JP3608997B2 - 摩擦攪拌接合用中空形材及び接続材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は摩擦攪拌接合用の中空形材及び構造体の製作方法に関するものである。例えば、鉄道車両や建築物等に使用されるアルミニウム合金製の中空の押し出し形材による構造体の製作に好適である。
【0002】
【従来の技術】
摩擦攪拌接合方法は、接合部に挿入した丸棒(回転工具という。)を回転させながら接合線に沿って移動させ、接合部を発熱、軟化させ、塑性流動させ、固相接合する方法である。回転工具は、接合部に挿入する小径部と、外部に位置する大径部とからなる。小径部と大径部は同軸である。小径部と大径部との境は接合部に若干挿入されている。これは特開平9−309164号公報(EP0797043A2)に示されている。
【0003】
この文献の図9には中空の押し出し形材の二面の接合を一方の面の側から行うことが示されている。すなわち、前記一方の面の板を突き合わせ、他方の面側から摩擦攪拌接合をしている。前記板の外面側は平らに接合される。前記一方の面の板の端部は、厚さ方向に直交している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記特開平9−309164号公報(EP0797043A2)の図9のように、中空形材を一方の面から摩擦攪拌接合する場合を考える。この場合は、2つの中空形材31、32の上面の板33、33の間隔、およびこの部分に配置する継ぎ手60の幅の精度が重要である。継ぎ手60の両端を板33、33に突き合わせ接合するようにしている。このため、上面の板33、33の間隔が継ぎ手60の幅よりも小さければ、継ぎ手60を配置できない。逆に、上面の33、33の間隔が継ぎ手60の幅よりも大きければ、突き合わせ部の摩擦攪拌接合が困難である。すなわち、板33と継ぎ手60との突き合わせ部の隙間が小さいことが重要である。
【0005】
しかし、中空形材31、32や継ぎ手60の押し出し加工の製作公差、および摩擦攪拌接合の際の製作公差から突き合わせ部に大きな隙間が発生しやすい。鉄道車両の車体の接合の場合のように、多数の中空形材を並べて接合する場合には、これが顕著になる。
【0006】
本発明の目的は、中空形材等の寸法精度にとらわれずに、中空形材を一方の面から良好な接合ができるようにすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、中空形材の一方の面板を接続材を用いて接合する場合において、接続材の一端は突き合わせ接合を行い、他端は重ね接合を行うこと、によって達成できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施例を図1から図4により説明する。図1は図3の要部拡大図、図3は図4の側構体の要部の縦断面図である。
【0009】
車体200は、側面を構成する側構体201、屋根を構成する屋根構体202、床を構成する台枠203、長手方向の端部を構成する妻構体204からなる。側構体201、屋根構体202、台枠203は、それぞれ複数の押し出し形材を接合して構成している。押し出し形材の長手方向を車体の長手方向にしている。押し出し形材はアルミニウム合金製の中空形材である。
側構体201を構成する摩擦攪拌接合用の中空形材10、20の構成および接合方法について説明する。他の箇所、他の構体も同様である。
【0010】
中空形材10、20は二枚の面板11、12、21、22とトラス状に配置した複数のリブ13、23からなる。二枚の面板11、12(21、22)は実質的に平行である。リブ13、23によるトラスのピッチは同一である。トラスはリブ13、23、面板11、12、21、22の板厚の中心線によって構成される。頂点は面板11、12、21、22側にある。
車内側のトラスの頂点付近には機器を取り付けるためのレール19、29を一体に設けている。レール19、29はL状の2つの部材からなる。レールは内装板や椅子等の機器の取り付け座になる。
【0011】
