JP3606376B2 - 耐食性に優れた亜鉛系めっき建設用鋼材 - Google Patents

耐食性に優れた亜鉛系めっき建設用鋼材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート中に埋設される、鉄筋および鉄骨、さらにはアンカーボルト等の結合部材といった、建設用鋼材に関する。より詳しくは、本発明は、コンクリート構造物の長寿命化を目的として亜鉛系めっきが施された上記建設用鋼材において、そのコンクリート中での耐食性をさらに改善し、コンクリート構造物の長寿命化を図ることができる鋼材と、その製造に用いる被覆組成物とに関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄筋コンクリート構造物をとりまく環境は種々雑多であるが、特に海岸地域、あるいは凍結防止のために塩が散布される寒冷地では、環境中の塩化物濃度が高く、塩化物(塩素イオン)によるコンクリート中の鋼材(鉄筋、鉄骨、ボルト類など)の腐食が大きな問題となる。
【0003】
コンクリートは内部に細孔を有しており、その細孔中には周囲から滲出してくるコンクリート水が存在する。このコンクリート水は、コンクリート中のセメントから溶出したNaやK等のアルカリ金属イオンやCa等のアルカリ土類金属イオンを含有しており、強いアルカリ性になっている。このコンクリート水は、コンクリート中の細孔を通って、鉄筋等のコンクリート中の鋼材と接触する。コンクリート中の鋼材は、単なるアルカリ水溶液と接触しても、腐食はそれほど進行しない。鋼材の表面が不働態化するため、アルカリ性水溶液では侵されにくいからである。
【0004】
しかし、環境(大気、地下水、雨水等)が塩化物を含んでいると、環境中の塩化物はコンクリート中に浸透し、コンクリート水はアルカリ成分に加えて塩化物を含有するようになる。塩化物を含有するコンクリート水がコンクリート中の鋼材と接触すると、鉄または酸化鉄は塩化物と反応して水溶性の塩化鉄となるため、鋼材の腐食の進行が速くなる。そのため、特に環境中の塩化物濃度が高い上述したような地域では、コンクリート中の鋼材の腐食により、鉄筋コンクリート建造物の寿命が短くなることが問題となっている。
【0005】
また、環境汚染に伴って大気中の濃度が増えている硫黄酸化物(SO)や窒素酸化物(NO)も、やはりコンクリート中に浸透すると、塩化物と同様にコンクリート中の鋼材の腐食を引き起こすことがある。
【0006】
コンクリート構造物の長寿命化を図る手段として、鉄筋に溶融亜鉛めっきを施した亜鉛めっき鉄筋が、主に欧州および北米において以前から注目され、また実際にも使用されてきた。
【0007】
亜鉛めっき鉄筋は、鉄筋がアルカリ性のコンクリート水と接触した場合に耐食性を発現することができる。この耐食性は、鉄筋表面の亜鉛がコンクリート水中に溶解してコンクリート水中の溶解金属(例、Na、Kなどのアルカリ金属)のイオンと反応し、亜鉛化合物が鉄筋表面に形成されることにより達成される。形成された亜鉛化合物が防食機能を発現し、鉄筋を防御する。しかし、鉄筋表面に形成された亜鉛化合物は、塩化物の通過を阻止するバリアー機能を有していない。そのため、周囲環境からコンクリート水中にとけこんだ塩化物は、亜鉛めっきの表面に到達することができる。これに応じて、亜鉛が少しずつ溶解し、鋼材の腐食を防止する。
【0008】
このように、亜鉛めっきによる耐食性は亜鉛の溶解が前提となっているため、塩化物濃度が非常に高い地域では、亜鉛めっきが完全に溶解して、亜鉛めっきによる鉄筋の防食機能が失われるといった事態になる。従って、亜鉛めっき鉄筋は、裸の鉄筋に比べれば、塩化物を含有する環境中で優れた耐食性を示し、コンクリート構造物の長寿命化に有効であるが、塩化物濃度が高い地域では、亜鉛めっき鉄筋でも万全とはいえない。
【0009】
