JP3604613B2 - 混合酸化物燃料ペレット焼結炉からの排ガス処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プルトニウム・ウラン混合酸化物(以下“MOX”と略記する)燃料ペレットの焼結炉からの排ガスをグローブボックス内へ導くに先だって冷却等の前処理を施すために、焼結炉とグローブボックスとの間に介装される排ガス処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
MOX燃料ペレットの焼結炉内では、被焼結物の酸化を防止するとともに、製品仕様内の焼結物物性値を得るために、窒素等の不活性ガスで希釈された水素濃度4〜8%の水素含有ガスが雰囲気ガスとして常に流されている。また、焼結炉内は1700℃程度に加熱されているため、焼結炉から流出する水素含有ガスの排ガスは炉出口付近では400℃程度の高温となっている。焼結炉からのかような高温排ガスには放射性物質が含まれるため、排ガスをグローブボックス内に排気しなくてはならない。
【0003】
高温の水素含有ガスからなる焼却炉からの排ガスをそのままグローブボックス内へ導入した場合には、グローブボックス内の可燃物への類焼によりグローブボックスの透明アクリル板製パネルやゴム製のグローブ等を損傷させたり、水素濃度4〜8%といった爆発下限濃度以上の水素含有ガスが空気と接触して爆発する危険もある。
【0004】
そのため、焼却炉からの高温排ガスをグローブボックス内へ排気するに先立って水冷却すること、さらには排ガスをグローブボックス内に排気して急激に拡散希釈させることで水素含有ガスの水素濃度を爆発下限濃度以下とすることが行われている。排ガスを水冷却する方法としては、排ガス配管の周囲に水配管を巻装する施工法が採用されており、これにより水配管が破損した場合でも冷却水が焼却炉に進入して炉破損による汚染が防止できるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、排ガス配管周囲に水配管を巻装する方法は冷却効率が悪く、水配管の巻装長さが長くなるという欠点がある。またこの方法では、排ガス配管内に排ガス中に若干混入しているヒューム(MOX燃料ペレット原料粉末中に添加した潤滑剤や結合剤等の有機物が焼結時に熱分解して生成したもの)が徐々に堆積して付着するため、定期的な清掃が必要となるが、排ガス配管がグローブボックス内に設置されているため、清掃がしにくいという難点がある。
【0006】
また、排ガスをグローブボックス内に排気して急激に拡散希釈することにより水素濃度を爆発下限濃度以下とする場合には、排ガスの排気口付近に着火源となる電気部品等を設置しない設計上の管理を行うことで火災や爆発を防止する必要があり、その結果、この領域はデッドスペースとなりグローブボックス内の空間利用率を低下させるという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上記したごとき従来技術における問題点を解消するためになされたものであって、MOX燃料ペレット焼却炉からの高温排ガスを効率よく水冷却できるとともに、冷却手段が万一破損した場合でも冷却水の焼結炉への進入が防止でき、さらには排ガス中の水素濃度を爆発下限濃度以下に確実に希釈できる、安価かつ小型で保守・制御が容易な排ガス処理装置を提供することを目的としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明によるMOX燃料ペレット焼結炉の排ガス処理装置は、頂部に着脱可能な蓋を有する容器と;混合酸化物燃料ペレット焼結炉からの排ガスを前記容器内に導入するとともに、容器内上部で上向きに排出させるための出口開口を有する排ガス導入管と;前記排ガス導入管の出口開口から容器内に導入された排ガス上向き流を下向き流に変えるために前記排ガス導入管出口開口近傍に設けた分散板と;前記容器内の排ガス下向き流を水冷する冷却手段と;冷却された排ガスをグローブボックス内へ排出するために容器下部に設けた排ガス排出管とからなることを特徴とするものである。
【0009】
上記の排ガス処理装置の構造は、排ガス排出管を不活性ガス雰囲気としたグローブボックスに接続して使用するものであるが、不活性ガス雰囲気とされていないグローブボックスに接続して使用する排ガス処理装置の場合には、排ガス導入管内に開口する不活性ガス導入管を配設して、排ガスを不活性ガスで希釈するか、あるいは容器下部を流れる冷却後の排ガス流内に開口する不活性ガス導入管を配設して、冷却後の排ガスを不活性ガスで希釈することによって、排ガス中の水素濃度を爆発下限濃度以下とする必要がある。
【0010】
本発明の好ましい実施態様においては、分散板は、下向き縁部を備えたキャップ形状を有し、排ガス導入管出口開口の外側を間隔をあけて取り囲みかつ下向き縁部の下端が排ガス導入管出口開口より下方となるように被せられている。また、排ガス排出管の出口開口の下方に、冷却手段から漏洩した冷却水を受けるトレイと、このトレイ内の水位を検知する検知手段とを配設する。
【0011】
また、冷却手段としては、容器内を貫通して配設した複数の配管内に冷却水を流す構造、あるいは容器壁に配設した冷却ジャケット内に冷却水を流す構造を採用することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に図面に示す好ましい実施例を参照して本発明を説明する。