車体の外面側に位置する面板12、22の端部は車内側の面板11、21の端部よりも隣接する中空形材20、10側に突出している。この突出した面板を12b、22bと呼ぶ。面板12b、22bの端部同士を突き合わせて摩擦攪拌接合している。突き合わせ部の隙間が小さくなるように突き合わせている。面板12b、22bの板厚は他の部分の面板12、22の板厚よりも厚い。
【0012】
中空形材10、20は面板12、22を下方にしてベッド240に載っている。面板11、21側を上方にしている。上方から回転工具250を接合部に挿入して摩擦攪拌接合をする。車内側から摩擦攪拌接合すると言える。
面板12b、22bの端部(突き合わせ部)には車内側(すなわち面板11、21側)に突出する凸部16、26がある。凸部16、26の幅、および高さは実質的に同一である。
【0013】
車内側の面板11の端部と面板21との端部との間は接続材30を介して接合している。接続材30の端部はトラスの頂点に設けた座17、27に載っている(重なっている。)。座17、27は面板11、21の外面(上面)よりも凹んでいる。
座17は、リブ13Aとリブ13Bとの交点を通る法線よりも中空形材10の端部側にある。座17から面板11の外面(上面)に至る面は前記法線上にある。座17側の面板11の端部には外面(上面)側に突出する凸部11bがある。接続材30の端部には上面側に突出する凸部32がある。凸部11b、32の幅および高さは凸部16、26のそれと同様である。座17の幅は凸部32の幅と同様である。
【0014】
座27は、リブ23Aとリブ23Bとの交点を中心としてある。座27の幅の中央に前記交点がある。つまり、端部のトラスの頂点は座27の幅の中央部にある。座27から面板22に至る面は接続材30とのアーク溶接用の開先として傾斜している。
座27に載る接続材30の端部には凸部35がある。凸部35の高さは凸部16、26、11b、32のそれと同様である。幅は凸部16、26を合わせたものと同様である。
【0015】
接続材30は面板11、21の表面があたかも連続しているようにすることを目的として配置している。接続材30の両端を除いた中央は板31であり、その板厚は面板11、21の板厚と実質的に同一である。凸部35の上面にはV字状の溝36がある。溝36は凸部35の幅の中心にある。凸部35の幅は回転工具250の大径部252の径よりも大きい。溝36は回転工具250を導くための位置検出用の対象物となる。レーザセンサで溝36を検出し、回転工具250の軸心が溝36に一致するようにしている。溝36の延長線上すなわち回転工具250の軸心上に2つのリブ23Aと23Bの交点がある。
【0016】
接続材30の幅は二つの中空形材10、20の面板11、21の間隔よりも小さい。接続材30は中空形材10、20と同一材質の押し出し形材である。接続材30の長さは中空形材10、20の長さと同一である。
面板11の端部から面板21の端部までの距離P(中空形材10の端部のトラスの頂点から中空形材20の端部のトラスの頂点までの距離)は他の位置のトラスのピッチPと同一である。
【0017】
中空形材のトラスは、面板11、12、21、22側を頂点としたとき、2等辺3角形である。しかし、中空形材10、20の端部のトラスは2等辺3角形ではない。
このため、リブ13A(23A)は面板12(22)の途中に接続している。リブ13Aと面板12との接続部と、リブ23Aと面板22との接続部との間には摩擦攪拌接合装置を挿入する空間が生じる。
【0018】
この構造体の製作方法を説明する。中空形材10、20をベッド240に載せる。次に、面板12b、22bを突き合わせる。次に、この中空形材10、20をベッド240に固定する。次に、端面12d、22dの部分を上方からアーク溶接によって仮止めする。仮止め溶接は間欠的である。
面板12b、22bの突き合わせ部が載るベッド240の上面は平らである。面板12b、22bの突き合わせ部付近、リブ13A、23Aと面板12b、22bとの交点付近、リブ13B、23Bと面板12、22との交点付近の三者は同一高さのベッド240に載っている。
【0019】
この状態において、摩擦攪拌接合装置の回転工具250を上方から凸部16、26の突き合わせ部に挿入した状態で、接合線に沿って移動させ、摩擦攪拌接合する。回転工具250の軸心は鉛直方向(接合部の法線に沿った方向)である。ただし、回転工具250の進行方向に対しては軸心は公知のように傾斜している。