亜鉛めっき鉄筋の腐食による亜鉛の溶解を抑制するため、亜鉛めっき鉄筋を埋設するのにコンクリート中に、金属亜硝酸塩を中心とする各種の腐食抑制剤 (インヒビター) を添加することが行われている。
【0010】
コンクリート中に金属亜硝酸塩等の腐食抑制剤を添加しておくと、亜鉛めっき鉄筋上にある種の不溶性で耐食性の皮膜が形成されると推定される。しかし、このような被膜は、コンクリート中から腐食抑制剤が鉄筋上に拡散して初めて形成されるので、時間がかかり、その効果はそれほど大きくない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このように、亜鉛めっき鉄筋や、コンクリート中に腐食抑制剤を添加した亜鉛めっき鉄筋コンクリートでは、鉄筋の防食効果はある程度は期待できるものの、その効果は、特に塩化物濃度の高い環境下ではなお不十分である。また、腐食抑制剤による亜鉛めっきの溶解の抑制は即効性がない。
【0012】
本発明は、コンクリートへの腐食抑制剤の添加を利用せずに、塩化物濃度の高い環境でも、亜鉛めっき鉄筋を用いた鉄筋コンクリート構造物の寿命を著しく改善することができ、かつ亜鉛の溶解を効果的に抑制できる即効性のある手段を開発することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、コンクリートに腐食抑制剤を添加するのではなく、コンクリート中に埋設される亜鉛めっき鋼材(例、亜鉛めっき鉄筋)それ自体を、カルシウム化合物を含有する層で被覆することにより、上記目的を達成することができる。この被覆は、例えば、カルシウム化合物と好ましくはさらに適当な有機または無機結合剤とを含有する被覆組成物を、鋼材のめっき表面に塗布することにより形成することができる。
【0014】
ここに、本発明は、コンクリート中に埋設される、亜鉛系めっきが施された、スチールファイバーは除く建設用鋼材であって、めっき表面に、塩素を含有する亜鉛酸カルシウム系化合物を生成するカルシウム化合物を含有する被覆を有することを特徴とする、塩化物濃度の高い地域でコンクリートに用いても優れた耐食性を示す建設用鋼材である。
【0015】
ここで、亜鉛系めっきとは、亜鉛めっきと亜鉛合金めっきとを包含する意味である。
好適態様にあっては、コンクリート中に埋設される建設用鋼材は鉄筋、鉄骨およびそれらの結合部材から選ばれ、鋼材の亜鉛系めっきは、溶融亜鉛めっきまたは溶融亜鉛−アルミニウム合金めっきであり、また前記被覆はカルシウム化合物と無機および/または有機結合剤とから構成される。
【0016】
別の側面からは、本発明は、コンクリート中に埋設される、亜鉛系めっきが施された、スチールファイバーは除く建設用鋼材に塗布して、そのコンクリート中での耐食性を改善するための被覆組成物であって、塩素を含有する亜鉛酸カルシウム系化合物を生成するカルシウム化合物を含有することを特徴とする、塩化物の通過を阻止するバリアー皮膜形成用被覆組成物である。この被覆組成物は、さらに無機および/または有機結合剤を含有していることが好ましい。
【0017】
本発明に従ってカルシウム化合物を含有する被覆を亜鉛めっき鉄筋の表面に形成すると、コンクリート中での亜鉛めっき鉄筋の耐食性が早期に改善され、塩化物濃度が高い環境下でも亜鉛の溶解を抑制することができるため、亜鉛めっき鉄筋の耐食性が向上し、これを用いたコンクリート構造物の寿命をさらに延長することができる。
【0018】
この耐食性向上の詳しい機構は解明されていないが、現時点では次のように考えられる。カルシウム化合物を含有する被覆から溶出したカルシウム(イオン)は、めっきから溶出した亜鉛(イオン)およびコンクリート水中の塩化物と水中で反応する。この反応により、不溶性で保護効果の高い、カルシウム−亜鉛−塩化物−酸化物系の複雑な化合物(塩素を含有する亜鉛酸カルシウム系と呼ぶことができる化合物)が亜鉛めっき鉄筋の表面に生成する。この反応は、前述したコンクリートに添加した腐食抑制剤のようにコンクリートからの拡散が不要であるので、コンクリート水が生成した後すぐに起こる。
