogen Receptors and the Multi−Drug Resistance Gene ”;The Prostate, Vol.22, 第335−345 頁 (1993年) のPeterson及びBarnesによる“Genistein and Biochanin A Inhibit the Growth of Human Prostate Cancer Cells but Not Epidermal Growth Factor Receptor Tyrosine Autophosphorylation”;及びMutagens and Carcinogens in the Diet, 第239−253 頁(1990年)のBarnesらによる“Soybeans Inhibit Mammary Tumors in Models of Breast Cancer”。
【0004】
上記イソフラボンのうち、数種のものは、グルコース分子が結合したグルコシドとして又はグルコン(glucone) として存在する。6’’−OAcゲニスチンなどのグルコンの数種は、グルコース分子自体の6つの部分に結合したアセテート基を含む。グルコシドを含む全てのイソフラボンは医学的評価の点で興味深いが、最も興味深い特定のイソフラボンは、グルコース分子が結合していないアグルコンである。これらのイソフラボンは、グルコン又はイソフラボングルコシドほど水溶性が高くない。このカテゴリー内の特定のイソフラボンは、ダイゼイン、ゲニステイン、及びグリシテインである。これらのアグルコンは、以下の一般式を有する:
【0005】
【化1】
【0006】
式中、R1 、R2 、R3 及びR4 は、H、OH及びOCH3 からなる群から選択される。従って、それは、アグルコンであり、本発明が関連するこれらの材料が豊富な植物タンパク質単離物である。
当該技術分野において、グルコンイソフラボンを、アグルコンイソフラボンに転化する方法が知られている(例えば、オバタらの日本特許出願第258669号に記載されている)。そのような方法では、中程度の転化のみが達成され、そのようなことは、特に大規模な商業作業には望ましくない。また、例えば前記文献’669号に記載された公知の方法では、タンパク質材料からイソフラボンを除去することが教示されており、いかにしてアグルコンイソフラボンが豊富なタンパク質抽出物又は単離物を製造するかについて記載するところがない。従って、少なくとも大部分の及び好ましくは実質的に全てのグルコンイソフラボンをアグルコンイソフラボンに転化する方法、及びアグルコンイソフラボンが豊富なタンパク質抽出物及び単離物を製造する方法が要求される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、アグルコンイソフラボンが豊富な抽出物及びタンパク質単離物を提供すること、及びそれらを製造する方法を提供することである。これらの及びその他の目的は、以下に記載する本発明の詳細な説明に具体的に開示される。
【0008】
【発明の概要】
本発明により、アグルコンイソフラボンが豊富な植物タンパク質抽出物及び単離物、及びそれらを製造する方法が提供される。そのような抽出物を製造する方法には、グルコンイソフラボンを含む植物タンパク質材料を、該植物タンパク質材料の等電点付近より高いpHを有する水性抽出剤を用いて抽出すること、及びそのグルコンイソフラボンと十分な量のβ−グルコシダーゼ酵素1種以上とを、該抽出物中の少なくとも大部分のグルコンイソフラボンがアグルコンイソフラボンに転化されるのに十分な時間、温度及びpHで反応させ、それにより、アグルコンイソフラボンが豊富な抽出物を製造することが含まれる。また、本発明により、そのような抽出物の製造法が提供され、該抽出物に追加β−グルコシダーゼが添加されて、アグルコンイソフラボンが豊富な抽出物が製造される。更に、本発明により、アグルコンが豊富なタンパク質単離物を得る方法が提供され、それは、前記抽出物のpHを、タンパク質材料の等電点付近に調整して、タンパク質材料を沈降させ、アグルコンイソフラボンが豊富なタンパク質単離物を製造することによる。得られたアグルコンイソフラボンが豊富な単離物を、その後、分離し、脱水して、乾燥した、アグルコンが豊富な単離物を形成することができる。