JP3604087B2 - 光ピックアップ装置のサスペンションワイヤ用線材及び光ピックアップ装置。 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ピックアップ装置のサスペンションワイヤ用線材及び光ピックアップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
CDプレーヤーやCD−ROM装置等には、光ディスクに記録された情報の読み取り再生のために光ピックアップ装置が用いられている。この光ピックアップ装置は、レーザ光源から射出された波長が約700ナノメータ程度のレーザ光を光ディスクの信号記録面に照射し、微小な凹凸から成るピット列から反射された反射ビームをフォトディテクタで検出して、電気信号に変換する。このとき、レーザ光源から射出されたレーザ光が上記ピット列上に正確にしかも垂直に集光されないと、収差等のために反射ビームに歪みが生じて雑音が混入したり読み取り誤りを発生する。
【0003】
そこで、レーザ光をガイドする対物レンズを用意して、この対物レンズが搭載されているアクチュエータを、電磁力でトラッキング方向とフォーカス方向に位置制御する装置が開発されている(特開平第5−266507号)。また、こうしたアクチュエータの位置制御によっても、レーザ光の光軸が常にピット列形成面に対して垂直になるように、4本の金属線によりアクチュエータを支持する構成の光ピックアップ装置が開発されている(特開平第5−266507号)。アクチュエータ支持用の金属線は、柔軟でかつ弾性を要求されるため、銅ベリリウム合金や燐青銅が用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
アクチュエータを支持する金属線には常にアクチュエータの重力が加わっており、当初直線であっても時間の経過とともに湾曲が著しくなり、ホームポジションが変化して、位置制御性能や精度が低下するという問題があった。特に燐青銅合金はベリリウム合金に比べてこうした傾向が著しいという問題がある。
【0005】
また、金属線の一端はアクチュエータに、はんだ付け接続され、他端は制御基板にはんだ付け接続される。はんだ付け接続性については、燐青銅よりも銅ベリリウム合金の方がはんだ付け性が悪い。そのはんだ付け性を高めるためには銀メッキ等の表面処理が必要で、金属線の価格が高くなってしまうという問題があった。又、銅ベリリウム合金は毒性があり、製造作業上管理や、リサイクル処理と環境への影響等に特別の注意を必要とするという問題があった。
【0006】
更に、最近の光ピックアップでは、電磁力によってレンズが支持されて位置制御されている。この制御電流は上記アクチュエータを支持する金属線を介してアクチュエータに供給される。このときに燐青銅や銅ベリリウム合金では導電率が小さいため発熱量が大きく機器に悪影響を与えるという問題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は以上の点を解決するため次の構成を採用する。
〈構成1〉
レーザ光源と、上記レーザ光源の照射するレーザ光をガイドする対物レンズと位置制御用の駆動コイルとを搭載したアクチュエータと、上記アクチュエータを可動支持する複数本のサスペンションワイヤとを備え、上記サスペンションワイヤは、銅銀合金から成る線材が3本以上撚り合わされて成り、撚りピッチが層心径の5倍以上、15倍以下であることを特徴とする光ピックアップ装置。
【0008】
〈構成2〉
上記銅銀合金は、0.08乃至15重量%の銀を含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなることを特徴とする構成1に記載の光ピックアップ装置。
【0009】
〈構成3〉
上記銅銀合金は、2乃至15重量%の銀を含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなることを特徴とする構成1に記載の光ピックアップ装置。
【0010】
〈構成4〉
上記銅銀合金は、連続鋳造され、析出熱処理後に94パーセント以上の加工度が施されていることを特徴とする構成1に記載の光ピックアップ装置。
【0011】
〈構成5〉
上記サスペンションワイヤの一端は、上記アクチュエータにはんだ付け接続され、他端は、制御基板側に接続されていることを特徴とする構成1に記載の光ピックアップ装置。