【0019】
即ち、上記の亜鉛酸カルシウム系の複雑な不溶性化合物は、本発明による被覆を施した鋼材がコンクリートと接触してすぐに生成する。この化合物が高い保護効果を示し、塩化物を含有するコンクリート水中でのそれ以上の亜鉛の溶解を効果的に抑制できるのは、この化合物がめっき表面で緻密なバリアー性の高い皮膜を形成し、コンクリート水と亜鉛との接触を阻止するためと考えられる。また、この化合物が未反応のカルシウム化合物を含んでいて塩化物の捕捉作用を有していることも考えられる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の対象となる、コンクリート中に埋設される建設用鋼材とは、そのような建設用鋼材の全てを包含するが、代表例としては、鉄筋、鉄骨、およびそれらの結合部材、例えば、アンカーボルトを含むボルト類が挙げられる。
【0021】
本発明では、このような建設用鋼材のうち、耐食性改善のために亜鉛系めっきが施されているものを対象とする。この亜鉛系めっきは、溶融めっきと電気めっきのいずれでもよいが、建設用鋼材の場合は、低コストで厚目付のめっき被膜を形成できる溶融めっきが通常は採用される。めっき金属は、亜鉛と亜鉛合金のいずれでもよい。溶融亜鉛合金めっきの例は、Zn−5%Al合金めっきおよびZn−55%Al合金めっきであり、これらは大気中では亜鉛めっきより良好な耐食性を示すことが知られている。
【0022】
本発明で使用するのが好ましい亜鉛系めっき鋼材は、溶融亜鉛めっき鋼材と溶融Zn−5%Al合金めっき鋼材であり、中でも溶融亜鉛めっき鋼材が好ましい。
以下では、説明の簡略化のために、めっきが亜鉛めっきである亜鉛めっき鉄筋を例にとって本発明を説明するが、本発明の対象は亜鉛めっき鉄筋に限られるものではないことは、上の説明から明らかであろう。
【0023】
本発明によれば、亜鉛めっき鉄筋の表面に、カルシウム化合物を含有する被覆を形成する。この被覆は、カルシウム化合物を含有していれば特に制限されるものではないが、コンクリートに対して実質的な悪影響を及ぼさないものとすべきである。例えば、コンクリートと接触した時に、その硬化性に悪影響を及ぼす成分や、起泡を生ずる成分が被覆中に存在することは好ましくない。
【0024】
カルシウム化合物は、コンクリート水中に少量のCaイオンを供給すればよいので、特にその種類は制限されず、塩化物以外のカルシウム化合物であればどれも使用できる。カルシウム化合物は難溶性であってもよく、むしろ難溶性化合物の方がCaイオンを長期間にわたって徐々に供給できる点で有利である。また、カルシウム化合物は有機化合物であってもよい。
【0025】
好ましいカルシウム化合物は、ポルトランドセメント中に含まれているカルシウム化合物である生石灰 (酸化カルシウム) やセッコウ (硫酸カルシウム) 、ならびに石灰の水和物である消石灰 (水酸化カルシウム) である。その他、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム (セッコウ) 、炭酸カルシウムなども使用できる。コストを考慮すると、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの使用が有利である。
【0026】
また、カルシウム化合物は純品である必要はない。コンクリートの性能に悪影響を及ぼさない他の成分が共存する材料もカルシウム化合物として使用できる。従って、廃物から回収されたカルシウム化合物、例えば、牡蛎殻などの貝殻の粉砕物(胡粉を含む)、も使用でき、それによりさらにコスト面で有利となる。
【0027】
亜鉛めっき鉄筋の表面にカルシウム化合物を含有する被覆を形成する。この被覆は、結合剤を使用せずに形成することも可能である。しかし、一般に、そのような被覆は強度が弱く、亜鉛めっき鉄筋の取り扱いが困難になる。従って、結合剤によりカルシウム化合物を結合させた被覆とすることが好ましい。その場合、カルシウム化合物と結合剤とを含有する被覆組成物を亜鉛めっき鉄筋に塗布し、塗膜を乾燥することにより、カルシウム化合物と結合剤を含有する被覆を亜鉛めっき鉄筋の表面に形成することができる。
