JP3605491B2 - 反応性イオンエッチング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマを利用して、半導体或いは電子部品、その他の基板上の物質をエッチングする反応性イオンエッチング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本願発明者らは先に特願平7−217965号において永久磁石方式のエッチング装置としては図3で示されるような平板永久磁石式磁気中性線エッチング装置を提案した。この先に提案した装置では、真空チャンバーAの上部の誘電体B上に載置された2つの永久磁石C、Dによって真空チャンバーA内部に磁気中性線が形成され、この磁気中性線に沿って、2つの永久磁石C、Dの間に1重のアンテナEを配置し、ガスを導入してこのアンテナEに高周波電場を印加するとリング状のプラズマが形成される。アンテナEとしては断面円形(断面直径8〜1Omm)或いは平板(幅1O〜15mm)の導体で構成されたものが用いられる。幅及び径がほぼ同じであれば形成されるプラズマの特性はほぼ同じである。静電結合成分を多くしたい場合には、幅広の平板アンテナが用いられる。幅が20〜30mmでは効果は現れないが、6Ommになると静電結合成分による効果が現れる。
また、エッチングガスは符号Fで示すように、流量制御器を通して上部の誘電体B付近の周囲より導入され、コンダクタンスバルブの開口率によって圧力が制御される。
下部の基板電極Gにはバイアス用の高周波電力が印加される。従って、主な外部制御パラメータはアンテナ電力、基板バイアス電力、流量(ガス種及び混合比を含む)及び圧力である。これらの外部制御パラメータを独立に制御して、最適なエッチング条件を求めることになる。
【0003】
このように構成した図3に示される磁気中性線放電エッチング装置の動作について説明する。
エッチングガスは真空チャンバーAの上部フランジ付近に設けたガス導入口 Fから導入され、誘電体円盤B上に設置されたアンテナEに高周波電力を印加することによりプラズマが形成されて導入ガスが分解される。下部の基板電極Gにはバイアス用の高周波電力が印加される。ブロッキングコンデンサーHによって浮遊状態になっている基板電極Gは負のセルフバイアス電位となり、プラズマ中の正イオンが引き込まれて基板上の物質をエッチングする。
【0004】
この時、プラズマは、アンテナEから放射される方位角方向の誘導電場とアンテナE自体の電場によって励起、形成される。磁気中性線放電では真空中にリング状に形成される磁気中性線の部分に密度の高いプラズマを形成するため、リング状の磁気中性線に沿って形成される誘導電場を有効利用するものである。
この方法によって、容易に1011cm−3の荷電粒子密度を持つプラズマが形成される。
【0005】
しかしながら、ハロゲン系のガスを用いて微細な構造をもつレジストパターンのエッチングに適用すると、微細な孔のエッチングが十分にできないという不都合のあることがわかった。この理由を知るため、幅の狭い平板アンテナ (15mm)と幅の広い平板アンテナ(60mm)を用いてプラズマを形成し、イオン及びラジカルの量を質量分析計で測定した。ガス種及び混合比はAr(90%)、 C(10%)である。
質量分析の結果、幅の狭い(15mm)平板アンテナを用いたときには、CFイ オン及びCFラジカルとも大きな信号強度で測定され、圧力増加とともに減少しており、幅の広い(6Omm)アンテナを用いたときには、低圧でCFイオンの信 号強度が小さく、圧力とともに増加していることが分かった。逆に、CFラジカルは低圧で大きく、圧力増加とともに減少した。さらに、幅の狭いアンテナを用いたときには大きな信号強度で観測されなかったC及びC原子が観測されてい ることも分かった。以上の質量分析結果から、幅の狭いアンテナを用いたときに微細な孔のエッチングが十分にできないのは、放電における誘導結合成分が大きく、効率の良い放電プラズマが形成されているため、CFイオンの量が多くレ ジストをエッチングするためであると考えられる。つまり、CFイオンによる 有機レジストのエッチング生成物が孔の内部に入り込みエッチストップを起こすためであると考えられた。
【0006】