また、本発明により、比較的高い割合で、植物タンパク質材料からイソフラボンを回収する方法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明を大豆製品に関連して記載するが、また、本発明の方法は、大豆材料からアグルコンイソフラボンが豊富な抽出物及び単離物を製造するのに特に適するものであるが、それにもかかわらず、本発明の方法は、一般に、イソフラボンを含む種々の植物タンパク質源からタンパク質抽出物及び単離物を製造するのに適するものである。そのような源の例は、大豆又は大豆材料を含む植物タンパク質材料である。本件明細書において使用する用語“大豆材料”とは、大豆又はいずれかの大豆誘導体を意味する。
【0010】
好ましい実施態様での抽出物又は単離物についての出発材料は、オイルが溶剤抽出により除去された大豆フレークである。そのフレークは、そのタンパク材料の等電点付近より高いpH、好ましくは約6.0〜約10.0のpH、及び最も好ましくは約6.7〜約9.7のpHを有する水性抽出剤を用いて抽出する。水性抽出剤のpHを高くしたい場合には、典型的なアルカリ試薬、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化カルシウム等を使用してもよい。望ましいイソフラボン化合物は、典型的には、水性抽出物中に可溶化する。また、水性抽出物中のこれらの化合物の回収を最大にするために、大豆フレークの抽出物に対する重量比を、特定のレベルに調節して、タンパク質材料中の本来のイソフラボンをできるだけ多く可溶化するのが望ましい。
タンパク質及びイソフラボンの抽出は、第1抽出物を使用してフレークを抽出し、タンパク質及びイソフラボンの水性抽出物を得る、水性抽出剤とフレークの重量比が約8:1〜約16:1でのフレークの対向流抽出を含む種々の方法で行うことができる。あるいはまた、第1段階における抽出剤とフレークの重量比を約10:1とし、その後の新鮮な抽出剤を用いたフレークの第2抽出を約6:1又はそれ未満の抽出剤のフレークに対する重量比で行う2段階抽出法(両段階における溶剤とフレークの重量比の合計が、約16:1の溶剤とフレークの合計重量比を越えないようにする)を使用してもよい。
【0011】
不溶性材料を除去した後、得られた水性タンパク質抽出物(可溶化イソフラボンを含む)を、その後、1種以上のβ−グルコシダーゼ酵素と反応させて、グルコース分子が結合したグルコン形態のイソフラボンの大部分、及び好ましくは実質的に全てをアグルコンイソフラボンに転化する。β−グルコシダーゼ酵素についての最適pH範囲は、使用する特定のβ−グルコシダーゼ酵素により変動するであろうが、典型的には、約4〜約8の範囲で変動するであろう。典型的には、抽出物のpHを調節して、特定の酵素が、それを用いる反応前に最も活性化となるpH範囲付近とする。典型的には、そのpHは、食用酸(edible acid)(例えば酢酸、硫酸、リン酸、塩酸又は他の適切な任意の試薬など)の添加により調節する。
β−グルコシダーゼ酵素は、大豆材料中に天然に存在し得、又は微生物の成長により得ることができ(本件明細書においては“残存”酵素と称する)、又はタンパク質抽出物に添加してもよい。添加した酵素は、本件明細書において、“追加酵素”と称する。一般に、大豆材料又は抽出物中の残存酵素濃度が、グルコン形態のイソフラボンの大部分、及び好ましくは実質的に全てをアグルコン形態に転化するのに不十分である場合には追加酵素を添加すべきである。イソフラボンの転化に十分な酵素の量は、存在する酵素のタイプ、酵素濃度の分布、システムのpH及び存在する酵素の活性度を含む多数の因子により変動する。一旦、十分な濃度の酵素を存在させて、残存酵素若しくは追加酵素のいずれかを介して又はその両方を介して、タンパク質抽出物に含まれるグルコンイソフラボンの少なくとも大部分、及び好ましくは実質的に全てがアグルコン形態に転化されるのに十分な時間、温度及びpHで、可溶化イソフラボンを有するタンパク質抽出物をβ−グルコシダーゼ酵素と反応させる。
【0012】