【0020】
回転工具250は大径部252とその先端の小径部251とからなる。小径部251の先端(下端)は面板12b、22bの下面の近傍に位置している。大径部252の下端は凸部16、26の頂と面板12b、22bの車内側の面(面板11、21側の面)との間に位置している。大径部252の径は2つの凸部16、26からなる幅よりも小さい。小径部251はねじである。
摩擦攪拌接合の際、凸部16、26の頂面を回転工具250とともに移動するローラで下方に押さえている。
【0021】
レーザセンサで凸部15、26を検出する。これによって凸部16、26の高さ位置を求め、回転工具250の挿入量を定める。又、凸部15、26の突き合わせ部の隙間を求め、この位置に回転工具250の軸心を一致させる。
【0022】
この摩擦攪拌接合によって、面板12b、22bの突き合わせ部の隙間は埋められて、接合される。隙間を埋める金属の原資は凸部16、26である。面板12b、22bの外面側(車外側)は平らに接合される。面板12b、22b外面側には接合線の凹部はない。
凸部16、26の上面は回転工具250の大径部252によって凹状になる。凹部の両側には凸部16、26が残る。
【0023】
次に、面板11、21の座17、27に接続材30を載せる。接続材30の一端(凸部32の端部)を面板11の端部(凸部11bと座17との境)に突き合わせる。
次に、接続材30の端部を面板11の凸部11b、面板21に対してそれぞれアーク溶接によって仮止めする。仮止め溶接は間欠的である。
次に、面板12b、22bの突き合わせ部の摩擦攪拌接合に用いた摩擦攪拌接合装置を用いて接続材30の一端と面板11の端部との突き合わせ部の接合を行う。これは凸部16、26の突き合わせ部の接合と同様である。
【0024】
次に、座27と接続材30の他端との接合を行う。これは回転工具250を上方から接続材30と座27を重ねた部分に挿入した状態で、接合線に沿って移動させ、摩擦攪拌接合する。凸部35の幅は回転工具250の大径部252の径よりも大きい。凸部35の幅の中心に溝36がある。回転工具250の回転軸心を溝36に一致させる。回転工具250の小径部251の先端は座17、27に深く挿入している。これによって、重ね接合が行われる。大径部252の下端は非凸部の接続材30の上面と凸部35の頂との間にある。
【0025】
凸部35の上面は回転工具250の大径部252によって凹状になる。凸部35の上面は回転工具250の大径部252によって凹状になる。凹部の両側には凸部35が残る。
摩擦攪拌接合装置の前記センサは溝36を検出して、溝36に沿って回転工具250を移動させる。
【0026】
図2は接合後の接合部の状態を模試的に示すものである。ハッチングは接合部を示すものである。
回転工具250の軸心は2つのリブ13A、13B(23A、23B)によるトラスの頂点またはその近傍を通る鉛直線上にある。偏芯に対しては、リブ13A、13B(23A、23B)の板厚の増大、リブと面板とを接続する円弧の形状、接続部の厚さ、座17、27の厚さ等によって対応する。
【0027】
2つの回転工具を用いれば、接続材30の両端の接合を同時にできる。
これによれば、一方の重ね継手を突き合わせ継手とすることができるので、継手効率の向上および屈曲部における応力集中の低減により、強度を向上させることができるものである。
【0028】
また、アーク溶接を少なくできるので、構造体の熱歪みを少なくでき、見栄えを向上でき、また内装材の取り付けを容易に行うことができる。
中空形材の両面の接合を片面側から行うことができる。このため、一方の面を接合した構造体を反転させる必要がない。したがって、安価に、また高精度に製作できるものである。
【0029】
また、面板12b、22bの接合部の外面は平らに接合できる。凸部16、26、35は構造体内や車内側にあり、平滑な面が要求される箇所(外面側、車外側)にはない。また、車外側には回転工具によって切削されて生じる凹部もない。このため、凸部の切削等を不要にでき、車体を安価に製作できるものである。
【0030】
また、ベッド240はローラなどの裏当てで代用できる。