【0012】
〈構成6〉
レーザ光源と、上記レーザ光源の照射するレーザ光をガイドする対物レンズと位置制御用の駆動コイルとを搭載したアクチュエータと、上記アクチュエータを可動支持し、上記駆動コイルに位置制御用信号を供給する複数本のサスペンションワイヤとを備え、上記サスペンションワイヤは、銅銀合金から成る線材が3本以上撚り合わされて成り、撚りピッチが層心径の5倍以上、15倍以下であることを特徴とする光ピックアップ装置。
【0013】
〈構成7〉
上記銅銀合金は、0.08乃至15重量%の銀を含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなることを特徴とする構成6に記載の光ピックアップ装置。
【0014】
〈構成8〉
上記銅銀合金は、2乃至15重量%の銀を含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなることを特徴とする構成6に記載の光ピックアップ装置。
【0015】
〈構成9〉
上記銅銀合金は、連続鋳造され、析出熱処理後に94パーセント以上の加工度が施されていることを特徴とする構成6に記載の光ピックアップ装置。
【0016】
〈構成10〉
上記サスペンションワイヤの一端は、上記アクチュエータにはんだ付け接続され、他端は、制御基板側に接続されていることを特徴とする構成6に記載の光ピックアップ装置。
【0017】
〈構成11〉
上記サスペンションワイヤの一端は、上記アクチュエータの駆動コイル信号入力端子にはんだ付け接続され、他端は、制御基板の制御信号出力端子にはんだ付け接続されていることを特徴とする構成6に記載の光ピックアップ装置。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体例を用いて説明する。
本発明では、屈曲性が強く、はんだ付け性が良く、かつ、導電率の大きい光ピックアップ装置用線材として銅銀合金を採用する。なお、銅銀合金の主要な性質は、例えば、特開2000−199042号公報に開示されている。銅銀合金は、銀の含有量が増えるほど価格が高くなる。しかしながら、銀の含有量をあまり少なくすると、光ピックアップに必要な特性が得られない。そこで、本発明者等は、充分に実用性があって、かつ、経済的な線材を開発した。
【0025】
(線材の引張強度)
図1は、銅銀合金の銀含有率と引っ張り強度の関係を示す説明図である。
この図は、Ag含有率と冷間加工の加工度を最大に上げた場合の最大引張強度との関係を表している。縦軸は加工限界での最大引張強度(MPa)、横軸はAg含有率(重量)を示している。
【0026】
まず、0.08%(重量)から24%(重量)の範囲で種々のAg含有率(重量)を有するCu−Ag合金の鋳造ロッド(Φ8mm)を作製する。このロッドに450℃で10時間析出熱処理を施した後に、加工硬化による破断が生ずる加工限界(少なくとも加工度94パーセント以上)まで冷間加工を施してAg含有率(重量)ごとに線材サンプルを作製する。かかる工程を経て作成されたサンプルを引っ張り試験する。
【0027】
図1に示すように、Ag含有率0.08%(重量)から15%(重量)程度までは、Ag含有率を増すに従って加工限界での最大引張強度が増加している。しかし15%(重量)を超えると、逆に加工限界での最大引張強度が減少している。即ち、Ag含有率が15%以下の範囲では、Ag含有率が大きい程最大引張強度は大きくなる。Ag含有率15%(重量)程度で、加工限界での最大引張強度は最大値を示す。一方、Ag含有率が15%(重量)を超える範囲では、冷間加工がしにくくなるため、加工硬化による強度上昇の効果が得られにくくなる。
【0028】
光ピックアップ装置用線材としては、引張強度の高いものが望ましいが、上記の特性を考慮すると、Ag含有率が0.08乃至15重量%の銅銀合金を使用するのが、実用性があって、かつ、経済的という結論が導かれる。即ち、むやみに銀の含有率を高めても引張強度は高まらず、かえって不経済になる。また、Ag含有率0.08%(重量)に満たないものは導電率が銅と比べてあまり向上せず、引っ張り強度が実用上不足する。故に、本発明の光ピックアップ装置のサスペンションワイヤ用線材のAg含有率は、0.08乃至15重量%以下とした。