好ましい追加β−グルコシダーゼ酵素にはバイオペクチナーゼ(Biopectinase)100L及び300L、バイオペクチナーゼOK70L、ラクターゼF及びラクトザイム(Lactozyme) が含まれる。ラクターゼFはAmano International Enzyme Co., Inc., P. O. Box 1000, Troy, VA 22974から入手可能であり、約4〜約6の最適pH範囲を有し、また、ラクトザイムは、Novo Industries, Enzyme Division, Novo Alle, DK−2880 Bagsvaerd, Denmark から入手可能であり、最適pHが約7である。バイオペクチナーゼ100L、バイオペクチナーゼ300L及びバイオペクチナーゼOK70LはQuest International, Sarasota, Floridaから入手可能である。追加酵素は、大部分及び好ましくは実質的に全てのグルコンイソフラボンをアグルコンに転化するのに十分な量で添加する。追加酵素を添加するのが必要である場合には、添加する酵素量は、乾燥量基準でのタンパク質沈降物の約0.5〜約5重量%とする。
他のクラスの適切な酵素は、エステラーゼ酵素である。これらの酵素は、それらが、イソフラボン複合体(conjugate) からアセテート及びマロネート基を除去することによりアセテート及びマロネート複合体をグルコンイソフラボンに転化するので、本件明細書に記載の好ましい実施態様の方法に十分適するものであると思われる。最も好ましい態様においては、両タイプの酵素、β−グルコシダーゼ及びエステラーゼ酵素を利用する。
【0013】
好ましい実施態様の方法は、好ましくは、1段階工程であり、非常に高い程度のイソフラボン転化(グルコン形態からアグルコン形態への転化)が、比較的短時間で、かつ比較的容易に及び安価で達成される。本件明細書において使用する用語“1段階”反応工程は、一般に、いくつかのプロセス・パラメータ値が反応工程中、維持される反応工程を意味する。これらのプロセス・パラメータには、pH及び温度が含まれる。
非常に高い程度の転化は、大豆材料抽出物中に存在するグルコン形態のイソフラボンの大部分、及び好ましくは実質的に全てがアグルコン形態に転化されるものである。用語“大部分”とは、グルコンイソフラボンがアグルコンイソフラボンに転化される程度が少なくとも約50%であることを意味する。用語“実質的に全て”とは、グルコンイソフラボンがアグルコンイソフラボンに転化される程度が少なくとも約80%、及び最も好ましくは少なくとも約90%であることを意味する。
【0014】
いかなる特定の理論に限定されることを望む訳ではないが、本件明細書に記載の方法の驚くべき、予期せぬ高い程度の転化は、1段階反応工程の間に利用するプロセス・パラメータの組合せにより生じると考えられる。反応システムのpHは、第1段階反応工程の間、約4〜約8の値又はその付近、及び最も好ましくはイソフラボン複合体の反応前に酵素が最も活性化される値で維持するのがよい。反応システムの温度は、第1段階反応工程の間、約40〜約60℃の温度又はその付近、及び最も好ましくは約60℃の温度で維持するのがよい。一般に、本件明細書に記載の第1段階工程により、実質的に全てのグルコンイソフラボンをアグルコンに転化するのに必要とされる時間は、約2〜約24時間である。
1種以上でのβ−グルコシダーゼ酵素を用いた反応の後、pHを、酸の添加により、大豆タンパク質の等電点、一般には、約4.0〜約5.0、及び好ましくは約4.4〜約4.6に調節する。pHを等電点に調節することにより、低溶解性アグルコンが豊富である、凝乳形態のタンパク質が沈降する。沈降後、凝乳即ち沈降タンパク質を遠心分離などによりホエーから分離して、アグルコンイソフラボンが豊富なタンパク質単離物を形成する。
【0015】
好ましい実施態様において、沈降タンパク質材料の洗浄は、完全に避けるか又は最小として、タンパク質沈降物からのアグルコンイソフラボンの除去を実質的に低減し、それにより、たとえアグルコンイソフラボンの水中への溶解性が他のイソフラボンより低くても、該アグルコンが豊富な単離物が得られる。従って、水での酸沈降タンパク質の洗浄は、完全に避けるか、又は水と沈降タンパク質材料の重量比が約2:1〜約6:1で水を用いる単一洗浄に制限してもよい。たとえ長く洗浄を行っても、より少ないイソフラボンが回収されるが、酸沈降凝乳の洗浄を行わないことにより、望ましい濃度でイソフラボンを豊富に含む単離物が得られる。中程度の洗浄により、乾燥量基準で約1.5〜約3.5mg/gのゲニステイン含量、及び約1.0〜約3.0mg/gのダイゼイン含量を有するタンパク質単離物が得られる。