エッチングでは、反応性の高いラジカル及びイオンを基板に照射して基板物質との反応により基板物質をガス化して蝕刻するが、単に削ればよいわけではなく、微細化に伴いより形状制御が重要になってきている。このためにはエッチャントの他に壁面に付着してイオンの当たらない側壁を保護する働きをする物質もプラズマ中で生成されなければならない。
0.3μm幅以下の微細加工ではこのエッチャントと保護物質との相対濃度及び孔内部ヘの相対的な到達量が重要になる。保護物質がエッチャントに対して多くなり過ぎると、0.3μm幅以下の微細孔は、保護物質により埋まってしまい、いわゆ るエッチストップが起こって、削れないことになる。保護物質が、逆に、少なすぎるとエッチャントによって側壁が削られて、Bowingが発生し、望ましい形状が得られない。アンテナの幅を広くすると、アンテナ電位によって加速される高エネルギーの電子分子が多くなり、よりイオン化エネルギーの高い物質がイオン化され易くなる。CFラジカルのイオン化エネルギーは約9.2eV、Arのイオン化 エネルギーは15.8eV、C原子のイオン化エネルギーは11.3eVである。従って、電子温度が低いプラズマでは、CFラジカルはイオン化され易いがArやCはイオン化され難い。
従って、CFとレジストとの反応によって発生した付着性物質が孔の中に入 っても、多量に存在するArによるスパッタが孔の中でも起こるため、エッチ ストップが発生しないと考えられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
エッチングではプラズマを発生させるための電場導入法以外にも重要な因子があり、それらの因子は圧力や流量である。通常、ガスは流量制御装置(Mass Flow Controller)を通して導入され、流量の制御が行われる。また、圧力は排気口に取り付けられたコンダクタンスバルブの開口率を変えることにより制御される。このように、流量と圧力は独立に変えることができるように構成されている。一般には、圧力が高いと分子数密度が高くなるので、ラジカルや荷電子数密度が高くなり、エッチ速度は大きくなる。しかし、衝突頻度も高くなるのでプラズマは拡散しにくくなり、エッチ速度の均一性は悪くなる。低密度のプラズマを用いたときには流量の依存性は低いが、高電力を導入して形成するプラズマ中では流量依存性が高くなる。流量が少ないと分解が進み、望ましくない付着性の物質やエッチャントが生成される。流量を多くすると制御できる圧力下限値が高くなる。従って、従来用いられてきたエッチング装置においては、他の条件が設定されると、エッチングに最適な圧力や流量の範囲は狭く、ほぼ一義的に決まるのが一般的であり、使用する立場からすると大変不便であるという問題があつた。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題を解決して、0.3μm幅以下の微細加工において圧力に関係なくエッチングすることのできる磁気中性線放電を利用した反応性イオンエッチング装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明による磁気中性線放電を利用した反応性イオンエッチング装置においては、磁気中性線に放電プラズマを発生するための1重の高周波コイルとして40mm〜80mmの幅のアンテナを用い、Arガス及びCF系ガスを含むエッチングガスを導入し、また基板より上部の放電室体積の約15倍の総流量(sccm)でガスを導入するように構成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、真空チャンバー内に連続して存在する磁場ゼロの位置である環状磁気中性線を形成するための磁場発生手段を設けると共に、この磁気中性線に沿って交番電場を加えてこの磁気中性線に放電プラズマを発生するための1重の高周波コイルを設けてなるプラズマ発生装置を有し、ハロゲン系のガスを主体とする気体を真空中に導入し、低圧でプラズマを形成するとともに導入気体を分解し、発生した原子、分子、ラジカル、イオンを積極的に利用し、プラズマに接する基板電極に交番電力或いは高周波電力を印加して電場を誘起し電極上に載置された基板をエッチングする反応性イオンエッチング装置において、真空チャンバー上部を円盤状の誘電体で構成し、環状磁気中性線を形成するための磁場発生手段を、誘電体の上部に径の小さな円盤状或いはドーナツ状永久磁石とそれよりも内径の大きな永久磁石とにより構成し、磁気中性線に放電プラズマを発生するための1重の高周波コイルを、2つの永久磁石の間の位置に配置され、40mm〜80mmの幅のアンテナで構成し、Arガス及びCF系ガスを含むエッチングガスを導入し、反応室の容積をVリットルとしたとき、導入するエッチングガスの流量を15(±3)×V[sccm]になるように構成したことを特徴としている。