【0028】
この被覆組成物は多様な形態をとることができる。カルシウム化合物は、被覆組成物中に溶解していてもよく、あるいは粉末状態で存在させてもよい。結合剤は、無機皮膜を形成する無機結合剤と有機皮膜を形成する有機結合剤のいずれでもよく、両者の併用も可能である。
【0029】
結合剤は、水溶性または水分散性 (エマルジョン樹脂等) であっても、あるいは水不溶性で有機溶剤に溶解する種類のものであってもよい。しかし、有機溶剤の使用は環境に有害であり、コスト的にも不利であるので、水性または水分散性の結合剤を使用して、被覆組成物を水系組成物とすることが好ましい。
【0030】
その場合、乾燥後に形成される結合剤の被膜それ自体が水溶性または水分散性となる結合剤が特に好ましい。それにより、亜鉛めっき鉄筋がコンクリート水と接触すると、すぐに被覆が崩壊してカルシウム化合物が放出され、上記反応によるカルシウム化合物の防食効果が発揮される。
【0031】
被覆中の結合剤が水溶性または水分散性ではなく、被覆が崩壊しない場合には、被覆それ自体が保護効果を発揮し、また被覆表面に露出したカルシウム化合物がコンクリート水中の成分と反応して、前述した化合物の形成による防食効果を発揮する。さらに、この被覆にピンホールや亀裂があると、そこからコンクリート水が浸透して、カルシウム化合物と反応し、上記の防食効果が得られる。この場合には、コンクリート水と接触するカルシウム化合物の量が少なくなるので、カルシウム化合物としては水溶性の高いカルシウム化合物を使用することが好ましい。
【0032】
このように、被覆中の結合剤が水溶性または水分散性である方が、被覆中のカルシウム化合物の利用率が高く、前述した亜鉛めっきの保護効果の高い、亜鉛酸カルシウム系の複雑な化合物からなる皮膜の形成に有利である。従って、本発明ではこのような結合剤の使用が好ましいが、結合剤が水溶性または水分散性ではない場合でも、被覆中にカルシウム化合物が存在すると、カルシウム化合物が関与する亜鉛めっきの保護効果がある程度は得られる。
【0033】
無機結合剤の例は、水ガラス、エチルシリケート (有機物であるが、本質的にシリカからなる皮膜を形成できる) などである。有機結合剤のうち、水溶性結合剤の例としては、デンプン等の天然の水溶性高分子、ポリビニルアルコール (PVA) 、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキサイドなどの合成ポリマー、ならびにカルボキシメチルセルロース (CMC) 、メチルセルロース等の半合成ポリマーが挙げられる。水分散性の有機結合剤としては、エマルジョン塗料に使用される各種樹脂 (例、酢酸ビニル、アクリル、ポリウレタン等) が挙げられる。
【0034】
結合剤が水溶性または水分散性の結合剤である水系被覆組成物の場合、カルシウム化合物は水溶性と難溶性のいずれの化合物も使用できる。難溶性のカルシウム化合物の場合には、この化合物の粉末を使用して、被覆組成物中にカルシウム化合物の粉末を分散させることになる。被覆組成物は、水の量を非常に少なくして、ペースト状にしてもよい。ペースト状の被覆組成物は、1回の塗布で比較的厚い被覆を形成することができるという利点がある。
【0035】
被覆組成物中の結合剤の量は、カルシウム化合物を結合するのに十分な量であればよい。この量は結合剤の種類、カルシウム化合物の種類や難溶性カルシウム化合物の場合にはその粒径等の条件によっても変動するが、通常は、固形分基準で、カルシウム化合物100 質量部当たり1〜100 質量部の結合剤を使用することが好ましい。
【0036】