図1に示す排ガス処理装置は、頂部に着脱可能な蓋1aを備えた容器1、容器側壁下部に接続された排ガス導入管2、この排ガス導入管2と対向する側の容器側壁下部に接続された排ガス排出管3、および容器内に配設された冷却手段4を有している。図1の実施例における冷却手段4は、容器1内を貫通して配設された複数の配管4aに冷却水を流す熱交換器と同様な構造を有し、排ガスが冷却水配管4aの間を通過する際に冷却されるようになっている。
【0013】
排ガス導入管2は容器1の側壁下部を貫通し、さらに上方に立ち上がるように延設されて、容器内上部で開口される。排ガス導入管2の出口開口2aの近傍には、出口開口2aから容器内に導入された排ガスの上向き流を下向き流に変えるための分散板5が配設されている。図1の実施例における分散板5は、下向き縁部5aを備えたキャップ形状を有し、出口開口2aの外側を間隔をあけて取り囲みかつ下向き縁部5aの下端が出口開口2aより下方となるように被せられている。
【0014】
排ガス排出管3の出口開口3aの下方には、冷却手段4から冷却水が漏洩した場合にこの漏洩水を受けるトレイ6と、このトレイ6内の水位を検知する検知手段7とが配設されている。
【0015】
上記のごとき構成を有する本発明の排ガス処理装置は、MOX燃料ペレット焼結炉(図示せず)とグローブボックスGBの間に介装設置されるものであり、焼結炉からの排ガスが排ガス導入管2から容器1内に導入され、容器1内で処理がなされた後の排ガスは、排ガス排出管3からグローブボックスGB内へ排出される。
【0016】
この排ガス処理装置の動作を以下に説明する。
MOX燃料ペレット焼結炉からの排ガスは排ガス導入管2から容器1内に導入され、出口開口2aから容器内上部に放出される。この時、排ガスは上向き流となって放出されるが、分散板5に当たって下向き流とされ、冷却手段4の冷却水配管4aの間を通過する間に冷却される。冷却された排ガスは、容器下部の排ガス排出管3からグローブボックスGB内空間へ排出される。図1の点線矢印は装置内の排ガスの流れを表している。
【0017】
焼結炉から排ガス導入管2へ導かれる排ガスの温度は、焼結炉内部の状態等で必ずしも一定ではないが、炉出口付近では400℃程度に達することもある。かような高温の排ガスは処理装置内の冷却手段4により60℃以下、好ましくは30℃以下に冷却された後、排ガス排出管3よりグローブボックスGB内へ排出される。これによって、グローブボックスGB内のパネルやグローブ等の構造材が高温排ガスにより破損されるのを防止することができる。
【0018】
また焼結炉から排気される水素含有ガスの水素濃度は、焼結反応終了時においては焼結炉への供給時とほぼ同様な4〜8%程度の爆発下限濃度以上となっているため、これを3%以下といった爆発下限濃度以下に希釈する必要がある。上述した構造の排ガス処理装置は、不活性ガス雰囲気としたグローブボックスに接続して使用するタイプのものであり、排ガス排出管3を不活性ガス雰囲気としたグローブボックスと接続して、冷却済排ガスをグローブボックス内に排気させることで、爆発下限濃度以下の水素濃度に希釈することが可能となり、火災や爆発によるグローブボックスの破損を防止することができる。
【0019】
万一、冷却水配管4aが破損して冷却水が漏洩した場合には、漏洩水は容器1下部から排ガス排出管出口開口3aを通って、トレイ6に溜まる。トレイ6に溜まった水が所定水位になると水位検知器7で検知され、これにより冷却水配管4aの破損を感知することができる。排ガス排出管3を容器1下部に設けるのは、冷却水配管4aからの漏洩水が排ガス排出管3から確実に排出されるようにするためであり、これによって漏洩水が焼結炉へ進入して炉が破損するのを防止することができる。さらに、分散板5が排ガス導入管出口開口2aの外側を取り囲みかつ下向き縁部5a下端が出口開口2aより下方となるように被せられていることにより、冷却水配管4aからの漏洩水が排ガス導入管2を通って焼結炉に逆流するのを防ぐことができる。
【0020】
本発明の排ガス処理装置を、不活性ガス雰囲気とされていないグローブボックスに接続して使用する場合には、装置内において排ガスの水素濃度を爆発下限濃度以下まで不活性ガスで希釈する必要がある。この場合には、図1に示したように、排ガス導入管2の途中に不活性ガス導入管8を挿入して開口させ、ここから不活性ガスを導入して排ガスを不活性ガスで希釈する。水素含有ガスからなる排ガスは適量の空気と混合された場合に爆発する危険があるため、排ガスの希釈は、排ガスが空気と接触する前に行えばよい。そのため、冷却された後の排ガスを不活性ガスで希釈してもよく、図1に一点鎖線で示したように、不活性ガス導入管8′を容器1下部を流れる冷却後の排ガス流内に開口させることで冷却後の排ガスを不活性ガスで希釈することもできる。不活性ガスとしては窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガス等が使用できるが、コスト面からは窒素ガスが最も安価である。
【0021】
MOX燃料ペレット焼結炉からの排ガス中には、ペレット原料中に添加された有機物の熱分解に起因するヒュームが若干混入しており、これが排ガス処理装置の冷却水配管4a等に付着する。付着量が増えると冷却効率が低下するため、装置内部の清掃を定期的に実施する必要がある。本発明の装置においては、容器1頂部に設けた蓋1aを着脱可能としてあるため、蓋1aを取り外すことにより容器内部の清掃が容易となる。
【0022】