酸沈降タンパク質を、その後、従来の方法で、遠心分離又は濃縮の組合せにより脱水し、乾燥する。好ましい実施態様は、特定の脱水手段に限定されないが、噴霧乾燥などの従来の乾燥技術を用いて、乾燥単離物を形成するのが好ましい。本件明細書に記載の方法により、増加量のアグルコンイソフラボンを有する単離物が得られる。
【0016】
また、本発明により、イソフラボンを、非常に高い割合で、大豆材料などの植物タンパク質材料から回収する方法が提供される。本件明細書に記載の方法により得られる回収レベルは、典型的には、出発植物タンパク質材料中の特定のイソフラボンの全ての形態の合計をベースとして、少なくとも50%、好ましくは、65%、及び最も好ましくは80%である。いかなる特定の理論に限定されることを望む訳ではないが、高い程度の回収は、本件明細書に記載の転化反応と、本件明細書に記載の種々の処理作業との組合せにより得られると考えられる。比較的溶解性のグルコンイソフラボン複合体を、特定の処理段階で、低溶解性アグルコン形態に転化することにより、得られる生成物において、供給材料からのイソフラボンの高い割合での回収が可能となる。
以下の実施例は、具体的な記載であるが、本発明の実施態様を制限するものではない。
【0017】
【実施例】
抽出した脱脂大豆フレーク(粉末)5gを水5gに添加し、pHを7及び8に調節することによりサンプルを製造した。ラクターゼF又はラクトザイム0.25gを、酵素濃度が各サンプル中の固形分の約5重量%であるように各懸濁液に添加した。サンプルを、40℃で及び60℃でインキュベートした。サンプルは、酵素を添加する前(t=0)、目標温度で24時間のインキュベート後に回収した。ラクターゼF又はラクトザイムについて24時間のインキュベート後の大豆フレーク(粉末)中のイソフラボンの変化及び割合分布を表1に示す。サンプルは、追加酵素の添加前に殺菌せず、微生物及び汚染物の増殖は阻害されなかった。
【0018】
【表1】
【表2】
【表3】
【0019】
これらのデータから、残存酵素及び追加酵素の組合せにより達成可能な転化の程度が示される。残存酵素の源は、微生物増殖によるものであっても又は内在性大豆酵素であってもよい。イソフラボン複合体のアグルコンへの有意な転化はpH8、60℃で24時間インキュベートした大豆フレーク(粉末)において起こった。本件明細書に記載したそれぞれのタイプのイソフラボンの濃度は、全ての形態のイソフラボンタイプの合計をベースとするものである。
他の一連のサンプルは、脱脂大豆フレークの16%水性懸濁液を形成することにより製造した。サンプルは、pH4.5及び7に調整し、45℃で24時間インキュベートした。副サンプルを0及び24時間で取り出した。全てのサンプルを、イソフラボン含量について分析した。表2は、24時間、pH4.5及び7で45℃でのインキュベート後の脱脂フレークにおける、計算上のイソフラボンの割合分布の変化を示す。
【0020】
【表4】
【表5】
【表6】
【0021】
これらのデータは、タンパク質材料中の残存酵素により達成可能な転化の程度を示す。イソフラボン複合体のアグルコンへの有意な転化が、pH7で45℃の温度で24時間インキュベートしたものに生じた。