被覆組成物は、結合剤、カルシウム化合物、および水 (または溶剤) のみから構成されるものでよいが、コンクリートや鉄筋に悪影響を及ぼさなければ、他の成分を含有させることも可能である。例えば、着色剤を含有させて被覆を着色することにより、被覆の有無を識別しやすくしてもよい。
【0037】
亜鉛めっき鉄筋への被覆組成物の塗布は常法に従って実施すればよい。被覆組成物が液状である場合には、スプレー、ロール塗装、テーピングなどの塗布方法を採用できる。被覆組成物がペースト状である場合には、刷毛塗り、吹き付けといった塗布方法が好適である。
【0038】
塗布後に塗膜を乾燥して、水または溶剤を除去すると、カルシウム化合物と結合剤 (これを使用した場合) からなる被覆が亜鉛めっき鉄筋のめっき表面に形成される。この乾燥は自然乾燥でも、加熱乾燥でもよい。但し、結合剤が熱硬化性樹脂のように加熱を必要とする場合には、必要な加熱を行う。
【0039】
被覆の厚みは特に制限されないが、本発明の目的である亜鉛めっき鉄筋のめっき皮膜の溶解を抑制するのに有効な厚みとすべきである。この厚みは、カルシウム化合物や結合剤の種類、被覆中のカルシウム化合物の含有量、コンクリート構造物の周囲環境の腐食性 (塩化物濃度) によっても変動する。一般には、カルシウム化合物の付着量が0.05〜20 kg/mとなるように被覆の厚みを設定することが好ましい。この付着量はより好ましくは 0.5〜10 kg/m、最も好ましくは2〜6kg/mである。好ましい付着量がかなり大きい値であるので、被覆組成物はペースト状であることが有利である。
【0040】
カルシウム化合物を含有する被覆は、コンクリート水にCaイオンを供給して、前述した亜鉛酸カルシウム系の複雑な化合物を形成することにより、亜鉛めっき鉄筋の耐食性を改善する。即ち、この被覆それ自体が保護被覆となるのではない。従って、カルシウム化合物を含有する被覆は緻密である必要はなく、また亜鉛めっき鉄筋のめっき表面を連続的に覆う必要もない。例えば、縞状といった不連続な被覆でも、Caイオンを効果的に供給でき、本発明の効果を達成することができる。
【0041】
本発明によりカルシウム化合物を含有する被覆をめっき表面に形成した亜鉛めっき鉄筋を用いて鉄筋コンクリート構造物を建造すると、亜鉛めっきの防食効果を高める被覆が亜鉛めっき鉄筋の表面に予め成されているため、この被覆による防食効果がすぐに現れる。即ち、この被覆を有する亜鉛めっき鉄筋を埋設するようにコンクリートを打ち込むと、被覆中のカルシウム化合物はコンクリート水中の化学種とすぐに反応することができる。コンクリート水が塩化物を含有していると、この反応によりカルシウム−亜鉛−塩化物−酸化物系 (塩素を含む亜鉛酸カルシウム系) の複雑な塩からなるバリアー性の高い皮膜が鉄筋表面に形成され、この皮膜による保護作用で内部の亜鉛めっき鉄筋が保護され、その耐食性が向上する。
【0042】
亜鉛めっき鉄筋のみでもコンクリート中の鉄筋の寿命はかなり延びることが確かめられているが、塩化物濃度が高い環境では亜鉛の溶解が進行するため、亜鉛めっきだけで鉄筋を十分に保護することはできない。本発明によれば、亜鉛の溶解を著しく抑制することができるので、塩化物濃度、さらにはNOやSOの濃度が高い腐食性が強い環境中での亜鉛めっき鉄筋の耐食性の大幅な向上につながる。
【0043】
【実施例】
【実施例1】
両面に溶融亜鉛めっきを施した鋼板 (めっき付着量:片面当たり550 g/m) から1cm平方の試験片を切り出した。この試験片の片面の亜鉛めっき面に、リード線をつなげた後でエポキシ樹脂中に埋め込み、この面をシールした。この面を裏面とする。次に、試験片の反対側のめっき面 (表面とする) に、市販の水酸化カルシウム粉末 (試薬級) 12質量部を10質量%濃度のCMC水溶液10質量部 (樹脂固形分として1質量部) と一緒に混練することにより作製したペーストをヘラで塗布し、常温で乾燥して、カルシウム化合物を含有する被覆を形成した。この被覆中の水酸化カルシウムの含有量は3.7 kg/mであった。