図2は、本発明の排ガス処理装置の他の実施例を示しており、図1の装置と同じ部材は同じ参照番号を付すことにより説明を省略する。図1の装置とは冷却手段が相違している。すなわち図2の冷却手段は、容器1の側壁を冷却ジャケット4bとし、このジャケット4b内に冷却水を流す構造となっている。なお、容器1の縦方向長さが長い場合や、冷却ジャケット4aと容器中央部の排ガス導入管2との間隔が大きい場合には、排ガスの冷却効率が低下するため、容器1の内壁から中央部に向けて伸びる冷却フィン9(点線で表している)を設けることにより冷却効率を高めることができる。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したところからわかるように本発明によれば、小型で構造が極めて簡単なため、安価かつ保守が容易で、故障も少なく安全性の高い排ガス処理装置を提供することができる。特に安全性の向上について具体的に述べるならば、以下のような効果が挙げられる。
【0024】
(1)焼結炉からの排ガスを装置内で下向き流とし、水冷の冷却手段を介して冷却した後、装置下方に設けた排ガス排出管からグローブボックス内へ排気するようにしたため、効率よく効果的な冷却が行える結果、高温排ガスによるグローブボックス構造材の破損を防止することができる。また、冷却手段から冷却水が漏洩した場合でも、装置下方の排ガス排出管から流出されるため、焼結炉内への漏洩水の進入が防止でき、炉の破損に起因する汚染を確実に防止できる。
【0025】
(2)不活性ガス導入管から装置内へ不活性ガスを導入して、排ガスの水素濃度を爆発下限濃度未満に希釈したのちグローブボックス内へ排気することにより、火災・爆発によるグローブボックスの破損と、これに伴い発生する放射性物質のグローブボックス外への漏洩による汚染を防止することができる。
【0026】
(3)排ガス導入管出口開口の外側近傍に分散板を被せるようにして配設することにより、装置内の冷却手段から冷却水が漏洩した場合でも、漏洩水が排ガス導入管を通って焼結炉へ逆流できないようにし、漏洩水による焼結炉の破損を防止することができる。
【0027】
(4)排ガス排出管出口開口の下方に漏洩水を受けるトレイと、トレイ内の水位検知手段を配設することにより、装置内の冷却水配管破損による漏洩を容易かつ迅速に検知できる。
【0028】
(5)装置頂部の蓋を着脱可能な構造としたため、装置内部が容易に清掃でき、冷却水配管などに付着した付着物を定期的に除去して冷却性能の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の排ガス処理装置の実施例を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の排ガス処理装置の他の実施例を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1 :容器
1a:蓋
2 :排ガス導入管
2a:排ガス導入管出口開口
3 :排ガス排出管
3a:排ガス排出管出口開口
4 :冷却手段
4a:冷却水配管
4b:冷却ジャケット
5 :分散板
5a:下向き縁部
6 :漏洩水トレイ
7 :水位検知手段
8、8′:不活性ガス導入管
GB:グローブボックス

Claims (7)

  1. 頂部に着脱可能な蓋を有する容器と;混合酸化物燃料ペレット焼結炉からの排ガスを前記容器内に導入するとともに、容器内上部で上向きに排出させるための出口開口を有する排ガス導入管と;前記排ガス導入管の出口開口から容器内に導入された排ガス上向き流を下向き流に変えるために前記排ガス導入管出口開口近傍に設けた分散板と;前記容器内の排ガス下向き流を水冷する冷却手段と;冷却された排ガスをグローブボックス内へ排出するために容器下部に設けた排ガス排出管とからなることを特徴とする混合酸化物燃料ペレット焼結炉からの排ガス処理装置。
  2. 前記排ガス導入管内に開口する不活性ガス導入管を配設し、これによって排ガスを不活性ガスで希釈するようにしたことを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置。
  3. 前記容器下部を流れる冷却後の排ガス流内に開口する不活性ガス導入管を配設し、これによって冷却後の排ガスを不活性ガスで希釈するようにしたことを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置。
  4. 前記分散板は、下向き縁部を備えたキャップ形状を有し、前記排ガス導入管出口開口の外側を間隔をあけて取り囲みかつ前記下向き縁部の下端が前記排ガス導入管出口開口より下方となるように被せられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
  5. 前記排ガス排出管の出口開口の下方に、前記冷却手段から漏洩した冷却水を受けるトレイと、このトレイ内の水位を検知する検知手段とを配設したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
  6. 前記冷却手段を、前記容器内を貫通して配設した複数の配管内に冷却水を流す構造としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
  7. 前記冷却手段を、前記容器壁に配設した冷却ジャケット内に冷却水を流す構造としたことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
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