他の一連の実験において、大豆から誘導されるタンパク質単離物中のゲニステイン及びダイゼインの回収割合(percent recovery)を調べた。回収割合は、単離物中のゲニステイン(又はダイゼイン)の量で決定し、大豆出発材料中の全ての形態のゲニステイン(又はダイゼイン)の全量をベースとする割合としての量で示した。脱脂大豆粉末100gを、32℃の温度で水酸化ナトリウムを添加することによりpH9.7に調整した水1000gを用いて抽出した。これにより、水と粉末の重量比が10:1となった。粉末を、抽出により分離し、pH9.7で温度32℃の水性抽出物600gで再抽出した。第2抽出段階で、水と粉末の重量比が6:1となった。粉末を、遠心分離により分離し、第1及び第2抽出物を組合せ、pHを4.5に調節して、酸沈降凝乳及び大豆ホエーのスラリーを形成した。そのスラリーを50℃に加熱し、酵素ラクターゼFの凝乳2乾燥重量%を添加した。スラリーを16時間50℃で反応させて、グルコンイソフラボンのアグルコン形態への転化を完全なものとした。酸沈降凝乳を遠心分離によりホエーから分離して、アグルコンが豊富な単離物を形成した。水を用いた、沈降凝乳の更なる洗浄は避けた。単離物において回収されたゲニステイン量は、出発大豆材料(脱脂大豆粉末)中の全ての形態のゲニスチン及びゲニステインの全量の86%であった。同様に、単離物において回収されたダイゼインの量は、75%であった。
【0022】
大豆製品中のイソフラボンの定量化方法を以下に記載する。イソフラボンを、サンプル(噴霧乾燥又は微細パウダー)0.75gと80/20のメタノール/水溶剤とを混合することにより大豆製品から抽出した。その混合物を、2時間、室温で、オービタルシェーカーを用いて震盪した。2時間後、残存している未溶解材料を、ワットマンNo.42ろ紙でのろ過により除去した。ろ液5mlを、水4ml及びメタノール1mlで希釈した。
抽出したイソフラボンを、ベックマンC18逆相カラムを用いたHPLC(高速液体クロマトグラフィー)により分離した。イソフラボンをカラムに入れ、開始時はメタノール88%、水10%及び氷酢酸2%で、終了時はメタノール98%及び氷酢酸2%の溶媒勾配で溶出した。0.4ml/分の流量で、イソフラボン−ゲニスチン、6’’−O−アセチルゲニスチン、6’’−O−マロニルゲニスチン、ゲニステイン、ダイジン、6’’−O−アセチルダイジン、6’’−O−マロニルダイジン、ダイジン、グリシチン及びその誘導体及びグリシテインの全てが明らかに分離した。ピーク検出は、262mmのUV吸光度によるものである。ピークの確認は、質量分析計により行った。
【0023】
定量化は、Indofine Chemical Company, Sommerville, NJ. から購入した純粋な標準物質(ゲニスチン、ゲニステイン、ダイジン及びダイゼイン)を用いることにより達成される。応答因子(response factor:統合領域(integrated area)/濃度) を、上記化合物のそれぞれについて計算し、使用して、未知のサンプルの定量化を行った。純粋な標準物質が入手不可能である複合形態については、応答因子は、親分子(parent molecule) のものであると仮定したが、分子量の相違については修正を行った。グリシチンの応答因子は、分子量の相違について修正をしたゲニスチンについてのものと仮定した。
この方法により、それぞれ別個のイソフラボンの定量化がなされる。便宜上、全ての複合形態がそれらの各々の非複合形態に転化されるのなら、全ゲニステイン、全ダイゼイン及び全グリシテインを計算することができ、これらの化合物の総重量が示される。また、これらの合計は、酸分解を用いて複合形態を転化する方法により直接測定することができる。
当然、前述では、本発明の好ましい実施態様を記載しただけであり、請求の範囲に記載したような精神及び広い態様から逸脱することなく種々の変更及びが可能であると理解され、それは、均等論を含む特許法の原理に従って解釈されるべきである。
Claims (5)
- 少なくとも1.5mg/gの乾燥量基準ゲニステイン含量を有するタンパク質単離物を含む大豆タンパク質単離物。
- 前記タンパク質単離物が、約1.5〜約3.5mg/gの乾燥量基準ゲニステイン含量を有する請求項1に記載の大豆タンパク質単離物。
- 前記タンパク質単離物が、少なくとも1.0mg/gの乾燥量基準ダイゼイン含量を有する請求項1に記載の大豆タンパク質単離物。
- 少なくとも約1.0mg/gの乾燥量基準ダイゼイン含量を有するタンパク質単離物を含む植物タンパク質単離物。
- 前記タンパク質単離物が、約1.0〜約3.0mg/gの乾燥量基準ダイゼイン含量を有する請求項4に記載の植物タンパク質単離物。
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