【0029】
(線材の屈曲破断強度)
図2は、銀銅合金の屈曲破断強度の試験結果説明図である。
図2では、横軸は引っ張り強さ(MPa)、縦軸は屈曲破断回数を示している。
試験サンプルAg含有量3%(重量)のデータを曲線C3(・)で表した。
試験サンプルAg含有量10%(重量)のデータを曲線C10(○)で表した。
試験サンプルAg含有量14%(重量)のデータを曲線C14(×)で表した。
【0030】
図2より明らかなように、曲線C3(・)、曲線C10(○)、曲線C14(×)とも引っ張り強さ800MPa以下では、屈曲破断回数50回以下で低迷している。ところが引っ張り強さ900MPaを過ぎると急激に立ち上がり、屈曲破断回数がほぼ直線的に増加している。即ち、引っ張り強さ900MPa以上のものは、屈曲に強く、実用性があるといえる。この性質は、曲線C3(・)、曲線C10(○)、曲線C14(×)とも、あまり大差が無い。
【0031】
図3は、上記の屈曲破断強度の試験に使用した首振り繰り返し屈曲試験機の原理説明図である。
図に示すように、ダイス21を通して吊り下げた試験サンプル22の先端に、重り23を取り付けている。試験サンプル22の線径φ=0.1mm、ダイス21の曲率R=0.5mm、重り23の荷重は35gである。繰り返し試験はダイス21と線材との接点を回転中心にしてダイス21を首振り運動させることによって行われる。この装置も試験方法も標準化された方法である。
【0032】
光ピックアップ装置のサスペンションワイヤは、繰り返し曲げに強い特性が要求される。以上の結果によれば、引っ張り強さが少なくとも800MPa以上、好ましくは900MPa以上ある銅銀合金を使用することが好ましい。この結果と図1に示した特性とを照らし合わせて、光ピックアップ装置のサスペンションワイヤ用線材としては、銀含有量が2乃至15%であることがいっそう好ましいという結論を得た。
【0033】
(光ピックアップ装置)
図4の(a)は本発明の光ピックアップ装置の具体例を示す斜視図で、(b)はサスペンションワイヤの動作を示すための主要部側面図である。
図において、破線の枠で簡略表示をしたレーザ光源1は、レーザダイオード等から成る。このレーザ光源1が照射するレーザ光2をガイドするために、図のアクチュエータ3が設けられている。アクチュエータ3は、対物レンズ4と、位置制御用の駆動コイルとを搭載している。なお、位置制御用の駆動コイルはアクチュエータ3に内蔵されているため図示していない。
【0034】
アクチュエータ3は、上記駆動コイルに位置制御用の信号を供給する4本のサスペンションワイヤ5を備える。このうちの一対はトラッキング方向(矢印Xの方向)の制御用、もう一対はフォーカス方向(矢印Yの方向)の位置制御用に使用される。これらのサスペンションワイヤ5の一端は、アクチュエータ3の駆動コイル信号入力端子6にはんだ付け接続されている。また、サスペンションワイヤ5の他端は、制御基板7の制御信号出力端子8にはんだ付け接続されている。
【0035】
制御基板7は、例えば、CDプレーヤの本体に固定されており、アクチュエータ3は4本のサスペンションワイヤ5によって、光ディスク直上に吊り下げ支持されている。これにより、レーザ光源1から照射されたレーザ光2が対物レンズにより正確にピット列形成面11上に集光される。
【0036】
上記アクチュエータ3は、図示しない電磁石の力でトラッキング方向(矢印Xの方向)とフォーカス方向(矢印Yの方向)に位置制御される。この位置制御機構の詳細は、例えば特開平第5−266507号等により既知のため、図示及び説明を省略する。この位置制御の際には、アクチュエータ3を支持するサスペンションワイヤ5は、アクチュエータの移動を許容する方向に自由に湾曲する。例えば、アクチュエータ3がフォーカス方向(矢印Yの方向)に移動すると、図の(b)に示した破線のようにサスペンションワイヤ5が湾曲する。
【0037】
なお、サスペンションワイヤ5と制御基板7との接続部分(固定端部分)を機械的に保護するために、制御基板7側に密着したゴム等から成るダンパ9が設けられている。上記の位置制御のための電磁力が消滅すると、サスペンションワイヤ5の自由単側は再び実線の位置に復帰する。このとき、サスペンションワイヤ5が上記光ピックアップ装置用線材を用いて作成されることにより、経年変化の少ない装置が実現される。