【0044】
こうして得られた、水酸化カルシウムを含有する被覆を片面に有する溶融亜鉛めっき鋼板の試験片を、腐食試験に供した。腐食試験に用いた試験溶液は、硬化後のコンクリートから滲出するコンクリート水を模した、0.008 mol/l Ca(OH)−0.13 mol/l Na0H−0.32 mol/l KOHなる組成のアルカリ性水溶液 (pH 13.6)に、3質量%の塩化ナトリウムを添加した水溶液であった。腐食試験はサイクリックボルタンメトリー法により、次のようにして行った。
【0045】
上記試験片の裏面 (リード線に接続され、エポキシ樹脂に埋め込まれた面) を作用電極とし、対極にはらせん状の白金電極を、参照極としては銀/塩化銀電極 (3.3 kmol/mKCl)を用いた。これら3極を上記試験溶液に浸漬して3極式セルを構成し、3極の他方の端子をポテンシオスタットに接続した。関数発生器を用いて電位について走査し、電流密度−電位曲線を作成して、耐食性を評価した。電位の走査は、自然浸漬電位(R.P.)から−1500 mV (銀/塩化銀電極基準、以下同じ) まで卑な方向に分極させた後、貴な方向に0V まで分極させ、R.P.まで再び卑な方向に分極させることにより行った。走査速度は10 mV/sec とした。
【0046】
比較のために、溶融亜鉛めっき鋼板の試験片の表面に、カルシウム化合物を含有する被覆を形成せずに (即ち、表面は裸の亜鉛めっき面のまま、裏面は上記と同様) 、上記と同じ試験を実施した。この場合を「被覆なし」、本発明に従ってカルシウム化合物を含有する被覆を形成した場合を「被覆あり」とする。
【0047】
図2に、「被覆なし」の試験片と「被覆あり」の試験片で得られた電流密度−電位曲線の−1500 mV から0mVまで貴な方向に走査した部分を示す。
いずれの曲線も、−1250 mV 近傍に電流密度のピークが見られる。これは、めっき皮膜中の亜鉛が溶解し、水溶液 (コンクリート水) 中および「被覆あり」の場合は被覆中の化学種と反応して、亜鉛酸カルシウム系のバリアー性皮膜ができることによるものと考えられる。電流ピーク時に生成したこのバリアー性皮膜は、生成後の水溶液中における塩化物イオン等の腐食因子を遮断し、素地を保護するため、その後、電流値は急激に低下している。
【0048】
しかし、「被覆なし」の試験片では、電流値が再び急増し、−1000 mV 近傍にシャープな電流密度のピークができている。このピークは、−1250 mV 近傍で生成した亜鉛酸カルシウム系のバリアー性被覆が溶解し、亜鉛酸ナトリウムまたはカリウム系などの比較的溶解し易い腐食生成物に置き換わる反応に対応していると推定される。この腐食生成物はバリアー性が低く、素地の亜鉛の溶解を生じやすいので、その後も電流密度が高くなる。
【0049】
これに対し、本発明に従った「被覆あり」の試験片では、このピークがない。即ち、亜鉛酸カルシウム系のバリアー性皮膜が溶解せずに保持され、この皮膜による亜鉛めっきの保護効果が持続する。そのため、その後も、全体的に「被覆なし」の試験片より低い電流密度が維持され、亜鉛の溶解が抑制される。
【0050】
このように、図1から、カルシウム化合物を含有する被覆を亜鉛めっき表面に形成することにより、塩化物を含有するコンクリート水中での亜鉛の溶出が効果的に抑制され、亜鉛めっき素地の保護能力が高まることがわかる。
【0051】
ここでは、鋼板の片面を本発明に従って処理することにより試験したが、鉄筋といった鋼材の場合にも同様の結果となることは当然である。従って、本発明によりカルシウム化合物を含有する被覆を亜鉛めっき鉄筋の表面に形成すると、塩化物を含有するコンクリート水中での亜鉛の溶出が抑えられ、亜鉛めっき鉄筋の耐食性が向上する。
【0052】
【実施例2】