【0011】
質量分析の結果から、流量が同じで圧力が高い時、ガスのレジデンスタイムが長く再結合によって付着性物質が生成されるためエッチストップが起こり、逆に圧力が低いときには、ガスのレジデンスタイムが短くてArイオンの生成が 十分でないためやはりエッチストップが起こってしまうということが分かった。このことは、Arイオンを十分に生成し、付着性物質が生成され過ぎない条件 が望ましいことを意味している。
図2に示すように、本発明の好ましい実施の形態による装置を用いた場合、反応室の容積を20リットルとした時シリコン酸化膜エッチングにおいて、エッチストップが起こらないで、O.2μm径の孔を垂直にエッチングできる条件は総流量 300sccm付近の時である。ガス種及び混合比はAr(90%)、C(10%)である。
総流量をQ、ガスの排気速度をS、放電室すなわち反応室の圧力をP、体積をVとすると、
Q=SP
τ=V/S
であり、図2から、圧力Pとレジデンスタイムτは線形の関係にあることが分かる。一方、レジデンスタイムτは
τ=PV/Q
の関係にある。従って、圧力Pとレジデンスタイムτは線形の関係にあることから、放電室の体積Vが決まると、垂直にエッチングできる条件は総流量Qのみに依存することになる。
一般には、レジデンスタイムが短いと、Arが生成され難く、一方レジデン スタイムが長いと、ラジカル同士の再結合が生じ易い。従って、レジデンスタイムが短い時には、Arが生成され易い低圧力領域にし、レジデンスタイムが長 い時にはArが生成され易いので付着性物質のできやすい高圧力領域にする必 要がある。この結果、垂直エッチングできる条件の総流量がある領域に決まり、圧力には依存しないようになる。
本発明における実験で用いたエッチング装置の反応室の容積は20リットルである。従って、圧力に関係なく、総流量が15×20=3OOsccm付近であるとき、垂直 エッチングの形状が得られる。
【0012】
【実施例】
以下添付図面の図1を参照して本発明の実施例について説明する。
図1は本発明によるエッチング装置の一実施例である。図示装置において1は排気口1aを備えたプロセス室を形成している円筒形の真空チャンバーで、その上面は平板型誘電体隔壁2で覆われている。この平板型誘電体隔壁2の外面上には、上下に円盤状またはドーナツ状永久磁石3及びこの永久磁石3よりも内径が大きくかつ永久磁石3と同極性を持つドーナツ形板状永久磁石4が同心上に取付けられ、これら両永久磁石3、4は真空チャンバー1内に磁気中性線を形成するための磁場発生手段を構成している。円盤状またはドーナツ状永久磁石3とドーナツ形板状永久磁石4との間には、電場発生手段を構成する幅40〜80mm程度の幅広の1重のプラズマ発生用高周波コイル5が配置され、この高周波コイル5はプラズマ発生用高周波電源6に接続され、永久磁石3、4によって真空チャンバー 1内に形成された磁気中性線に沿って交番電場を加えてこの磁気中性線に放電プラズマを発生するようにしている。
また真空チャンバー1内の形成される磁気中性線の作る面と平行して離れた位置には基板電極7が絶縁体部材8を介して設けられ、この基板電極7はRFバイアスを印加する高周波電源9に接続されている。真空チャンバー1の上方部分には真空チャンバー1内へエッチングガスを導入するガス導入口10が設けられ、このガス導入口10に通じるガス供給通路11には、真空チャンバー1内へのエッチングガスの流量を制御するガス流量制御装置12が設けられている。このガス流量制御装置12は放電室を成す真空チャンバー1の容積のほぼ15倍(好ましくは15±3倍)の流量でガス導入口10から真空チャンバー1内へエッチングガスを導入するように作動される。
さらに、真空チャンバー1の排気口1aには流量制御バルブを成すコンダクタンスバルブ13が設けられ、このコンダクタンスバルブ13は真空チャンバー1内の圧力を制御するようにされている。
【0013】