【0038】
(線材の加工方法)
上記の線材は、次のようにして製造する。まず、材料は、0.08重量%以上15重量%以下の銀を含有し、その残部が銅である銅銀合金を製造する。この銅銀合金を、連続鋳造機を用いて冷間加工と熱処理とを交互に繰り返し、線経0.1mmまで細線化する。本発明では、上記の構成を持つ銅銀合金を連続鋳造することによって、過飽和となった共晶組織を作りだし、析出熱処理を施すことにより銀と銅とを合金中に微細に析出させる。これをさらに冷間加工によってフィラメント状に引き延ばす。
【0039】
この冷間加工は94%以上の加工度で行うことが望ましい。このように高い冷間加工を加えることで共晶組織が微細なフィラメント状に引き延ばされて緻密な繊維強化組織を形成する。また、析出熱処理後に高い冷間加工を加えることで、加工による転位の集積に対する微細析出物のピン止め効果が発揮され、1000MPa以上の高い引っ張り強度を得ることが出来る。こうして、高い強度を持ち、導電率の大きい合金線が得られ、かつ後述するようにサスペンションワイヤに適用した際にへたりに対する高い特性が得られるものと考えられる。また、銀と銅から成るのではんだ付け接続性が極めて良い。しかも、銀と銅の2元系の材料から成るため、リサイクル性と環境への対応性も優れたものとなる。
【0040】
(線材のへたり試験)
図5は、本発明の光ピックアップ装置のサスペンションワイヤの特性試験の説明図で、(a)と(b)は試験条件の説明図、(c)は試験結果を示す説明図である。
この試験は、特に、サスペンションワイヤのへたり現象を従来のものと比較することを目的としてなされたものである。(a)に示したサンプルには、線径1mm、長さL=200mmの棒状の試料を使用した。各サンプルは、一端をダンパ9で支持して他端を自由端とし、他端からW=3mmの所に荷重Fを繰り返し加えて振幅H=5mmの屈曲運動を100万回行った。試験終了後は、(b)に示すように、へたり現象による自由端の変位が表れる。この幅Zを測定した。なお、へたり現象とは、時間の経過とともに湾曲が著しくなる現象のことをいう。へたり現象が生じると、光ピックアップがホームポジションから次第に位置ずれを生じて、制御性が悪くなる。
【0041】
試験に用いた比較例の燐青銅合金は、銅(Cu)に錫(Sn)を6.1重量%、燐(P)を0.1重量%を含むものである。また、銅ベリリウム合金は、銅(Cu)にベリリウム(Be)を1.9重量%含むものである。本発明の実施例である銅銀合金は、銅(Cu)に銀(Ag)を10重量%含むものである。図の(c)の例では、同一の条件でNo.1からNo.3まで3回の試験を行っている。
【0042】
この試験結果から分かるように、本発明の銅銀合金を用いたものは、燐青銅合金と比較したとき、多数回の屈曲運動によってもホームポジションからのずれを十分に小さく抑えることができる。また、銅ベリリウム合金と比較してもさらに良好な特性を持つ。
【0043】
(線材のはんだ付け接続性)
図6は、はんだ付け接続性の試験結果を示す。この試験は、上記の試験で用いたものとまったく同一の試料の端部にハンダ付けを行った場合の表面状態を観察した結果を示している。この試験では、錫(Sn)と鉛(Pb)とが50対50の比に調整された半田を溶融し、半田槽温度を250°Cに保持したものを使用した。この半田槽へ浸漬時間1〜4秒で試料を浸漬し、その端部に付着したはんだを観察した。いずれも、特別な表面処理や予備処理はしていない。その結果、浸漬時間が2秒〜3秒の場合、本発明の銅銀合金は良好にはんだ付け接続ができたのに対して、比較例の合金はいずれも、部分的にはんだが付着する程度で満足なはんだ付け接続性を示さない。
【0044】
浸漬時間が4秒の場合は全ての試料に一様にはんだがついた。しかしながら、はんだ槽への浸漬時間が長いと基板等に接続された他の部品への影響が大きいため、4秒は長過ぎて採用できない。従って、浸漬時間が2秒〜3秒で良好なはんだ付け接続性を示す本発明の銅銀合金が適することが実証された。又、導電率に関しては、ベリリューム銅合金が30%IACSから40%IACSに過ぎないのに対して銅銀合金は約2倍の70%IACSから80%IACSを示した。
【0045】
このように、本発明の光ピックアップ装置用線材によれば、コストのかかる表面処理等無しに、短時間で良好なはんだ付け接続が可能になる。