供試材として、溶融亜鉛めっき鋼板の代わりに、大気暴露に対してより良好な耐食性を示すことが知られている、溶融5%Al−Zn合金めっき鋼板または溶融55%Al−Zn合金めっき鋼板を用いて、実施例1と全く同様にして、めっき鋼板の試験片の片面に水酸化カルシウムを含有する被覆を形成した後、電流密度−電位曲線を作成して、コンクリート水中での耐食性を評価した。また、比較のために、上記2種類の溶融Al−Zn合金めっき鋼板の「被覆なし」のめっき鋼板の供試材を用いて、同じ試験を実施した。
【0053】
5%Al−Zn合金めっき鋼板および55%Al−Zn合金めっき鋼板のそれぞれについて、比較用の「被覆なし」のめっき鋼板と「被覆あり」のめっき鋼板の電流密度−電位曲線を対比した。いずれのめっき鋼板でも、「被覆なし」のめっき鋼板に比べて、本発明に従った「被覆あり」のめっき鋼板の方が、全体的に電流密度が減少し、耐食性が向上することがわかった。
【0054】
しかし、実施例1の溶融亜鉛めっき鋼板の場合に比べて、「被覆あり」と「被覆なし」との電流密度の差、即ち、カルシウム化合物を含有する被覆による電流密度の低下の幅、が小さくなった。特に、Alの添加量が多い55%Al−Zn合金めっき鋼板の場合に、この差が小さかった。
【0055】
従って、本発明によるカルシウム化合物を含有する被覆の形成によるコンクリート水中での耐食性の改善効果は、亜鉛 合金めっきより純亜鉛めっきの方がより顕著となり、亜鉛合金めっきの中は、合金元素の添加量が少ない亜鉛 合金めっきの方がより有効であることがわかる。ただし、例えば、55%Al−Zn合金めっきのように合金元素の含有量が多い亜鉛合金めっきの場合でも、本発明による耐食性改善効果は確かに認められる。
【0056】
【発明の効果】
本発明により、亜鉛めっき鉄筋のような亜鉛系めっきが施された建設用鋼材のコンクリート中における耐食性を、コンクリート中に埋設した初期の段階から改善することができる。それにより、海岸地域等の塩害によるコンクリート中の鋼材の腐食が懸念されるような環境にあっても鋼材の腐食を効果的に抑制することができ、コンクリート構造物の寿命を大幅に延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従って、水酸化カルシウムとCMCからなる被覆を溶融亜鉛めっき表面に形成した場合 (「被覆あり」) と、被覆がない場合の、塩化物を含有する擬似的コンクリート水中での電流密度−電位曲線を示す。

Claims (8)

  1. コンクリート中に埋設される、亜鉛系めっきが施された、スチールファイバーは除く建設用鋼材であって、めっき表面に、塩素を含有する亜鉛酸カルシウム系化合物を生成するカルシウム化合物を含有する被覆を有することを特徴とする、塩化物濃度の高い地域でコンクリートに用いても優れた耐食性を示す建設用鋼材。
  2. 前記建設用鋼材が鉄筋、鉄骨およびそれらの結合部材から選ばれる請求項1記載の建設用鋼材。
  3. 亜鉛系めっきが溶融亜鉛めっきまたは溶融亜鉛−アルミニウム合金めっきである請求項1または2記載の建設用鋼材。
  4. 被覆がカルシウム化合物と無機および/または有機結合剤とから構成される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の建設用鋼材。
  5. 被覆中の結合剤が水溶性または水分散性である、請求項4記載の建設用鋼材。
  6. コンクリート中に埋設される亜鉛系めっきが施された、スチールファイバーは除く建設用鋼材に塗布して、そのコンクリート中での耐食性を改善するための被覆組成物であって、塩素を含有する亜鉛酸カルシウム系化合物を生成するカルシウム化合物を含有することを特徴とする、塩化物の通過を阻止するバリアー皮膜形成用被覆組成物。
  7. さらに無機および/または有機結合剤を含有する、請求項6記載の被覆組成物。
  8. 結合剤が水溶性または水分散性である、請求項7記載の被覆組成物。
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