このように構成した図示装置において、13.56MHzのプラズマ発生用高周波電源6の電力を1.0kW、100kHzの基板バイアス用の高周波電源9をVdc−200Vにな るように設定し、ガス流量制御装置12により、アルゴンを270sccm(90%)、Cを30sccm(10%)を真空チャンバー1内へ導入したところ、7mTorr〜 100mTorrの圧力範囲内で、エッチストップなしにシリコン酸化膜のほぼ垂直形状のエッチングが可能であった。
総流量が300sccmより多い400sccmではエッチストップが起こったが、360 sccmではエッチストップは起こらなかった。また総流量200sccmで実験を行った が、多い時と同様にエッチストップが起こり、0.2μm径の孔のエッチングは達成されなかった。しかし総流量を240sccmした時にはエッチストップは起こらず、 0.2μm径の孔のエッチングが可能であった。
総流量が300sccm付近の時、Arの組成比が90%であるため、Arのイオンが多量に生成され、CFとレジストとの反応によって発生したと思われる付着性 物質が孔の中に入っても、多量に存在するArによるスパッタが孔の中でも起 こってエッチストップが発生しなかったと考えられる。この効果は、総流量と組成比が同じであれば圧力には依存しないことを意味する。
【0014】
ところで図示実施例ではNLDエッチング装置に適用した例について説明してきたが、同様な効果はNLDプラズマCVD装置に適用しても期待できることは言うまでもない。
【0015】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によるエッチング装置においては、放電プラズマを発生するための1重の高周波コイルとして幅の広いアンテナを使用し、また放電室の容積の約15倍の流量(sccm)でガスを導入するように構成しているので、アンテナから放射される方位角方向の誘導電場とアンテナ表面に発生する高周波電場によってプラズマが形成・維持され、この放電成分によってイオン化エネルギーの高いArやC原子がイオン化されるようになると同時に、適当な圧力で0.3μ m幅以下の微細加工に対応できるドライエッチングが可能となった。従って、本発明は、半導体や電子部品加工に用いられている反応性イオンエッチングプロセスに大きな貢献をするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す概略線図。
【図2】本発明によるエッチング装置の動作特性を示す図であり、(a)は実験による特性を、(b)はモデル値による特性を示す。
【図3】従来の平板永久磁石式磁気中性線エッチング装置を示す概略線図。
【符号の説明】
1:円筒形の真空チャンバー
2:平板型誘電体隔壁
3:円盤状またはドーナツ状永久磁石
4:ドーナツ形板状永久磁石
5:電場発生手段を成す幅広の1重のプラズマ発生用高周波コイル
6:プラズマ発生用高周波電源
7:基板電極
8:絶縁体部材
9:高周波電源
10:ガス導入口
11:ガス供給通路
12:ガス流量制御装置
13:コンダクタンスバルブ

Claims (1)

  1. 真空チャンバー内に連続して存在する磁場ゼロの位置である環状磁気中性線を形成するための磁場発生手段を設けると共に、この磁気中性線に沿って交番電場を加えてこの磁気中性線に放電プラズマを発生するための1重の高周波コイルを設けてなるプラズマ発生装置を有し、ハロゲン系のガスを主体とする気体を真空中に導入し、低圧でプラズマを形成するとともに導入気体を分解し、発生した原子、分子、ラジカル、イオンを積極的に利用し、プラズマに接する基板電極に交番電力或いは高周波電力を印加して電場を誘起し電極上に載置された基板をエッチングする反応性イオンエッチング装置において、真空チャンバー上部を円盤状の誘電体で構成し、環状磁気中性線を形成するための磁場発生手段を、誘電体の上部に径の小さな円盤状或いはドーナツ状永久磁石とそれよりも内径の大きな永久磁石とにより構成し、磁気中性線に放電プラズマを発生するための1重の高周波コイルを、2つの永久磁石の間の位置に配置され、40mm〜80mmの幅のアンテナで構成し、Arガス及びCF系ガスを含むエッチングガスを導入し、反応室の容積をVリットルとしたとき、導入するエッチングガスの流量を15(±3)×V[sccm]になるように構成したことを特徴とする反応性イオンエッチング装置。
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