【0046】
(撚り線を使用した例)
以上説明した内容は、サスペンションワイヤとして本発明によって選択された光ピックアップ装置用線材を単線使用した場合についてであるが、本発明は、単線使用の場合に限定されるものではない。即ち、撚り線にして使用した場合には、より一層良好な結果が得られる。以下に撚り線を使用した試験内容について説明する。
【0047】
(1)試験サンプル
試験サンプルは、銀含有量10%の銅銀(Cu−Ag)合金、Φ0.03mm、7本撚り(層心径0.06mm)のサスペンションワイヤ4本と、従来採用されていた銅ベリリウム(Cu−Be)合金、Φ0.07mmのサスペンションワイヤ4本である。
【0048】
(2)試験方法
上記図3に示す首振り繰り返し屈曲試験機に重り23を14g、曲率R=1mmにして屈曲速度60回/分でダイス21を図上の左右に90度傾けることによって破断に至る回数を測定した。
【0049】
【0050】
(4)考察
試験結果が示す通り、本発明による銀含有量10%の銅銀(Cu−Ag)合金、Φ0.03mm、7本撚り(層心径0.06mm)のサスペンションワイヤは、従来の銅ベリリウム(Cu−Be)合金、Φ0.07mmのサスペンションワイヤと比較して7倍以上の屈曲性能を有することが分る。従って、銀の含有率が2重量%に満たなくても、0.08重量%以上であれば、屈曲性能を充分に実用に耐えるものにできる。しかも、銀の含有量を低く抑えることにより、きわめて経済的なものとすることができる。
【0051】
(撚りピッチと層心径の関係)
図7は、撚り線の層心径の説明図である。
図に示すとおり層心径Dとは、撚り線の外層に位置する素線の中心間の距離を言う。素線径をdと置くと、7本撚りの場合には層心径D=2dとなる。従って、上記サンプル(Cu−Ag)Φ0.03mm、7本撚り線は、層心径が0.06となるので、(Cu−Be)単線Φ0.07mmと、太さにおいてほぼ等しいことになる。
【0052】
ここで、実験によれば、銅銀合金の撚り線を使用した場合に、撚りピッチが層心径の5倍に満たないと、撚線に強い巻きぐせが生じてしまい、サスペンションワイヤとして求められる整直性や形態の成形性に劣ることとなる。また、撚線加工時に断線が生じ易くなる。一方、撚りピッチが層心径の15倍を越えると撚り癖がつき難いために撚線としてのまとまりが悪く、端末で撚りがほぐれて線がばらけてしまう。また、サスペンションワイヤをこの条件で撚り線にすると、単線のようなスプリングバックが少なく、形態の安定性が良くなる。ゆえに、光ピックアップ装置のサスペンションワイヤ用線材は、撚りピッチが、層心径の5倍以上、15倍以下が好ましい。なお、撚り線数は3本以上であれば、一層の効果が期待でき、7本撚線が最も好適である。以上の結果より、本発明による光ピックアップ装置用線材は、単線の場合は勿論のこと撚り線にすることによっても想像以上の屈曲性能が得られることが分る。
【0053】
なお、上記の実施例ではアクチュエータを支持するサスペンションワイヤを4本としたが、その本数は、必要に応じて増減しても構わない。更に、本発明による光ピックアップ装置用線材は加工成形性がよいから、サスペンションワイヤを任意の形状、例えばS字型やZ字型に加工成型して使用することもできる。また、アクチュエータを支持するサスペンションワイヤと、位置制御用コイルに制御信号を供給する信号線とは別ものでも構わない。しかし、本発明の装置では、サスペンションワイヤの導電率が非常に大きいので、制御信号供給用と兼用するとコスト削減等の効果がある。本発明による光ピックアップ装置のサスペンションワイヤ用線材は、加工成形性が良いから光ピックアップ装置の一層の小型軽量化を可能にする。故に、CD−RやDVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM(Digital Versatile Disc−Random Access Memory)等光ピックアップ装置に採用され、その効果を発揮し得る。また、DVDとCDの共用ピックアップにも好適する。DVDとCDとでは、ピックアップの焦点距離に相違があるため、屈曲性能の高い本発明の光ピックアップ装置の利点を生かすことができる。
【0054】
【発明の効果】