また、突き合わせ部を最初に接合し、次に重ね部を接合するようにしている。このため、逆の場合に比べて、摩擦攪拌接合を良好にできると考えられる。
重ね部の接合部(座27と接続材30との接合部)の強度および面板21の屈曲部の強度は突き合わせ部(面板11と接続材30との接合部)の強度よりも劣ると考えられる。この場合は、接続材30の端部と面板21の端部とをアーク溶接する。この溶接は強度がより必要な箇所、例えば窓隅部に近い位置のみでよい。
また、上記によって接合したものは建築物などの構造物の外面(目視できる面)に使用できる。
【0031】
接続材30を載せる箇所は摩擦攪拌接合時の荷重に耐える構造、箇所であればよい。例えば、前記特開平9−309164号公報(EP0797043A2)の図9のようにできる。
【0032】
図5の実施例を説明する。これは3つ以上の中空形材を接合して大きな構造体を製作する場合に適している。例えば、側構体201を構成する。左側の中空形材10、20、および接続材30の関係は図1の実施例と同様である。中央の中空形材20の他端(右端)に中空形材20B、接続材30Bを接合している。中空形材20Bの左端、接続材30Bは、中空形材20の左端、接続材30に同一である。中空形材20の他端(右端)の構造は中空形材10の右端の構造と同一である。この中空形材20の右端に接合する中空形材20Bの左端の構造は中空形材20の左端の構造と同一である。接続材30Bの構造および向きは接続材30と同一である。
中空形材20の左端および中空形材10は図5において上部に示している。中空形材20の右端および中空形材20Bは図5において下部に示している。
【0033】
すなわち、3つの中空形材を接合するとき、中央の中空形材20の面板21の一端(左端)には斜面27bを設け、面板21の他端(右端)には凸部(凸部11bに相当する。)を設ける。これによれば、中央の中空形材20の両側の接続材30、30Bの凸部32の向きはすべて左方を向くことになる。このため、複数の接続材30の凸部32の向きが同一方向になり、接続材30の配置を間違えることが少なくできるものである。
接合手順は、3つの中空形材をベッド240に載せ、拘束する。以下は図1の場合と同様である。
【0034】
本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の各請求項に記載の文言あるいは課題を解決するための手段の項に記載の文言に限定されず、当業者がそれから容易に置き換えられる範囲にも及ぶものである。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、中空形材等の寸法精度にとらわれずに、中空形材を一方の面から良好な接合ができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の接合部の接合前の縦断面図。
【図2】本発明の一実施例の接合部の接合後の縦断面図。
【図3】本発明の一実施例の接合部の中空形材の縦断面図。
【図4】鉄道車両の車体の斜視図。
【図5】本発明の他の実施例の接合部の縦断面図。
【符号の説明】
10,10B,20 中空形材
11,12,12b,21,22,22b 面板
11b,32,35 凸部
30,30B 接続材
201 側構体
202 屋根構体
203 台枠
240 ベッド
250 回転工具
Claims (2)
- 二枚の面板の間を複数のリブで接続しており、一方の面板の端部は他方の面板の端部よりも突出しており、
かかる中空形材の幅方向の一端の前記他方の面板の端部には凸部があり、
前記他方の面板の他端には斜面があり、
前記一端側の前記リブと前記他方の面板の前記一端側の端部との接続部は、前記一方の面板側に凹んでおり、
この凹部は前記一端側にも開放しており、
この凹部と前記他方の面板の外面とは斜面で接続しており、
前記一方の板の前記端部及び前記凹部は摩擦攪拌接合する部分であること、
を特徴とする中空形材。 - 板の幅方向の両端に板厚方向の同一方向に突出する凸部があり、
一端の前記凸部の幅は他端の前記凸部の幅よりも大きいこと、
を特徴とする摩擦攪拌接合用接続材。
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