以上説明した本発明による光ピックアップ装置用線材は、材料費の増大を最低限に抑えた上で、はんだ付け性が良く、屈曲性が良く、かつ、大きな導電率を実現している。尚この線材を撚り線にすることによって屈曲性がより一層よくなる。又、この光ピックアップ装置用線材を採用した光ピックアップ装置は、燐青銅等を採用した場合と比較して経年変化が少なく、長期間、アクチュエータをホームポジションに支持し続けることが可能である。また、これにより、アクチュエータに搭載された対物レンズの光軸をピット列形成面に対して常に垂直に保持することが可能になる。従って、安定な信号読み取りが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】銅銀合金における銀含有率と引っ張り強度の関係を示す図である。
【図2】屈曲破断強度の試験結果説明図である。
【図3】首振り繰り返し屈曲試験機の原理説明図である。
【図4】(a)は本発明の光ピックアップ装置の具体例を示す斜視図で、(b)はサスペンションワイヤの動作を示すための主要部側面図である。
【図5】本発明の光ピックアップ装置のサスペンションワイヤの特性試験の説明図で、(a)と(b)は試験条件の説明図、(c)は試験結果を示す説明図である。
【図6】はんだ付け接続性の試験結果を示す。
【図7】層心径説明図である。
【符号の説明】
1 レーザ光源
2 レーザ光
3 アクチュエータ
4 対物レンズ
5 サスペンションワイヤ
6 駆動コイル信号入力端子
7 基板
8 制御信号出力端子
9 ダンパ
11 ピット列形成面
Claims (11)
- レーザ光源と、前記レーザ光源の照射するレーザ光をガイドする対物レンズと位置制御用の駆動コイルとを搭載したアクチュエータと、前記アクチュエータを可動支持する複数本のサスペンションワイヤとを備え、前記サスペンションワイヤは、銅銀合金から成る線材が3本以上撚り合わされて成り、撚りピッチが層心径の5倍以上、15倍以下であることを特徴とする光ピックアップ装置。
- 前記銅銀合金は、0.08乃至15重量%の銀を含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
- 前記銅銀合金は、2乃至15重量%の銀を含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
- 前記銅銀合金は、連続鋳造され、析出熱処理後に94パーセント以上の加工度が施されていることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
- 前記サスペンションワイヤの一端は、前記アクチュエータにはんだ付け接続され、他端は、制御基板側に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
- レーザ光源と、前記レーザ光源の照射するレーザ光をガイドする対物レンズと位置制御用の駆動コイルとを搭載したアクチュエータと、前記アクチュエータを可動支持し、前記駆動コイルに位置制御用信号を供給する複数本のサスペンションワイヤとを備え、前記サスペンションワイヤは、銅銀合金から成る線材が3本以上撚り合わされて成り、撚りピッチが層心径の5倍以上、15倍以下であることを特徴とする光ピックアップ装置。
- 前記銅銀合金は、0.08乃至15重量%の銀を含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項6に記載の光ピックアップ装置。
- 前記銅銀合金は、2乃至15重量%の銀を含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項6に記載の光ピックアップ装置。
- 前記銅銀合金は、連続鋳造され、析出熱処理後に94パーセント以上の加工度が施されていることを特徴とする請求項6に記載の光ピックアップ装置。
- 前記サスペンションワイヤの一端は、前記アクチュエータにはんだ付け接続され、他端は、制御基板側に接続されていることを特徴とする請求項6に記載の光ピックアップ装置。
- 前記サスペンションワイヤの一端は、前記アクチュエータの駆動コイル信号入力端子にはんだ付け接続され、他端は、制御基板の制御信号出力端子にはんだ付け接続されていることを特徴とする請求項6に記載の光ピックアップ装置。
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